1年前、おじさんは異世界に転生していた。現実とは思えぬ、信じがたいほどの怒涛の海産物が出てくる夕食を前に呆気にとられるしかなかった「いわない温泉 高島旅館」に泊まった夜のことだ。あれは仲間内で語り草になるほどだった。
そして今年もまた、神威岬リベンジ戦というテーマで同じ地域への旅行が企てられた。参加メンバーは昨年と同じ。宿泊先には当然のように高島旅館が選ばれた。
あれから新型コロナのせいで、いろいろあったからな。食材の仕入れルートが止まってしまって~とか、残念なことになってなければいいけど。…大丈夫、杞憂だった。異世界はびくともしなかった。現実離れした海産物オンパレードは相変わらず。ああ良かった。
いわない温泉「高島旅館」へのアクセス
道外からの観光客がレンタカーで岩内へ向かう場合、余市の方から回り込むか、ニセコの方からアプローチするか、って感じになると思う。どっちが有利というより旅のルートの組み立てに応じて決まるんだろうから、お好きにすればよい。
旅の初日に神威岬を含む積丹観光を終えた我ら一行は、積丹町→神恵内村→泊村→共和町→岩内町と南下してきた。午後3時。まだ観光しようと思えばできたけど、さっさと旅館に入ってゆっくりしようということで話がまとまっていたのだ。夕食に向けて胃袋と体調を整えておかなければ。
岩内の町に入ったら、IWANAI RESORTスキー場やマリンビューキャンプ場のある山を登っていく。この山には円山展望台があって、我々は高島旅館をチェックアウトした朝に立ち寄ってみた。岩内の市街や港が展望できます。海の向こうに泊原発も見えますな。
円山展望台よりも手前で高島旅館の看板が現れるから、横道に入ってちょっと行けば着く。看板を見落とさなければ迷うようなことはないはず。
現実世界の住人も楽に過ごせる部屋
優雅なテラスのあるロビー
ロビーに入ると1年前の記憶が蘇ってきた。たしか魚市場のような匂いが漂ってたんだけど、今年は全然そんなことはなかった。その意味では万人向けになっている。ロビーには洒落た感じのテラスも併設されている。昨年は雨のため利用せず、今年はなんとなく機会がなくて利用せず。
客室は2階建ての2階に集まっている。エレベーターを利用することもできるが、若い人なんかは階段の方が手っ取り早いかもね。
1階の通路を大浴場へ向かって進んでいくと、途中の壁に写真が飾ってあった。岩内のいろいろな風景を写したものだ。ふうん、と感心しつつさらに進むと、大浴場前に自販機がある。湯あがりのビールはここで調達すればいいんだなとチェックしておいた。
ゲレンデが見える山側の客室
さて、チェックインして案内された部屋は前回と同じ8畳+6畳+広縁。当館で一番広い客室だったはず。いやー、またしてもすいませんね。
シャワートイレ・洗面台あり。室内の内風呂はいつも利用しないんで、有無やどういう風かは常に関心が向かず、記憶にございません。メンバーのひとりが折りたたみ傘を干していた気がするから、あるにはあったと思う。あとタオルハンガーが幅広で余裕があって使いやすい。
金庫あり。冷蔵庫に飲み物は入ってなくてグラスが冷やしてあった。WiFiあり。携帯のつながり方も問題なし。夕食時に熱気がこもったのでエアコンつけたんだっけな、違うっけな。よく覚えてないが暑い寒いで難儀したことはない。
窓からの景色はこんな感じ。雨雲にすっぽり覆われてしまった前回と比べたら、ゲレンデのある手前の山はかなりはっきり見えたが、奥山はちょっと厳しいなあ。
大浴場では温泉の熱気を楽しめれば上等
熱さを覚悟して
高島旅館の大浴場は先に書いた通り、1階通路を奥までずっと行ったところにある。男湯女湯の入れ替えはない。昨年の体験から、水で埋めないといけないくらいにお湯が熱いとわかっていたので、それなりに覚悟をして行った。
男湯の脱衣所は細い通路風でいささか狭い。たくさんの客がどっと来るわけじゃないから問題はないが。壁に掲示された分析書には「ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉、低張性、中性、高温泉」とあった。前回の訪問記事には泉質名を誤って書いてたみたい。重曹泉寄りなのに食塩泉だと強調してしまった。直しておきました。
今年は木の香りの印象が強い
内湯の浴室内にカランは4つ(5つだったかも)。前回感じたサウナのような熱気はない。内湯はソーシャルディスタンスを無視すれば5~6名いけるサイズ。熱さを覚悟しておそるおそる入ってみると…あれ? 意外と大丈夫。熱いは熱いけど常識の範囲内だ。「やばい、水で埋めなきゃ」と焦るほどではなかった。
源泉かけ流しのお湯は無色透明で若干肌に引っかかるような感触がある。お湯の熱さへ過度に意識を向けなくてすんだ分、室内に木の香り(杉らしい)が充満している点が強く印象付けられた。結構ですな。
ガラス越しに露天風呂が見えるから、人がいるか・いないか、様子をうかがいながら移動することができる。
泡付きが確認できた露天風呂
お次は露天風呂へ。いったん脱衣所へ出て、別の扉からサウナ室の前を経由して行く。あら、こちらもなんだか木の香り(檜らしい)がするぞ。結構ですな。カランは1つあるがシャワーを浴槽に突っ込んで水で埋めるために使われるパターンが多い。
露天もわりと普通の熱さだった。特徴は内湯と同様ながら、よく見ると細かい泡状のものが漂っている。それらが肌にたくさん付着して、いわゆる泡付きのする温泉になっていた。こいつは本物だぜ。
檜風呂と思われる浴槽は3~4名のサイズで、まわりを塀に囲まれで眺望はなく、屋根は付いてない。晴れていれば頭上に星が見えたりするかもしれない。露天風呂狙いの客はそこそこいるが、入れかわり立ちかわりではなく空いていることも多いから、独占のチャンスは十分にある。気張らなくてもゆっくり入れるでしょう。
ようは自分で温度調整すればいいのよ
以上は夕方の入浴。夕食直前に単独で入りに行ったメンバーによれば、その時はうんと熱かったらしい。夕食後に行った時は夕方よりいくらか熱い程度。そして翌朝はさらに熱かった。
結局のところ温度については、先に入ってた客がどれくらい水で埋めたか、その効果がどれくらい残存しているか次第なのではないか。なので熱めのゾーンの中で振れ幅が結構あると思っていれば間違いない。
やっぱりすごかった高島旅館の食事
“1年前の衝撃再び”の夕食
さあ、お楽しみの夕食がやってまいりました。素材の良さで直球勝負!の豪華絢爛たる料理が部屋まで運ばれてくる。はじめに断っておくと、予約したのは標準よりひとつ下のコースである。我々の胃袋に見合う量だもんで。もちろん当館の真骨頂は標準以上のコースだろうから、お腹に余裕のある方にはそちらをおすすめしたい。
昨年の記事の写真と見比べたら全く同内容だった。コロナのせいで仕入れルートが~なんてのは完全に杞憂でしたな。今年も異世界は健在だ。網で焼くアワビと濃厚なウニ、このあたりはなかなか食べる機会がないから舞い上がってしまう。とろりとした海老もうまいよ。
まもなくしてヒラメの活造りキターーー! ヒラメじたいが別格なのに、しかもエンガワ付き。
回転寿司でナゾノエンガワを食べることはまれにあるが、こいつは正真正銘のヒラメのエンガワだからね。おじさんの生活感だと異世界でしか口にできない代物。やばい。
あやうく食べ切れなくなるレベル
派手さでは上の連中に譲るが、旨味成分といろんな味のハーモニーがくせになる海鮮鍋もあるんですわ。お腹が苦しくなりつつも箸が止まらない。いやあ、まいったなあ。ステイホーム中の貧相な食事事情から一転しての大花火乱舞。あまりの落差に感覚がおかしくなりそうだ。
締めにはご飯だけじゃない。モンケという焼き魚も来ますぜ。最後に魚をまるまる1匹食べることになるのだ。おそろしすぎる。昨年はギブアップで残してしまったが、今回はうまくペース配分して全部いただきました。最後にメロンならぬ「らいでんイチゴ」がデザートに出てきておしまい。
二度目の異世界もパラダイスであった。
お昼抜きで全力投球したくなる朝食
朝食は1階の大広間で。内容的には昨年と変わらず。すごいのは朝から新鮮なイカ刺しが出てくるところ。
イカの塩辛もあるし、別途で島牧ホッケも出てくるし、えぞふじ納豆もあるし、メンバーみな「お昼いらないわ」と言いながらご飯をおかわりしていた。そして実際にお昼を抜いたのであった。
フタのついた容器は自慢の新鮮タマゴで作るベーコンエッグ用。これだけあればもう十分すぎるほどだ。あと北海道らしく新鮮な瓶牛乳も出てくるよ。
食後のコーヒーはその場で出してもらうこともできるし、ロビーの方へ移動してから提供してもらうこともできる。我々はロビーでゆったりといただいた。さらに外のテラスでコーヒーを楽しむグループもいたな。優雅でござる。
* * *
高島旅館はやっぱり半端なかった。前回見学しそこねた神威岬に再チャレンジするというテーマ設定から再び泊まることになった次第だが、当館で過ごす時間そのものを目当てに来る常連がたくさんいても全然不思議じゃない。実際そういう感じの客もいた。
またいつか異世界の扉が開くことを楽しみに、高島旅館を後にした。
(参考) 2019年・高島旅館 初訪問記
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