上質の「まろき湯」を日帰り体験 - 榊原温泉 湯元榊原舘 湯の庄

榊原温泉 湯元榊原舘 湯の庄
自分でもなにがしたいのかよくわからないシリーズの3日目は三重県。この1日に的を絞れば目的ははっきりしている。有馬・玉造とともに日本三名泉に数えられる榊原温泉を体験しようというわけだ。枕草子に七栗の湯として記されているくらい由緒ある温泉だから、どうしても行ってみたい。

規模と知名度と湯質でいえば湯元榊原舘という旅館がまず挙がる。しかし一人旅で泊まろうとするとなかなかハードルが高い。うーむ、どうしたものか。

…安心してください、入れますよ。湯元榊原舘がすぐ隣で日帰り施設・湯の庄を運営してくれているのだ(旅館の大浴場もここ)。ぬるい源泉をそのままかけ流しで提供する源泉風呂もちゃんと用意されている。すんごい良かった。

榊原温泉 湯の庄へのアクセス

車じゃないなら久居からバス

湯の庄の最寄り駅は近鉄大阪線・榊原温泉口。ただし駅名から想像されるほど近くはない…7km以上離れていて徒歩だと100分はかかる。バス便はありません。

自分の場合はこうなった。朝、奈良桜井の井谷屋をチェックアウトしてから近くの長谷寺を見学し、近鉄で長谷寺→久居へ移動(途中の榛原~伊勢中川間は特急を使った)。久居からだと榊原温泉を通るバス便があるのだ。

バス待ちの間にコーヒー休憩でも、と思ったら、気軽なチェーン系は見当たらず。駅前に複合商業ビルみたいなのがあったので入ってみると、市役所の支所とクリニックが主体。役所のカウンター前の長椅子へ所在なさげに座り込んでボーっとするだけの、いかにも怪しいおじさんが爆誕したのであった。※館内に喫茶店もあったけどやっぱりやめちゃった。

のどかな七栗の里へ

やや遅れて到着したバスに乗り込み、30分ほど先の湯元榊原館前を目指す。この路線は大通りでなく旧街道の集落をフォローするように走るため、乗用車でも辛そうな狭い道を行く。よく対向車とすれ違ったりできるなあと感心。逆方向のバスとは連絡を取り合って、たまに広くなる場所ですれ違えるように調整するようだ。

停留所名に「七栗」の文字が入る頃にはだいぶのどかな雰囲気になってくる。唯一、藤田医科大学七栗記念病院だけがドーンとそびえ立っていたのが印象的だ。2つの建物を屋上で結ぶブリッジみたいなのが気になる。

そうこうするうちに目的のバス停で下車。すぐ脇道へ入って数分で湯の庄に着く。お隣は湯元榊原舘だ。
湯元榊原舘
駐車場に止まってる車は多い。平日昼とはいえ結構多くのお客さんが来ていると思われた。


さすがは清少納言が認めた温泉

飲泉もできる七栗の湯

入館したら100円リターン式の下足箱に靴をしまう。続いて券売機で入浴券を購入。2時間以内1000円でタオル付き(受付で渡された)。すぐ右にロッカールームがあり、100円リターン式のロッカーに荷物をしまうことができる。

化粧水などを置いた小物販売ワゴン、休憩広間、おそらく旅館棟側になるだろう売店・軽食コーナーへの通路、その他については撮影できる雰囲気じゃなかったので写真はありません。大浴場は階段を下った先にあった。手前が「もえぎ」、奥が「むらさき」と名付けられ、日替わりで男女入れ替えるらしい。この日はむらさきが男湯だった。

むらさき付近には飲泉所あり。飲んでみたらふわっとタマゴ臭が広がった。やるじゃない。

巨大な主浴槽は加温あり

脱衣所はわりと人口密度高め。やっぱりお客さん多いっすね。湯元榊原舘の大浴場と湯の庄はイコールのようだから、宿泊客も混じってるのかな。分析書には「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、低温泉」とあった。源泉名「榊原館七栗の湯」、源泉温度は31.2℃。

源泉浴槽は加水・加温・循環・消毒なし。他の大浴槽と露天風呂は「市場七栗の湯」という源泉と混合しているみたいで、加水なし・40~42℃に加温・循環記載なし・清掃時消毒。シャワーのお湯にも混合泉を使っている。

浴室は広くて洗い場は12名分。まず目に入るのが巨大な主浴槽だ。30名は余裕でいけるに違いない。多めに見えたお客さんも主浴槽の中ではぽつぽつと点在するだけになる。浸かってみたら適温、いやむしろ熱めだった。長湯するタイプではないね。お湯は無色透明で湯の花や泡付きはない。ややヌルつきが感じられ、匂いは微かなタマゴ臭。飲泉所で感じた個性は残っている。

この主浴槽に浸かりながら、奥にある本命の源泉浴槽をチラチラと様子見するおじさん。すでに満員御礼くらいの人が集まってるんだよね。主浴槽の他のみなさんもチラチラと様子見しており、源泉浴槽から一人出ていくと、「じゃあ次は私の番で」な空気感を醸しながら後釜に入っていくのだった。

人気の源泉浴槽へ、いざ

あー、こいつはノーチャンスのパターンじゃないか…嫌な予感がしてきた。押しが弱い人はいつまでも順番を譲ってばかりで動けないやつか。あるいは常連さんに長湯独占でがっちり固められて全然空きができないやつか。

しかし悪い想像は考えすぎだったようだ。そこそこ待ってれば空きはできるし、しばらくすると後釜の立候補が現れなくなってきて、常時満員じゃない状態に緩和されてきた。では遠慮なくいかせてもらいます。

源泉浴槽は円形に近い楕円形の8名サイズ。中央が湯口になっており、みんな縁に頭を乗せて湯口に向けて足を伸ばす寝湯的な姿勢で入ってる。自分はその姿勢だと安定しないから体育座りを採用。主浴槽のお湯と似ているが、タマゴ臭とヌルつきはよりはっきりしている。

明らかな違いは泡付き。どんどんどんどん肌に泡が付着する。すげーなおい。さすがは源泉100%だ。泡+タマゴ臭+ヌルつきで三冠王だよ。言うことありません。

素晴らしきぬる湯から出るに出られず

しかもぬるい。おじさんはぬる湯派なのだ。ぬるいという評判なのもここへ来たくなった動機のひとつだからね。四冠グランドスラム達成おめでとう。31℃台といっても数字ほどには冷たくない。たとえば5分浸かったら主浴槽へ移って温まって…といった時間軸で考える必要がない。耐える概念ではなく心地よいぬるさなので、なんなら30分でも1時間でもいけますよ。

ずっと居座りすぎて他のお客さんから顰蹙を買わないように、人の出入りを慎重に観察していたら、なんか急に源泉浴槽が過疎ってきたので混まないうちは粘ることにした。いつまた常時満員状態がぶり返すかわからないし、そうなったら今度こそノーチャンスかもしれないからね。

10分・20分…まだだ、まだ終わらんよ…30分・40分…あと少しだけ…50分。さすがにもう出ようかな。いやー、久しぶりに1時間級をやってしまったな。大満足。我が生涯に一片の悔い無し。

露天風呂もあります

そういえば露天風呂にも行かないとな。浴室よりやや低い位置にある10名サイズの岩風呂で、湯口とは別に打たせ湯的にお湯を落下させているところがあった。こちらは熱すぎない適温。頭上は天井になっていて半露天風ともいえる。外の景色は竹やぶ。

ぬる湯の魔力に取り憑かれたせいで主浴槽と露天風呂が薄味の体験になっちゃったけど、まあいいか。主浴槽→源泉風呂1度目→露天風呂→源泉風呂2度目→上がり湯として主浴槽に1分だけ、までやって出たが、気がつけば2時間制限のほぼいっぱいまで滞在していた。七栗の湯おそるべし。