峡谷とコンクリートが魅せる一大スペクタクル - 川俣ダム

川俣ダム
鬼怒川を上流へ遡っていくと、いくつかの大きなダムに出くわす。その中の一つが川俣ダムだ。昭和41年に完成した、鬼怒川で最も上流にあるダム。なんの予備知識もなく、移動の途中にさくっと見てすぐに立ち去るつもりで寄ってみた。

…おいおい冗談じゃないぜ。現代文明が作り上げた絶景とでも言うべき、とんでもない穴場スポットじゃないっすか。ダムカード集めに命をかけるダムマニアでなくても絶対に行くべきだ。

スケールの大きな自然とスケールの大きな建造物ががっぷり四つに組んだド迫力の景色が待っている。

川俣ダムへの道

川俣大橋とツバメの群れ

川俣ダムを訪れたのは梅雨入り前の「ザ・秘湯の旅」グループ旅行の途中。奥鬼怒温泉郷・八丁の湯を出発して次の宿泊地へ向かう途中、温泉巡りだけじゃなくて観光もしてみたいね、ということで候補にあがった。

その川俣ダムが鬼怒川をせき止めることによってできた巨大なダム湖=川俣湖を渡る川俣大橋という吊り橋を通りかかったので、まずはここで記念撮影。
川俣大橋
橋のまわりをやたらたくさんのツバメが乱舞していた。この後の川俣ダムで「イワツバメが生息し~」という説明を見たからイワツバメかもしれない。当初はこの川俣大橋から眺める川俣湖が景観のハイライトなんだろうと思っていたのだが…。
川俣湖

トンネルの上の歩道を行く

川俣大橋から車で5分ほど下流方向へ行くと川俣ダムの看板が現れる。案内に従って左に折れると間もなく駐車場。ここに車を置いてあとは歩きだ。駐車場の隅にはパックリと口を開いたトンネル入口がある。
関係車両専用トンネル
そこはダム関係車両の専用道だから進入禁止。一般客はトンネルの屋根の上に作られた歩道を行くべし。坂道を下ること10分弱でダムが見えてくる。
川俣湖と川俣ダム

Pip-Boyを身に着けたくなる雰囲気

本格的なダムの話に入る前に余談を(ゲームに興味のない方には申し訳ない)。世界的にヒットした海外ゲーム作品に「フォールアウト4」というタイトルがある。べつにフォールアウト3でもニューベガスでもかまわないのだが、よい子は決して遊んじゃいけない、ビターな大人のためのオープンワールドRPGだ。

それが川俣ダムとどう関係するかというと、ダムを見学しているうちに、目に映る光景から、なぜだかフォールアウトを連想してしまったのだ。レトロフューチャーSFの世界観があてはまるように思えたし、エンジニアリングの粋を集めた工業施設と自然環境の取り合わせからは、同ゲームにありがちなシーンが浮かぶ。

たとえば、岩壁に張り付くように設置された鉄骨の階段や、山の中に突如現れるアンテナ・鉄塔・電線、あるいは研究施設の壊れた壁の向こうが洞窟になっているとか、そういうやつ。もしフォールアウトをプレイしたことがあるなら、思い出しながら以下を読んでみていただきたい。
川俣ダム管理事務所の屋上

瀬戸合峡と川俣ダムによる絶景の競演

圧倒的なスケール感の川俣ダム

さて、道なりに進むと最初に川俣ダム資料室へ入る。ここにはダムに関する種々の説明や当地区に伝わる文化風習を紹介する展示が並ぶ。広くはないが情報量は多い。
川俣ダム資料室
資料室を出るといよいよダムの本体に取り付く。目前に展開する光景は迫力満点の一言。ダム湖になっている上流側よりも、恐怖感を煽る激しい落差に目がくらむ下流側の方が見どころだ。
川俣ダム
なんとか底が写るようにスマホを手すりの向こうに差し出して撮影。手が震えて落っことしてしまいそうな気がしてビビる。高所恐怖症じゃなくてもこの高さはやばい。ダム壁に取り付けられたキャットウォークなんか、たとえ仕事でも絶対に歩きたくないぞ。断る。超断る。
川俣ダムの底
川俣ダムは改修工事が行われているみたいで、ダムに合わせてとてつもない高さに組まれた足場の上でクレーンが稼働していた。もうスケールがインフレしまくってて感覚が麻痺してくるな。

渡らっしゃい吊り橋へ続く遊歩道

クレーンの向こうに吊り橋が見える。名前は渡らっしゃい吊り橋。川俣ダムは瀬戸合峡(せとあいきょう)という峡谷に造られており、その上にかかる吊り橋だ。
渡らっしゃい吊り橋
この時点で「川俣ダムをなめていた」と反省しきり、観光スポットとしてのレベルの高さを見直していた我々は、しっかり時間をかけてよかろうと、吊り橋まで行ってみることにした。関係車専用トンネルの出口の脇から吊り橋への遊歩道が始まっている。
瀬戸合峡遊歩道入口
鉄骨とコンクリートの世界からいきなり自然の中へ。下って下って上って上る遊歩道はなかなかきついアップダウンで息が切れる。あー疲れた。

10分近く歩いて橋の手前まで来ると「天使の鐘」なるスポットがあった。ダム展望台の変種かな。鐘は実際に鳴らすことができる。
瀬戸合峡 天使の鐘
そしてこれが渡らっしゃい吊り橋。わりとしっかりした作りで揺れは少なく、それほど怖くはない。下をのぞき込みさえしなければ。
渡らっしゃい吊り橋

景観を楽しむことに特化した橋

吊り橋から川俣ダムを眺める。迫力あるわー。
川俣ダム
反対側は瀬戸合峡の深い谷。写真だと伝わらないが、橋から谷底までは相当な高低差だ。撮影のたびにスマホを落っことしそうな恐怖感がわいてくる。よく見ると下流の方にも吊り橋らしきものが写っているな。なんでしょうね。
瀬戸合峡
渡らっしゃい吊り橋の向こう側は何もない。さらに遊歩道が続くとか、別のスポットにつながっているとかではない。単なる行き止まり。
渡らっしゃい吊り橋 行き止まり
十分な達成感とともに来た道を引き返し、川俣ダムの見学はこれにて終了。まあちょっと寄ってみるか的な軽い気持ちで訪れたら、とんだ穴場だった。いやあ満足した。最後にダムの勇姿を貼っておきますね。
川俣ダム

川治ダムへも行ってみた

川俣ダムの下流に、ぱっと見だと名前を混同しそうな川治ダムがある。川俣で気をよくした我々は川治へも寄ってみた。川治ダム資料館という見学施設兼ドライブインのような建物があった。
川治ダム資料館
その2階から大きなガラス窓越しにダム湖側を展望できる。当ダムは川俣よりも大規模で、ダム上に一般の車道が通っている。
川治ダム資料館から見るダム湖
資料館を出て道を渡ったところがトイレ休憩所+展望所になっていた。こちらからダム擁壁側を見ることができる。
川治ダム
川俣ダムと比べて周辺が秘境ぽくないせいか、すっかり感覚が麻痺してしまったのか、川俣以上の規模を誇るはずだが感動は薄まってしまっていた。決してダムのせいではないのだが。


川俣ダムと川治ダム。ダムマニアでなくても楽しめると思うのでぜひ。今回は新緑であったが秋の紅葉シーズンは目を見張るほどの絶景になるんだろう。混雑を避ける術があるんなら行ってみたいものだ。


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