待ちに待った50作目「男はつらいよ お帰り 寅さん」

柴又付近の江戸川
2019年暮れから映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」が上映されている。男はつらいよシリーズとしては22年ぶりの新作。第1作から数えると50作目かつ50年目となる。近年になって寅さんにハマった身として鑑賞しないわけにはいかない。

もう何年ぶりかわからないくらい、超久しぶりに映画館へ行った。近頃の映画館はだいぶIT化・スマート化が進んでいるんだなあと、余計なところに感心しつつ、大きなスクリーンで寅さんに再会したのであった。お帰り、寅さん。

私的2020年最大の注目作

あの寅さんが帰ってくる!

あれは2017年のことではなかったか。日帰り温泉へ行くついでに、なんとなく気まぐれで葛飾柴又に寄ってみたことをきっかけに、某定額動画配信サービスで「男はつらいよ」の第1作を観てしまった。

そしたら結構面白かったので、2019年初めにかけてシリーズ全48作+特別編(第49作相当)をコンプリート鑑賞することになったのである。

折しも新作を撮るというニュースが舞い込み、2019年末に公開とのことで期待して“その時”を待った。11月にはNHK土曜ドラマで「少年寅次郎」をチェックするなど、我が方の準備にも抜かりはない。ちなみにドラマで少年時代の寅次郎を演じた子役ふたりはどちらも渥美清に似てた。よく発掘したな。

一方でBSプレミアムの「贋作 男はつらいよ」はチェックしてません。まあ堅いことはいいっこなしよ。

遅ればせながら映画館へ

閑話休題。新作映画の登場人物やストーリーについて、事前知識を仕込まず頭の中をフラットにして観たかったので、あえて関連情報を遠ざけていた。だが公開が近づいてから、なにげなく公式サイトで予告動画をチェックしてしまった。

そしたらもう、やばいのなんの…寅さんが登場する懐かしのシーンの数々もさることながら、あの満男の万感こもった表情ときたら…やばい、あのカットでご飯3杯いける。早く観てぇー。

残念ながら諸々立て込んでいて公開後すぐ観に行くわけにはいかず、年が明けて落ち着いてからようやく映画館へ馳せ参じた。やはり観客の年齢層は高めで若者は少ないね。当たり前か。


ネタバレしなさすぎて伝わらない作品紹介

おなじみの登場人物たち

ネタバレしない範囲で書くと、本作のひとつの大きな柱は現在の諏訪満男パートである。満男はなんと小説家になっている。物書きの才能の片鱗なんて見せてたっけ。かつてタコ社長からプレゼントされたパソコンをワープロにして文章を書くことを覚えたのだろうか。

とらや改めくるまやは三平くんが切り盛りしていた。団子屋から改装したカフェという設定らしい。このへんはシリーズ終盤に三平くんを登場させたのが功を奏したね。おいちゃん・おばちゃんはもとより、さくらや博が店をやるのもいささか無理があるからね。

おいちゃん・おばちゃんといえば、さすがに物語上でも彼岸の人。法要のシーンで仏壇に写真が立てられていた。おいちゃんは3代全員の写真なわけなく、3代目おいちゃんのが使われていた。

その他、御前様は代替わり、源ちゃんは健在、あけみ復活、などなど。現時点で出せるメンバーは出してきてる。

やっぱり満男と泉が中心に

重要な役どころで泉も登場する。そして泉のママも。いやあ、夏木マリはこういうだめな母親役をやらせたら天下一品ですな。おそれいりやのINFINITY, KOSE。

なんといっても触れないわけにいかないのがリリー。南の島で悠々自適かと思ったら…。しかもパワーの衰えは感じられない。48作目の頃と変わってないように見えるのは気のせいか。

と、ここまで書いた内容じゃ、どんなストーリーかさっぱりわからないでしょうな。肝心の寅さんはどうなっているのか、満男パートにどうやって絡んでいくのか、詳しくは映画を観てのお楽しみ。

過去作のチェックがある程度は必要

少なくとも、本作だけをシリーズから切り離して鑑賞しても「???」ってなっちゃうから、過去作品もある程度はチェックしておいた方がいい。大まかな人物相関図や有名なエピソードが頭の中に入っているかどうかで全然違う。

特に満男と泉については第42~45作と第48作、リリーについては第11,15,25,48(,49)作、これらはチェックしておきたい。

あと博とさくらの縁&すべての始まりに敬意を表して第1作は観るべき。あと劇中で歴代マドンナのシーンが何度も出てくるが、リリー以外で比較的目立ったのが歌子さん(No.9,13)、お千代さん(No.10)、ぼたん(No.17)。でも朋子さん(No.32)も無視できないし花子ちゃん(No.7)も気になるなあ…とか拾ってくと、結局全部じゃねーか。

ネタバレありで書きたいことは山ほどあるけど、もうこれくらいにしておこう。あー、映画に触発されてシリーズ全作鑑賞の2巡目を始めてしまいかねないな。やばいやばい。


適当な思いつき:ゲラルトさん=寅さん説

ふと思いついただけだが、小説・ゲーム・最近だとネットドラマとして知られる大人向けファンタジー作品「ウィッチャー」は、「男はつらいよ」シリーズと物語の構造が似ている気がする。

主人公は各地を遍歴する男。土地土地で日銭を稼ぐ中でトラブルに巻き込まれたり、頼み事をされたり、人助けをしたりする。決して一つの場所に長く留まることはない。最後はよそ者の矜持を貫いて(?)さくっと旅立つ。

モテ/非モテの違いはあれど、運命のマドンナとくっついてハッピーエンド、といかないところは一緒だ。本質的には家庭を築けない一匹狼。しかしたまに帰る故郷はある。かたやケィア・モルヘン、かたや柴又。

主人公ゲラルトとつるんで旅する吟遊詩人ヤスキエル(ダンディリオン)は寅さんでいう登・ポンシュウ・後期満男の役回り。第1恋人のイェネファーはさしずめリリーか。シリは強引に結びつけるならやっぱりさくらでしょう。

世の中の流れに取り残されるようにしてウィッチャーもテキ屋も数を減らしているしな。そうか、ウィッチャーはダークファンタジー版・男はつらいよだったのか。


【男はつらいよシリーズのその他の感想文】