もし青森へ行くことがあるなら、ぜひ泊まってみたい、と密かに(?)狙っていた温泉宿があった。それが「八甲田温泉 ぬぐだまりの里」だ。ネットで口コミなんかを調べると、絶賛する論調ばかりで難点がまったく見えてこない。少なくともお湯に関しては。
しかも自分の好みに合うぬる湯ときたもんだ。これはもう、行くっきゃねえ! …もしも機会があればね…もしも機会があれば…もしも機会が…もしも…if…if…。ifはあってもthenがない。そんな思いを抱えて幾星霜(大げさ)。
そうしてついにthenの時は来た。老後の備えだとか、最近散財しすぎじゃないの、なんて考えをかなぐり捨てて、「やるなら今しかねぇ」の黒板五郎精神で青森遠征を決行したのである。行ってみた感想は…すんごい良かった。行って良かった。やるなら今しかなかった。
訪れたのがちょうどサッカーワールドカップのあたりの時期だったから、ベタになるけど、言ってしまおう…ぬぐだまり半端ないって!
(2019.6追記)2019/5/23付で設備不調による臨時休業のお知らせ。わりと頻繁に休止するから行ける時に行っといた方がいいですよ。
途中には銅像茶屋というドライブインがあって、その裏手の丘の上に八甲田山から連想される例の事件の雪中行軍遭難記念像があった。
像は等身大よりも大きく、人の身長よりはるかに高い位置に設置されている。像の目の高さからなら下界を一望できるかもしれないが、訪問客の目線だと木が邪魔で何も展望できない。
銅像茶屋まで来ればぬぐだまりの里は近い。なお、田代地区は全般に携帯が圏外になりがちだった。スマホアプリのカーナビだと機能しないかもしれない。我ら一行はカーナビ完備のレンタカーだったから大丈夫。
また鉄道利用の場合は、JRバス「みずうみ号」で萱野茶屋または八甲田ロープウェーのバス停まで来れば、宿まで送迎してもらえるようだ。
実際の建物は相当しっかりしているからご安心を。当日はかなりの強風が吹き荒れたけど、揺れたりガタガタいうこともなく、びくともしなかった。もちろん内装のお手入れ感や清潔感にも問題はない。
さっそくチェックインして部屋まで案内してもらう。宿泊棟へ続く廊下には古民具が並べてあった。
それと囲炉裏風の小上がりの間。ここはなんだろう、湯上がりの休憩所として使えるのか、見学専用の展示なのか、よくわからない。
宿泊者向けの部屋は2階に固まっているようだ。ひとつ注意点があって、階段の踊り場の直前にあたるステップだけ他より少し段差が高くなっており、無意識に任せて上るとだいたい蹴つまづく。自分も何度かやってしまい、意識してももを高く上げるようにしてステップを越える羽目になった。
トイレはないが洗面台あり。共同のトイレはきれいで新しめで問題なし。部屋にはあと金庫と小さめのテレビもある。布団は最初から敷いてあった。二間あるから座卓をどかすまでもない。
当宿にWiFiはなかったし、携帯も圏外のまま。キャリアによってはつながるかもしれないが、3G回線だったり、アンテナ1本しか立たなくてプチプチ切れたり、苦労しそうな予感がする。ぬぐだまりの里へはネット断ちするつもりで行くべし。
窓の外には龍神の館と名付けられた大浴場棟が見える。あそこに夢の源泉かけ流しが待っているわけか。どうせネットもつながらないし、風呂に入るくらいしかやることないのだ。たっぷり入らせてもらうとしようか。
龍神の館:
手前にある8名分だったかの洗い場とちょっとした通路を除く、内湯浴室の大半…印象だけで適当に言うと床面積の8割近く…を湯船が占めている。
小さい方のみるくの湯でも20名入れそうなサイズ。名前の通りに乳白色のお湯が注がれ、白い湯の花が舞い、タマゴ臭が鼻を抜けていく。うれしいことに自分好みのぬる湯だ。35℃くらいとみた。やろうと思えば1時間でも入っていられる。
しかも泉質に含二酸化炭素とあった通り、相当な泡付きを示す。入った瞬間から体中に細かい泡の粒が着くのだ。泡を払ってもしばらくするとまた一杯に付着している。湯口に近いほど泡付きが良いような気がする。それをわかっているのか、湯口から動かず、目を閉じてじっとしたままのおじいさんもいた。
白濁硫黄+ぬる湯+泡。こりゃあ最強の組み合わせ。かなり気に入った。どこの温泉旅館へ持っていってもエースを張れるであろう驚愕のハイクオリティ。みるくの湯しか入らなかったとしても十分幸せになれる。すばらしすぎる。
龍神の湯は見る限り、無人のまま入るべき人間をひたすら待ち続けており、なんとももったいない状況だった。自分が入るとたいてい「広ーい湯船にぽつんと一人」の図になり、他ではなかなか味わえない、ぜいたくな光景を体験することになった。
お湯は薄い緑色を呈し、茶色い湯の花が舞っている。お湯をすくって鼻を近づけると、土気臭というのかよくわからんが、この泉質にありがちな匂いを感知した。
温度は42℃ありそうな熱め。他の湯船でちょっとゾクッと感じたときや、露天で風に当たって寒くなった時に入るといいだろう。そうでなくても、他と組み合わせてローテーションさせれば、冷温交互浴となって結構気持ちいい。
温泉自体も絶景だ。緑色の湯と青白い湯が隣り合って並んでいるのだ。左手が露天版・龍神の湯。15名規模の浴槽に満たされているお湯は、遠くから見ると緑色、近くで見ると透明度が結構高い。ただし翌朝入ったときにはずいぶん濁りが増していた。
色のほか匂い・湯の花といった特徴はおおむね内湯版の龍神の湯と一緒。八甲田おろしが直接当たる分だけ冷めやすいせいか、熱さは内湯よりも若干緩く、適温と言っていいくらいになっていた。
お湯の特徴はみるくの湯に近い。ぬるくて、タマゴ臭がして、白濁していて、白い湯の花が舞っている。温度はみるくよりもほんの少し高い気がするけど、時間によって逆転することもあった。色は乳白色にやや強めの青が加わっている。
泡付きはそれほど多くはなかった。そしてやっぱり1時間でも入っていられそうな、心地よいぬるさ。景色を見ながらぼーっとつかっていると、あっという間に時間がたってしまう。
さらに翌朝入った際には、濁りがすっかり失せて水色に透き通った南国の海のように見えたので驚いた。鮮やかな「アクアブルー」と呼ぶべき色だ。見た目とぬる湯ですっかりリラックス。なぜか30年前のCMソング、尾崎紀世彦の「サマー・ラブ」が脳内を流れるのであった。Oh~サマ~ラ~ブ♪ ほにゃら~らら~ららら~♪ あとは知らん。
別棟になる「らむねの館」には「らむねの湯」の男湯女湯のほかに施錠された貸切風呂があった。だが、らむねの湯へ3回行って3回とも誰もいなくて独占し放題だったので、貸切風呂みたいなもんだった。
名前から想像される通り、ここは炭酸がウリだ。分析書の泉質名に含二酸化炭素の文字は見られないものの、溶存ガス成分量は限りなく1000ミリグラムに近い数値で、炭酸泉と言っても差し支えないレベル。
無色透明のお湯につかってみると、うれしいぬるめ。みるくや八甲田元湯よりはほんのわずか高い温度と思われる。お湯をすくって鼻を近づけると、かなりはっきりしたタマゴ臭。いやいやすばらしい。
肝心の泡付きは、さすがに一番すごかった。あっという間に体中が細かい気泡に包まれる。払っても払ってもすぐにびっしりと泡が付着する。天然でこの泡は普通じゃない。ぬる湯・オーバーフロー・タマゴ臭・泡という特徴が共通する松の湯温泉の記憶が蘇ってきた。
ここも1回につき30分以上つかりっぱなしだったなあ。最高でした。
質・量とも自分は大満足した。イカを使った前菜とか、比内地鶏と言ってたと思うが鶏肉料理が濃厚な味でうまい。ふだん口にする機会のない山菜もあるし、しゃぶしゃぶして食べるそばは風味があって良かった。
釜飯を完食したらもうお腹パンパン。昼ごはんを抜いておいてよかったぜ。
納豆は苦手なんて残しちゃったけど、山芋と赤魚でご飯をおかわりするくらいだったし、十分でしょう。
ぬぐだまりの里はいずれも甲乙つけがたいほどの良泉ぞろい、しかも独占することすら多かった、ゆとりある湯船の人口密度。内湯浴室の風情。露天からの絶景。いやはやおそろしい。おそろしすぎる。同行したメンバーは“わが人生を通じて一番”の称号を与えていた。それが決して誇張ではない驚愕のクオリティだった。
良質な温泉を提供し、かつ強力な知名度や集客を誇る、いわば誰もが認める温泉番長は他にいくつもあるが、純粋に温泉体験の勝負ならば当湯は十分にアタマを狙える器。いわば影の番長だ。
ネットが使えなかったこともあり、ずっとお風呂に入り浸っていたせいか、手足の指の先のシワシワがえらいことになっていた。でもそれこそが当湯のパワーを示すものでもあるし、喜んで長湯した我らの満足感の証でもあるのだ。
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しかも自分の好みに合うぬる湯ときたもんだ。これはもう、行くっきゃねえ! …もしも機会があればね…もしも機会があれば…もしも機会が…もしも…if…if…。ifはあってもthenがない。そんな思いを抱えて幾星霜(大げさ)。
そうしてついにthenの時は来た。老後の備えだとか、最近散財しすぎじゃないの、なんて考えをかなぐり捨てて、「やるなら今しかねぇ」の黒板五郎精神で青森遠征を決行したのである。行ってみた感想は…すんごい良かった。行って良かった。やるなら今しかなかった。
訪れたのがちょうどサッカーワールドカップのあたりの時期だったから、ベタになるけど、言ってしまおう…ぬぐだまり半端ないって!
(2019.6追記)2019/5/23付で設備不調による臨時休業のお知らせ。わりと頻繁に休止するから行ける時に行っといた方がいいですよ。
八甲田温泉「ぬぐだまりの里」へのアクセス
ぬぐだまりの里は八甲田山の北東麓、田代地区にある。東北新幹線の新青森駅や在来線の青森駅から車で1時間くらいだろうか。国道103号を酸ヶ湯温泉や十和田湖方面に進み、八甲田ロープウェー乗り場に着く手前で県道40号に入る。途中には銅像茶屋というドライブインがあって、その裏手の丘の上に八甲田山から連想される例の事件の雪中行軍遭難記念像があった。
像は等身大よりも大きく、人の身長よりはるかに高い位置に設置されている。像の目の高さからなら下界を一望できるかもしれないが、訪問客の目線だと木が邪魔で何も展望できない。
銅像茶屋まで来ればぬぐだまりの里は近い。なお、田代地区は全般に携帯が圏外になりがちだった。スマホアプリのカーナビだと機能しないかもしれない。我ら一行はカーナビ完備のレンタカーだったから大丈夫。
また鉄道利用の場合は、JRバス「みずうみ号」で萱野茶屋または八甲田ロープウェーのバス停まで来れば、宿まで送迎してもらえるようだ。
都会の喧騒を離れて秘湯感を味わうには最適の部屋
鄙び感を醸し出す館内
当宿の外観の第一印象は、こう言っちゃなんだが、ボロい。壁板の古くなった感じとか、鉄板部分の赤サビとか。でもこの点を気にするのは的外れだし、こんな情報だけで敬遠したら一生を棒に振るぜよ。実際の建物は相当しっかりしているからご安心を。当日はかなりの強風が吹き荒れたけど、揺れたりガタガタいうこともなく、びくともしなかった。もちろん内装のお手入れ感や清潔感にも問題はない。
さっそくチェックインして部屋まで案内してもらう。宿泊棟へ続く廊下には古民具が並べてあった。
それと囲炉裏風の小上がりの間。ここはなんだろう、湯上がりの休憩所として使えるのか、見学専用の展示なのか、よくわからない。
宿泊者向けの部屋は2階に固まっているようだ。ひとつ注意点があって、階段の踊り場の直前にあたるステップだけ他より少し段差が高くなっており、無意識に任せて上るとだいたい蹴つまづく。自分も何度かやってしまい、意識してももを高く上げるようにしてステップを越える羽目になった。
ネット断ち覚悟の、めっちゃ広い部屋
我々が入った部屋は、なんとなんと、6畳+8畳+広縁。人数に対してあり余る広さ。他の部屋も同じレイアウトだと思われるから、もし一人で泊まったとしてもこの広さなんじゃないかな。トイレはないが洗面台あり。共同のトイレはきれいで新しめで問題なし。部屋にはあと金庫と小さめのテレビもある。布団は最初から敷いてあった。二間あるから座卓をどかすまでもない。
当宿にWiFiはなかったし、携帯も圏外のまま。キャリアによってはつながるかもしれないが、3G回線だったり、アンテナ1本しか立たなくてプチプチ切れたり、苦労しそうな予感がする。ぬぐだまりの里へはネット断ちするつもりで行くべし。
窓の外には龍神の館と名付けられた大浴場棟が見える。あそこに夢の源泉かけ流しが待っているわけか。どうせネットもつながらないし、風呂に入るくらいしかやることないのだ。たっぷり入らせてもらうとしようか。
すべてがスゴすぎ! 自分史上稀に見るマーベラスな風呂
ぬぐだまりの里にある多彩なお風呂
ぬぐだまりの里には、いずれも男女それぞれに、部屋から見えた龍神の館に3源泉・4浴槽、別途らむねの館に1源泉・1浴槽が設けられている。もちろんすべて源泉かけ流し。龍神の館:
- 龍神の湯(内湯・露天)…ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉(低張性、中性、高温泉)
- みるくの湯(内湯)…酸性-含二酸化炭素・硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩塩化物泉(硫化水素型、低張性、酸性、温泉)
- 八甲田元湯(露天)…酸性-含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩塩化物泉(硫化水素型、低張性、酸性、温泉)
- らむねの湯(内湯)…酸性-含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩塩化物泉(硫化水素型、低張性、酸性、温泉)
感嘆するしかない、最強すぎる“みるくの湯”
まず竜神の館へ行ってみた。ここは浴室の貫禄がものすごい。スケール感あふれる広さと高天井の木造小屋は、ところどころに岩が配され、その上に柱となる巨木が立っていた。迫力あるね。手前にある8名分だったかの洗い場とちょっとした通路を除く、内湯浴室の大半…印象だけで適当に言うと床面積の8割近く…を湯船が占めている。
小さい方のみるくの湯でも20名入れそうなサイズ。名前の通りに乳白色のお湯が注がれ、白い湯の花が舞い、タマゴ臭が鼻を抜けていく。うれしいことに自分好みのぬる湯だ。35℃くらいとみた。やろうと思えば1時間でも入っていられる。
しかも泉質に含二酸化炭素とあった通り、相当な泡付きを示す。入った瞬間から体中に細かい泡の粒が着くのだ。泡を払ってもしばらくするとまた一杯に付着している。湯口に近いほど泡付きが良いような気がする。それをわかっているのか、湯口から動かず、目を閉じてじっとしたままのおじいさんもいた。
白濁硫黄+ぬる湯+泡。こりゃあ最強の組み合わせ。かなり気に入った。どこの温泉旅館へ持っていってもエースを張れるであろう驚愕のハイクオリティ。みるくの湯しか入らなかったとしても十分幸せになれる。すばらしすぎる。
内湯版・龍神の湯は超ビッグサイズ
浴室の半分以上を占めるのが内湯版・龍神の湯だ。50名、いやもっとか、もはや見積もれなくなるほどのサイズ。千人風呂で知られる酸ヶ湯温泉の湯船に勝るとも劣らない規模だ。龍神の湯は見る限り、無人のまま入るべき人間をひたすら待ち続けており、なんとももったいない状況だった。自分が入るとたいてい「広ーい湯船にぽつんと一人」の図になり、他ではなかなか味わえない、ぜいたくな光景を体験することになった。
お湯は薄い緑色を呈し、茶色い湯の花が舞っている。お湯をすくって鼻を近づけると、土気臭というのかよくわからんが、この泉質にありがちな匂いを感知した。
温度は42℃ありそうな熱め。他の湯船でちょっとゾクッと感じたときや、露天で風に当たって寒くなった時に入るといいだろう。そうでなくても、他と組み合わせてローテーションさせれば、冷温交互浴となって結構気持ちいい。
絶景のポテンシャルを秘めた露天版・龍神の湯
続いて露天エリアへ。目隠しの塀のはるか向こうに八甲田山がそびえ立つ。残念ながらこの日は中腹から上が雲にすっぽり覆われて見えなかったが、天候次第ですばらしい絶景露天風呂になるはずだ。そして山からの風が強くて冷たい、六甲ならぬ八甲田おろし。温泉自体も絶景だ。緑色の湯と青白い湯が隣り合って並んでいるのだ。左手が露天版・龍神の湯。15名規模の浴槽に満たされているお湯は、遠くから見ると緑色、近くで見ると透明度が結構高い。ただし翌朝入ったときにはずいぶん濁りが増していた。
色のほか匂い・湯の花といった特徴はおおむね内湯版の龍神の湯と一緒。八甲田おろしが直接当たる分だけ冷めやすいせいか、熱さは内湯よりも若干緩く、適温と言っていいくらいになっていた。
アクアブルーの八甲田元湯でリラックス
お隣の八甲田元湯へいこう。こちらは露天版龍神の湯の倍くらいのサイズで30名規模。中央に湯内ベンチとでも言うべき腰掛け場所があるため、浴槽の縁に取り付かなくても居場所を確保できる。その意味でも収容人数の器が大きい。お湯の特徴はみるくの湯に近い。ぬるくて、タマゴ臭がして、白濁していて、白い湯の花が舞っている。温度はみるくよりもほんの少し高い気がするけど、時間によって逆転することもあった。色は乳白色にやや強めの青が加わっている。
泡付きはそれほど多くはなかった。そしてやっぱり1時間でも入っていられそうな、心地よいぬるさ。景色を見ながらぼーっとつかっていると、あっという間に時間がたってしまう。
さらに翌朝入った際には、濁りがすっかり失せて水色に透き通った南国の海のように見えたので驚いた。鮮やかな「アクアブルー」と呼ぶべき色だ。見た目とぬる湯ですっかりリラックス。なぜか30年前のCMソング、尾崎紀世彦の「サマー・ラブ」が脳内を流れるのであった。Oh~サマ~ラ~ブ♪ ほにゃら~らら~ららら~♪ あとは知らん。
ラムネのような温泉?!
龍神の館でもうすっかり感服つかまつったのだが、らむねの館もすごいぞ。立ち寄り入浴だと龍神の館の単発利用が600円なのに対し、らむねの館の単発利用は800円だ(両方セットなら1000円)。よほど自信があるとみえる。別棟になる「らむねの館」には「らむねの湯」の男湯女湯のほかに施錠された貸切風呂があった。だが、らむねの湯へ3回行って3回とも誰もいなくて独占し放題だったので、貸切風呂みたいなもんだった。
名前から想像される通り、ここは炭酸がウリだ。分析書の泉質名に含二酸化炭素の文字は見られないものの、溶存ガス成分量は限りなく1000ミリグラムに近い数値で、炭酸泉と言っても差し支えないレベル。
大量の泡に囲まれる幸せ
浴室に洗い場はなく、4~5名規模の長方形の浴槽があるのみ。そこに十分すぎるほどのお湯がかけ流されていて、オーバーフローする量がやたら多い。そのせいで排出口がゴボボボボとつねに大きな音を立てていた。無色透明のお湯につかってみると、うれしいぬるめ。みるくや八甲田元湯よりはほんのわずか高い温度と思われる。お湯をすくって鼻を近づけると、かなりはっきりしたタマゴ臭。いやいやすばらしい。
肝心の泡付きは、さすがに一番すごかった。あっという間に体中が細かい気泡に包まれる。払っても払ってもすぐにびっしりと泡が付着する。天然でこの泡は普通じゃない。ぬる湯・オーバーフロー・タマゴ臭・泡という特徴が共通する松の湯温泉の記憶が蘇ってきた。
ここも1回につき30分以上つかりっぱなしだったなあ。最高でした。
質量とも十分、ぬぐだまりの里の食事
夕食で初めての“そばしゃぶ”
ぬぐだまりの里の食事は朝夕とも1階の大広間で。座敷にお膳であぐらのパターン。夕食はこんな感じ。温めてある釜飯が脇に配膳済み、後から手打ちそばとデザートが出てくる。質・量とも自分は大満足した。イカを使った前菜とか、比内地鶏と言ってたと思うが鶏肉料理が濃厚な味でうまい。ふだん口にする機会のない山菜もあるし、しゃぶしゃぶして食べるそばは風味があって良かった。
釜飯を完食したらもうお腹パンパン。昼ごはんを抜いておいてよかったぜ。
朝食に登場した大きな貝
朝はこんな感じ。味噌汁の中にドーンと大きな貝が入ってた。ホタテかな。鍋の中身は豆乳から作る豆腐鍋。左にある餡につけて食べてくださいとのこと。納豆は苦手なんて残しちゃったけど、山芋と赤魚でご飯をおかわりするくらいだったし、十分でしょう。
指先のシワシワは大満足の証
朝食後も温泉にたっぷり入ってチェックアウト。料金は1万そこそこだった。食事の際にお酒を頼まなければ1万円札でお釣りが来ただろう。このコスパにもびっくり。ええー本当にいいんですかー?ぬぐだまりの里はいずれも甲乙つけがたいほどの良泉ぞろい、しかも独占することすら多かった、ゆとりある湯船の人口密度。内湯浴室の風情。露天からの絶景。いやはやおそろしい。おそろしすぎる。同行したメンバーは“わが人生を通じて一番”の称号を与えていた。それが決して誇張ではない驚愕のクオリティだった。
良質な温泉を提供し、かつ強力な知名度や集客を誇る、いわば誰もが認める温泉番長は他にいくつもあるが、純粋に温泉体験の勝負ならば当湯は十分にアタマを狙える器。いわば影の番長だ。
ネットが使えなかったこともあり、ずっとお風呂に入り浸っていたせいか、手足の指の先のシワシワがえらいことになっていた。でもそれこそが当湯のパワーを示すものでもあるし、喜んで長湯した我らの満足感の証でもあるのだ。
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