長野県東御市の標高2000mに広がる池の平湿原。湯の丸高原と高峰高原の中間に位置し、季節に応じてさまざまな高山植物を見ることができる散策コースが整備されている。
高峰高原側にある秘湯の一軒宿・高峰温泉では宿泊者向けに池の平湿原をめぐるガイドツアーを開催している(夏季のみ)。初秋の高峰温泉に泊まった翌日、このツアーに参加してみた。
中高年でもついて行けるくらいの、ペース緩めのトレッキングだったから、余裕をもって草花の観察を楽しめる。しかも非常に稀なレベルの好天に恵まれ、富士山から北アルプスまでを一望する、雄大すぎるパノラマ絶景をも目にすることができた。
もう一方の高峰高原経由のルートはなかなか厳しい。ボコボコのダート道は対向車が来たら自分ならパニックになっちゃうほどの狭さ。急峻な崖に無理やり通したような道で転落注意・落石注意感が半端ない。
グループ旅行で高峰温泉を訪れていた我々は、当初は高峰高原経由のルートを自力で湿原まで行こうとしていた。しかし高峰温泉主催のガイドツアーがあると知り、それに乗っかった方が深く楽しめるに違いないと考えて計画変更。ツアーの所要時間は泊まった翌朝の9時15分~12時15分。
朝9時にチェックアウト手続きをしたら、荷物を自分たちの車に積んでツアー開始を待つ(車は宿に置いていく)。荷物は宿の方で預かってくれるだろうし、ツアー後には温泉に入らせてくれて希望者には昼食も出してくれるのだが、我々は次の予定地へ向けてすぐに出発するつもりだったのでね。
バスを降りて散策路の入口まで来たところで「コース別の2班に分かれる」と説明があった。湿原中央を通るアップダウンの比較的少ないコースと、100mほどの高低差を越えていく健脚向きコース。自由選択で前者が10名、後者が5名くらいに分かれた。我々は迷わず前者。
初めに断っておくと、以下の写真に出てくる草花の名前や生態は解説しません。現場では逐一すべて説明を受けたんだけど記憶があやふやだし、ふだんのベースがないんで、知ったかで間違いを書く自信があるからやめておきます。
左側にうっすら富士山の頭。右側の連峰は八ヶ岳。その奥でかすかに頭を出しているのは南アルプスの北岳だって。こういった遠景や周囲の植物を眺めつつ、少し歩いては立ち止まってガイドさんによる草花の解説があるので歩き詰めにはならず、疲れはたまらない。
花の季節は終わりに近づきつつあり、色とりどりの花が視界を埋め尽くすってわけにはいかない。でもそれなりに鮮やかに咲いているのもあった。
スマホできれいに撮る術を知らず、シャッターボタンを押すしか能がないおじさん。葉っぱにピントが合っちゃってる。
そうこうするうちに湿原の中央部に出ましたよ。木道の続く風景がなんか尾瀬っぽいね。いやまあ尾瀬ヶ原に行ったことはないけども。尾瀬って言ってみたかっただけ。
このあたりは火口跡で太古の昔には水が溜まっていた。やがて放開口という崩壊場所から水が出ていっちゃった。その名残がこの湿原ってわけ。ふーん、と放開口の方を見たら雲海ができていた。さすがは雲より高い標高2000m。
湿原といってもだいぶ乾燥が進んでいる。普通の草原ぽくも見える。そんな草地の間に咲く花には蝶がたくさん集まっていた。
で、視界が急に開けたと思ったら…なんじゃこりゃあ。
今シーズンでは3本の指に入るほどの絶好の気象条件で、富士山から北アルプスまでこんなにしっかり見えることは滅多にない、と半ば興奮気味で語るガイドさん。では順にいこう(ちゃんとメモしてなかったんで間違ってる可能性あり)。まず富士山。
八ヶ岳に北岳。
さらに西へ目を転じれば、上田~別所温泉の町が広がり、そのはるか遠くに見えるのは穂高から槍ヶ岳に至る山々だろうか。日本の高い山ベスト3(富士山・北岳・奥穂高岳)が同時に見えてるんですよ、と説明されていたな。
あとはもうわかりません。ひとつはっきり記憶しているのは、下の写真の右端に見える白いV字というか逆三角形は白馬の大雪渓とのことだ。
いやーこんなに見えるなんて、まいったなあ。もともと登山しないし、山座同定できるほど山に親しんでもいないけど、この景色には感動した。本当に絶好のタイミングで来たね。なお、季節が合えばここでコマクサの群生も見られる。
下の花は「ヨーロッパだとエーデルワイスに相当する」と説明された気がする。映画サウンド・オブ・ミュージックでトラップ大佐が歌ってたやつか。もしくはハイジまたはアンネットのエンディングテーマ。
たぶんリンドウな方々もちょいちょい見かける。一部の“当たり”の花は目を引くほどの鮮やかな色を誇示していた。
風が吹くと水面に波が立ってしまう。風がなければ冒頭写真のように水面が鏡となって空や木立を映し出す。いつまでも見飽きない風景だ。また、このあたりはよくカモシカが出没するという。残念ながらこの時は出てきてくれなかった。
鏡池の近くには「忠治の隠岩」が。
ワタクシ、おじさんといえども「国定忠治を知らない子供たち」の世代なんでね、ピンと来ないんだけど、忠治が上州から逃げてきてここに隠れたという逸話があるらしい。隠れ場所をバラしちゃっていいのか?…事後だからいいのか。
あとはまっすぐ駐車場へ戻っていった。最後が国定忠治ってのも何なんで、この1枚を。冬の猛吹雪に耐えるうちに木の幹や枝が曲がっちゃった。
それに行程に対してたっぷり時間を取ってあったから余裕あるペースでまわることができた。もし自力で行かれる場合も半日以上の時間をみておくことをおすすめする。湿原中央コースだけでなく、健脚班が進んだ景色の良いコースとか、放開口の方をまわってアヤメの群生地や森林浴を楽しむコースとか、いろいろ奥深いようだから。
最後に、夏季・紅葉シーズンの休日に行く場合はなるべく早めの到着を。我々が駐車場に戻ってきた正午頃はとっくに駐車場は一杯だった。さらにマイカー規制を実施していてシャトルバス利用となる期間もあるから注意されたい。
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高峰高原側にある秘湯の一軒宿・高峰温泉では宿泊者向けに池の平湿原をめぐるガイドツアーを開催している(夏季のみ)。初秋の高峰温泉に泊まった翌日、このツアーに参加してみた。
中高年でもついて行けるくらいの、ペース緩めのトレッキングだったから、余裕をもって草花の観察を楽しめる。しかも非常に稀なレベルの好天に恵まれ、富士山から北アルプスまでを一望する、雄大すぎるパノラマ絶景をも目にすることができた。
池の平湿原への道
自力で行くなら湯の丸高原経由で
池の平湿原を目指すなら一般に湯の丸高原を経由するルートを取ることになると思う。東京方面からだと上信越道の小諸ICまたは東部湯の丸ICを下りて行く。湯の丸高原から池の平湿原までの道路は細いながらも舗装整備されているようだから、なんとかなるだろう。もう一方の高峰高原経由のルートはなかなか厳しい。ボコボコのダート道は対向車が来たら自分ならパニックになっちゃうほどの狭さ。急峻な崖に無理やり通したような道で転落注意・落石注意感が半端ない。
グループ旅行で高峰温泉を訪れていた我々は、当初は高峰高原経由のルートを自力で湿原まで行こうとしていた。しかし高峰温泉主催のガイドツアーがあると知り、それに乗っかった方が深く楽しめるに違いないと考えて計画変更。ツアーの所要時間は泊まった翌朝の9時15分~12時15分。
朝9時にチェックアウト手続きをしたら、荷物を自分たちの車に積んでツアー開始を待つ(車は宿に置いていく)。荷物は宿の方で預かってくれるだろうし、ツアー後には温泉に入らせてくれて希望者には昼食も出してくれるのだが、我々は次の予定地へ向けてすぐに出発するつもりだったのでね。
健脚向きコースは自信なくて回避
15名ほどの参加者がマイクロバスに乗り込んでいよいよ出発。厳しい道を手慣れた運転で進む。自力をやめたのは正解だな。池の平湿原に着くと、一番近い駐車場はもう7割がた埋まっていた。バスを降りて散策路の入口まで来たところで「コース別の2班に分かれる」と説明があった。湿原中央を通るアップダウンの比較的少ないコースと、100mほどの高低差を越えていく健脚向きコース。自由選択で前者が10名、後者が5名くらいに分かれた。我々は迷わず前者。
初めに断っておくと、以下の写真に出てくる草花の名前や生態は解説しません。現場では逐一すべて説明を受けたんだけど記憶があやふやだし、ふだんのベースがないんで、知ったかで間違いを書く自信があるからやめておきます。
前半:湿原と三方ヶ峰のダブル主演
花の季節は終りに近いけど
日差しは強いが風は爽やか。空は青いし気分がいい。で、さっそく遠くに富士山キターーー!左側にうっすら富士山の頭。右側の連峰は八ヶ岳。その奥でかすかに頭を出しているのは南アルプスの北岳だって。こういった遠景や周囲の植物を眺めつつ、少し歩いては立ち止まってガイドさんによる草花の解説があるので歩き詰めにはならず、疲れはたまらない。
花の季節は終わりに近づきつつあり、色とりどりの花が視界を埋め尽くすってわけにはいかない。でもそれなりに鮮やかに咲いているのもあった。
スマホできれいに撮る術を知らず、シャッターボタンを押すしか能がないおじさん。葉っぱにピントが合っちゃってる。
乾燥が進む湿原
池の平湿原で多く見られる木はカラマツ。人工林のまっすぐ伸びた姿を思い浮かべる人は多いが、ここの天然カラマツは岡本太郎の芸術が爆発したかのようにグニャッている。そうこうするうちに湿原の中央部に出ましたよ。木道の続く風景がなんか尾瀬っぽいね。いやまあ尾瀬ヶ原に行ったことはないけども。尾瀬って言ってみたかっただけ。
このあたりは火口跡で太古の昔には水が溜まっていた。やがて放開口という崩壊場所から水が出ていっちゃった。その名残がこの湿原ってわけ。ふーん、と放開口の方を見たら雲海ができていた。さすがは雲より高い標高2000m。
湿原といってもだいぶ乾燥が進んでいる。普通の草原ぽくも見える。そんな草地の間に咲く花には蝶がたくさん集まっていた。
見えすぎちゃって困るの~、三方ヶ峰の絶景
昼が近づくと雲がどんどん湧いてきてしまう。その前に景色のいいところへ行きましょう、とのことで三方ヶ峰という絶景スポットを優先すべく、キツネのフンが落ちていたりする上り基調の土の道をずんずん進む。で、視界が急に開けたと思ったら…なんじゃこりゃあ。
今シーズンでは3本の指に入るほどの絶好の気象条件で、富士山から北アルプスまでこんなにしっかり見えることは滅多にない、と半ば興奮気味で語るガイドさん。では順にいこう(ちゃんとメモしてなかったんで間違ってる可能性あり)。まず富士山。
八ヶ岳に北岳。
感動的なパノラマ風景
下の写真の左寄り、ちょうど稜線に雲がかかっちゃってるあたりが霧ヶ峰で、その奥に頭を出しているのが中央アルプス。中央付近の手前側は美ヶ原で奥は御嶽山。さらに西へ目を転じれば、上田~別所温泉の町が広がり、そのはるか遠くに見えるのは穂高から槍ヶ岳に至る山々だろうか。日本の高い山ベスト3(富士山・北岳・奥穂高岳)が同時に見えてるんですよ、と説明されていたな。
あとはもうわかりません。ひとつはっきり記憶しているのは、下の写真の右端に見える白いV字というか逆三角形は白馬の大雪渓とのことだ。
いやーこんなに見えるなんて、まいったなあ。もともと登山しないし、山座同定できるほど山に親しんでもいないけど、この景色には感動した。本当に絶好のタイミングで来たね。なお、季節が合えばここでコマクサの群生も見られる。
後半:鏡池の見事なお姿
花も実もある湿原への道
そうして再び湿原中央へ戻っていく面々。かわいい実をつけたのを道端にちょこちょこ見かけるのであった。ブルーベリーっぽいのもあれば赤いのもある。白いやつもあったな。下の花は「ヨーロッパだとエーデルワイスに相当する」と説明された気がする。映画サウンド・オブ・ミュージックでトラップ大佐が歌ってたやつか。もしくはハイジまたはアンネットのエンディングテーマ。
たぶんリンドウな方々もちょいちょい見かける。一部の“当たり”の花は目を引くほどの鮮やかな色を誇示していた。
湿原のハイライトのひとつ・鏡池
湿原は乾燥が進んでいると書いたが、鏡池という池のまわりだけは一般的な湿原のイメージに近い。その鏡池を展望する場所まで来た。おー、いいですねー。風が吹くと水面に波が立ってしまう。風がなければ冒頭写真のように水面が鏡となって空や木立を映し出す。いつまでも見飽きない風景だ。また、このあたりはよくカモシカが出没するという。残念ながらこの時は出てきてくれなかった。
鏡池の近くには「忠治の隠岩」が。
ワタクシ、おじさんといえども「国定忠治を知らない子供たち」の世代なんでね、ピンと来ないんだけど、忠治が上州から逃げてきてここに隠れたという逸話があるらしい。隠れ場所をバラしちゃっていいのか?…事後だからいいのか。
あとはまっすぐ駐車場へ戻っていった。最後が国定忠治ってのも何なんで、この1枚を。冬の猛吹雪に耐えるうちに木の幹や枝が曲がっちゃった。
行っておいて良かったと思えるスポット
池の平湿原に行っておいて良かったですわ。当初は計画になかった→自力で行く計画→ガイドツアーに参加、という変遷を経て、結果的にベストな選択をしたと思う。とにかく天気が最高に良かった。日差しのわりに暑くもなかったし。それに行程に対してたっぷり時間を取ってあったから余裕あるペースでまわることができた。もし自力で行かれる場合も半日以上の時間をみておくことをおすすめする。湿原中央コースだけでなく、健脚班が進んだ景色の良いコースとか、放開口の方をまわってアヤメの群生地や森林浴を楽しむコースとか、いろいろ奥深いようだから。
最後に、夏季・紅葉シーズンの休日に行く場合はなるべく早めの到着を。我々が駐車場に戻ってきた正午頃はとっくに駐車場は一杯だった。さらにマイカー規制を実施していてシャトルバス利用となる期間もあるから注意されたい。
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