霧島湯之谷山荘といえば、知る人ぞ知る名湯&秘湯である。鹿児島を湯めぐりするならマストってくらいだ。できれば車があった方がいいのと(特にあちこちを湯めぐりしたい人)、最後の方の短い区間だけとはいえ、狭い道を運転するスキルと度胸が必要になる。おじさんもそのへんは経験を積んで自信がついてきたから、いよいよ決行することにした。
旅館としては、山荘風でもあり湯治宿風でもあり、もちろん通常の旅行客にも対応できる。とはいえ温泉目当てで素朴さを好む人に最もマッチする。温泉は素晴らしいのひとことで、炭酸系のぬる湯とガッツリ硫黄のあつ湯、それらの混合泉を行ったり来たりして、半永久的に楽しめてしまう。貴重な宿だ。
霧島湯之谷山荘へのアクセス
えびの高原観光との相性良し
JR日豊本線の国分駅もしくは霧島神宮駅から霧島いわさきホテル行きのバスが出ている。土日は1日3便となるので乗り継ぎ注意。湯の谷温泉入口という停留所で下車すれば徒歩10分で当宿に着く。
自分はレンタカーで先に宮崎県えびの市の白鳥温泉上湯へ立ち寄り入浴し、えびの高原・えびのエコミュージアムセンターへやって来た。休憩するだけなら近隣の足湯の駅や山の駅に駐車すればいいが、多少散策するつもりだったので、駐車料金500円でセンターの駐車場を利用。
当初は車道を10分くらい歩いて不動池を見学し、帰りに硫黄山噴気孔を見学しながら戻ってくるつもりだった。ところが、その車道には「歩行禁止」の看板が。ええええ、だめなの?
エコミュージアムセンターで聞いたところでは、硫黄山周辺の火山ガスの影響による措置だそうな。車も基本は通行禁止で、休日などOKが出た時でもさくっと通り抜けるだけで車を降りるのはNG。
二湖展望台までのミニハイキング
やむなく白紫池方面へのハイキングコースを歩いた。序盤のえびの高原展望台から眺めた韓国岳がこちら。左端の煙っぽいもやもや付近が硫黄山。
展望台から先はわりとガチな登り道となる。天気が安定していれば軽装でも行けるけど体力的に楽ではない。九州は熊がいない分、精神的には楽だ。30分弱で着いた二湖パノラマ展望台からの六観音御池がこちら。
二湖展望台だから白紫池も見えます。
硫黄山もはっきり見えるが、不動池は林に隠れちゃってるみたい。
で、駐車場へ戻って湯之谷山荘へ向かう。途中に錦江湾と桜島を一望するスポットがあったので記念撮影。
先の湯之谷温泉入口バス停付近から分岐する最後のアプローチ道は本当に狭い。ラストのV字カーブと、その後の玄関前通過も気を使う。借りたのが小回りの利く軽で良かったぜ。
レトロで素朴なだけじゃない宿
アイドル猫がいる
ではチェックイン。柔らかい物腰のご主人(?)が対応してくれた。フロント~ロビーにかけてはこうなっている。
猫ちゃんケージがあります。夕食後に行ってみたらいました。ほとんど寝てたけど。
湯あがり休憩&談話室がこちら。漫画中心の書籍・電子レンジ・ソフトドリンク自販機あり。
このように、レトロで素朴な山荘のムードはあっても、ガッツリそちらへ振り切ってはいないので、よほどゴージャスさを求める人でない限りは気軽かつ快適に過ごせると思う。そもそもゴージャス志向の人が秘湯めぐりをすべきじゃない。
機能的かつ気楽にすごせる湯治部
案内されたのは、別棟の湯治部。一般に湯治部というと古い時代から残る建物のイメージだけど、こちらはむしろ築浅ぽい。
部屋は4.5畳+板の間和室。温泉目当ての一人旅なら全然OK。
反対からも撮影。布団はセルフでお願いします。また、個包装式のシャンプとボディソープが1個ずつ置いてあり、それを持って浴場へ行く(浴場の洗い場に石鹸・シャンプーは置いてない)。
トイレ共同、洗面所共同。金庫なし、冷蔵庫あり、WiFiなし…ロビー付近は使えるらしい。きれいに整理整頓されている自炊場あり。洗面所のところにはコインランドリーもある。
窓の外の景色はこちら。まあ単に本館側が見えるってことで。
なお、おじさんは湯治部の部屋に泊まりつつ、予約したプランは2食付きで、実際に朝夕を食堂でいただいた。本館には2食付きを前提にした旅館部の客室もある。
温泉好きなら絶対ハマる極上の湯
貸切風呂でナイスなお湯をを独り占め
チェックイン時に30分間の貸切風呂を予約できるということで、どの時間帯も空いていたので、明るいうちにと思って15時半~16時を押さえた。浴衣に着替えて、さあ行くぞ。フロントで「利用中」札を受け取っていく。
本館と湯治部の中間に1本の廊下がまっすぐ伸びており、男湯と女湯が並んでいる。最奥のつきあたりに貸切風呂への入口があった。利用中札を掛けて施錠し、サンダルに履き替えて少しだけ(敷地内の)屋外を歩く。天狗湯と名付けられた露天風呂は、脱衣コーナーと3名サイズの岩風呂が同居したような、コンパクトな空間。
分析書をチェックすると、「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉(硫化水素型)、低張性、弱酸性、高温泉」だった。泉温44.1℃、PH5.3。加水・加温・循環・消毒一切なしの源泉かけ流し。素晴らしい。
おお、見たまえ、見事な乳白色だ。湯口から源泉がどんどん投入されて、オーバーフローしてどんどん流れ出ていく。いいぞ、いいぞ。浸かってみたら適温だった。白っぽい細かい粒が漂うほかは、にごっていて様子がわからない。匂いを嗅ぐと微かな硫化水素臭。それほど強いものじゃない。
茂みに囲まれて眺望はないものの、他者のいない良泉を独り占めできる感覚は貴重。屋根があるから天気にも左右されにくい。長湯するような温度ではなく、30分あれば十分に満足するでしょう。
風情たっぷりな一般浴場
部屋に戻り、40分ほど休憩した後に、今度は一般の男湯へゴー。脱衣所は狭め。こちらにも貸切風呂と同様の分析書があったし、「単純硫黄温泉」で泉温40.8℃、PH5.7と書かれたやつもあった。
洗い場は浴室から若干区切られる形で2名分。先に書いた通り、部屋から個包装のシャンプー・ボディソープを持っていきましょう。
浴室は湯治場の木造小屋風情たっぷり。そこに3つの木の浴槽が、やや不規則な感じで並んでいる。手前が、無理すれば2名だけど普通は1名サイズの真四角な微炭酸泉。奥が、3~4名サイズの硫黄泉。中間が、両者からお湯が流れ込む、2名サイズの混合泉。
熱めで濃厚そうな硫黄泉
このサイズ感と人気宿かつ週末であることを考えると、芋洗いになっちゃうかなと心配したが、うまく分散されるのか、意外と大丈夫だった。平均3名、多くて6名だったし、独占のタイミングもあった。
まず奥から。貸切風呂と同じく見事なまでの乳白色にごり湯で、やや熱め。入った瞬間はピリピリっと刺激が来る。どう考えても効能ありまくり、ってのが嫌でも伝わる浴感ですな。コップが置いてあり、飲泉できるのかなと思って、湯口から注いで飲んでみたりするなど。うん、タマゴ臭ですね。
熱いのでそう長くは浸かっていられない。そもそも効きすぎちゃって危ない。見てると、後述のぬるい微炭酸泉と交互浴する人が多い。一番正解の入浴法でしょう。
泡泡クールな炭酸泉
次に手前の微炭酸泉。こちらは黒っぽい色で若干透明度があるように見える。それでも浴槽の底が見えない程度には濁っている。浸かってみるとぬるい。ていうか冷たいと感じるケースもある。お湯の中では白っぽい湯の花がたくさん舞っている。
ここは泡付きがすごい。微炭酸は謙遜じゃないですか。結構豪快なアワアワ状態だ。ぬるくてアワアワ=おじさんの大好物のはずだが、当時はひんやり感が強く、ひるんでしまう瞬間もあったくらい。夏には大人気になるんじゃないかと思う。
あと、とあるバルブをひねると、天井から伸びるパイプから温泉が落下してくる仕掛けになっているみたいだ。自分は利用しなかったが、他客は湯に浸かりながら頭に打たせ湯する人が多かった。気持ちいいんだろうね。
絶妙にブレンドされた混合泉が最強
実は自分が一番気に入ったのは、中央の混合泉。硫黄泉と微炭酸泉がバンバン流れ込んできて、混ざりあってちょうどいい不感温度帯になるのだ。混ざりきらずに冷たかったり熱かったりするお湯の塊がぶつかってくるのも、絶妙なアクセントになってくれる。
しかも、硫黄泉のみ、または硫黄泉と微炭酸泉の往復ですませる客が多く、混合泉は意外と利用されない。長湯していても、そろそろ場所を譲らなきゃな、という気兼ねがほとんどない。※もう1名入れる余地を空けて入ったけど誰も来ないし、たまに他の浴槽に移っても、混合泉は空いたままのことが多かった。
泡付きは消えるものの、硫黄感と清涼感の合わせ技で最高の浴感ですたい。滞在中のトータル入浴時間のほとんどを混合泉に費やした。いやー本当にいくらでも入れますよ。おかげでなんだか体中が硫黄臭くなった気がするけど、それもまた勲章だ。
「旅先の土地」を感じさせてくれたお食事
夕食にて、鳥肉のたたきを体験する
湯之谷山荘の食事は朝夕とも1階の食堂で。この食堂にはビールなどを入れた冷蔵ケースがあり、宿泊客はそこから缶ビールなどを取り出して飲んでいい(自己申告精算制)。夕方の湯あがりに部屋で飲んだビールはそこから調達した。
部屋ごとにテーブル席が割り当てられる。ぼっち客にも1テーブル単独で用意される。夕食のスターティングメンバーがこちら。
うわあ、にぎやかでごわす。特に目を引いたのが鳥肉のたたき。さすが鹿児島。地元じゃ絶対に見かけない。生まれて初めてかもしれない。コリコリした部分があったりして歯ごたえしっかり。これはお酒が進んでしまいますね。
お酒については、このボリュームを見たら、炭酸で腹がふくれるビールにしなかったのは正解。即興的に日本酒を注文してしまったが、土地柄を考えたら芋焼酎とかが良かったのかもしれない。でもまあいいや。お酒のおかわりで焼酎に行く案もあったけど、この後の入浴を確実に完遂するため、飲みすぎないように自重した。
ほかにも柏餅や朴葉焼き、寄せ鍋に蕎麦まであって、締めのご飯でもうお腹いっぱい。見慣れた日常とは毛色が違う、旅先感の強い内容で大変に満足した。
特別じゃないから特別な朝ごはん
朝も同じテーブル席で。定番的な内容でホッとしますね。
定番といっても自分がふだんからこのような「日本の朝ごはん」を食べているわけじゃない。実際はむしろ非日常的な品々なのだ。ありがたくいただこう。焼き魚の隣の棒状のは、いわゆるひとつの本場さつま揚げであろうか。ありがたくいただこう。
お米は鹿児島産米と書いてあったように思うけど、気のせいだろうか。胃の具合と相談しながら少しずつ盛っていった。
食後もあの混合泉に入浴する気マンマンである。さあ行くぞ。
* * *
ネットでの評判、また温泉通による紹介を見て、いつかは…と思っていた湯之谷山荘。これはたしかに極上温泉だ。温泉のクオリティを重視する人ほど刺さるでしょう。個人的な好みは混合泉だったが、もちろんそれぞれの好みに応じて楽しめばよろしい。硫黄泉も、微炭酸泉も、貸切風呂も、いずれもハイレベルなのは間違いない。
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