絶品の足元湧出霊泉(東の湯編) - 奥蓼科温泉郷 渋御殿湯

奥蓼科温泉郷 渋御殿湯
避暑を兼ねた信州湯めぐり遠征の1泊目は奥蓼科の渋御殿湯。比較的涼しい高地で、温泉も冷たい系だから、地獄の猛暑からの逃避先にはちょうどいい。

2年前に日帰り入浴で立ち寄った時は西の湯という浴場のみ利用可だったが、宿泊すると東の湯というもうひとつの浴場を利用できる。今回の主な目的はそっちだ。東の湯には温泉通がみんな褒める足元湧出の別源泉による浴槽があるそうだから楽しみだ(足元湧出は男湯のみ)。

…うむ、たしかに絶品ですな。他のお客さんもそこへ入りたがるから、まさに人気ナンバーワン。加えて西の湯と同様に加温槽+冷泉槽のペアもある。こちらももちろん大変結構なクオリティで、いやあ、泊まりで来てみてよかったなあ。

渋御殿湯へのアクセス

湯みち街道とメルヘン街道

電車+バスで行く場合はJR中央本線茅野駅から渋の湯行きバスで終点下車。土日祝のみの運行なので注意。年末年始と8月の平日は運行しているみたい。事前によく調べておきましょう。

自分はマイカーで行った。奥蓼科エリアに着いたら、まず渋・辰野館という別の旅館へ立ち寄り入浴した。ここも夏向きの冷泉が心地よい。

その後は渋御殿湯のチェックイン開始時刻まで余裕があったため、乙女滝を見学することにした。直線的に行ければ近いが、谷筋を挟んだ向こう側になるので、湯みち街道を下界まで少し戻ってからメルヘン街道(国道299号)へ入り直すルートになる。

ちなみに下界へ戻らず、渋・辰野館そばから分岐する林道を通ってメルヘン街道にショートカットできそうに見えても、やめた方がいい。一般人には無理ゲーな過酷な道だと思う。

涼しげな乙女滝を間近に眺める

看板が出ているところでメルヘン街道を外れて脇道に入ると、すぐに駐車場がある。そこに止めて100mくらい歩けば滝へ向かう遊歩道が現れる。遊歩道を下っていくと、そう遠くないところに滝見スポットがあった。
乙女滝
滝が落ちていく先は緑がこんもり。
乙女滝の下流方向
説明板によれば、乙女滝は自然の滝ではなくて、江戸時代に作られた農業用水路の一部だそうだ。へーそうなのか。滝見スポットからそのまま横谷峡遊歩道が続いているけど、一部通行止めらしいから要注意。
横谷峡遊歩道へ続く
見学後は再び湯みち街道を登っていった。ついでにこの日2度目の御射鹿池を見ておこうか。
御射鹿池
湯みち街道を車で行けるところまで行くと渋御殿湯だ。なお、湯みち街道は路上を野生動物が横断しがちだから運転は慎重に。この遠征中だけでも鹿に2回・リスに1回遭遇した。熊じゃないからまだいいか。


有能な秘書ならぬ避暑の旅館

過去の記憶が蘇る館内の様子

当館で車道は終わる。その先は登山道ですかね。
渋御殿湯で車道は終わり
では入館。フロント前の空間はこんな感じ。奥に見える冷蔵ケースに缶ビールなどがある(フロントに申し出て開けてもらう方式、部屋付け精算可)。
フロント前の空間
そして2年前にも印象に残った展示ケース。世界観がいろいろ混在しているな。
展示ケース
建物は本館と新館からなり、宿泊者限定の東の湯に近い方が本館、日帰り入浴にも対応している西の湯に近い方が新館と思えばいいのかな。

山の宿かつ湯治の宿という感じ

案内された部屋は本館の1階だった。東の湯のすぐ近く。廊下にこんなのぼりが飾られている。
大河ドラマののぼり
部屋は6畳和室。布団は最初から敷いてあった。
渋御殿湯 本館6畳客室 その1
別のアングルでもう1枚。
渋御殿湯 本館6畳客室 その2
トイレ・洗面所は共同。本館の男子トイレは小×3と和式個室×2。和式が苦手な方は、食堂付近や新館側のトイレに洋式個室があるそうなので、そちらへどうぞ。いずれにせよ現代風のシャワートイレではなくて、昔風の簡易水洗というやつである。まあ山の宿ですから。

金庫なし、冷蔵庫なし、たぶんフリーのWiFiあり。携帯の電波はキャリアによっては入らない。エアコンも扇風機もないが、モワッとした蒸し暑さが全然なく、令和の地元基準なら秋に近いくらいで過ごしやすかった。避暑性能はとても高い。

窓から見えるのは先ほどの登山道が始まるあたりの砂利道。窓を閉めたまま撮影したら、室内の光を反射していろいろ写り込んじゃってたので写真は割愛。


逸材が揃う東の湯

源泉が2種類ある模様

西の湯については以前の記事を読んでもらうとして、ここでは東の湯に絞って語ることにしよう。場所は本館1階の奥で、共同洗面所もここにある。手前が女湯、奥が男湯。

洗面所のところに分析書が貼ってあって、「酸性単純硫黄温泉」と書いてある。硫化水素型ってのも付記されてたかもしれない。源泉が2種類あるみたいで、一方が加温/非加温に応じて泉温41℃/27℃のPH2.69、もう一方が泉温31.0℃のPH2.74だった。

脱衣所は簡素な感じで、4~5名分くらいのかごを置く棚がある。後述するように浴室じたいがそんなに大きくないから脱衣所だけ広くてもしょうがない。こんなものでしょう。

名脇役のような加温槽

浴室には洗い場なし。手前から奥へ向かって3つの木の浴槽が並んでいる。一番手前が加温浴槽。重厚な木製の蓋を外して入るようになっている。最後に出る人は蓋を戻してからあがりましょう。

いわゆる普通の温度なので夏にはどうかなと思うかもしれない。しかしこれがなかなかの浴感なのだ。特に他の2つの冷泉に浸かった後だと、アツクナーイ!という妙な快感があってとてもよい。

お湯の見た目は暗がりのためはっきりしないが、無色透明ではないかと思う。湯の花についてもよくわからない。少しはあるんじゃないかな。これ単体でも結構いけるし(寒い時期には特に)、他の浴槽と組み合わせて温冷交互浴にすると良さが倍増するタイプのお風呂だ。

ちなみに蓋はだいたい1名が入れるくらいの最小限の外し方が多い。たまに2名が同時利用する状況になると外される蓋が増える、という具合だ。いきなり全開になることはなさそう。

クールで爽快な渋御殿湯

次は加温槽と同じ源泉を使っていると思われる奥の非加温源泉槽について。宿名と同じ渋御殿湯と名付けられている。こちらは窓に近くて明るいため、お湯が無色透明であることがよくわかる。白い粒状の湯の花がたくさん漂っており、見るからに硫黄系ですね。

湯口は析出物で真っ白。近くにコップが引っかけてある。飲泉できるってことですな。ちょっとだけ口に含んでみたら、うん、まああれだ、冷たくてさっぱりする味ではないけどまずくはない。酸性のすっぱさがほんのりと。

浴槽のサイズは1名、頑張って2名分。水風呂級ではないにせよ冷たさを感じるゾーンの温度だ。最初は頑張って体を沈めていく感じで、肩まで浸かって慣れてくると爽快感が勝ってきて結構いける。

暑さで体がまいっちゃってる時だと、まさに救世主のようなもので、広い意味でのクールダウンに役立ったのである。泡付きも相応に見られてナイスな源泉だ。加温槽と交互に入ると極楽状態。

渋長寿湯は極上の足元湧出泉

真ん中の浴槽は渋長寿湯と名付けられた別源泉。ここだけ白っぽい半濁りの湯だ。足を伸ばすと2名サイズで、体育座りして詰めれば4名サイズ。実際に3名が同時に入ってる場面は少なからずあった。

底にすのこが敷いてあり、すのこの隙間からブクブクっと源泉+あぶくが浮き上がってくる。足元湧出泉ってやつだ。湧き出したそのままの源泉を体験できる貴重な湯船といえる(男湯のみ)。しかもあぶくの量が多くて、まるでジャグジーのよう。なんじゃこりゃあ。

湯の花は渋御殿湯以上に多いし、泡付きが特にすごい。炭酸泉かと思うくらい。ジャグジーのようなあぶくとの合わせ技でとんでもないアワアワに包まれちゃう。なんじゃこりゃあ。

しかも温度が絶妙にぬるい。熱くもなく、冷たすぎるでもなく、いったん浸かるといつまでも居続けられるし、むしろ出られなくなっちゃうやつ。ゆえに人気になりやすく、空かない時は全然空かない。チャンスが生まれたならすかさず狙っていきたい。

“わかっている”お客さんの間では、暗黙の了解的に、適度にローテーションし合う「ゆずりあい精神」が見られたし、自分もあまり長く占有しないようにした。夜の入浴で誰も来ない状態が1時間近く続いたから、渋長寿湯に50分ほど連続入浴したのがハイライトだった。


食事面も山の宿・湯治宿な感じ

夕食にて、夏バテ気味の胃袋に栄養を補給する

渋御殿湯の食事は朝夕とも本館1階の食堂にて。夕食は17時~18時の間に来てくださいのフレックスタイム制。17時15分くらいに行ったらすでに半数程度が来ていた。基本的に序盤に全品が出揃う方式で、それらがこちら。
渋御殿湯の夕食
山菜、鯉の洗い、川魚など山の宿らしい品が並ぶ。川魚の塩焼きは岩魚だか鮎だかわかりません。これだけ泊まり歩いてもいまだに区別がつかないのである。細けえことはいいんだよ。

いずれもシンプルであって、手の込んだ料理ではない。食通の舌を唸らせるものではないのだろうけど、一介のおじさんにしてみれば、ビールとともに「もう鯉なんてしないなんて言わないよ」とばかりにパクパク食べ進んでしまう。

鍋は野菜と肉と練り物が入った「いろいろ鍋」とでも言おうか。少食な自分にしてみれば全体でちょうどいい量だった。お櫃のご飯を半分くらいいただいて終了。

シンプル・ベーシック系の朝食

朝は7時~8時の間に来てくださいのフレックスタイム制。7時15分に行くとやっぱり半数くらいがすでに来ていた。みなさん早いですな。
渋御殿湯の朝食
山菜や漬物が多い気がする。卵は納豆に加える用とか温泉玉子ではなくて独立な生卵だった。そこでご飯にかけてTKGを錬成した。漬物を投入しながらすすっていくとちょうどいい感じだ。ハムや海苔でアクセントを入れつつ、少しおかわりなんかもして、はい、ごちそうさま。

東の湯のクオリティを考えたら、チェックアウト前にラスト入浴したと思うでしょう…しなかった。チェックアウト期限が9時半のため慌ただしくなりそうなのと、2日目の行程に余裕を持たせたくて早めチェックアウトに切り替えたため。実際は起床直後の6時台がラスト入浴となった。

 * * *

西の湯しか体験してなくて、東の湯もいつか体験してみないとな、と思っていたのが今回につながった。足元湧出の渋長寿湯はみんなが褒める通りに絶品の湯だった。あれに浸かるために泊まる価値がある。渋御殿湯の温冷交互浴も脇役扱いするには忍びなく、特に夏向きの爽快感にすぐれている。

狂ったように暑すぎる環境を離れて涼しい一昼夜を過ごせただけでもリフレッシュできたし、加えて極上の温泉に浸かることができたので大変満足である。