難所を抜けた先に待つ湯治効果抜群のお湯 - 滑川温泉 福島屋

滑川温泉 福島屋
福島から山形へ向かう山形新幹線に乗って車窓を眺めていると、途中の県境付近が本当に何もない山の中で、秘境感がじわじわ来る。通るたび同じ感覚におそわれる。このあたりに温泉があれば間違いなく秘湯と呼ばれるだろう。

そして現に秘湯の資格十分な一軒宿がこのエリアにいくつか存在する。今回立ち寄りで訪れたのはそのうちの一つ、滑川温泉・福島屋だ。名前は福島屋だけど所在地は山形県米沢市。

主役と思われる露天岩風呂に時間が合わなくて入れなかったのは残念無念だが、それはまた今度。と気軽に言えないくらい、ものすごい場所にある秘湯なのだった。

滑川温泉・福島屋へのアクセス

JR板谷駅から先が大変

今回は車利用のグループ旅行。東京方面からだと東北道の福島飯坂ICから国道13号に入る。そうせずに福島と山形を連絡する東北中央道を使うと便利そうに見えるけど、結局はかなり手前の福島大笹生ICで下りる羽目になるから、そんなに便利じゃない。

滑川温泉を語るにはそこまでの道について多く語らなければならない。13号を外れてJR奥羽本線の板谷駅へ至るまではまあいい。まあ普通。ところが板谷駅からお隣の峠駅までの道が急に細くなるのだ。

たまに待避所がある他は、対向車が来たらゲゲッと拒否反応が出そうなくらいの狭い道で、見通しも悪い。崖にへばりついた頼りなさ気な道だしね。付近には民家もなく、この時点で「えらいとこに来ちゃったなあ」感が半端ない。

やばすぎる道路が延々続く

だがこれは序の口。ジョジョ第2部でいうとサンタナか、せいぜいエシディシにすぎない(古いな)。本道が峠駅へのアプローチ道路と分かれてから先が、さらに・さらに・さらに過酷の度を増すのである。いわばワムウの登場だ。

崖の道はいよいよ狭くなり、谷側に肝心のガードレールは存在しなくなる。1.5車線ていうか1車線ていうかサイクリングロードの幅でしょこれ。対向車が来たら泣くしかないよ。谷側は転落の危険があるし、山側は側溝にはまって脱輪する危険がある。たまに出現する待避所だけが心の支えだ。

しかもところどころ谷側の路肩が崩落しております。急カーブ続きなのにカーブミラーもないし、10メートルおきに死亡フラグスイッチが埋まっているかと思える道路だった。こんな道が数百メートルならまだしも数キロ続くからね。自分の運転技術じゃ絶対に無理(ドライバーに感謝)。

滑川温泉のさらに奥にも温泉が…

滑川温泉は半分泣きそうになりながらようやくたどり着ける場所なのだ。実際の我々は滑川温泉のさらに奥地にある姥湯温泉というところまで行き、そこに泊まって、翌朝チェックアウトした後の帰り道で滑川温泉に立ち寄った。

ちなみに滑川温泉から姥湯温泉までの道はもっと過酷になる。ワムウを倒してもまだカーズが控えてるってわけ。ああおそろしい。


秘境の自然に囲まれたお風呂を体験

風格ある湯治宿

滑川温泉の駐車場に車を止めると、目の前に「滑川発電所」の看板のかかった小屋があった。ふむふむ、当旅館は電気をすべて水力による自家発電でまかなっているのか。
滑川発電所
そう聞くと素朴で小さな山小屋っぽいイメージを抱くかもしれないが、実際は結構規模のある旅館だ。下の写真はいくつもつながった棟のうちの一つを駐車場から見上げたところ。
滑川温泉 旅館棟
コの字型に奥まったところにある玄関から入る。入ってすぐのところに貴重品ロッカーがあった。フロントで500円を支払って正式に入館。

風格ある木造の館内を奥へ奥へと進む。自炊設備のある部屋とか張り紙の類を見ると湯治宿の性格が濃い様子だ。実際は秘湯体験がお目当ての観光客もそれなりの割合を占めるのだとは思うが。

川の見える露天檜風呂は熱め

さて、露天エリアに出た。岩風呂・檜風呂とあるうちの、まずは檜風呂へ。脱衣所の分析書にあった泉質をメモるのを忘れた。たしか「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉」だった。成分豊富ね。

檜風呂は細長いつくりで、4~5名で一杯になるくらい。そこに乳白色の源泉がかけ流されていた。たしか完璧な濁りではなく若干透明度があったような…メモ忘れが痛い。はっきりわかるくらいの湯の花も見られた。硫黄の匂いもちゃんとする。洗い場はない。

岩風呂との間を仕切るような塀はあるが、あとは開放的だ。その開かれた側の下の方に川が流れている。リバービューの露天風呂なのだ。豊かな緑にも囲まれているし、景観にすぐれている。下の写真は駐車場で撮ったもの。露天風呂の景色と同等ではないが、参考までに。
滑川温泉前の川
お湯良し・景色良しで文句なしのはずなのだが、惜しいのは熱めだったこと。メンバー全員ぬるめが好きで熱いのが苦手。ちょっと入っては浴槽の脇で休憩、の繰り返しとなった。

すべりに注意

ここでひとつ注意。浴槽の川側はとくに柵も手すりもない。浴槽の縁に腰掛けたり寝そべったりしようとしてうっかりバランスを崩すと河原まで転げ落ちることになる。お湯も滑りやすい性質のやつだ。滑川だけに、ご用心。そのへんは自己責任でお願いしやす。

続いて本命と目される岩風呂へ。と、ここで大誤算。我々が訪れた朝イチの時間帯は岩風呂が女性専用だった。細かいところは曜日ごとに違うが、おおむね午前と夕方がそうなる。おう、なんてこったい。痛恨の極みでもあきらめるしかないね。

湯治客の集まる内湯

気を取り直して本館地階にある内湯へ行ってみた。脱衣所が男女別の部屋に分かれていて浴室内で合流する混浴風呂だ。まあ普通は混じりませんけどね(女性専用内湯が別にあるし)。

湯治場の雰囲気漂う浴室内に洗い場は、どうだったっけ、数名分だったか。長方形の石造り浴槽は6,7名くらいのサイズ。それに大きな窓。余計なものを省いたシンプルな湯小屋だ。お湯の特徴は檜風呂と同様。濁りは弱かったかな。

温度は熱め。やはり長くつかっていることはできない。温泉としての効き目はそれでも十分なのだろう。観光目的なら露天風呂に人気が集まるんだろうけど、湯治目的の客にはここの内湯が一番人気なのだそうだ。たしかにそういう雰囲気はあり、当時も檜風呂より内湯のほうが客は多かった('a few poeple'同士の比較だが)。


滑川大滝は実質行けません

以上で入浴は終了。露天も内湯もさっと入ってさっと出てきてしまって、お湯につかったトータル時間は正直かなり短い。にもかかわらず相当に効いたのだろう、この日はずっとのぼせたような、気だるいような、全身脱力したような状態だった。こいつはホンモノだぜ。

最後に、付近の観光スポット・滑川大滝について。本来ならば滑川温泉の奥の方にかかる吊り橋で川を越えていくと20~30分もあれば展望台に着くそうだ。ここまで来たついでに観光してみたかった。

しかしながら肝心の吊り橋が老朽化により現在は通行禁止となっている。たしかにヤバそうですね。
滑川大滝への吊り橋(閉鎖中)
理屈の上では吊り橋に頼らず、川を直接渡渉していけばいい話なのだが、我らのスキルと装備では明らかにリスキーだったので、やめておいた。滑川だけに。

そうして過酷な道に泣きを入れつつ必死の運転で国道まで戻っていった。