冬にノーマルタイヤの車で行ける旅行先として手堅いのが伊豆の海沿い。いつもの旅行メンバーからの提案で、この手堅さを生かした遠征が組まれることになった。
伊豆の海に近い民宿といえば、お手頃価格で海鮮どっさりの料理をいただけるイメージがある。下田・須崎の「温泉民宿権兵衛」もそんな期待を裏切らず、これでもかというくらいのおさかな天国だった。ちょっとすごかったね、あれは。
場所は須崎港の目の前で、観光スポットの恵比須島に近いのも利点…今回は行かなかったけど。お風呂はコンパクトながら源泉100%の湯使いだったのはうれしい誤算。加温しないため結構ぬるめなので、お子様やぬる湯好きな人向きだろう。
温泉民宿 権兵衛へのアクセス
おなじみの渋滞と網代の海鮮丼
皇室御用邸・爪木崎・恵比須島などで知られる須崎半島へは伊豆急下田駅からバスが出ており、当宿もこのバスを活用できる。須崎海岸で下車したら停留所の道路を挟んですぐ向かいが当宿だ。以上が電車・バスを使う場合。
我々はメンバーのひとりが出してくれた車で向かった。平時なら新東名→伊豆縦貫道→天城越えの中伊豆ルートを取っただろう。しかし東名の渋滞や天候状況を考慮して西湘バイパス→真鶴道路→熱海・伊東の東伊豆ルートに切り替えた。
とはいえ渋滞の名所であることに変わりなく、延々とノロノロ運転が続く。熱海に着く頃には昼どきを回っていた。ずっと飲まず食わずというわけにはいかないから、その先の網代でランチ休憩とした。あじろ食堂っていうところだったと思う。温泉旅館の中の食事処が昼は一般客向けに営業しているような感じ。
せっかくだから数量限定・鯛の胡麻醤油漬け丼にするか。権兵衛で海鮮づくしの夕食が出るんだろうなと思ったけど欲には勝てず。
うめえじゃねーか。胡麻の香りが食欲をそそる。途中でお茶(だし汁?)を足してお茶漬けにすれば2倍楽しめる。窓越しに初島が見えるのもいいですな。気分良くエネルギー充填完了。
須崎港の目の前にある民宿
もうあえて途中で観光などしなくてもいいでしょう。宿に直行してそのままチェックインしても十分な時間だ。網代から伊東→熱川→前年暮れに訪れた白田温泉→稲取→河津を経由して下田入りし、須崎半島への道を曲がったらほぼ一番奥まで走ると須崎港である。
港はこんな感じ。
権兵衛は港のすぐ近く。向かいがバス停&駐車場になっていて、宿泊客の車はこの駐車場に止めればいいみたい(バスの走行を妨げるような場所を避けること)。
海風を感じる懐かしい風情の民宿
ではチェックイン。客室のある2階への階段がやけに長い。途中の踊り場的なところがすでに2階くらいの高さだ。2階部分が普通の家の3階くらいな感じ。
案内された部屋は10畳和室。由緒正しき庶民の温泉宿の風情そのままで大変結構。ぴかぴかに新しいわけではなくともよく手入れされており、居住性に不都合はない。布団敷きはセルフでお願いします。
トイレなし、といっても2階の水回りに「部屋別の個室トイレ」が用意されているから、実質トイレ付きみたいなもんだ。洗面所は共同。金庫なし、冷蔵庫なし、WiFiの案内は特になし(フリーのがあるかもしれんが)。タオルハンガーが大きめで使いやすい。
窓は2面あったが一方はビニールシートで覆われていて外は見えなかった。たぶんすぐ隣家の壁なんでしょう。時おり強風にあおられたシートがバサバサと音を立てる。もう一方の窓は須崎港を向いていた。
いやあ海と港が近いねえ。おさかな期待しちゃうねえ。
源泉100%かけ流しを楽しめるお風呂
宿の規模相応の小さめな浴室が2つ
権兵衛の風呂は1階にある。2つの浴室が並んでいて、ひとつは15時~翌朝まで。もうひとつは16時~22時(21時だっけ?)と短めの設定。どちらも同じ広さ・同じレイアウトだったし、お湯も違いはなかろうと判断したので、結局前者しか使わなかった。
浴室手前の壁の天井に近いくらい上方に分析書が貼ってあって「単純温泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」だった。加水・加温・循環・消毒すべてなしだったのには脱帽。こんなしっかりした湯使いでやってくれるとは頼もしいじゃないの。
風呂はそんなに広くない。脱衣所が3名だともうきつくなるくらい。なので空いていれば利用させてもらい、誰かが利用中なら遠慮して次の機会を狙う、それぞれの客があうんの呼吸で融通しあう実質的な貸し切り運用になるだろう。
我の強くない控えめキャラのお湯
浴室にカランは2台。だが2名同時に使うとやっぱり少し窮屈かな。そして浴槽も2名サイズ。縁が大理石のように見えたが、はたして。
普通の水道らしき蛇口が壁から生えているものの湯口が見えないぞ、溜め湯なのかなと思ったけど、何度か入っているうちにようやく理解した。浴槽の上下2箇所に穴が空いてます。上のやつはお湯が出ていく穴。ここから出ていく湯量とバランスするように下から投入しているものと考えられる。たまに下からボコボコっと、あぶくと一緒にお湯の出てくる感触がある。
お湯は無色透明で湯の花や泡付きはなく特段のツルツル感もない。しかし匂いにはほんのりと温泉臭が感じられ、全体の印象としても単なる沸かし湯とは違っていた。ガツンと来る系統とは反対の、じんわりじわじわ攻めてくる感じ。
期せずして絶妙なぬる湯と出あう
温度ははっきりとぬるい。不感温度と言ってもよいくらいの、もはやぬる湯と呼べる域に達している。冬だからかな。夏だったらもっと熱いのかな。自分はぬる湯派なので歓迎です。放っておくといつまでも浸かり続けてしまいそうだ。
宿泊客は他にもいるし、そもそも我々の別メンバーとも交代しなきゃいけないから、ぬる湯だからと調子に乗って1時間浴などはさすがにできない。適度に頃合いを見計らって出ることになる。
夕方・夜・朝の3回入ったら肌がやけにすべすべになった。やはり源泉かけ流しの温泉は効きますな。ぬるくてもすぐに湯冷めすることはないし、逆にのぼせたようにカーッとなって汗が引かないといったことも当然ない。湯あがりはいたって平常心。
おそるべき伊豆のおさかな天国
夕食は驚きと魅惑の伊勢海老プラン
権兵衛の食事は朝夕とも部屋食。食事の用意ができると部屋の電話に知らせが来る。夕食に運ばれてきたのがこちら。思わず笑みがこぼれた。伊勢海老!!
もともと伊勢海老プランを予約したんだから驚くことじゃない。じゃないけども、あらためて口あんぐりな光景だ。本当にひとり1尾ずつの伊勢海老が出てきたよ。ちなみに添えられてる柑橘類は「はるか」という品種だそうだ。
他に牡蠣やさざえもあるし、刺盛りも一人あたりの量がめちゃくちゃあるし、途中で金目鯛まで出てきたぞ。まさしくおさかな天国。この内容でも決して超高価というわけではなく、ちょっとしたグレードアップ程度のお値段だから、伊豆の民宿おそるべし。
それぞれが歯ごたえぷりぷりの鮮度抜群でハッピーこの上なし。世の中にこんな贅沢があっていいんでしょうか…いいんです。食べちゃいなさい。
で、食べ終わった伊勢海老の殻は途中で丁重に下げられていった。翌朝の味噌汁に使われるとのこと。とことんまで出し切ってくれる伊勢海老さんやべえ。その想像だけでご飯3杯いける…なんてことはなかったが、適量をいただいてごちそうさま。翌朝に備えた。
伊勢海老さん、朝食で完全燃焼する
朝食までには布団を畳んで部屋の隅に寄せておきましょう。我々が希望した7時半になって運ばれてきた品がこちら。
自分を出し切って真っ赤に燃え尽きた伊勢海老さん。ありがたくいただきます。あとはアジの開きをはじめとする正統派のメニュー。ゆうべあれだけ食べたのにと思いながらしっかり完食してしまった。胃が苦しくなることもなくちょうどいい満腹感であった。
食後はコーヒーとデザートを部屋まで持ってきてくれる。民宿でここまでやってくれるのはなかなかないんじゃないか。最後の締めまでしっかりフォローしてくれました。
* * *
まあ確かに伊勢海老プランだったからにせよ、豪勢な海鮮づくしには大満足。初見で「うぉっ?!」と唸ったからね。魚(うお)だけに。
風呂は小ぶりながらしっかりした本格温泉には違いない。温度に関してはそれぞれ好みはあるだろうが、海鮮&温泉をお得に楽しみたいのであれば、検討してみていただきたい。
【この旅行に関する他の記事】