ケーブルカーで行くパノラマ展望露天風呂 - 菱野温泉 常盤館

菱野温泉 常磐館
浅間山麓にちょっとユニークな温泉旅館がある。露天風呂までケーブルカーに乗って行くというのだ。そのお宿=菱野温泉「常盤館」に泊まってみたいと、さる方面から要望を承ったので、初秋の小諸旅行の2泊目に訪れることにした。

他の山岳スポットにあるようなガチの登山電車ではもちろんない。斜行エレベータをいくらか本格的にしたくらいのものだが、なかなか面白いギミックだ。喜んでるお客さんもたくさんいた。

登っていった先の露天風呂は八ヶ岳や佐久平を望む雄大な景色を温泉とともに楽しむことができる。うまい場所に風呂を設けたな。

菱野温泉「常盤館」へのアクセス

懐古園に寄り道

東京方面から車で菱野温泉へ行くには、上信越道の小諸ICを下りて浅間サンラインを少し走ってから県道130号を山の標高1000m地点まで上っていく。

実際の我々は同じ山のはるか高所・標高2000m地点にある高峰温泉に前泊していたので、そこをチェックアウトした後はいったん山を下りきって小諸懐古園までやって来た。

懐古園は小諸城址を公園として整備したもので、併設された遊園地・動物園・資料館などには入れないシンプルな散策券(300円)を買って中をぶらぶらした。詳細は割愛します。1枚だけ、水の手展望台から見た千曲川を。

※2019年台風19号により千曲川が決壊することになるとは(この場所ではないが)、当時は想像だにしなかった…
水の手展望台から見た千曲川
小諸といえば「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」(第40作)の舞台。台詞の中に「小諸なる古城のほとり~」という詩の一節がよく出てきてたけど、懐古園のそばには「こもろ寅さん会館」がある。どんなものか、のぞいてみたかったなー。しかし自分限定の興味にグループ全員を巻き込むわけにはいかず断念。

最後はちょっと細い道

懐古園を出た我ら一行は、道の駅「雷電くるみの里」や「マンズワイン小諸ワイナリー」をまわって上述の県道130号に入った。この道は里の集落の中を走る結構傾斜のある曲がりくねった細い道路で、運転にはちょっと気を使う。

常盤館は数十名の団体もやって来る規模の旅館なんだが、バスとか入って来られるのかね。

ちなみに高峰高原へ登るチェリーパークラインの途中から分岐して行くルートもある(分岐の交差点に菱野温泉の看板が出てる)。ただしグーグルストリートビューで見たら県道130号よりもっと辛そうな道だった。そらあかんわ。


思ったより規模の大きい常磐館

にぎやかで活気ある館内

駐車場の前に立つ旅館の建物は、左側は普通ぽくて右側はずいぶん年季の入った、2つの棟が合体したように見える。
常磐館 駐車場前
フロントは合体部分に設けられた通路の奥にあるようだ。通路を進んでいくと、合体が解けて二手に分かれた2つの棟に囲まれた広場風の場所に出た。大きくて普通ぽくて新しい方の本館に冒頭写真の正面玄関がある。

年季の入った方は今は使われていない旧館といったところだろうか。よくわからない。とにかく本館フロントにてチェックイン。ロビーはにぎやかで活気があり、この日は日帰り利用を含めて多くのお客さんが来ていた模様。下の写真は早朝誰もいないときに撮ったもの。
常磐館ロビー

おいしい水が出る部屋

我々が案内された部屋は3階の10畳和室+広縁。鄙び系・素朴系に慣れていない同行者も満足するだろうと思われる万人向けの水準を十分にクリアしている。
常磐館 客室
シャワートイレあり。洗面台の水は「飲めます。おいしいです」と書いてあった。ここらへんの水はうまそうだよね。あと金庫と空の冷蔵庫あり。エアコンあり。WiFi完備。なんの不都合もなく過ごせる。

窓の外はこんな感じ。先ほど旧館と称した建物のさらに隣に立つ棟が見える。風格からするとこれが当宿の元来の本館だとしてもおかしくない。館主邸もしくは従業員宿舎かもしれぬが。
窓の外の景色
なお現在の本館4階にはメゾネットタイプのスイートルームもある。非温泉ながら客室付きの半露天風呂があるそうだから、ゴージャスにいきたい方はどうぞ。


噂に聞こえた常盤館のお風呂を体験

本館と露天風呂「雲の助」を結ぶケーブルカー

ケーブルカーで行く露天風呂「雲の助」は夜は21時まで、朝は6時半から8時半まで。大人気で混雑してるんじゃないかなー、と若干ビクビクしつつ、チェックイン直後と翌朝に行ってみた。

ロビーの奥に乗り場があって、2台で運用されているケーブルカーはすでに待機しているか、もしくは1~2分待っていれば自動的にやって来る。
常磐館のケーブルカー
定員は6名。乗り込んだら車内の発車ボタンを押して出発進行~。おお、上がってく上がってく。本格的なケーブルカーと同様に中間地点にはすれ違いポイントがある。
ケーブルカー中間点
1分30秒で頂上駅に到着。目の前が露天風呂の建物だ。
露天風呂「雲の助」
混雑ぶりについてコメントしておくと、夕方はケーブルカー待ちなし。日帰り入浴の終了時刻16時を過ぎていたためか、露天風呂の湯あがり休憩スペースはそこそこ人が多かったけど、浴室内はガラガラ。16時前だと混んでたかもね。

朝6時半にはケーブルカー乗り場にすでに行列ができていて3便目まで7~8分待った。しかし我々の後ろに行列が伸びることはなかった。そして我々以外の行列参加者はすべてご婦人だったから女湯は混雑してたかも。男湯はガラガラ。

雲の助の中にも内湯あり

掲示された分析書によれば菱野温泉は「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、低温泉」。低温泉なんでぬる湯を期待したいところだが、よろず万人向けのスタイルで運営しているところからして、ばっちり加温しているだろうと予想して浴室へ。

露天風呂といっても手前のエリアは内湯と変わらない。5名分の洗い場と6名規模の内湯浴槽がある。ここはわりと深いから片足に体重をかけて突っ込んでいくとバランスを崩す危険がある。注意。

お湯は無色透明の適温。ときに熱く感じる瞬間もあるし、なんだか塩素臭が意識される。気のせいかなあ…。どのみち露天風呂と景色目当てで来ているからこの浴槽に長居するつもりはない。

絶景を望む露天3兄弟

奥の露天エリアへ出るといい景色が拝めます。全体に霞んで雲もかかっていた夕方に比べ、翌朝はすべてがすっきり見えてすばらしかった。標高1000mから眼下に望む佐久平と遠くにそびえる八ヶ岳連峰。こりゃ絶景だ。

テラス風になってる露天エリアの3つの風呂はいずれも無色透明で塩素臭は意識に上らない。まずは2名規模のジャグジー風呂。体温以下に感じられるぬるさだから加温してない源泉かもしれない。過度に冷たくはないので単なる水風呂+泡ではないはず。ぬる湯派にはおすすめ。

その隣に1名専用の桶風呂。内湯より若干ぬるくて入りやすい。混んでなければここで粘ってみるのもよいだろう。

短い階段を下りていった先には3名規模の大桶風呂。適温。同行者が最も気に入っていたように、いかにも露天風呂な気分を最も味わえるのはここ。絶景も変わらず見えるし。なお、隣にはなぜか木製のブランコが設置されていた。

内湯大浴場もあるよ

夕食後と翌朝ケーブルカーに乗る前の5時台には本館1階の内湯大浴場へ行ってみた。こちらは一般的な大浴場の体裁で洗い場は10名分。浴槽は15名いける広さ。お湯の個性が薄い分、銭湯チックで面白みがないといえばないのだが、浴感は決して悪くない。

夜はほぼ独占状態。朝も最初はガラガラだったのに、途中から団体さんが起き抜けに一斉に入りに来たみたいで、1人・2人・3人・5人・8人…とフィボナッチ数列のごとく、みるみるうちに勢力を増すのを見て、くわばらくわばらと出ることにした次第。この朝だけの特殊なケースだとは思う。


信州らしさを楽しめる食事

鯉料理がヒットした夕食

常磐館の食事は朝夕とも2階大広間で。夕食は部屋ごとに決まったテーブル席につく。スターティングメンバーがこれ。盛り付けがお洒落である。
常磐館の夕食
山の宿で刺身か、と思ってはいけない。海老を除けば鯉の洗い・信州サーモン・イワナだからね。加えて鯉のうま煮まで出てきた。佐久の鯉かしら。これがまたでかい。おいしいので食べ切るが、これだけでお腹は一杯になる。

他にも何品か出てきた気がするぞ。牛肉の朴葉焼きもあるし、とても完食できる量じゃない。と言いつつ完食したけど胃袋は限界。

全般に地元色の感じられるメニューで良かったと思う。同行メンバーは信州らしさを求めて鯉料理が出てくることを期待していたみたいで、その意味でも鯉の洗いとうま煮はスマッシュヒットだった。大手柄ですぞ。

ちなみに、車で送迎4分のところにある「べじたり庵 ふわり家」での夕食となるプランも選択できる。当時だとたしか「きのこづくしコース」をご提供しますという話だった。

朝食はバイキング

朝は同じ大広間でテーブルは自由。和風洋風どちらの組み立ても可能なバイキング形式である。前夜食べ過ぎちゃったんでお粥を中心にさっぱり系でおとなしく。
常盤館の朝食
もちろん他に選択できる料理はいっぱい用意されているし、切らしたらすぐに補充される。朝カレーなんてのもあったはず。しかしいろいろ試す余裕はなかった。あとはコーヒーで締め。

売りはケーブルカーだけじゃない

当館に注目した一番最初の動機は「ケーブルカーが面白そう」だったから。言い出しっぺは何かの雑誌で目にして興味を持ったみたい。実際に現地へ来てみると、当然ながら当館の売りはそれだけじゃなかった。

個人的にはあの露天風呂の絶景ですね。露天といっても塀で囲われて眺望のないところも世間には多い中、あれはすごい。そして我らのふだんの生活パターンでは経験できない、ここまで来た甲斐があったと思わせてくれた鯉料理を筆頭とする食事。

転地効果を存分に受け取って気分良く帰っていった。