おそばが自慢の街なか湯宿 - 湯村温泉郷 湯志摩の郷 楽水園

湯村温泉郷 湯志摩の郷 楽水園
2021年冬。わりと急に温泉旅行へ行く話が持ち上がった。今まで温泉に縁が薄かった者もいる顔ぶれを考慮して、個性が強すぎないところ、マイカーで行きやすいところ、季節的に雪・凍結リスクのないところ、観光と組み合わせやすいところを検討した結果、甲府の湯村温泉に決まった。

自分は前年に湯村温泉に泊まったことがある。あそこは甲府の市街地といったロケーションでアクセスは良いし、泉質や温泉街に並ぶ各宿の雰囲気には万人向きの安定感を期待できる。よろしいのではないか。

人数・予算などの兼ね合いで宿泊先は「湯志摩の郷 楽水園」になった。結論はやはり期待通りの安定感。あとここはおそば屋さんもやっているのかな。夕食に出てきた手打ちそばが印象に残っている。

湯村温泉郷「楽水園」へのアクセス

湯村温泉郷はJR甲府駅から北西3kmくらいのところ。行き方を詳しく説明するまでもないだろう。前年の夏に弘法湯に泊まった時は甲府駅からバスに乗り湯村温泉入口で下車した。

ちなみに、バス停の目の前にある常磐ホテルは、将棋のタイトル戦がよく行われるということを後で知った。へー。この年の夏には藤井二冠が三冠目を獲得した叡王戦があったみたいね。冬には藤井対豊島の竜王戦も予定されていたがその前に決着がついてしまった。

今回は車で。一般には中央道の甲府昭和ICから北上するか、双葉スマートICから東進するかになる。我々は観光する都合から甲府昭和IC経由で北上しつつ、湯村温泉を微妙に回避してまずは昇仙峡へ。それから市内各所を見学した後に当宿へ向かった。

バスの運行ルートにもなっている大通りを西へ走り、業務スーパーを過ぎて常盤ホテルの手前の交差点を左折するとまもなく楽水園が見えてくる。第一印象で「ここかな?」と思わせる建物は「生そば処らくすい」。その隣というか、まあ一緒なんですけど、ひとつ先が楽水園および宿泊者向けの駐車場だ。


街なかの温泉宿

コンパクトにまとまった館内

ではチェックイン。建物の外観と同様にフロントやロビーは大規模なものではなくコンパクトにまとまっている。なんとなく和洋折衷的な。
楽水園 ロビー付近
お土産コーナーは商品を平積みにする単純な陳列とは違い、コレクションを展示するかのようにきれいに並べてあった。何も買わずにすいません。
お土産コーナ

富士山が見える部屋

案内された部屋は2階の大人数用の部屋。メインとなる12畳+3畳の小部屋に別途6畳の第2寝室があった。メイン側がこちら。布団は最初から敷いてあった。
楽水園 客室
第2寝室には2台のベッドが設置済み。メイン側とは直接つながっていない。もちろんエアコンはこの寝室専用のが付いているしテレビもある。
第2寝室
設備や内装は適度に更新されている様子でまあまあ新しい感じ。シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり。空の冷蔵庫あり(後精算の酒・ジュースを1本ずつ格納するタイプの昔ながらのやつを開放)。WiFiあり。山奥の秘湯宿じゃないので携帯は普通に使える。

窓の外は甲府の町並みで、晴れていればニョッキリ富士山が見える。
窓から見える富士山
眼下は中庭なんですかね。古い浴場跡ぽいのが見えますな。


クセのない入りやすいお湯

大浴場は離れ的な場所に

楽水園の大浴場は1階の別棟(?)にある。ロビー付近の自動ドアを出て半屋外のような通路をちょっとだけ歩く。冬は館内よりグッと寒く、屋外並みの温度だから風呂が恋しくなる。寒みー。
大浴場への半屋外通路
浴場前の湯あがり休憩所がこちら。ここにビールやジュースの自販機がある。
湯あがり休憩所
では男湯へゴー(男女の入れ替えはありません)。脱衣所を見る限り宿の規模に見合った広さである。分析書によれば「ナトリウム-塩化物泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」。書面上の泉温は36.3℃だから、そのまま提供してくれてれば大好物のぬる湯となる。まあでも加温してるんだろうな。今回のメンバーにいきなりぬる湯はドン引きされかねないからむしろ適温であってくれた方が好都合か。

浴室内にカランは5台。体験した範囲だと我々以外の客を見たのは0~2名だったから数としては十分だろう。よほどの団体さんとかち合わない限り、洗い場が埋まったり湯船が芋洗いになるおそれはなさそう。

適温が保たれた内湯

内湯は4~5名規模の浴槽がひとつのみ。広げたビニールシートが浮かべてあった。利用者が1名→2名→3名と増えていくにしたがって、各自の判断でシートをめくって居場所を作っていったのだが、こういう運用は初めて見た。温度をできるだけ下げたくないってことかな。経済ニュースではインフレが進行して米国のテーパリングやら利上げやら原油高やらの観測記事が目立ち始めた頃だった。温泉業界的に燃料代が厳しくてもおかしくない。

というわけでお湯はぬるくない適温が保たれている。見た目は無色透明。湯の花や泡付きは見られず。匂いにも特に強い刺激やアクの強さはない。ごく微かにヌルヌルの感触があるような気がする。

湯口からの投入のほか、湯船の中央付近の底からも投入があるようで、そこだけ湯面がモコモコっと盛り上がっていた。また壁には山梨あるあるで「フォッサマグナが~、ガイアの~」説明板を確認できる。

露天風呂はやや熱め

露天風呂もある。こちらは4名規模でやっぱりビニールシートで覆われていた。適当にめくって場所を作りましょう。左側の主力の湯口からダララーっとお湯が投入されているのに加えて右側の竹筒ぽいやつからもチョロチョロと注ぎ込まれている。

浸かってみたら内湯よりも明らかに熱かった。これは適温でも熱めといっていい部類だろう。ぬる湯派の自分はあまり熱いのは苦手だけど、寒い時期だけに他のメンバーには好まれた様子。一般受けという意味ではいい線をついたんじゃないか。

目の前はミニ庭園風に整えられ、その先は壁に囲まれている。市街地だけに遠くまでの眺望はない。そもそも大自然やパノラマ絶景を求めて来ているわけではないからまあいいでしょう。自分としては内湯をメインに据えて温度変化のアクセントをつけたい時に露天風呂へ行くという使い方になった。


安定感あり・アクセントありの食事

夕食の手打ちそばは見逃せない

朝夕の食事は1階の会場で。フロントやロビーのすぐ近くに食事処の案内板が立っている。夕食時に行ってみると部屋ごとに割り当てられたテーブル席にスターティングメンバーが用意されていた。肉と野菜と魚系がバランス良く組み合わされている。
楽水園の夕食
固形燃料に火を点けるタイプのやつが2つありますな。蓋のない方がポークと野菜の焼き物。蓋のある方は寄せ鍋から汁気を除いたようなやつ(何ていうのか名前が出てこない)。白味噌風の味付けだった気がするけど自信なし。

途中で天ぷらなども出てきたし、締めには手打ちそばとご飯が出てくる。ボリューム十分でもうお腹いっぱいだったのでそばだけにしてもらった。
締めの手打ちそば
我ら素人にも本格そばだということがすぐわかる味わいで印象深かった。麺のコシがしっかりしてた。

朝はオーソドックスに

朝食は一般的な和定食。鮭は着席時点ですでに火が通っている。自分の感覚だと量がたっぷりではないが少ないということもない。
楽水園の朝食
おでんと焼鮭でメインのおかずとしては十分だ。ご飯のおかわりは迷いつつ結局しませんでした。朝から腹パンパンに苦しくしてもしょうがない。唯一望む点があるとすれば食後にコーヒーがあると良かったな。

 * * *

正直なところ、以前から気になって狙っていたというよりは、急きょ決まった旅行で急きょ探して見つけた宿であった。お値段との兼ね合いもあるから何から何まで最上級とはいかないが、このご時世の感染対策には気を使われていたし、食に偏向のあるメンバーへの対応も考慮してくれたし、もろもろ水準級といえよう。

たまのリフレッシュに出かける先として、首都圏からのアクセスは良い方だと思うので、地の利と自慢のそばを生かして頑張ってほしい。


おまけ:甲府の名称・昇仙峡

午前の早い段階で昇仙峡に着いて、ロープウェイで山頂駅まで上った。このエリアではあちこちで富士山を拝むことができる。たとえば富士山遙拝所と名付けられた場所。
昇仙峡 富士山遙拝所より
なんだか水墨画風で渋いっすね、富士センパイ。また展望台なる別の場所では富士山の同様の姿に加えて南西方向に南アルプスと思われる連なりが見える。
たぶん南アルプス
しばし滞在の後に麓へ下りてきたら、10分くらい歩いて仙娥滝へ。昇仙峡特有のむき出しになった岩壁を今回写真に収める機会はなかったが(車で通り過ぎちゃったので)、仙娥滝にその雰囲気の一端を垣間見ることができる。
仙娥滝
ちょうど滝に虹がかかっていた。吉兆ということにしておこう。