冬の海鮮グルメと本格派の硫黄泉 - いわき湯本温泉 鮮の宿 柏

いわき湯本温泉 鮮の宿 柏
いわき湯本といえば福島浜通りの一大温泉地で、数多くの旅館が集積している。過去に訪れてから気がつけば5年も経っていた。また行ってみてもいいかなあと思って今回の遠征先に決定。たしかお湯が熱かった記憶があるので、冬の方が向いているでしょう。

十分な規模の繁華街を持っており、素泊まりでも食事に困ることはなさそう。とはいえ、面倒だから夕食付きの条件で探してみると「鮮の宿 柏」に空室が見つかり、なおかつ好都合なことに一人旅応援プランがあった。これなら“おひとりさま”も遠慮なく世話になれる。

お湯はやっぱり(そしてかなり)熱かった。でも源泉100%かけ流しの硫黄泉は間違いなく本格派だ。

いわき湯本温泉「鮮の宿 柏」へのアクセス

冬の湯めぐりに強みあり(個人の感想)

いわき湯本の利点はJR常磐線・湯本駅前からすぐに温泉街が広がっていることで、駅徒歩圏に多数の旅館が集まっている。観光客が気軽に立ち寄れる共同浴場もあるし、湯めぐりには便利この上ない。

なんて書いておきながら、今回は車で来ました。しかも夕方着いたらすぐ宿入りして翌朝あっさり離脱しちゃったというね。湯本の街をまったく堪能しなくて正直、すまんかった。いずれまた来ることもあるでしょう。冬に降雪の心配があまりないのは伊豆・房総と並んで南関東民が訪れやすいファクターだからね。

車の場合もアクセス便利。常磐道・いわき湯本ICから温泉街まで10分もかからない。自分の場合は直行せずにいわきニュータウンの方にある吉野谷鉱泉で立ち寄り入浴した。そこのご主人に国宝・白水阿弥陀堂の存在を教わったので、続いては白水阿弥陀堂へ。無料駐車場あり。

国宝・白水阿弥陀堂への立ち寄り

奥州平泉に縁のある由来からか、浄土庭園が整備されている。平泉の毛越寺を思い出すなあ。
白水阿弥陀堂の浄土庭園
7~8月には古代ハスの花が見られ、中には平泉中尊寺で出土した種から発芽したものもあるとのこと。でもネットで調べると全滅危機っていうニュースがヒットする。亀による食害のようだが…池の中に点在する岩の上でのん気に日光浴してた亀よ、そういうとこだぞ。

阿弥陀堂へ近づくには拝観料500円。うむ、さすが国宝ですな。具体的に何がどうっていうコメントはできませんが、そういうことにしておいてください。内部には阿弥陀如来像を含む5体の仏像が安置されている。
白水阿弥陀堂
見学を終えていよいよ当館へ向かう。思い出の石炭・化石館ほるるの脇を抜けて(2024年春まで臨時休業中なのね)、温泉街の中心部へ進入し、共同浴場さはこの湯が面する通りの一本裏手が現地だった。正面玄関前および道路を挟んだ向かい側に駐車場あり。


観光にもビジネスにも使える温泉ホテル

規模としてはそんなに大きくはなくて、エントランス部はフロント・ちょっとしたロビー・男湯・女湯・エレベーターがぽんぽんぽんと並んでいた。お魚さんの泳ぐ水槽もあったぞ。
魚の泳ぐ水槽
旅館というよりは観光にもビジネスにも使えるホテルって感じかな。チェックインの際に渡された部屋の鍵は最上階=4階のだった。9畳和室でございます。布団は最初から敷いてあった。
鮮の宿柏 9畳和室
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり。WiFiあり。特に不便を感じることはない。フリーな電気コンセントの口が見当たらないので、スマホの充電にちょっと迷うくらいか。あと人によっては、ひと風呂浴びた後にビールを一杯やりたくなるかもしれないが、館内にお酒の自販機はないから注意。

景色については窓がまあこんな感じでして、どのみち外はすぐ隣の建物の壁なんで、障子を閉め切りにしておくことになるだろう。
客室の窓
個人的には絶景を見たくて来たわけではないから、どうということはない。部屋では持ち込んだ本(電子書籍)を読み進めることに集中した。ふだんの余暇はこういう文章を書いたり、アニメ版キングダムを消化するのに手一杯で、読書時間をなかなか取れないのでね。幸いに静かな環境で、ずいぶん捗りましたわ。ココココ。


熱いけど何度でも入りたくなってしまうお風呂

源泉100%かけ流しの硫黄泉

大浴場は先に書いた通り1階にある。間口は狭めで「もしかして浴室は結構小さいのかな?」と思わせるが、実際は想像したほど小さくはない。脱衣所の戸の前にスリッパを脱いで置くことになるから、誰か先客がいるかどうかはすぐわかる。

分析書をチェックすると「含硫黄-ナトリウム-塩化物硫酸塩泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒いずれもなしの源泉100%かけ流しだから大したもんだ。「加水すると成分が薄まってしまいます」みたいな、加水を戒めるような張り紙もあった。熱いってことだな。

浴室内には5名分の洗い場。左奥に台形というか手前に向かって尖った角を持つ四角形の浴槽がある。規模としては5名が入れるくらいか。そばにちょこんと湯かき棒が置いてあった。熱いってことだな。

お湯も熱さも本格派

お湯は薄緑白濁とでもいうべき色を呈しており、浴槽の底がぎりぎり見えるかどうかってとこ。かつて湯本へ来た際に泊まった美笹という宿のお湯はもっとクリアで透明度が高かった。施設ごとに個性があるのか、あるいはその日のコンディションによって違うのか、とにかく新たな一面を見た。

浸かってみると、熱ーーーい! 立った状態でもう下半身にピリピリきちゃって、たまらず脱出した。こりゃ明らかに湯かき棒の出番だ。5名サイズの浴槽内をくまなくかきまぜたら、やや熱めの適温くらいで入れる感じになってきた。

含硫黄だからタマゴ臭がするかなと思って嗅いでみたところ、タマゴというよりはアブラみを感じた。少なくともドギツい匂いではないので、たいがいの人にとって大丈夫でしょう。そして若干ぬるっとした感触もある。とくに浴室の床にあふれ出たお湯は、その上を歩くとつるっと滑りそうな気配あり、注意。

うー、なんだかんだでやっぱ熱いぞ。半身浴的な姿勢でいるうちはいいが、肩まで浸かると熱気に圧倒されてしまう。湯船で長時間じっとしているわけにはいかないね。

身をもって体験した、効き目ばっちり

しかしここでよく温まっておくことが重要だ。思えば1年前の冬、温泉行きをお休みしていたら、たぶん寒さと乾燥のせいで指先が内出血したみたいに赤黒くむくんで、ついには裂け目ができて血が滲むまで進行してしまった。今年は甲府遠征を一発かましてどうにか抑え込んでいたものの、とうとう赤黒いむくみを発症。これ以上進行させず回復に向かわせたい目論見があったのだ。

手指の赤黒い部分と足指の一部が集中的にピリピリ・ジンジンするのは効いてる証拠だ。そう思いたい。やせ我慢気味に長めに(といっても数分)肩まで浸かる→湯から出てしばし休憩→ちょっとだけ半身浴体勢→また肩まで長めにを繰り返した。もはや我流の湯治である。

そんな入浴を夕方2回・夜1回・朝2回やりました。これは効いたでしょう。実際に旅から帰ってこの文章を書いている時点で赤黒いむくみは後退している。あとは春先気温の上昇とともに消えるはず。やったぜ。


ホテル名も納得の海鮮グルメ

お食事はレストラン「辛華」で

食事は1階の食事処=宿泊者以外の一般客にも開放している「辛華」というお店でいただく。宿泊者は館内から直接出入りすることができるようになっていて、もちろん浴衣を着て出向いてかまわない。

夕食の時間に行ってみると、カウンター席にすでに料理のスターティングメンバーが用意されていた。グループ客は半個室で、一人客はカウンターで、各組は十分な距離を空けてある。
鮮の宿柏の夕食
おっ、やっぱり海の幸中心できましたね。期待通り。あん肝が出てくるとはやりますな。このへんの冬はあんこうのイメージがあるからな。

地酒とかれいの組み合わせがたまらん

ああうまい。この品々に合うお酒とくれば…ちょっとイキってビールじゃなく日本酒にした。リストアップされていたのはいずれも福島の銘酒。湯岐温泉で飲んで衝撃を受けた国権もあるじゃないか、いまだに人生最大衝撃の酒だよ(ちょっとお高い大吟醸でスペシャルすぎたからってのはある)。

まあでもご当地の又兵衛にしましょうかね。前回の宿美笹でも飲んだ酒だ。料理に合うわあ。やがて寄せ鍋ができてかれいの唐揚げが出る頃には2杯目に移っていた。
かれいの唐揚げ
かれいの唐揚げには感心した。かれい特有の細かい骨と格闘することなく頭から尻尾まで全部ばりばり食べられる。煮付けや焼きにはない食感で飲みながらつまむのにちょうどいい。量もちょうどいい。お腹パンパンで苦しくなる手前くらいで、ご飯・味噌汁・デザートまで完食して満足のうちにごちそうさま。

後の予定を気にしなければもっと攻めたかった朝食

朝食も同じ席で。着席後に料理をのせたお盆が運ばれ、ご飯とお茶はセルフで確保するスタイル。今後の予定を見越してご飯は控えめによそった。
鮮の宿柏の朝食
このおかず軍で攻められたらご飯をおかわりしたくなるが、諸般の事情により自制をはたらかせた。俺にはまだやらねばならぬことがある。ちなみに玉子は納豆に混ぜる用かと思ってパカッと割ってみると温泉玉子だった。べつに混ぜてもいいんだろうけど単体で食す。

お茶以外にコーヒーもセルフでいただけるようになっている。食後の一杯を優雅に楽しんだら、さあチェックアウトの前に最後のひと風呂だ。

 * * *

格式張らない気軽なスタンスで本格派の温泉と食を楽しむことができる「鮮の宿 柏」。多種多彩な設備や細かく行き届いたサービスを提供する大規模ホテルではない反面、おいしいものを食べて良質の温泉に入りたいという目的がはっきりした層にはちょうどいい宿ではないかと思われる。

ふとした思いつきから始まったにしては、久しぶりのいわき湯本再訪は大成功だったといえるだろう。