ツルツルの温泉と常陸秋そばに「快なり!」 - 出羽の湯 宝来館

出羽の湯 宝来館
2022年、温泉めぐりをちょっとお休みしている間に世界はがらっと変わってしまった。緊迫する国際情勢、物価と金融市場の変調、オミちゃん大暴れ。そんな大きな話を持ち出す以前に自分の健康面が妙に心配になっていた。冬場の乾燥と近年には珍しい寒さのせいか、すっかりおかしくなってきてる。そろそろ温泉へ行ってケアしないとやばい。

北関東に行ってみたかったのだけどまだ大雪リスクが残る時期ではあった。いろいろ考えて茨城の平野部だったら大丈夫じゃないかとの結論に至り、泉質に関する口コミ情報に興味を引かれた常陸太田市の「出羽の湯 宝来館」に決めた。

加温した冷鉱泉ながらなかなかのお湯で、気になっていた体の不調箇所に効いてくれたと思う。

出羽の湯「宝来館」へのアクセス

宝来館を選んだ動機

姉さん事件です。水仕事が多いわけじゃないのに手荒れがひどいです。冷静に考えて冬の寒さと乾燥のせいだと思いつつも、初めて見るレベルの惨状だったから、内臓疾患の兆候じゃないかと一時焦ってしまい…。手の指がやたらとむくんで曲げにくいし、第1・第2関節付近を中心に内出血のような赤い斑点が広がり、皮膚はあちこち一文字に切れて血がにじむ。
ひどい手荒れの惨状
大げさに騒ぎすぎ? 申ぉーし訳ございません。あと体が芯から冷え切ってだいぶバイタルが弱ってる感じがする。これは明らかに暖房不足のせい。我慢しないでエアコンつければいいんだけどね。とにかく目下の健康懸念は温泉が解決してくれるに違いない。

手荒れ対応を重視してお肌に良さそうな温泉を探したところ、常陸太田の宝来館はとてもツルツル・ヌルヌルのお湯だということで、ちょうど合うんじゃないかと期待した。温泉に全身ゆっくり浸かれば体の芯から温まってすべて解決、のはず。

特に深い理由もなく、年明けからしばらく旅行をお休みしていた。その間に遊んだドラクエビルダーズ2<たっぷり遊べる体験版>はモンゾーラ島ボス戦の手前で止めたので無料の範囲に収まった。おかげで遠征資金は溜まっている。クリエイターに正当な対価を還元するためにも正式版を購入するべき(キリッ)だったけど、温泉最優先モードになっちゃったから課金前に中断。申ぉーし訳ございません。

鉄道+バスでも行けるが車利用向き

当初は鉄道旅を計画した。水郡線支線の終点・常陸太田駅からバス一本、もしくは常磐線・大甕駅からバスを乗り継いで棚谷入口下車徒歩6分とのことだが、ちょうどいい時間の便をつかまえるのが難しそう。とくに別の温泉に立ち寄ろうとした場合には。加えて雨天の場合を想像したらなんだか弱気に傾いてしまった。

そこで今回も富豪的解決=レンタカー利用。ゲームを購入せずに浮いたお小遣いがここで生きたぜ。スケジュールの自由度が高くなり、宝来館へ向かう途中で水戸偕楽園の見学と常陸太田市内の川中子温泉に立ち寄り入浴を計画する余裕ができた。

しかし実際に行ってみると、川中子温泉は当時の世情により常連客以外お断りだった。残念。急きょ太田温泉やまぶきの湯という施設にトライするも県外客お断りでアウト。総合福祉会館内の温泉施設という性格上、慎重な対応にならざるを得ないのだろう。こうして立ち寄り入浴がなくなり、宝来館が2022年最初の入湯ということになった。

水戸付近から当館までの間に極端に走りにくい道路や急な山道はない。通常の平野部の一般道が続くから心配ない。近くまでくれば看板が出ている。とはいえ田園の中に突然現れる一軒宿だからカーナビを頼るのが無難でしょう。


懐かしい雰囲気が残る温泉旅館

ではチェックイン。どちらかといえばレトロな雰囲気のある小規模な温泉旅館。あちこちに書画・置物が見られるほか、自分の世代にも見慣れないような昔風のマシン(乾燥機?とか)が置いてあったりする。
宝来館のロビー付近
客室のある2階の廊下から年季の入った建物が見えた。通常の館内の行動範囲で達するところでははないと思われる。その奥は裏山。
年季の入った家屋と裏山
泊まった部屋は6畳和室だった。古き良き田舎の家みたいな風情があって自分は嫌いじゃない。ドアは内側のドアノブのポッチを押し込んで閉めるとロックがかかる懐かしいタイプだから鍵の閉じ込めに注意。カーテンは2重ではなくレース系のみ。布団は最初から敷いてあった。
宝来館 6畳和室
トイレは2階に男女共同のがある(男性用の小×1とシャワートイレの個室×1)。1階にもあるようだけど使ってないから詳細不明。洗面台は部屋内にある。金庫なし、冷蔵庫なし、WiFiあり。温泉に入ってゆっくりするには十分じゃないですかね。

窓の外はこのような感じ。すぐそばを山田川が流れていて、遡っていくと支流に竜神ダム・竜神大吊橋がある。昔行ったなあ。
窓の外

この温泉なら健康トラブルに効いてくれるだろう

炭酸水素ナトリウム成分豊富な冷鉱泉

風呂は1階の廊下を奥へ奥へと進んだ先にある。つきあたりに女湯・男湯の順で並んでいた。入口の前の壁に貼ってある分析書によれば泉質名はなく「炭酸水素ナトリウム成分をもって温泉法上の温泉と認定する」的な内容。湧出温度14℃だから冷鉱泉になるのかな。PHは8.9。

脱衣所はレトロかつシンプルなつくりで、ロッカーとか近年の日帰り温泉施設風の設備はない。洗面台はあります。

浴室に入ると温泉のなんともいえない独特な匂いがした。全般に家庭風呂を何倍かに大きくしたような印象で、床や壁や浴槽の雰囲気は家庭風呂というより銭湯に近い。べつに秘湯の檜風呂的な要素を求めているわけではないから、いつでも独占状態でゆったり入れたことで十分満足だ(この日の客は自分ひとりだけだったみたい)。

ツルツル・ヌルヌルのお湯

洗い場は4名分。浴槽は見知らぬ者同士なら3名までのサイズ。同じ釜の飯を食った仲間同士なら4~5名詰め込めるかもしれない。壁から蛇口が2本生えており、ひねれば源泉や加温した新湯が出てくるのかと思いつつ、下手に触らないでおいた。

他に明らかな湯口はなく、お湯のオーバーフローもない。溜め湯なのかとも思うが、いつ行ってもしっかり適温に保たれていたから、加温循環させているのかなあ。たとえば2箇所からジャグジー風に泡がボコボコ吹き出しているのは気泡と一緒にお湯も噴き出してるとか。

無色透明のお湯は適温。最初ちょっと熱く感じるけどすぐに慣れる。そして評判通りにツルツルの肌触り。ヌルヌルと言ってもいい。手荒れにめっちゃ効いてくれそう。これは期待通り。お湯に鼻を近づけてみると微かに甘い硫黄香。おー、いいぞいいぞ。

「うあー、効くぅー」というおっさん唸りを口には出さず心の中で何度も唱えてしまった。夢うつつで長時間粘れるぬる湯とは違うが浸かっていると気持ちいい。

泡ブクブクの肌スベスベ

普通の湯船と違うのは、この規模にして上に書いた通り気泡をポコポコ噴き出させているところだ。ちょっとした炭酸泉ぽい雰囲気を味わえるから悪くない。血行が良くなって治りが進まないかなーと手の甲を泡の中へ押し当ててみたり。

そんなこんなで独占なのをいいことに夕方2回・夜1回・朝2回入った。手荒れが即消えるわけではもちろんないけど、改善の方向に変わってきてくれたようだ。

さらには入浴後は肌がやたらスベスベになったし、ふとした瞬間に浴室で嗅いだあの匂いが体からぷ~んと臭ってくるのだった。冷鉱泉だからと侮れないね。こいつは本物だぜ。


常陸秋そばとともに楽しみたい田舎料理

ボリュームたっぷりの夕食、できればそばを付けたい

茨城県北は常陸秋そばのブランドで知られている。どんなんだろう、食べてみたいね。当館を予約する時に常陸秋そばプランがあったので選んでみた。夕食会場は1階の、風呂と反対側のつきあたりの広間。テーブルがいくつか配置された中で今宵は自分ひとり。主力メンバーがこちら。
宝来館の夕食
鮎はもう食べ始めちゃいました。その気になれば頭の一部を除いて骨ごと食べられる。鮎に加えてカレイの煮付けってのはすごいね。それだけでお腹いっぱいになりそう。ビールは炭酸が胃袋を圧迫しそうな気がして日本酒にした。松盛という銘柄に宝来館のラベルを貼った瓶。

鍋の中身は豚肉と野菜。ごまだれでいただく。さらに天ぷらもがっつりあってかなりのボリューム。そこへ満を持してやって来たのが常陸秋そば。
常陸秋そば
普通に一人前あるやん…ではいただこうか。自分はグルメ家じゃないので味の評論はできない。噛むほどに甘みが広がるとだけ言っておこう。さすがブランドそばですな。ちゅるっとノド越しで食べてしまうのがもったいない。そばつゆも好み。

さあもう限界です。カレイをなんとか完食したらご飯2口くらいでギブアップ。そば湯と汁物は残した。本当に食が細くなったなあ。近年やりがちな「膨満感で夜中まで苦しむ」をまたやっちまいました。ビールを避けてもだめだったか。

朝食はちょうどよいボリューム

朝起きたらどうにかゆうべの分は消化できた感じのコンディション。ひと安心で同じ広間へ向かい、オーソドックスな和定食を。ブリの身がぶ厚い。
宝来館の朝食
思ったよりスムーズに腹に収まってくれたので良かった。朝食のボリュームとしてちょうどいいですね。

ところで食事中ふと目についたのが床の間の甲冑。なにか謂れのあるものなのか。よくわからぬまま甲冑に見つめられながら食べることになった。あと元茨城県知事の「一期一会」の書が掲げてあった。こういうところが田舎のお屋敷っぽい。
広間にあった甲冑
 * * *

今回の主目的である手荒れ改善には効果あったと思う。美肌の湯と言えそうな泉質が良かったのだろうし、ずっと冷え切った状態で放置していた手を40℃以上のお湯にさらし続ける時間を何度も繰り返したことも効いたんではないか。

まあ自分の事情を抜きにしても、気取らないレトロ旅館という趣向を好む方であれば、ツルツルの温泉や常陸秋そばを目当てに訪れるってのはありじゃないかと思う。


おまけ:梅はまだ早すぎた水戸偕楽園

今回の旅行の最初の訪問先が水戸偕楽園。金沢の兼六園・岡山の後楽園にならぶ日本三名園のひとつだ。駐車場事情はよくわからんので前の車についていって桜山第三駐車場に止めた。500円。

時期的に梅の花を期待したら、ん? 花が見えないな。
偕楽園前の公園
吐玉泉口というところから本園内に入る。300円。中心部まで歩いてみたが、やっぱり梅は不発。例年よりも開花が遅れているようだ。ずっと異例の寒さだったからな。
開花前の梅
…と、もういきなりやることねっす。庭園内の好文亭をせめて見ておくか。200円。徳川斉昭ゆかりの歴史的建築物だ(復元)。
好文亭
中は風流な感じの部屋がいくつも連なり、3階の楽寿楼からは見晴らしの良い景色を一望できる。
楽寿楼から望む景色
ここで斉昭公もしくは慶喜公になりきって、心の中で「快なり!」とつぶやくと、すこぶる気分がいい。