赤城の山中で入るワイルドなぬる湯 - 赤城温泉 御宿総本家

赤城温泉 御宿総本家
群馬の榛名山は伊香保温泉に関連して何度か行ったことがある一方、赤城山は行ったことがない。いつものぬる湯好きメンバーで秋の企画を検討していたところ、赤城の方ってどうなんですかねという話が出て、調べてみると山の中腹に赤城温泉(もしくは赤城温泉郷)と呼ばれる温泉地があった。中でも御宿総本家は露天風呂がぬる湯らしかった。ちょうどいいぞ。

さらに口コミや個人ブログをチェックしていくと、なかなか個性的な、ちょっとディープな雰囲気を持つ宿のように思われた。実際は(我々の感覚だと)設備面・食事面・応対面などで特に気になるところはなく、こういうのは嫌いじゃないって感じ。ぬる湯の露天風呂は小さめだけどとても良い。

赤城温泉 御宿総本家へのアクセス

道の駅ぐりーんふらわー牧場に立ち寄る

御宿総本家は最寄り駅を云々するロケーションではない。強いていえば上毛電鉄の大胡駅だけど、そこからオンデマンドタクシーがあるような、ないような、よくわからない。一般には車で行くところである。

我ら一行はメンバーの愛車でゴー。関越道の渋滞に捕まりつつ、駒寄スマートICを出たのが13時頃だった。直行するとチェックイン可能時刻まで思い切り時間が余ってしまう。下道を走りながら…大鳥居の下をくぐった記憶がある…即興で検討して、道の駅ぐりーんふらわー牧場・大胡へ寄り道することになった。

ここにはトイレ・売店施設の隣に広い芝生広場があって、大きな風車が立っている。
道の駅ぐりーんふらわー牧場・大胡の風車
背後に見えるのは赤城山でしょう。紅葉は始まり? 終わり?
赤城山
市街地を一望できそうな展望台は老朽化のため立入禁止になっていた。あらら。芝生広場の一番奥にはポニーや羊がいる模様。※奥まで歩かず引き返したため実際に見てはいない。

赤城温泉からさらに登る道路は覚悟が必要

んじゃ行きますか。なおも時間が余り気味→赤城温泉をいったん通り過ぎて、もっと上まで登ったところの展望台へ行ってみようと話しながら走っていると、だんだん道路状況が厳しいことになってきた。くねくねカーブが延々続くだけでなく、とんでもない狭さになってきたのである。

しかも行楽シーズンのせいか下りてくる対向車がやたら多い。次から次へと、時には数珠つなぎでやって来るため、退避スペースを探しながらそろりそろりとしか進めない。これでは時間稼ぎの域を超えて時間を使いすぎてしまうと判断し、さくっとあきらめて退却(Uターンも楽じゃない)、宿へ直行した。

当館の名前を冠した「売店」の建物前が駐車スペースになってるほか、もっと奥へ進んで第1の門を抜けた先の敷地に数台分の駐車区画がある。ちなみに日帰り入浴はできないみたいだ。そういう注意書きが入口に掲げられていた。


個性があふれるお宿

不思議な感覚に陥る

駐車場の段階で目に留まる、あちらこちらに置かれた陶器や石像は、アジアンテイストではあっても和風ではない。旅館じたいも単なる昭和レトロなのではなく無国籍風のムードが漂う。このへんがディープな印象を与えるのだろう。ロビーからしてこんな感じなので。
ロビー
本当にいろいろなモノが置かれている。
謎の展示物
あわせて廊下や階段の壁際には本がぎっしり。マンガもあれば分厚い百科事典や歴史書もある。
2階の階段付近の様子
統一的なテーマがなく無秩序なカオス状態なのだが、古びているとか汚れているとか散らかっているのとは違う。見方によっては一種のアート空間ともいえるだろう。個人的には嫌いじゃない。

ある意味でハイスペックな部屋

案内されたのは2階の部屋が2つ。入ってびっくり、どちらの部屋も広いぞ。一方の部屋はドアから入ってもまだ廊下が続いているかのようなレイアウト。
部屋の中に廊下?
写真奥のドアの向こうがシャワー付きでないトイレで、手前の見えないところに流し台タイプの洗面所がある。もちろん共同じゃなくこの部屋専用のやつだ。左手のふすまを開けると6畳+8畳+広縁の居住スペース。
御宿総本家 6畳+8畳和室
6畳部分にはすでに布団が敷いてあった。布団は朝食で部屋を出ている間にあげてくれる。
6畳部分
もう一方の、自分が寝泊まりした部屋は鍵が大きめのマンガチックな南京錠だった。その先も廊下風が続いて奥にトイレ(こちらはシャワー付き)があるレイアウトは先ほどと同様。ただし流し台は南京錠の外側の共同廊下部分にある。ふすまを開けると12畳和室+広縁とは異なる小スペース。
御宿総本家 12畳和室
窓から見える景色はこんな感じ。
窓から見える景色
なお、どちらの部屋も金庫なし、冷蔵庫あり、WiFiあり。例によっていろんな置物や装飾があったりするけど、散らかっているわけではない。内装・設備面が多少古くなってはいても手入れされてて、特に不都合なし。考えようによっては(お値段との比較で)むしろハイスペックな部屋といえる。


「まだまだ入り足りない」と思ってしまう良好な温泉

貸し切り方式で利用する露天風呂

御宿総本家のお風呂は1階の男女別内湯と3階の男女共用露天風呂に分かれる。内湯はいつでも自由に入れる。※極端な深夜の利用可否は個人的な関心が薄いためにちゃんと把握してない、すんません。

露天風呂は30分単位の貸し切り制。風呂場前のボードに部屋名が書かれたマグネットを貼って予約する。回数制限は特になし…一度利用した後、空いてる時間帯に次の予約を入れることは可能。夜は15時から22時まで、朝は5時から9時半まで、マグネットを貼る欄が設けられていたように記憶している。

部屋でちょっと休憩してから、まだ予約欄が空白の露天風呂へゴー。「入浴中」の立て札の向きを変えて周囲へアピールするようにして中に入る。脱衣所は典型的な室内でなく半屋外みたいな雰囲気だ。そこに3つのかごと分析書の掲示。「カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉、低張性、中性、温泉」と書いてあった。泉温39.2℃、PH6.4。加水・加温・循環・消毒なしの源泉100%かけ流し。すばらしい。

温度と透明度が違う左右の浴槽

露天エリアに洗い場なし。奥に屋根付きの岩風呂が2つ左右に並んでいる。どちらも2名サイズ。左の浴槽へ直接入ることは難しく、いったんは右の浴槽内を通ることになる。

右の浴槽は源泉を投入する管が突っ込まれているような様子で、お湯の見た目は灰色がかった半濁り。浸かってみたらぬるめの適温=もう少し低ければぬる湯と呼んで差し支えないくらいの温度だった。ここは標高860mなので、秋本番ともなれば朝晩を中心にわりと冷え込むから、ぬる湯派といえども右浴槽の温度で全然いける。

しかしほとんどの時間を費やしたのは左浴槽だ。右浴槽からヨイショと仕切りをまたぐようにして移動すると、暗緑色ぽく完全に濁ったお湯の中へと誘われる。浴槽の底はまったく見えない。温度はまさに体温程度ということで個人的好みのストライクゾーンど真ん中である。

ワイルドな環境でぬる湯に浸かる

匂いを嗅ぐと金気臭が強い。濁りのために湯の花や泡付きは目視できないが、若干の泡付きはあってもおかしくなさそうだ。翌朝のおかずに出てきた温泉湯豆腐の解説に「微炭酸を含む源泉~」というフレーズがあったし。

右浴槽から仕切りを越えてちょっとずつ左浴槽へお湯が移動し、そのタイムラグでぬるくなったり濁りが強まったりするのだろうと思われた。左浴槽の縁の一部に開いた切り欠きから排出されたお湯はそのまま崖下へ。露天風呂のすぐ外は深い谷なのだ。ワイルドだろぉ。

あるメンバーが屋根を見上げてつぶやいた…「屋根を支える柱に釘を使ってない。木組み構造みたいだ」、おおーなるほどー、そこまで観察してませんでした。頻繁な交換が必要そうな土台近くの柱と、それより上の柱はテトリス的な噛み合わせだけで連結しているようだ。

それにしてもバッチリなぬる湯じゃないですか。30分じゃ全然物足りない。最終的には5部屋分くらいの客が予約し合う形となり、我々は各部屋ごとに夕方・夜・朝で計3回ずつの時間帯を押さえることができた。それでも物足りなくて、もっと入りたいと思わせるすぐれたお湯だった。

温まりたければ千枚田模様の内湯へどうぞ

1階の内湯は脱衣所の分析書によると泉質名が露天と一緒で「低張性、中性、高温泉」の42.9℃、PH6.5。この記述からもぬる湯じゃないと事前に判断できる。浴室の洗い場は2名分。

こちらは析出物による床の千枚田模様がすごい。浴槽の縁の一部を削り、千枚田の一部を削り、排出される湯の通り道を作っている。その浴槽は3~4名サイズ。お湯の見た目は完全に濁り、露天左浴槽に黄土色みを加えたような色。

浸かってみるとやっぱりぬるくない適温だった。露天の右浴槽よりも一段熱めだが、熱すぎることはなく、ぬる湯派にもやさしく感じられる温度。

見た目や金気臭から、印象としては露天の左浴槽の温度を高くした感じ。洗身洗髪目的に限らず、露天風呂だけでは物足りない時や、しっかり温まりたいなと思うコンディションの時に活躍が期待される。露天風呂の予約ボードから判断して5部屋相当の客がいたであろう日に全然混雑してなかったのも良し。


食事面も期待していい

予想以上にバラエティ豊かな夕食

御宿総本家の食事は朝夕とも2階の広間にて。仕切りを使って個室状態にしてくれてた。ていうか、仕切りの向こう側は全然使われてなくて、結局は広間全体が我々専用の個室状態。そしてやっぱりディープな雰囲気である。
食事の広間
夕食は18時。スターティングメンバーがこちら。お値段の面から素朴でシンプルな内容と予想してたらとんでもない、オールスター大運動会状態だ。
御宿総本家の夕食
群馬だけに刺身こんにゃくがうまい。焼き魚はイワナ? 固形燃料で温めるやつは豚肉と野菜の蒸し焼き。これだけ揃うと当然お酒が欲しくなる。いつものようにビールいきましょう。料理とビールの量でずいぶんお腹がふくれた。

ご飯は陶器茶碗でなく、たまに見かける蓋付き飯器で出てくる。おかわり自由ですと言われたけど、おかわりどころか最初の分を片付けることすらできなかった。無念。

朝は名物の湯豆腐とともに

朝食時間は多少の融通は利かせられそう。しかし特にこだわりもないからデフォルトの8時で。こういう内容でございます。
御宿総本家の朝食
まずは野菜ジュースを一杯。ぷはー、五臓六腑にしみわたるぜー。メニューの中で取り上げるべきは赤城温泉名物「温泉 湯ど~ふ」でしょう。赤城温泉の源泉を利用して作る湯豆腐。べつに金気臭やエグ味はしないのでご安心を。普通においしい湯豆腐だ。※撮影のために蓋を外したが、もちろん加熱時は落とし蓋をする。

ご飯と味噌汁はおかわり自由でメンバーの半分がご飯をおかわりしていた。自分は最初の分を完食するので精一杯。高価になったお米をこういう機会にたくさん食べておきたいんだけど力及ばす。なお、テーブルの端には食後のドリップバッグ式コーヒーが用意されていて抜かりなし。

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メンバーの感想は「予想以上に良かった。再訪ありかも」。そりゃまあ、広い部屋と品数十分すぎる食事はお値段以上。旅の良し悪しはコスパだけで決まるものじゃないけど重要な要素には違いない。一見すると無秩序で無国籍な雰囲気が合うかは人それぞれだが、興味深く受け取る人も少なくないはずだ。

そして肝心の湯質がすぐれている。ぬるいのが好みであれば、なおさら気に入るだろう。「赤城の山も今宵限り」なんて言えなくなるぞ。