ちょっといい雰囲気の穴場的なお宿 - 川治温泉 坂聖・日光

川治温泉 坂聖・日光
川治温泉で宿を探すとやけに目を引く旅館があった。坂聖・日光。聖坂だとアイドルグループみたいだが坂聖とな。ただし本当に引っかかったのは名前よりもお値打ちの予感。ネットで調べる限り、お値段に比して妙にハード面が良さそうでサービス面を含めた口コミ評価も高いのだ。これは穴場を見つけてしまったかもしれない。行きたい。

ちなみに伊豆の土肥温泉には坂聖・玉樟園があり、同じ系列のようだ。ちょっと前に(ここじゃないけど)土肥温泉に行ったばかりだから不思議な縁を感じる。ますます行かねば。

泊まってみた感想としてはかなり頑張っている旅館でたしかにお値打ちありの穴場だった。川治らしいぬるめの湯にも満足。

川治温泉「坂聖・日光」へのアクセス

当館は電車の旅にも好適だ。駅からわりと近い。野岩鉄道・川治湯元駅から5~6分ってところ。帰りは聖坂、じゃなくて上り坂となることにちょっと注意すればアクセス良好といえる。なお最寄りっぽい名前の川治温泉駅からだと2kmほど歩くことになるからおすすめしない。

車で行く場合は鬼怒川温泉へ行くことをイメージして、その延長だと思えばOK。東京方面からだと日光宇都宮道路・今市ICから国道121号を北上すれば、鬼怒川温泉・龍王峡を経て川治温泉街に入る。男鹿川沿いのホテル群を過ぎて川を渡り山越えの道が始まりそうになって温泉神社の看板が出てくる場所がゴール。もうちょっと先に駐車場があります。

自分は川治温泉に着いたらまず共同浴場・薬師の湯へ行った。絶好のぬる湯に1時間以上も浸かってすっかりできあがってしまい、男はつらいよのテーマ曲を脳内に流しながら聖なる坂を登っていったのである。

入館する前にせっかく温泉神社の看板を目にしたのだから寄ってみるか。はい、こちらになります。
川治温泉神社
道は行き止まりでなくもっと先まで続いており、最終的にはちょっとした山登りになるようだ。そんな元気はないのですぐに引き返して入館。冒頭写真に見られる通り、建物は前面にロビー部となる和風の平屋、奥に4階建ての本棟がつながっている構造。


旅の特別感を醸し出す旅館

なんだかとっても洒落ている

玄関からいきなりシャレオツなムードあり。やってくれますな。思わず靴を脱いで歩きそうになる廊下を土足のままどうぞと案内され、フロントへと誘導された。お値段相場的にビジネスホテル風に割り切った応対なのかと思ったら、そこはとてもしっかりされていたので感心。いやー上客でもないのにすいませんね。

平屋部分から本棟へ続く廊下が中庭を突っ切る形になっている。この庭も結構な雰囲気だしロビーと組み合わさるとシャレオツが倍増する。和モダンといった風情だ。
中庭とロビー
2つある池の一方には明るい鮮やかな色のコイが泳ぎ、もう一方には黒っぽいコイがいて餌をやることができる。お子様は大喜び。
コイの泳ぐ池
館内はとにかく新しめできれいでちょいちょい洒落た演出がなされている。そして各種案内板は英語表記。日本語は併記すらない。根拠なく思うに、本来は訪日客を当て込んで立ち上げた、ちょっといいお宿なのではなかろうか。コロちゃん騒動が落ち着いて再び海外からの旅行者に門戸を開いたら自分のような者はノーチャンスになるだろう。こりゃあ一期一会ってやつか?

こたつのある、おこもり向きの部屋

さて、案内された部屋は3階の、おひとりさまにはもったいないくらいの一室だった。10畳に加えてこたつとくつろぎチェアスペース。ふとんは最初から敷いてあった。
坂聖・日光 10畳客室
まだ夜は冷える時期だったからこたつはいいね。しかも掘りごたつで足を伸ばせる。もちろんシャワートイレ・洗面台あり、金庫あり、空の冷蔵庫あり。探検した範囲でお酒の自販機は見つからず。WiFiは説明にあった情報では接続できず、でもキャリア回線で用は足りたから気にしない。

うーむ、このスペックの部屋をよく一人泊OKで出しているなあ。自分は得する側でありがたい話なんで全然いいですけど、いやー本当すいませんね。
外の景色
障子を開けて外が見えるようにし、くつろぎチェアに身を沈めてリッチな気分ごっこをしてみたりする。


熱い好きにもぬるい好きにも対応する大浴場

大浴場にも洒落っ気を出している

大浴場は本棟1階。入口付近に冷茶サービス付きの休憩コーナーあり。
湯あがり休憩コーナー
のれんに男湯とか女湯とか殿方とか姫とか書いてない。青系か赤系かの色で判断すればたいがい間違えないはず。翌朝になると男湯と女湯が入れ替わる。夕方~夜にかけてはロビーに近い側が男湯だった。館内履きを間違えられないようにするためのクリップが脱衣所入口にあり。

脱いだ浴衣などをしまうのはかごではなくて深さのある収納ボックスみたいなやつ。何と呼んでいいのかわからん。あえて難点をあげれば各箱が空いているのか使用中なのかがぱっと見わかりにくい。

掲示されている分析書には「単純温泉」とあった。詳細は不明だが、もともとぬるめの川治温泉だから少なくとも加水はしてないんじゃないかな。

熱めの内湯とぬるめの露天風呂

内湯は6名分の洗い場と凹の字型をした10名規模の浴槽がひとつ。湯口は平たくて幅広で、結構な量のお湯が投入されていた。循環しているかもしれないが浴槽内のお湯はどんどん入れ替わってくれてそうな感じがする。

無色透明のお湯に浸かってみた。熱め寄りの適温だ。加温しているかもしれないな。匂いの面では塩素臭は感知されず、弱いながらも温泉らしい特徴があった。万人向きのマイルド温泉といっていい。

大浴場の中もお洒落な和モダンテイストで作ってありますな。癒やしを求めて温泉旅行に来る者にとって、日常生活の俗っぽさから離れたこういうテイストの方が気分転換やリフレッシュに寄与するだろうから、よろしいのでは。

露天エリアには5名規模の岩風呂があった。こちらもお湯の投入量は十分。ありがたいことにぬるめだった。ぬるいのが好物なんで、内湯とどっちに居座るかと言われれば露天だなあ。まあそこはお好みでどうぞ。

岩風呂の周囲はちょっとした庭風に整えられており、その向こうは目隠しの塀で囲われていて眺望はない。とはいえ開放感はあって、ぬるいこと・独占チャンスが多めなこととの合わせ技でかなりのんびりできる。ええでええで。

形状も温度も反転したかのようなもう一方の浴場

翌朝は男女入れ替わりにより、もう一方の浴場へ行った。基本的には先ほどと同じ構造・同じお湯だ。脱衣所と浴室の位置関係や内湯浴槽の凹の字型は前日入った浴場を鏡像反転したかのようだ。露天風呂のまわりが庭になってなくて囲いが近くに迫っているのが違うくらいか。

レイアウトが鏡像反転しただけでなく、ご丁寧にお湯の温度まで入れ替わっていた。つまり内湯がぬるくて露天が熱めだった。しかもぬるさの度合いがさらに増している(個人的には大歓迎)。こうなると露天より内湯にロックオンしちゃうな。

マイルドでぬるい=いくらでも入っていられる=すばらしい。露天が熱いのも使いようで、たまに露天風呂に入ってから内湯へ戻ると温度差により冷温交互浴のようになる。この不思議な感覚はやみつきになりますわ。起床後の入浴では、軽く30分も入ればいいかと思って臨んだところ、調子に乗って1時間近くも入ってしまった。


食事は自分にはちょうどよい感じだった

夕食は一杯やりつつ春野菜や湯葉を

坂聖・日光の食事は朝夕とも1階食事処で。個室ではないものの、他のグループとは十分に距離を取ったテーブル席が用意されている。夕食のスターティングメンバーがこちら。
坂聖・日光の夕食
直後に3種のお造りもやってきた。そのうち1種は湯葉だった。煮物にも湯葉がありますね。やはり日光だけに。あとは春野菜鍋・サワラ漬焼きなど。品数も分量もビールを飲みつつで多すぎず少なすぎず、ちょうどよいボリュームだった。

締めのご飯も残さずいただいて(おかわりはしなかったけど)、最後のデザートはいちごのロールケーキ。いちごか、栃木だけに。そういえば提供中のお酒を並べたテーブルの上にいちごのワインがあったな。

朝食はオーソドックスで十分

朝食は同じ席でこちらになります。
坂聖・日光の朝食
とりたてて珍しかったりびっくりさせるようなものは見当たらない。でも朝はこういうのでいいのよ。はっきり言ってふだんの朝食と比べたら豪華絢爛レベル。白飯だけでも単体で楽しんじゃうし、いいんじゃないですかね。

朝食後はロビーでコーヒーがふるまわれる。洒落たロビーで庭を眺めながら優雅にコーヒータイム…うーんマンダム(違う)。

 * * *

川治温泉街の中では高台寄りにあるため川を眺めながら風呂に入れるわけではない。しかしそういった要素にこだわらないなら、リーズナブルでありながらちょっといい雰囲気も味わえて、なかなかの穴場なのでは。個人的にはぬるいお湯も良かった。

いずれは世界各国から客が集まる宿になるんだろうね。自分は今だけの数少ないチャンスをものにしたのかもしれない。