指宿と聞けば温泉、しかも砂むし温泉を連想する。行ったことなかったし、権威ある文献情報にあたったわけでもないのに連想してしまうのは、長年あちこちから少しずつ「指宿=砂むし」というメッセージを吸収してイメージを作り上げていったからだろう。そしてそれは間違っていないと確信する。
だから指宿へ行こうと決めた時、砂むしをぜひとも体験しておかなければいけないと考えた。砂むしをスルーして普通の温泉風呂に入るだけでも満足できるだろうけど、やっぱりどこか物足りなさは残るに違いないと。
定番の砂むし施設を検索したら「砂むし会館 砂楽(さらく)」が該当した。観光客も多く訪れるようだから、「それがし砂むしは初物ゆえ…」みたいな下級武士の扱いにも慣れているだろうし、安心だ。いざ参ろう。
指宿温泉「砂むし会館 砂楽」へのアクセス
砂楽は指宿温泉街の中にある。とはいえJR指宿駅から近くはない。徒歩だと1.5km・20分近くかかる。ところでまったく関係ないけど、鹿児島旅行の後の正月、テレビで六角精児の呑み鉄本線という旅番組の再放送をやっていて、指宿駅前の飲み屋さんが出てきた。おでんとかさつま揚げとか焼酎とかめちゃくちゃうまそうだったな。指宿ええとこや。※温泉関係では駅前の足湯に浸かるシーンがちょっとだけあった。
まあいいや。駅から南東方向へ歩いていって、摺ヶ浜海岸にぶつかるあたりに砂楽がある。砂むしはどうしても砂浜でやるシーンを連想するから、イメージにぴったりの立地といえよう。ただし後述するように海を見ながら砂をかぶるわけではない。
実際は鉄道でなくレンタカーの旅だった。先に山川のヘルシーランド露天風呂たまて箱温泉に立ち寄った後、長崎鼻と鰻池を見学してから砂楽を目指した。
温泉街の通り沿いだし、カーナビあったし、迷うようなことはない。駐車場が建物と別の敷地であることだけ注意かな。通りを一本外れた100mほど離れた場所になる。近くまでくれば看板が出ているからわかるはず。
砂楽の前まで来たら奥に砂浜が見えたので記念撮影。この浜の左手方向に砂むし場があった。そっちにカメラを向けるとさすがにまずい。慎重に逆側を撮影する。
念願の「指宿で砂むし」を体験してみた
入館してから砂むし場までの段取り
では入館しようか。エントランスは2階になります。
普通の温泉施設には慣れているが砂むしは勝手がよくわからんな。丁寧に案内を読みながら進む。えーと、まずフロントで料金支払い。砂むしと普通のお風呂があり、お風呂のみなら620円、砂むし込みだと浴衣が付いて1100円。砂むしの後はお風呂で砂と汗を洗い流すことになっていて砂むしのみのコースはない。
また砂と頭の間に挟んでおくタオルが必要で、持参するか200円で買うか。自分は一応持参していたけど、先のたまて箱温泉で使って濡れているのが気になって、結局買った(使用後はお持ち帰り可)。濡れたタオルだと砂がべっちょり絡んで収拾つかなくなりそうで。実際どうだかは知らんけど。
それから1階に下りて脱衣所へ。ここから先は撮影禁止の注意書きあり。はい、スマホの電源オフ。脱衣所では鍵付きロッカーに靴や服をしまい浴衣に着替える(ノー下着)。タオルを手に案内の矢印に従って進むとサンダルを履くように促されて外へ出る。
そうして先ほど写真撮影した浜まで歩いて砂むし場へ。そこは目隠しなのか日除け風除け雨除けなのか、テントのようなもので覆われている。だから寝転がりながら海はもちろんのこと空も見えない。海水浴で砂に埋まってキャッキャするイメージとは違う。
熱い砂にガッチリ固められる
砂むし場に着くとサンダルを脱いで「こちらへ横になってください」と誘導された。言われた通りに墓穴、もとい四角くて浅い穴の中で仰向けになるとスコップでバンバン砂を被せられた。うお重い~。砂の重みで身動きが取れなくなる。かかとをちょっとずらすくらいがせいぜい。
地面や砂が熱を持っていて蒸されるわけなので、人によっては熱すぎる、あるいはもっと熱くしたいなどと感じるかもしれない。そのへんは砂の質と量を調整してもらえるようだ。隣のおじ様は足をもっと熱くとか、こっちをもっと冷ましてとか、細かく注文をつけていた。
砂を被ったらあとはじっとしているだけ。地面に触れて熱くなりやすいかかとやお尻の位置をずらすためにもぞもぞ動くのはかまわない。目安は10分とのこと。長時間の我慢は禁物。低温やけどに注意。
10分間の砂むし体験とその効果
個人の感想としては、サウナほどの熱気ではなく、我慢して耐えるほどではなかった。かかとやお尻もそんなに熱々にならなかった。10分だったら全然余裕。体験中は景色は見えないから天井の一点を見つめるか、目を閉じてリラックスに努めるがよろしい。設置されている時計をたまにチェックし、各自の判断で適当に見切りをつけたら、自力で砂から脱出して館内に戻る。
砂は案外さらっとしており、手でパッパッと払いのけるだけで浴衣もタオルもわりと砂を落とせる。砂むしの威力を思い知らされたのは浴衣がびっしょり濡れていたこと。気づかないうちにものすごい発汗してたんだなあ。デトックス効果かなりありそう。
館内へ戻ったら矢印に従って砂落とし場へ。まず浴衣を脱いで返却口にポイ。で、かけ湯的なことをして体の砂を洗い流す。それから浴室に入る。この時点で持参または買ったタオルを必ず手にしているはず。
仕上げは大浴場でさっぱりと
ここからは一般的な大浴場だ。洗い場は15名分。しっかり洗髪して首から上の砂も完全に洗い流しておこう。
浴槽はメイン内湯がひとつと水風呂。メイン浴槽は結構大きくて20名は余裕でいけそう。浴槽内のタイルの色じゃないかという気もしつつ、お湯は薄い褐色を呈しているように見える。浸かってみたら適温の範疇で熱め寄りだった。
最初に脱衣所で見かけた分析書には「ナトリウム-塩化物泉、高張性、中性、高温泉」とあった。湧出温度は80℃台だったかと。熱いわけだよ。お湯の匂いを嗅ぐとやっぱり塩化物泉にありがちな匂いを感じる。
壁に「この温泉は単なる海水が温められたものではありません」との説明文が掲げられていたんじゃなかったかな。あと「薩摩藩士がこの温泉で激務の疲れを癒やした」とも。たしかに砂むし+このさっぱりしたお湯に入ったら相当リフレッシュできそうだ。
* * *
砂むしで指宿らしさを体験できたので満足感たっぷり。その後の温泉ですっきりさっぱり。心なしか体が軽くなったような気がする。自分はサウナーではないんでわからないけど、サウナで整うってのはこういう感覚を指すのかもしれないな。
おまけ:薩摩半島最南端の長崎鼻
駐車場選びはテキトーに
砂楽を訪れる前に立ち寄った長崎鼻について。※鰻池はまた別記事で。
薩摩半島最南端の岬である。市営無料駐車場の看板をあてにして岬の先へ先へと進んだけど、どこにあるのかよくわからなかった。そのうちバス転回所のあたりで誘導員に制止された。この先は行き止まりだ、ここに止めろという。そこのお店で何か買えば無料ですからね、と。
ははあ、つまり土産店の私設駐車場か。ありがちなムーブですな。ちょうどお土産を物色したかったので利用させてもらった。地元経済活性化に貢献したぜ。
見どころは龍宮神社と灯台
おかげさまで岬の先端まで歩く距離は少なくてすんだ。道中にはまず龍宮神社がある。ああ、これはたしかに龍宮城ですね。
長崎鼻は浦島太郎伝説発祥の地だそうな。だからこのような神社があるんだろう(歴史的建造物ではないが)。もう少し先へ進むと砂浜と開聞岳がセットで見えるスポットがある。浦島太郎が亀を助けた浜はここかな。ウミガメの産卵地らしいし。
駐車場から10分もかからず先端の長崎鼻灯台に着いた。よっしゃあ、目的達成。
灯台より先は岩礁地帯になっている。階段がついていて岩場へ行こうと思えば行ける。磯釣りしている人がいたし。
長崎鼻見学は以上で終了。近隣には長崎鼻ガーデンパークという動植物園やフラワーパークかごしまという花のテーマパークもあるから興味があればあわせてどうぞ。