眺めのよい露天風呂を貸し切りで - 伊豆高原 リバティーヒル

伊豆高原 リバティーヒル
伊豆高原にはペンションが多い。洒落た雰囲気とか、ワンちゃんと泊まれるとか、そっちの方面でバリューを追求しているイメージだから温泉とは縁が薄い気がしていたけど、意外とそうでもなかった。温泉を提供しているペンションは少なくない。

“もうすぐ春ですね”の頃の伊豆旅行2泊目に伊豆高原のリバティーヒルを選んだのは、お風呂が天然温泉だったのと、ネットの口コミ評価がとても高かったからだ。カップルでもファミリーでもなく、温泉に入ってのんびりしたい枯れたおっさん連中がやって来るとは、ペンション側も想定外だったのではないか。

小さめながら2つの貸切露天風呂を備え、周辺環境と景色は良く、食事はうまい。確かにいい宿だったな。

伊豆高原「リバティーヒル」へのアクセス

リバティーヒルの最寄り駅は伊豆急行・富戸。駅から内陸の方へ向けて坂を登る。国道135号に達する手前あたりまで、約1.5km歩くから30分かかると思えばよい。

車で行く場合は注意が必要だ。国道135号を伊東市街から南下、もしくは東伊豆町から北上していくと、伊豆高原旅の駅・ぐらんぱる公園・神祇大社のちょっと北側に崔如琢美術館がある。もっとわかりやすい目印は「ゴリラ像」だ。いやでも目に付く。

このゴリラ像の交差点を海側へ曲がっていく。ここで注意すべきは、グーグルマップやカーナビを頼ると、おそらく当館の裏口に着いてしまう。そこには駐車場がないし入館できない。

ナビが右折を指示するであろう場所からもうしばらく走ると「リバティーヒル」と書かれた看板が現れるから、そこを右折して入っていく(道が細いため確信を持てないかもしれないが気にせずGoだ)。そうすると駐車場に行き着く。駐車場から階段を登っていったところが当館の正面玄関だ。リバティーヒルのホームページのアクセス情報に詳しい説明があるから読んでおくと吉。

我々は下田の温泉民宿権兵衛をチェックアウトして、河津桜や河津七滝を見学した後、北川の黒根岩風呂へ立ち寄り入浴してからリバティーヒルへやって来た。現地一帯は伊豆の海岸に近いエリアでありながらも木立に囲まれた高原の雰囲気に包まれている。
リバティーヒル付近の様子
河津桜(?)も楽しめるようになっていた。
たぶん河津桜

名前の通り、海の見える小さなホテル

明るい雰囲気で安心感あり

ではチェックイン。中はいかにもペンションですねというつくり。小規模ながら明るい雰囲気で、とっ散らかったところがないから、安心して気分良く利用できるだろう。

フロントの右隣が食堂になっていた。珍しいことに食堂の奥の扉が直接お風呂場に通じている。また食堂のすぐ外に見晴らしの良いテラスがある。下の写真を撮った際は雨天のせいで使えなかったけど、暖かい季節の晴れた日は気持ちの良い場所なんだろう。
テラス
客室は2階。階段を上ったところにソファーとコミック書棚が設置されている。
コミック&休憩コーナー

当然ながらベッドの洋室

案内された部屋は当たり前だけどベッドの洋室。たまたま2面が窓になっている角部屋だった。写真の手前に一部ちょっとだけ写り込んでいる緑色は2名用のソファー。
リバティーヒルの客室
3点ユニット式のトイレ(シャワー付きではなかった記憶)・洗面台あり。金庫なし、水ボトルの入った冷蔵庫あり。WiFi有無は忘れた。浴衣・タオル・バスタオルは部屋に用意されている。クローゼットの類がなく、上着などは壁のでっぱりにハンガーをひっかけて使う方式。一方でタオルハンガーは大きくて使いやすい。

海側の窓を開ければ、駐車場や玄関前から見る時よりも高さがある分だけ、海と伊豆大島の存在が一層はっきりする。宿名にサブタイトル「海の見える小さなホテル」を冠するだけのことはある。
窓から見える海と伊豆大島

鎌田温泉を提供する2つの貸切露天風呂

食堂直結の第1風呂は予約制

リバティーヒルのお風呂は2箇所ある。どちらも男女を区別しない貸切の露天風呂だ。第1風呂は時間予約制で、チェックイン時に希望時間を訊かれた。場所は先述の通り食堂奥の扉の向こう。食堂直結ながら露天風呂なのだ。第2風呂は予約不要で空いていれば利用してかまわない方式。場所はいったん屋外に出たところ。

第1風呂の希望時間をチェックイン直後とし、まず第1風呂へ行ってみた。食堂奥の扉を開けるとすぐ脱衣所になっている。分析書が貼ってあって「単純温泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」だった。源泉名は鎌田温泉だったな。

後日の調べによると、伊東市街の南寄りに鎌田という地区があるし、鎌田会館なる銭湯もあるようだ。そっちの方からの運び湯なのかなあ。

海が見える露天風呂

さて、脱衣所から一歩進むと小ぢんまりした洗い場スペース。実質的に一人用と思ってよい。そこを抜けて奥へ進むと露天風呂になっている。屋根付きだったかと思う。浴槽は2名サイズ。岩風呂ではないけど一部に岩風呂ぽい演出が見られる。

お湯の見た目は無色透明で湯の花や泡付き、特殊なツルツル感などはない。匂いを嗅ぐと塩素臭はせず、軽い温泉臭を感知した。温度は適温。ぬるい温泉が好みとはいえ、まだ寒い時期だったこともあって熱すぎて困る水準ではなく、ほどよく温まって結構な具合だった。

また露天風呂としての特長をしっかり発揮している。海側に立つのは最小限の高さの板のみで視界を遮るものではなく、十分な眺望が確保されている。部屋から見えたのと同じ…とは言わないまでも、海と伊豆大島を望みつつの湯浴みを楽しめてしまう。これはポイント高いね。

花と緑に囲まれた第2風呂

第1風呂の後は休憩を挟むことなく第2風呂へ直行した。まだチェックインしてくる客が少ないうちにチャンスを拾っておこうと考えての行動。第2風呂はいったん玄関でサンダルを履いて外に出て、駐車場への階段を下っていく途中にある小屋だ。
第2風呂
脱衣所~浴室にかけては第1風呂より一回り大きい感じかな。洗い場にカランは2台。ただし洗い場として使うスペースは1名ずつ交代で利用するのがちょうどいいくらいの広さ。浴槽は3名サイズ。お湯の特長は第1と同じで気持ちぬるめな印象だった。

こちらも海側の囲いは最小限の高さに抑えられているが、目の前に桜の木があって海や島はほとんど見えない。花や緑を楽しむのがメインになるだろう。当時この場所に立つ桜の木は開花が終わりかけて葉桜になりつつあった。もうちょっと早く来ていればさぞかし見事な光景だったに違いない。

予想外にも入浴はチェックイン直後の一度きりで終わった。夜も朝も入らなかった。日暮れ以降になんだか妙な気だるさに襲われて動けなくなっちゃったのだ。熱・咳・くしゃみ・鼻水・頭痛・悪寒・腹痛どれもないから病気ではない。ただ胸が一杯で何もしたくない感じ(同行メンバーにはご心配をおかけしました)。あれは何だったのか。湯あたり?


食事への期待にばっちり応えてくれました

夕食の金目鯛に新しい味を発見

リバティーヒルの食事は朝夕とも1階食堂にて。所定の時間近くになると部屋に食事の用意ができた旨の連絡が来たような気がする(自信なし)。夕食時、我々に割り当てられたテーブル席へ着席すると、前菜から一品ずつ運ばれてきた。
リバティーヒルの夕食(前菜)
おー、春の到来を思わせる華やかさでうまそう。ペンション=シェフ自慢の料理が出てくるイメージに違わぬ期待を抱かせるスタートだ。入浴後に襲われた気だるさを忘れたかのように無心で口の中へ運んでいった。続いて金目鯛ときのこ。
リバティーヒルの夕食(魚料理)
やっべえ、これ絶対うまいやつだぞ。伊豆といえば金目鯛。金目鯛といえば伊豆。一般には甘いタレの煮付けにすることが多いのを、このようなアレンジで出してくるとは、やりますな。新しいパターンの味を発見したよ。しかも切り身ちょこっとじゃなくて結構でかいぞ。完食までにそこそこ時間を要したと思う。これだけでお腹いっぱいになりそう。

メインディッシュは牛ステーキ

しかし真のメインディッシュは次だった。がっつり牛ステーキ。やったぜ。
リバティーヒルの夕食(肉料理)
適度な歯応えと口の中に広がる肉の旨味がたまらん。もぐもぐ、あーうまい、もぐもぐ、あーうまい…しかし残念なことに完食できず。

満腹によるギブアップではない。入浴後の変調からの「胸が一杯」感が突然襲いかかってきたため、急に何も喉を通らなくなっちゃったのだ。今まさに山場というところで突然のリタイア。ライスもほぼ残し、最後のデザートだけはどうにか。もちろん料理には何の問題もなく100%自分の体調のせいだったが、なんてこったい、どうしちゃったんだろう。湯あたり?

朝食の焼き立てクロワッサンが好評

こうして夜も翌朝起床後も入浴する気力なく、ずっとベッドに沈んでいた。しかし朝食の時間までにはまあまあ回復。胸一杯感は後退して食欲が戻ってきたみたい。ということで朝食の席へゴー。運ばれてきた品々がこちら。
リバティーヒルの朝食
ペンションらしい洋風の組み立てですな。飲み物はセルフサービスで牛乳・オレンジジュース・コーヒーがいただける。スクランブルエッグがわりとたっぷりあった。

焼きたてクロワッサンが好評なようだけど、わかるわ。ふだんは2個も3個も食べないし、ゆうべあんな体調だったのに、3個いっちゃいましたよ。途中で「パンのおかわりいかがですか」と追加してくれる。個人的にはもう1種類のパンの超もっちり感も気に入った。そっちもおかわりしたいくらいだった。

 * * *

リバティーヒルは我ながら異色のチョイスだったと思うし、温泉ファンが温泉だけを目的にして選ぶ宿かといえば、正直なところ候補にあがりにくいだろう。とはいえ浴感は悪くなかったし、眺望の良い露天風呂を貸し切りで利用できると考えれば、なかなかのものではないか。

温泉のみならず食事やペンションの雰囲気にも比重を置くのであれば、満足度はさらに高まるだろう。