秋の山寺・立石寺 - 紅葉と絶景は一見の価値あり

山形市にある有名な山寺(立石寺)へ2016年秋の一人旅で訪れた。昔からちょっと行ってみたいなと思っていたので、長年の念願が叶った形だ。はっきり言おう。お寺というか、山です。名前に偽りなし。

本格登山とまではいかなくても、それなりの運動量をこなす服装と覚悟で臨んでいただきたい。頑張って上まで行けば…このときは秋だったからなおさら…お寺と自然の調和した見事な景色が迎えてくれる。

【本記事は2017年1月に公開した内容を再構成したものです】

山寺へのアクセス

超重要。コインロッカー

山寺・立石寺は西暦860年の建立だそうだから、かなり古い。そして松尾芭蕉が有名な「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」の句を残した地でもある。

最寄り駅はJR仙山線・山寺。山形もしくは仙台からアプローチすることになるが、2対8くらいで山形寄りに位置する。山形から仙山線の快速に乗ったら15分で着いてしまった。思った以上に近い。

重要なのが駅のコインロッカー。不要不急の荷物はそこに預けるべし。ぼけーっと歩いたままロッカーの存在に気づかず通り過ぎたため、旅の全荷物を背負って山登りするはめになった約一名の悲劇を繰り返さないように注意したい。

実話ベースの山岳映画に「運命を分けたザイル」というなかなかの良作があるけど、この場合は、いうなれば運命を分けたコインロッカーだ。

登山道入口までの門前町

駅を出ると土産店や食事処の立ち並ぶ門前町が続く。正式な入口へ行くには橋を渡った突きあたりを右へ曲がる。左へ曲がると出口へ着いてしまう。まあそこから逆走できなくはないが…。

右へ曲がった場合、いくつか上り階段が現れるけど、駅から徒歩10分ほどで現れる根本中堂への石段が正式な入口のようだ。では参ろう。


がんばれ山登り

根本中堂のヌシ発見?

まだまだ大したことはない前座の石段を上ると根本中堂がある。お堂の左側奥にいくつかの碑があって、そこまで入り込んでいく観光客はほとんどいない。

誰もが山登りへと先を急ぐからだが、あえて奥まで進んでお堂の裏やぶが見える位置まで来ると、4~5匹の猿がのっしのっしと余裕しゃくしゃくに歩くのが見えた。いかにも観光客が喜びそうな光景であった。スルーしたみなさん、ああもったいない。

芭蕉の句碑がこのあたりにある。また根本中堂の隣には宝物殿があった。ここは帰りに立ち寄ることになる。このときは意外に味のある展示をやっていた。

山登りに挑む、人・人・人

根本中堂から人の流れに乗って徒歩数分で山門に着く。この先は本格的な山登りの参道だから、必要ならこのあたりで休憩・軽食・トイレなどをすませておこう。料金所で300円を納めたら、いよいよ山登り開始。

道は石段が整備されているところと土の地面がむき出しのところがあった。一部は岩のせり出しなどで幅が狭くなっており、上りと下りで片側交互通行的になってしまう区間もある。当たり前だが平地のようにさっさと歩ける道ではない。

平日にもかかわらず人は多かった。お年寄りが結構いる。海外からの旅行者も結構いる。犬を連れて上っている人もいた。決して楽な道ではないものの、お年寄りなんかは休み休みゆっくり進んでおり、途中リタイアしてる風の人がいる様子はなかった。

弥陀洞に浮かぶ仏

全体の7割くらいを登ったところに弥陀洞がある。山肌の岩が変わった形状に窪んでいて、そのパターンが仏様のようにも見える(らしい)。そう言われればそんな気も…。下半分は何やら宗教的な感じのものが彫ってある。

岩の上の木の生え方もアクロバティックだし、ここはなかなかに興味深いから、ぜひ立ち寄りたい。

弥陀洞の少し先に立派な仁王門がある。ずっと前方や足元ばかりを見ながら登ってきて、ここで後ろを振り返ると、気分がスカッとするだろう。仁王門を過ぎると奥の院エリアだ。


奥の院エリアの見どころ

メインは奥の院

仁王門から先は、下界の眺めや不可思議な奇岩や、季節が合えば真っ赤な紅葉などの見どころが一気に目に飛び込んでくる。そこまでは頑張って登りましょう。意識して先を急げば30分、いろいろ見ながら休みを入れながらでも1時間あれば、終点の奥の院に着くだろう。

あちこちに、ところによってはギリギリの崖っぷちや岩の上で不安定そうにして、たくさんのお堂が立っていた。メインはやっぱり一番奥にある奥の院・如法堂。せっかく苦労して登ってきたから、しっかりお参りしておいた。

紅葉の季節で正解

ぐるっと周回する道がついている奥の院エリアは反時計回りに人の流れができていた。流れに乗って進んでいくと、ところどころ頭上の枝から見事な紅葉がぶら下がっているのが目に入る。

足早に先を急ぐ人の流れにちょっと逆らって、紅葉を見上げつつゆっくり歩いていると、写真が趣味と思われる、同じくゆっくり歩くおじさんから「見事な紅葉ですよね」と声をかけられた。 いやまったくですな。

向かいの山にもいくつかのお堂が点在しているのが見えたが、そこまで行くルートの入口には一般立入禁止の札がかかっていて、修験者限定の道となっている。ここが観光地であると同時に修行の霊山であることを思い知らされるのであった。

五大堂からの絶景

人の流れの目指す先は、トンネル状の岩の階段を抜けたところに立つ絶景ポイント・五大堂である。歴史的建造物としての価値はもちろんのこと(でも自分は疎いのでよくわかっていない)、ここからのパノラマビューがすばらしい。

山の上の舞台から下界を一望する感じ。あちこちに驚きと歓声と、そして笑顔があった。ドーパミン全開スポットである。調子に乗ってヤッホーヤッホーいう声もあったような。こりゃあ悟りを開いちゃうぜ。


穴場の宝物殿

周回路から仁王門へ戻り、登ってきた道を反対に下って根本中堂まで帰ってきた。予定の列車まで、まだかなりの余裕があったので、当初予定してなかった宝物殿を見学した(200円)。

客は自分ひとり。誰か来そうな気配すらない。この日は地獄絵図展をやっていて、人が野たれ死んで朽ちて骨になる過程を描いた絵巻が妙に生々しくて迫力があった。現代のネットでいう「閲覧注意」レベル。ある意味おすすめしたい。常設でやっているといいんだけど。

見学後、駅へ戻るため出口の近くまでやって来ると、そばを歩く人達の会話が聞こえてきた。「昔はここに長いすべり台があってね」…はい? なんですと?

まさか山の上からすべり台で下りてこようってんじゃないだろうな。修験者にとってもかなりの荒行だぞー。


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