飲泉もできる、万人向けの共同浴場 - 別所温泉 あいそめの湯

別所温泉 あいそめの湯
長野県上田市の別所温泉。上田駅と別所温泉駅を結ぶ上田電鉄の一部区間が2019年台風19号による被災で不通になったりしたが、温泉地そのものは元気に営業を続けている。

上田の状況が気になって行ってみた---ボランティアではなく観光客としてだが---晩秋の一人旅において、別所温泉にも立ち寄った。

ご当地に4つある共同浴場の中から選んだ先は「あいそめの湯」。外から来た人間にとって入場のハードルが低そう・気軽に入れそうな雰囲気だったのでね。訪問時の曜日と時間帯を考えると、なかなかの客入り。別所温泉は元気です。

別所温泉「あいそめの湯」へのアクセス

直行の高速バスもある

東京方面から鉄道旅の場合、本来であれば新幹線で上田に着いたら、上田電鉄に乗り換えて終点・別所温泉駅まで行けばいい。しかし当時は上田~下之郷間(本記事公開時点では上田~城下間)が不通であり、不通区間は代行バスを利用することになる。

自分の場合は経費節減のため池袋から高速バスを利用した。4時間近くかかるかわりに別所温泉まで直接運んでもらえる。

あいそめの湯は別所温泉駅のやや手前にあるのだが、バスは駅を通過して300mくらい奥の将軍塚駐車場が降車地になっている。なのでいったん駅まで歩いて戻らねばならない。

ノスタルジックな駅舎の近く

これが別所温泉駅。ローカル&ノスタルジックな風情が漂う。
別所温泉駅
別所温泉といえば映画「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」(第18作)のロケ地。作品内に登場した駅舎と現在では屋根の色などは違うが、雰囲気はそのまま残っている。おー、いいねえ。

寅さんが旅の一座と出会った場所や、無銭飲食で捕まりつつも署内の人心を掌握してしまった警察署は、どこなんだろうか。と、ロケ地巡りをする時間は残念ながらない。今回は温泉に集中しよう。

はい、あいそめの湯に着きました。駅からすぐです。駐車場にはそこそこの台数が止まっていた。盛況ですな。近年建てられた風の外観は万人ウエルカムな感じで入りやすい。
あいそめの湯

なかなかの盛況ぶりを見せる、あいそめの湯

今風に整った館内

入館して自動券売機で利用券を買う。500円。フロントの近くに貴重品ロッカーがあった。あとで100円戻ってくるやつ。大きい荷物が入る鍵付きロッカーは脱衣所にもないから、自分は後の都合もあって駅のコインロッカーに預けておいた。

中央ロビーの一角にご当地の国宝・八角三重塔の模型が展示されていた。ほほう。これの実物は後で見学しに行く予定である。
安楽寺八角三重塔の模型
館内もやっぱり現代風な感じで、鄙び感は一切ない。施設面では浴場以外に畳の休憩処やレストラン、お土産コーナーなんかがある。

なんと、飲泉所あり

当施設の温泉は加水なしの加温・循環・消毒あり。男湯の脱衣所の入口に「ここの温泉は循環です。循環とは…」と正直な説明の張り紙がしてあった。分析書によれば「アルカリ性単純硫黄温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とのこと。

上述したように脱衣所にロッカーはなく、よくあるカゴのみ。結構埋まってんな~。予期してたよりも客が多いな。

浴室に入ると、なんと飲泉所があるぞ。この手の日帰り施設では珍しい。備え付けのコップに注いで一口飲んでみたらタマゴ臭がすごい。さすがは硫黄泉。

色の変化を楽しめる(らしい)内湯

洗い場は全部で20名分。全部埋まってしまうことはないだろう。ただし一人おきに使われる形で大方埋まりそうな瞬間はあったから、平日昼にしては混んでいる方だ。油断できない。

内湯浴槽はカマボコの断面のような形をした6~7名サイズ。そこへ無色透明のお湯が注がれている。壁の説明書きによれば、晴れていれば乳白色、曇りの日にはエメラルドグリーンに変化することがあるとか。そういう時に来てみたかったなあ。

浸かってみるとやや熱めの適温。LED表示板には42℃と出ていた。当時のコンディションだと無色透明だし、湯の花や泡付きも見られないから見た目の個性は感じにくいが、匂いを嗅いでみると消毒の塩素臭はなく、むしろはっきりとしたタマゴ臭が感じられた。こいつは結構ですな。

塩田平を望む露天風呂

続いて屋根付きの露天エリアへ出てみた。奥に設置されている高さ1mくらいの柵越しに塩田平が見える。全然違う場所から撮った写真なのを承知であえて言うなら、下のような感じの景色。
塩田平
露天風呂はきれいな四角形で5~6名サイズ。内湯よりも若干ぬるい。LED表示で41℃。お湯の特徴は内湯と同じ。なお、内湯も露天もそこそこ客の出入りがあり、自分だけの独占タイムはないが、居場所に困ったり芋洗いになったりするほどの混雑はない。

また露天エリアにはつぼ湯が2つあって、一方は十勇士風呂の名前が付いている。もう一方は真田三代風呂ということで六文銭の家紋や赤備えの兜が取り付けられていた。

たぶん同じお湯だろうし、常連ぽいお客さんが頻繁に入りに来てたから、まあいいかと思ってつぼ湯は利用せず。少しでもぬるい方がいいので露天風呂で粘った。

気軽に入浴してみたい方向き

後述する他の共同浴場の中には源泉かけ流しのところもあり、湯質を求める温泉ファンはそちらを好むと思われるが、ここも主観的な浴感は悪くない。比較したわけじゃないけど。

誰でも気軽に入りやすいこと、飲泉できることをあわせると、なかなかのものじゃないかな。こうして1時間弱の滞在を終えてあいそめの湯を後にした。肌はすっかりすべすべになっていた。


おまけ:別所温泉の外湯

入浴後は別所温泉のお寺巡りを実行。その途中で他の3つの共同浴場=いわゆる外湯もチェックしに行った。まあ、ただ単に見るだけだが。

それらはレトロ情緒あふれる小さな施設でジモティ色が強い。こういうのが好きな人はハマるだろう。一方で風呂が小さい、洗い場にシャワーがない、石鹸は要持参または買う等、一般観光客がふらっと気軽に入るにはややハードルが高い。個人的には熱めのお湯も苦手。

最初に見たのは大湯。お寺巡りの基本コースから外れた場所にあるため、予想外の追加往復をするはめになった。周辺は数軒の旅館が立ち並ぶ。
大湯
お次は大師湯。北向観音から安楽寺へ向かう途中にあった。目の前に小さな川(水路?)が流れている。ここは源泉かけ流し。
大師湯
大師湯前の川をちょっと遡ったところにあるのが石湯。入口の横には「真田幸村公 隠しの湯」の碑とともに飲泉所が設置されていた。
石湯
それぞれに趣があって目移りしちゃうね。あとは好みに合わせてどうぞ。もちろん全館コンプリートを目指すも可だ。