人と自然が作り出す味わい - ニッカウヰスキー 宮城峡蒸溜所

宮城県の作並といえば温泉で有名なところだ。当地はもう一つ、ニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所がある場所としても知られる。朝ドラ「マッサン」に影響されたからというわけではないが、2016年秋の一人旅の際にこの蒸溜所に立ち寄ってみた。

一応断り書きしておこう…本記事は飲酒をすすめるものではありません。20歳未満の飲酒、及び酒気帯び、酒酔い運転は法律で禁じられています。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与える恐れがあります。飲酒は適量を心がけましょう。

【本記事は2017年1月に公開した内容を再構成したものです】

宮城峡蒸溜所へのアクセス

蒸留所ガイド付き見学を予約する

マッサンやニッカのストーリーを語るとき、どうしても北海道の余市蒸溜所ばかりがクローズアップされるけれども、現代においては後年立ち上げられた宮城峡蒸溜所の存在を無視することはできない。生産規模はむしろこちらの方が大きい。

というわけで当蒸溜所に興味を持ったので、山形~仙台ラインを観光するにあたり、訪れてみることにした。

所内の各施設を案内してもらう、いわゆる工場見学ツアー(無料)に参加するなら、ニッカの宮城峡見学ガイドのページを参考にして3日前までに予約を入れておくのが無難だ。アポなしの場合、当日の参加人員に余裕があれば混ぜてくれるかも、ってくらいで、ちょっと心許ない。

なお、ガイド付き見学を利用しない場合にも、ゲストホール売店でお土産を買ったり、試飲カウンター(有料)でいくつかの銘柄を味わうことはできる。

シャトルバスが頼り

鉄道の最寄り駅はJR仙山線・作並になる。駅から歩いて行こうとすると、25分かかるそうだから、なかなか大変だ。土・日・祝日であれば無料シャトルバスを運行しているのでありがたく利用させてもらおう。

平日だったらどうするんだろう。作並駅前はあまり開けてなくて、タクシーが待機していることは期待できない。仙台駅から1時間に1本出ている作並深沢山行きの市営バスに乗ってニッカ橋で下車するくらいしかないのかな。

自分は作並温泉・かたくりの宿に泊まった翌朝に宿のマイクロバスで現地まで送ってもらったからノープロブレム。


ウイスキーの製造工程をめぐる

にぎわうビジターセンター

予約を入れた時刻より1時間以上も早く到着してしまった。どうしよう。ビジターセンターの受付で相談してみると、間もなく出発するグループは定員までまだ余裕があるとのことで、そちらへ混ぜてもらえることになった。

ビジターセンターは結構な人だかりだ。ジャパニーズ・ウイスキーに注目が集まる昨今、当地にも見学者がたくさん押しかけてきているように見える。マッサンの本放映時はきっとものすごい人出だったんだろうな。

やがて次のグループの出発がアナウンスされた。集まった20名くらいの老若男女がガイドの女性に付き添われてぞろぞろと進んでいく。

尖塔風のキルン棟

蒸溜所内はとても広い。一目では把握しきれないくらいたくさんの、さまざまなデザインの赤レンガの建物があるけど、ごみごみした感じはまったくない。緑は多いし、洒落た大学のキャンパスのような雰囲気。

歩きだしてすぐ目につくのは尖塔風に突き出た屋根が特徴的なキルン棟。麦芽を乾燥させる場所で現在は使われていない。ここはチラ見してスルー。

ハイテクな仕込棟

醗酵を行う仕込棟に入ると、麦汁の独特の香りが鼻の奥を刺激してきた。ウイスキーそのものとは違うけどウイスキーにつながりそうな麦の匂いだ。それにしても荒々しく濃く甘い。苦手な人は胸焼けしそう。

杜氏が樽をかき混ぜる…という光景はもちろんなく、工程はすべて機械化されている。何をいつ、どれくらいの量・時間でやるか、といった仕込の調整はコンピュータを使って制御される。制御の詳細は秘密のレシピなのだろう、コンピュータ室は撮影不可であった。

ポットスチルが鎮座する蒸留棟

蒸留棟には巨大なポットスチルが数機並んでいた。化学室の三角フラスコの腰のあたりをくびれさせて銅製にして巨大化して口に管を取り付けたような、例のアレ。

機体の形状は余市のものとは異なり、その特徴が原酒の味・香りに影響するらしい。細かい話はよくわからないが。ここで2回の蒸留を経て麦汁からアルコール成分(ニューポット)が取り出される。

ポットスチルの釜の口あたりにしめ縄がかけられているのが見えた。日本酒の酒蔵みたいだな。

たくさんの樽が眠る貯蔵庫

ニューポットを樽に詰めて熟成させる貯蔵庫に入れてもらった。中はひんやりと涼しく、あたり一面樽だらけ。横倒しに寝かされた樽が数段の層をなして貯蔵庫の奥までずーっと並んでいる。

個々の樽は結構大きい。黒ひげ危機一発のように中にゴツい海賊が入っても全然余裕だ。こんなでかい樽をほいほい投げていたドンキーコングは化け物である。それをジャンプでかわすマリオも人間じゃねえ。

長年にわたって熟成させるうちに中身が蒸発して減っていく「天使の分け前」についての説明があった(そんなタイトルの映画があったな、そういえば)。ウン十年物とかになると半分くらい消えちゃうんじゃないの。

とにかく出荷の域に達するまで何年も寝かせて待つしかないわけで、相当に気の長い話だ。貯蔵庫の中にはきっと自分より年上の樽もあるに違いない。


ゲストホールでのウイスキー体験

お待ちかねの試飲タイム

ゲストーホールへ移動してちょっとしたムービーを鑑賞。その後、無料試飲コーナーで解散となった。

そこで提供されたのはスーパーニッカ・竹鶴・アップルワインの3種類。水か炭酸で割るようにおすすめされたが、せっかくだからストレートでグッといく。ふうー、五臓六腑にしみわたるぜ(もちろんすぐ後に水も飲みました)。

当たり前だが未成年とドライバーは試飲できない。もちろんお酒が駄目な人も無理に飲む必要なし。かわりにアップルジュースを提供されたと思う。

マニア垂涎の試飲カウンター

まだ足りない人はお土産売店の奥にある有料試飲カウンターに行けば、豊富な銘柄から選んで飲むことができる。普通じゃ売ってないような希少品・限定品もあった感じ。

そこはやっぱり濃い系のキャラを引き寄せるみたい。バーテンダー(っていうのかな?)と親しげに、暗号にしか聞こえないマニアックな会話を交わす常連らしき客や、いきなりメニューの中で一番高いやつをくれと注文する客がいた。

後者の気持ちはわからないでもない。ここまで来たら味わってみたいよな。でも自分は謙虚に宮城峡の12年と蒸溜所限定版をオーダー。テイスティングがどうとかの突っ込みは無用(素人なんで)。ふうー、五臓六腑にしみわたりすぎてフラフラしてきたぜ。

人と自然のコラボ

見学の途中で、蒸溜所内は電線・電柱がなく地中化されていると説明があった。自然環境に配慮したそうだ。こうした考え方に示される通り、宮城峡蒸溜所は人と自然の調和がよく図られていると感じた。

製造工程の現場は、コンピュータ操作を含めてさまざまな人の知識と技で成り立っているが、それはウィスキーづくりの半分である。あとの半分は醗酵や熟成など自然の力によるものだ。

当蒸溜所はそうした意識をしっかり持っているように見えた。人と自然のコラボによって生み出されるウイスキーにふさわしい場所といえよう。


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