大庭園で楽しむタマゴ風味のツルツル湯 - 吹上温泉 みどり荘

吹上温泉 みどり荘
鹿児島遠征の最終日は指宿から空港へ向かって北上しながら、途中どこかで立ち寄り湯するつもりだった。いろいろ検討した結果、日置市の吹上温泉「みどり荘」にしようと決めた。立ち寄りと言うにはちょっと遠回りかもしれないけど、まあいいでしょう。

みどり荘に目をつけたのは、九州八十八湯めぐりという企画の対象施設だったから。露天は白、内湯は黒、2色の湯の花というフレーズに惹かれた。しかも口コミも良さげなのでお湯のクオリティに間違いはあるまい。

当時は残念ながら湯の花を確認できなかったものの、硫黄の香る源泉かけ流しのお湯はたしかに良質であった。庭園風の広大な敷地と風呂から眺める景色も推しポイントだ。

吹上温泉「みどり荘」へのアクセス

基本的には車で行く前提か

その昔、鹿児島本線・伊集院駅と指宿枕崎線・枕崎駅を結ぶ鹿児島交通枕崎線(南薩線)が運行していた。昭和末期に廃止されてしまったが、もしまだ存続していたなら、鉄道旅で吹上温泉を目指すことも可能だったかもしれない。伊作駅跡から3km弱なので。

今だったら路線バスを乗り継いでなんとかするのだろうか。よくわからない。基本的には車でしょうね。

自分は朝、指宿温泉・民宿たかよしをチェックアウトしてからレンタカーで国道226号を鹿児島市方面へ北上。帰りの飛行機は夕方だから空港へ直行するには早すぎる。喜入というところで進路を西に変えて山道を登っていった。走行車はほとんどなくマイペースで運転できるから準ペーパードライバーでもストレスを感じなくてすんだ。

温泉街を少しだけ外れたところ

峠を越えて下りにかかると茶畑が目につくようになる。ここは知覧。お茶の産地として有名だ。お土産にお茶を買っていこうっと。知覧は他にも武家屋敷や特攻平和会館で知られる。それらの見学もしておこう。

…知覧を出立する頃には正午を過ぎていた。ここからいよいよ吹上温泉に向かう。車は南九州市から南さつま市へ。南薩線のかつての主要ターミナル駅が南さつま市の加世田にあり、駅跡にメモリアル的な展示がいくつかあると知ったのは後日のことだ。事前に知っていたら行ってたかも。いや、時間的に厳しかったかな。

道の駅「きんぽう木花館」を経由して日置市へ入り、標識にしたがって右折して湯ノ浦川沿いにしばらく進むと温泉街が現れた。みどり荘は看板が出ているからすぐわかる。脇道にそれて100mほどは狭い道が続く。


驚嘆するポイントが多いみどり荘

温泉旅館のイメージを超えたお屋敷

入口の門を前にして驚いた。なんじゃこりゃあ。
みどり荘の門
間違えてお寺か名士の豪邸に足を踏み入れてしまうんじゃないかと心配して何度も見直す。うん、どうやらみどり荘に間違いないようだ。では中へ。

旅館の建物が1棟あるだけではなかった。広い敷地内に宿泊棟・湯小屋などいくつかに分散しているようだ。ひとまず目の前の受付・事務所の建物(冒頭写真)に入る。自販機で利用券を購入して受付に提出。この自販機でドリンク食券なども買えるし、ちょっとした休憩コーナーあり。

庭園散歩の風情で向かう浴場

続いて案内標識にしたがって遊歩道を大浴場まで歩く。鴨が泳ぐ池を横目に数分程度の庭園散歩といった趣きだ。優雅ですなあ。どうみても普通の温泉宿ではない。この凝りようはちょっとすごい。
みどり荘敷地内の池
女湯棟への分岐点を過ぎて、やがて次の分かれ道まで来た。右斜めに男性用露天風呂、右に貸切家族風呂+男性用内湯の棟。最初は内湯へ行ってみよう。脱衣所には100円ロッカーがあるほか、いろいろ観光ポスターが貼ってある。また分析書も貼ってあって「単純硫黄温泉、低張性、アルカリ性」だった。

分析書の温度記載については露天風呂を含めると高温泉とか温泉とか低温泉とかいろいろだった。源泉名に23号とか21号とか異なる番号が書いてあったから温度の異なる源泉を混合しているかもしれない。

ツルツルする本格的な硫黄泉

浴室へ入るとタマゴ臭がモワッと香ってきた。本格的な硫黄泉を楽しめそうだぜ。先客が1名。洗い場は5名分でシャワーはない。シャンプー等は秘湯くまざさシリーズを用意している。そういえばみどり荘は日本秘湯を守る会の会員宿である。会員宿にはこのくまざさシリーズを置いているところが少なくない。

浴槽は横長の8名サイズ。2箇所の湯口からお湯が投入されている。「黒い沈殿物は湯の花です」との注意書きがあったが、お湯は完全な無色透明で、中で何かが舞っているようには見えない。今日は湯の花が見られないコンディションだったようだ。

浸かってみると熱め。長く粘るのは無理ですね。先客もずっと縁に腰掛けていて肩まで浸かることはほぼない。それでもしっかりした源泉かけ流しの温泉には違いない。湯口のまわりは硫黄ぽい析出物がびっしりこびりついており、浴槽内のお湯は結構なタマゴ臭を放っているし、温泉らしいツルツル感がある。こういうのが好きな人はいると思う。

窓から先ほどの池が見える。風流というか自然派な感じがいいじゃないの。季節はすでに冬に突入していたが、春とか秋とかだったらもっと見応えありそう。


飲泉可能な露天風呂

黒く見えるかけ湯

続いて露天風呂へ。ロッカーを使っているとか、あとで再度内湯に入りたいという場合は、置いてあるサンダルを借りて露天と行き来すればよい。もちろん服はいったん着ること(当たり前)。

露天風呂には誰もいなくて独占状態。やったぜ。中は簡易な脱衣所と浴槽がひとつのシンプルなつくり。洗い場があったかどうか忘れた。少なくともシャワーはないし、「露天風呂で石鹸・シャンプーの利用はお控えください」との断り書きがあるから、洗身洗髪は内湯でどうぞ。

かけ湯槽は石造りで内部が黒い。お湯が黒いんじゃなくて石についた色だよな…あふれて流れ出したお湯の通り道は逆に硫黄と思われる作用で白い筋ができていた。白黒の対比が目立つ。

星空のロマンを想像させる環境

では浸かってみましょう。4~5名サイズの浴槽に注がれるお湯はやはり無色透明で湯の花は見られない温度や浴感も内湯と同様。寝そべったカエルの姿をした湯口から飲泉できるようになっており、ちょっと飲んでみたらタマゴの風味が結構強かった。

露天風呂の開放感はさすがだ。周囲は緑豊かだし、庭園の中の池を鑑賞する気分を味わえるし、近くの枝に小鳥がやってきたりして、普段の生活とはまったく異なる旅情が半端ない。もし泊まりで来て夜に露天風呂へ入ったら星がよく見えそうだ。あふれるロマンがたまりませんな。

露天風呂を堪能した後は再び内湯をちょっと楽しんで終了。まだ時間に余裕はあるが、鹿児島空港でお土産を物色したいし、ご当地ラーメンとビールで一人打ち上げをしなければならんので、仕方ない。

  * * *

みどり荘は温泉の湯質目当てで行ってもいいし(通常なら2色の湯の花が見られるという意味でも貴重だろうし)、演出というか周辺の環境込みで雰囲気を味わう切り口でも十分すぎるほどの満足感を得られるだろう。

こうしたレベルの温泉となると、入浴は宿泊者限定とか、立ち寄り湯をやるにしてもランチセット付きでリッチ層向けのお値段設定とかになりがちなところ、庶民価格で立ち寄り湯に対応していただけるのはとてもありがたい。非日常体験をさせてもらったおかげで、吹上温泉でテンションが吹き上がってしまった。
 

おまけ:小京都・知覧の観光

さまざまな庭園を見学できる武家屋敷

有名な知覧の武家屋敷に寄ってみた。武家屋敷通りに沿って、かつての武家屋敷群が並んでいる。通りを歩くだけなら無料、屋敷内の庭園に入るのは有料(530円)。普通は中の庭園まで見ないと意味がない。

自分は東側から入って西向きに歩いた。最初の森重堅庭園は大河「西郷どん」のロケに使われたらしい。まあなんかそれっぽいね。
知覧 森重堅庭園
二ツ家なる独特な様式の旧高城家住宅もあった。なんとなく1ヶ月前に行った遠野の曲り家を思い出してしまった。
知覧 旧高城家住宅
武家屋敷通りはこんな感じで大変情緒がある。通り沿いのすべての家がそうではないが、一部では高い生垣の向こうに屋敷と庭園が保存されており、全部で7つの庭園を見学できる。
知覧 武家屋敷通り
たとえば次の写真は佐多美舟庭園。
知覧 佐多美舟庭園
庭園を見学しながら通りを往復するのに1時間弱。車はよくわからんから目についた有料駐車場(1時間200円)に止めたが、ちゃんと調べれば無料のもあったみたい。

特攻平和会館もぜひ

続いて特攻平和会館へ。南九州市知覧文化会館前の無料駐車場を利用できる。館内のほとんどが撮影禁止であり、写真をここに示すことはできない。

若くして犠牲となった特攻隊員の遺書・遺品が多く展示されていて胸を打つと同時に、冷静に考えたらやらないはずの特攻まで突き進んでしまった世の流れというものを思わずにはいられない。※本記事掲載時点の世界情勢をふまえて振り返ると、その思いは一層強くなる。

そして敵国との戦争を近年のアレとの戦いに置き換えると、現代の世相にも通ずるものがあるな。現代版の欲しがりません勝つまでは路線の爪痕を振り返る記念館もいずれ必要になるんじゃないか。

さて、特攻平和会館内で撮影を許可されているのが零戦展示室。海から引き揚げた零式戦闘機の残骸を展示している。いろいろと生々しい。
特攻平和会館 零戦展示室
社会見学か修学旅行風の学生姿もちらほら。ここは行けるものなら行っておくべきだろう。なお、お隣のミュージアム知覧は戦争に関するものではなくて南薩の歴史風土に関する展示館である。