お湯「だけ」じゃない満足度高し - 岳温泉 陽日の郷 あづま館

岳温泉 陽日の郷 あづま館
晩秋の福島遠征は1泊2日で鉄道+バスの旅。行き帰りの途中の立ち寄りを含めて3つの温泉を体験したい…この制約下でどの温泉地に泊まるべきか。悩みに悩んだ渾身のチョイスが岳温泉だった。中通りのJR駅からバス便あり、非日常感・旅情を感じられそうなロケーション、温泉の質は申し分なし。

お世話になったのは「陽日の郷(ゆいのさと)あづま館」。一人旅応援的なプランがあったので乗っかることにした。ふだん泊まる宿より高めの価格帯ながら各種クーポンを駆使して、実際の持ち出しは少なくてすんだ。

ハード面とサービス面はさすがのクオリティ。白く濁った酸性泉にも満足した。熱すぎなかったおかげもあるが、想定以上に入浴しまくった。

岳温泉「陽日の郷 あづま館」へのアクセス

二本松駅からバスで25分

岳温泉の最寄り駅はJR東北本線・二本松。郡山と福島の間ですね。当時はまず鏡石の弘法不動の湯へ立ち寄り入浴し、鏡石→郡山→二本松と在来線を乗り継いで来た。二本松駅舎周辺をうろうろしてたら、大河ドラマに絡めたと思しき「安達盛長ゆかりの地」のぼり旗が立っていた。なんだとぅーー! たしかにこのあたりは地名の安達とか山の安達太良とかあるけど、実際あの藤九郎と関係があったのか。今さら新たな発見。

やがて到着したバスに乗って25分、終点の岳温泉で下車。なんだかんだで結構登ってきて、安達太良山の標高600m地点といわれる場所にある。

バス停や観光案内所のあるところから主に東(下る方向)と西(登る方向)に温泉宿の連なる道が続いていた。目的の宿へ直行する前にちょっと探索してみようか。

桜坂と鏡ヶ池公園

東の道は桜坂という名前が付いている。両脇の葉が散ってしまった裸の木は桜なんでしょう。
桜坂
歩いていくと足湯コーナーがあった。
足湯コーナー
さらに進むと鏡ヶ池公園が現れる。朝の散歩なんかに手頃な池があって鴨や鯉がいる。のどかでほっこりするわ。紅葉はもう終わってしまった模様。
鏡ヶ池公園

温泉街と温泉神社

引き返して今度は西のメインストリートへ。こちらにはお土産屋さんやお食事処もあり、古き良きザ・温泉街といった風情を残すものの、いささか寂れてる感は否めない。事前にネットで調べた印象だと各宿はワーケーションその他の新しい試みを頑張っている様子であった。
岳温泉街
こちらには岳温泉神社がある。正式名称は陽日熊野神社らしい。今宵の宿名はここから取ってきたんじゃないか。神社ではハート型に集められた落ち葉が出迎えてくれた。
岳温泉神社(陽日熊野神社)
引き湯小屋ってのにも興味はあったが、そろそろ15時、チェックイン可能時刻になった。あづま館へ行って部屋とお風呂でゆっくりしよう。


身の丈以上の旅館へ来ちゃいました

ワーケーションを意識した真新しい客室

冒頭写真は正面玄関から少し外れた、最も特徴的な表情がわかるアングルで撮った。正面顔はこんな感じ。
あづま館の正面玄関
少なくとも内装はどこもかしこも近年に改装したようなモダンで洒落た雰囲気だ。老若男女全方位に喜んでいただけることだろう。お土産コーナーに隣接する、採光性にすぐれた明るいロビーがこちら。
あづま館のロビー
当宿はフロントや大浴場を含む棟(東雲)とレストランを含む棟(東扇)からなり、案内された部屋は東扇の最上階・7階のツイン洋室。リニューアルから2ヶ月も経ってない、真新しい部屋だ。うっひょー。
あづま館 東扇のツイン洋室
これじゃなんだかわからないかも。あらためて窓を背にしてドア側を向いて撮ってみた。
あづま館 東扇のツイン洋室その2
背中の煤けたおじさんにはもったいないオーバースペックですな。我ながらこれほどの客室をよくぞ予約したもんだよ。クーポンの力は偉大なり。ちなみにベッドの裏側はワーケーションを意識したようなカウンターデスクになっている。格好良すぎるぜ。
カウンターデスクもある

勝手にハイソな気分になる奴

設備面は言うまでもなく完備。真新しいシャワートイレ、洗面台、ユニットバスあり。真新しい金庫と空の冷蔵庫あり。フロア専用のWiFiあり。ウェルカムお菓子の他に500mlペットボトルのミネラルウォーターあり。ベッドにもなりそうなでかいソファーがいいね。テレビは超大型の壁掛け式。

タオルハンガーだけは見当たらず…普通ぽくないお洒落デザインなんだとすれば見落としていたかも…タオル類はユニットバスのカーテンレールに引っかけた。窓の外はこのような感じ。
窓の外の景色
あと一点、冷蔵庫がガッガッガガガガッと大きな音でうなり始めたので、そうなった時の対処法を。うなりの元になってる共振現象をかき乱せばいいわけだから、お手ふきの袋を開けずに温存しておいて、うるさくなったら冷蔵庫の底の右前か左前に敷いてみよう。当時はそれで静かになった(タオル等ふかふかしたもので代用できそう)。快眠。


岳温泉のすばらしさを堪能できる大浴場

酸性泉だけどまろやかな浴感

あづま館の大浴場は東雲の地下1階にある。エレベータを出るとすぐに下足箱があり、宿泊客はスリッパを取り違えないように番号札を付けて収めるようになっている。ちなみに隣接するゲームコーナーに自販機がいくつか並んでてビールも売っている。

夕方~夜にかけては正面左側が男湯だった。脱衣所にコインいらずの貴重品ロッカーあり。分析書をチェックすると「単純酸性温泉、低張性、酸性、高温泉」だった。お酢やレモンに匹敵するPH2.4。酸性泉はなかなか貴重ですからの。別のパネルには酸性緑ばん泉なんていうワードも見られた。

浴室に入って左手に20名分の洗い場。右手に内湯浴槽があった。浴槽は奥へ長く続く四角形で向かい合わせにならなくても15名ほど入れそうな大きさ。一番奥は2名分の寝湯コーナーになっている。十分に広いから全然混雑しない(平日の話)。

うっすら白濁したお湯の中は湯の花の白い粒が大量に漂っており、全体的には半透明くらいな感じで浴槽の底は見える。温度はまあまあの適温。硫黄が匂うんだろうと思ってタマゴ臭をイメージしながらお湯をすくって嗅いでみたら、そんなに生々しいタマゴ臭ではなかった。どちらかといえば焦げたような火薬臭だ。翌朝の体が焦げ臭くなるやつや ←喜んでいる。

酸性でも傷口がしみるとかピリピリ痛むような刺激はない。むしろお湯にすべすべ感があってまろやかな印象さえ覚える。大変結構じゃないか。

寝湯も露天風呂もよくできてる

寝湯も試してみた。頭を乗せる木の枕があります。熱すぎないからわりとゆっくり楽しめて良かった。寒くなってきた季節にはちょうどいい湯加減。

露天風呂は屋根付きで、真四角の形をした木の浴槽で5名サイズ。お湯の特徴は内湯と一緒で温度はやや熱め。短い時間さっと入るスタイルかな。熱い温泉を好む方は露天風呂が向いているだろう。周囲は庭園風に整えられ、なにかの歌碑のようなものが立っている。

それだけじゃない。やや奥まったところに1名用の陶器風呂があった。ここはぬるめ。必然的に独占状態になるし自分好みのぬるいお湯で気に入った。

内湯、露天風呂、陶器風呂、いずれも良質の温泉を楽しめる。1時間も浸かるような泉質・温度ではなく、30分いれば十分。物足りなければ回数でカバーしよう。当時は夕方2回と夜は控えめに1回だけ入った。なお、湯あがりのお肌はやけにすべすべになる。

入れ替わり後の男湯はさらにゴージャス

翌朝は起床後とチェックアウト前の2回入浴。大浴場は男女が入れ替わって右側が男湯だった。こちらの方がいくらかゴージャスなつくりで、ロビーのような間があったり、女性客を意識してか、和室にありそうな鏡台が置いてあったり。

浴室の洗い場は17名分。内湯は細長くない真四角に近い形の浴槽で20名くらいいけそうだ。明確な寝湯コーナーはないものの一部は浅くなっている。温度は適温。

露天風呂は昨夕と同じようなつくりで、ただしお湯はぬるめだった。朝の冷え込みのせいかな。個人的には好都合。

昨夕の陶器風呂に対応するのが2名サイズの石風呂。とはいえ実情はタイミングを図りつつ1名ずつ入ることになるでしょう。深いために底は見えず、段差に注意の警告が書いてある。一番深いところだと立ち湯に近いノリになる。温度はやっぱりぬるい。

その気になればもっと入浴に時間を割けたが、酸性泉だからと自制心もはたらいて、30分程度×5回にしておいた。気持ち的にはもう少し入りたかったなあ。


地産地消レストランでの食事

夕食は好きなものを好きなだけどうぞ

食事は朝夕とも東扇3階のレストラン「ゆいの一楽」でビュッフェ。夕食はチェックイン時に17時半を提案されて承諾した。客を時間帯で分散させてるため、指定の時間に行けば空席待ちみたいなことはないと思う。

いったん着席してビールを注文してから料理を取りに行く。種類は結構豊富。えび・ステーキ・天ぷらのライブキッチンもある。思いつくままに取ってきたのがこれ。提供されてる食材のごく一部だ。
あづま館の夕食
どの品もよくできてるし実際うまい。調子に乗って2巡目は天ぷらや牛すじ煮込みをゲット。
あづま館の夕食その2
それにしても下に敷いた紙に浮かぶ地産地消・医食同源のポエム(?)は気になるな。昔行ったビュッフェレストランで同じようなポエムを見た記憶があるんだよね。後日調べたら、野の葡萄ブランドのお店だった。ゆいの一楽は野の葡萄が運営またはノウハウを注入しているかもしれない。まあどうであれ美味しかったからヨシ!

朝食ビュッフェも品数豊富

翌朝はチェックイン時に希望を訊かれて一番早い7時にした。7時を選ぶ客は少ないと思いきや予想外に多いぞ。むしろ主力層じゃないか。料理の選択肢は夕食に負けず劣らず多種多彩。
あづま館の朝食
温泉旅行の朝食はなぜか普通のお米よりもお粥を選んでしまう。卵系はTPO的に温泉玉子を選ぶべきところ、あえて目玉焼きとだし巻きにした。最初は2巡目いったろかと目論んでいたけど、ひと通り食べてみたら満腹になってたのでやめた。弱い。

最後はフルーツとコーヒーで締め。それから上に書いた通りチェックアウト前のラスト入浴へトライしたのである。体が焦げ臭くなったってかまうもんか。

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たまたまのめぐり合わせで訪れた陽日の郷あづま館。さすがのハイスペック宿ですな(自分にとっては)。部屋も温泉も良かったし食事も良かった。サービス面にも隙がない。

おそらくワーケーションを意識したと思われる部屋の造作をもうちょっと活用したかったな。実際に仕事を持ち込んでリモートワークしてみたら、まるで先進的ビジネスマン気分でさぞかし自己満足に浸っただろう。俺SUGEEEEEと勘違いして浮かれたであろうことは想像に難くない。