酸ヶ湯温泉といえば青森県、いや東北を代表するといってもいいくらいの知名度を誇る名湯である。このたび梅雨真っ只中のグループ旅行にて憧れの酸ヶ湯温泉に立ち寄り入浴してきた。
ぬる湯好きの自分としては、酸ヶ湯は熱すぎて楽しめないんじゃないかと危惧していたところ、実際たしかに熱めだったとはいえ結構じっくりつかることができた。なにより浴感が大変に良くて、こいつはさすがの酸ヶ湯さん。
しかもこのときはほぼ独占状態という、考えられないような幸運にも恵まれちゃって、いやあ、なんだかすいませんね。
雨ではないものの厚い雲に覆われてどんよりした空模様の下、車に乗っていざ出発。まず目指したのが酸ヶ湯温泉だ。国道7号から103号のリレーで1時間弱の行程。
深い森を切り裂くように通された道路は、カーブと勾配はきつめだけど片側1車線が確保されていて苦もなく普通に走れる。とはいえ、両脇に文字通り林立する木々が枝や葉を道の内側へ伸ばして路肩を隠し、頭上には高い枝でアーチを作っており、まるで狭いトンネルの中を進んでいるようだった。
途中に八甲田山のロープウェー乗り場があった。ここには温泉の後で来るつもりで場所だけチェックして通過。それから10分ほどで目的地に到着。
右手には「立ち食いそば」「酸ヶ湯そば」の文字が見える鬼面庵というお蕎麦屋さん。
正面玄関を入るとすぐに日帰り客向けの券売機があった。当湯には2種類の浴場があって、どちらか一方なら600円、両方セットの券だと1000円で貸しタオルが付いて休憩所を利用できるとのこと。
見ればあちこちに注意書きが貼ってある。混浴について「節度を守りましょう」「古き良き風情を壊さないように」的な内容が多い。うーむ、いろいろやらかしたのが過去にいたんだろうか。
とにかく我々に混浴だなんだの関心はない。いい温泉につかりたい、その一点のみ。浴室へ入っていくと、手前に一つ、奥にもう一つ、大きな木の浴槽があった。総ヒバ造りの巨大な浴室は中央付近の仕切り板で男女のエリアがきっちり分かれており、混浴と男女別の折衷型みたいだった。
続いて手前にある「熱の湯」に入ってみた。20名規模の大きな浴槽に緑がかった白濁のお湯が満ちている。日光湯元温泉で見たお湯と似ているな。ちなみに日光湯元も酸ヶ湯も国民保養温泉地第一号に指定されている。
熱の湯というだけあってやや熱め。ぬる湯好きの自分としてはちょっと厳しいかと思ったけど、結構いける。なんというかトロッとした感じがあって熱さの刺激が和らいでいるのだ。
分析書によれば熱の湯は「酸性-含鉄・硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型)」。どこにいても硫黄のタマゴ臭に包まれるけど、お湯に鼻を近づけると、ゆでたばかりの卵を通り越して腐りかけの段階にまで達していることがはっきりする。うわあ強烈。
熱の湯の湯船中央には簡素な柵があって、「←女湯|男湯→」みたいな札が付いていた。つまりは混浴だけど指示された縄張りを外れるなよ、ということだ。やっぱり過去に何かやらかした奴がいるな…。いずれにせよ目隠しにもならない柵ひとつじゃ、熱の湯へやって来ようなんていう御婦人はおるまい(※朝8時~9時は女性専用になる)。
当初からいた数名のおやっさんが立ち去ると、仕切り板の向こうにも人の気配がしないから、どうやら完全なる我ら一行の独占状態となった。酸ヶ湯といえば老老男女で芋洗いのイメージがあったから、これってレアなんじゃないの。そんな状態が20分ほど続いただろうか。よっしゃあ。
こちらのお湯は緑がかってなくてミルクのような乳白色。入ると決してぬるくはないけど熱の湯との相対比較ではぬるめ。入りやすさ・長くつかれるかでいうとこっちに軍配が上がる。
鼻を近づけたときのタマゴ臭はずいぶんマイルドで、腐りかけのゆで卵ではなかった。トロみ感とやたら効いてくる感は熱の湯と同じ。普通は相当に長湯しないとしわしわにならない指の先が短時間でしわしわになってしまった。
それはさておき、酸ヶ湯の泉質は本当にすばらしい。木造の浴室は雰囲気がいい。仕切り板だけは情緒の面でちょっと興ざめ要素だけど、まあ安全・安心のためだし、こっちも変に気を遣わなくてすむから、いいんじゃないの。この空間とお湯をしばらく独占できたなんて、いまだに信じがたい。
浴室内にはあと一つ、「湯瀧」なる看板のところがある。いわゆる打たせ湯だ。ちょっとだけ試したが、ふだん打たせ湯をやらないせいか、いまいち有り難みがわからず終了。
酸ヶ湯の余韻に浸りつつ、行きにチェックしておいた八甲田ロープウェイに寄ってみた。ほとんど人がいない。ここも独占か?
しかし往復の切符を買った直後、なんと「強風のため本日の運転を打ち切ります」とのアナウンス。おう、なんてこったい。きっぷを払い戻してもらい、むなしくその場を後にした。ああ八甲田山。天は我々を見放したらしい。
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ぬる湯好きの自分としては、酸ヶ湯は熱すぎて楽しめないんじゃないかと危惧していたところ、実際たしかに熱めだったとはいえ結構じっくりつかることができた。なにより浴感が大変に良くて、こいつはさすがの酸ヶ湯さん。
しかもこのときはほぼ独占状態という、考えられないような幸運にも恵まれちゃって、いやあ、なんだかすいませんね。
酸ヶ湯温泉へのアクセス
ブナ林のトンネルを抜けて
今回は新青森まで東北新幹線で行き、そこからレンタカーで県内を回る作戦。今どきは東京から3時間程度で青森に着いちゃうんだから、便利な世の中になったもんだ。青森県は約20年ぶりのうえ、温泉めぐりの観点だと初訪問の地となる。オラわくわくしてきたぞ。雨ではないものの厚い雲に覆われてどんよりした空模様の下、車に乗っていざ出発。まず目指したのが酸ヶ湯温泉だ。国道7号から103号のリレーで1時間弱の行程。
深い森を切り裂くように通された道路は、カーブと勾配はきつめだけど片側1車線が確保されていて苦もなく普通に走れる。とはいえ、両脇に文字通り林立する木々が枝や葉を道の内側へ伸ばして路肩を隠し、頭上には高い枝でアーチを作っており、まるで狭いトンネルの中を進んでいるようだった。
途中に八甲田山のロープウェー乗り場があった。ここには温泉の後で来るつもりで場所だけチェックして通過。それから10分ほどで目的地に到着。
2種類ある大浴場
酸ヶ湯温泉の建物に関してボロボロの古民家風を想像していたら(失礼!)、山奥の秘湯っぽいデザインではあるけれど、意外と新しくてしっかりしたつくりだった。左手に隣接する建物は宿泊棟であろうか。右手には「立ち食いそば」「酸ヶ湯そば」の文字が見える鬼面庵というお蕎麦屋さん。
正面玄関を入るとすぐに日帰り客向けの券売機があった。当湯には2種類の浴場があって、どちらか一方なら600円、両方セットの券だと1000円で貸しタオルが付いて休憩所を利用できるとのこと。
- ヒバ千人風呂…混浴。洗い場なし。
- 玉の湯…男女別。洗い場あり。
これが天下の名湯・酸ヶ湯温泉だ!
硫黄臭、そして仕切り板
さあいよいよ念願のヒバ千人風呂へ突入だ。男湯の脱衣所の段階でもうかなりの硫黄臭が立ちこめている。いいよいいよー。脱衣所は他に誰もいないし、浴室にも人の気配がほとんどない。今日はすいているのかな。見ればあちこちに注意書きが貼ってある。混浴について「節度を守りましょう」「古き良き風情を壊さないように」的な内容が多い。うーむ、いろいろやらかしたのが過去にいたんだろうか。
とにかく我々に混浴だなんだの関心はない。いい温泉につかりたい、その一点のみ。浴室へ入っていくと、手前に一つ、奥にもう一つ、大きな木の浴槽があった。総ヒバ造りの巨大な浴室は中央付近の仕切り板で男女のエリアがきっちり分かれており、混浴と男女別の折衷型みたいだった。
緑白濁でトロみ感のある「熱の湯」
まず壁際の「冷の湯」という看板のあるところでかけ湯をする。冷の湯といってもぬる湯の浴槽ではなく、かけ湯コーナーなのだ。続いて手前にある「熱の湯」に入ってみた。20名規模の大きな浴槽に緑がかった白濁のお湯が満ちている。日光湯元温泉で見たお湯と似ているな。ちなみに日光湯元も酸ヶ湯も国民保養温泉地第一号に指定されている。
熱の湯というだけあってやや熱め。ぬる湯好きの自分としてはちょっと厳しいかと思ったけど、結構いける。なんというかトロッとした感じがあって熱さの刺激が和らいでいるのだ。
分析書によれば熱の湯は「酸性-含鉄・硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型)」。どこにいても硫黄のタマゴ臭に包まれるけど、お湯に鼻を近づけると、ゆでたばかりの卵を通り越して腐りかけの段階にまで達していることがはっきりする。うわあ強烈。
超貴重な足元湧出泉だった
しかしこのジワジワ効いてくる感じはなんだろう。体感的にもすごいぞ、ここ。後に調べたところ、熱の湯は源泉が足元から直接湧いてる足元湧出泉だそうだ。そりゃあ超新鮮だわ。貴重な体験をしちゃったかも。熱の湯の湯船中央には簡素な柵があって、「←女湯|男湯→」みたいな札が付いていた。つまりは混浴だけど指示された縄張りを外れるなよ、ということだ。やっぱり過去に何かやらかした奴がいるな…。いずれにせよ目隠しにもならない柵ひとつじゃ、熱の湯へやって来ようなんていう御婦人はおるまい(※朝8時~9時は女性専用になる)。
当初からいた数名のおやっさんが立ち去ると、仕切り板の向こうにも人の気配がしないから、どうやら完全なる我ら一行の独占状態となった。酸ヶ湯といえば老老男女で芋洗いのイメージがあったから、これってレアなんじゃないの。そんな状態が20分ほど続いただろうか。よっしゃあ。
千人風呂の真骨頂・ミルク色の「四分六分の湯」
独占を楽しみつつ奥の「四分六分の湯」へ移動。こちらはまさに千人風呂といえるサイズ。浴室を2つに隔てる仕切り板が四分六分の浴槽内まで侵入してきており、板の向こう側がどれくらい広いのかわからないが、直感的に50名規模、きちきちに詰めれば100名いけそうな気もする。こちらのお湯は緑がかってなくてミルクのような乳白色。入ると決してぬるくはないけど熱の湯との相対比較ではぬるめ。入りやすさ・長くつかれるかでいうとこっちに軍配が上がる。
鼻を近づけたときのタマゴ臭はずいぶんマイルドで、腐りかけのゆで卵ではなかった。トロみ感とやたら効いてくる感は熱の湯と同じ。普通は相当に長湯しないとしわしわにならない指の先が短時間でしわしわになってしまった。
千人風呂を独占するという幸運
先の仕切り板は四分六分の湯を完全に隔てる少し手前で途切れており、その隙間で男女つながっている。そういう意味では混浴といえる。そして隙間近くの男側だけ、浴槽の木の縁のところにたくさんの立て板が据え付けられていて、縁に腰掛けることができないようになっていた。これも過去のやらかしの爪痕か?それはさておき、酸ヶ湯の泉質は本当にすばらしい。木造の浴室は雰囲気がいい。仕切り板だけは情緒の面でちょっと興ざめ要素だけど、まあ安全・安心のためだし、こっちも変に気を遣わなくてすむから、いいんじゃないの。この空間とお湯をしばらく独占できたなんて、いまだに信じがたい。
浴室内にはあと一つ、「湯瀧」なる看板のところがある。いわゆる打たせ湯だ。ちょっとだけ試したが、ふだん打たせ湯をやらないせいか、いまいち有り難みがわからず終了。
おまけ:八甲田ロープウェイに振られた件
そうして酸ヶ湯体験も終了。いやはやすごいお湯だった。外へ出てからもまだジワジワ効いてくる感じが残ったし、指はすっかりしわしわだし、なにより体がいつまでもポカポカして全然引かない。なんじゃこりゃあ。酸ヶ湯の余韻に浸りつつ、行きにチェックしておいた八甲田ロープウェイに寄ってみた。ほとんど人がいない。ここも独占か?
しかし往復の切符を買った直後、なんと「強風のため本日の運転を打ち切ります」とのアナウンス。おう、なんてこったい。きっぷを払い戻してもらい、むなしくその場を後にした。ああ八甲田山。天は我々を見放したらしい。
【この旅行に関する他の記事】