はい、今年もいただきました、終わりの見えない地獄の猛暑。暑い時に温泉はちょっとねー、と自重して家の中に籠もってストレス溜め込むよりは、ぬる湯のところを選ぶとか少しでも涼しい山の方へ行くとか工夫して出かけた方がいい。
長野県茅野市の奥蓼科温泉郷は、そもそもが標高1500~1800m級の高原地帯だし、ぬるい温泉でも知られているということで、行ってみることにしたのだ。
旅館に入る前に立ち寄りで利用したのが渋御殿湯。東の湯・西の湯という2つの浴場を擁するが、東の湯は宿泊するか、もしくは日帰りなら事前予約が必要とのことで、ノーアポで訪れた今回は西の湯だけを体験した。小さめの源泉風呂は夏でこその冷たい白濁泉。
渋御殿湯へのアクセス
湯みち街道の終点
JR中央本線の茅野駅から渋御殿湯まで片道1時間弱の路線バスが運行されている。しかし夏でも1日3本・夕方前に終わってしまうから注意。
車で東京方面から向かう場合、中央道の諏訪南ICを出て「湯みち街道」に入ることができれば、あとは一本道。湯みち街道の終点が渋御殿湯だ。北関東からだと佐久から八ヶ岳を越えてくるのかもしれないが、いずれにせよ最後は湯みち街道を通る。
自分は中央道ルートで。諏訪南ICから先は完全にカーナビまかせでよく覚えていない。たぶん原村役場の近くを通った気がする。とにかくナビの指示に従って走るうちに湯みち街道に合流できた。
標高が上がるとともに次第に登り坂がきつくなり、くねくねカーブに加えて荒れた路面状態もぽつぽつ出てくるが、概ねセンターラインの引かれた道路だから泣きが入ることはない。
幻想的な御射鹿池を見学する
途中に御射鹿池という観光スポットがあるから寄ってみよう。農業用のため池だそうだけど、目を奪われる美しさがある。
水面に映る緑が幻想的なムードを発してるからかな。アップで撮るとそうした印象がさらに強まる。
ふうむ、いいものを見た。では先へ進もう。御射鹿池から渋御殿湯までは10分くらいの距離。しかしセンターラインのない狭い区間が増えてくるから気を使う。当時はすぐ前を走る路線バスの後について先導してもらう「金魚のフン作戦」で運転技量をカバーした。
すごいでしかし。マイクロバスとかじゃなくて街で見かける普通サイズのバスが湯みち街道のラスト区間を走るんだから。対向車が来たらどうするんだろう。超絶テクでもすれ違えない気がするけど。
しばらく森林の中だったのが急に開けて、金網フェンスに囲われた登山客向け有料駐車場が現れたらゴールは近い。つきあたりの建物が渋御殿湯であり、玄関脇に日帰り入浴客向けの無料駐車場があった。ちなみに当館の前には川が流れていて、こんな様子。
ひんやりの酸性白濁硫黄泉
東の湯は要宿泊か事前予約
では入館。とあるアングルからフロント前のスペースを撮影したのがこちら。
館内の各所に剥製の展示が見られ、それらが大集合している棚がこちら。これ全部本物なんすか?! サングラス姿はご愛嬌。
事前調査により、東の湯の男湯が「足元湧出泉+シュワシュワの豊富な泡付き」風呂を擁して別格のクオリティであることと、日帰り客が利用できる東の湯は部屋休憩コース(2750円)限定であることは知っていた。ゆえに意を決して部屋休憩をお願いしてみると…事前予約が必要だって。あららら。そこまでは知りもはん。
今回は西の湯を利用
じゃあ西の湯のみを利用できる普通の日帰りコース(1100円)をお願いしもす。帳簿に住所氏名を記入してフロント左の廊下をずーっと進むと、つきあたりの階段を下ったところに女湯・男湯の入口があった。
付近には分析書の拡大板が掲示され、泉質は「酸性単純硫黄温泉(硫化水素型)、酸性、低張性、低温泉」で源泉温度は27℃、PH2.7。加水なし、消毒なし。加温と循環の説明は上からテーブが貼られていたものの、後述の源泉風呂については加温・循環なしだと思う。
脱衣所は素朴な木の棚が並ぶ。貴重品が心配なら階段そばの100円コインロッカーを使おう。100円を吸い込んだまま鍵が固くて回らずじまいのやつがあったから、誰かが使った気配が残っているところを狙いましょう。
天然水を加温した浴槽あり
浴室に入るとすぐに硫化水素臭を意識した。きてます、きてます。最初は無人で独占状態だった。室内はシンプルなつくりで奥に4名分の洗い場、うちシャワー付きは3箇所。シャンプーと石鹸が置いてあった気がする。
手前寄りのところに6名規模の木の浴槽があった。床の上に箱が設置されてるんじゃなくて床を掘り下げたタイプのやつね。浴槽上部は多数の細長い木の板によって蓋をされた状態になっている。「最後に出る方は蓋を閉めて下さい」の張り紙の通り、この状態がデフォルトのようだ。
蓋はわりと重いから、入る前に全部の板を動かすのは大変だ。自分が陣取る付近の数枚の板だけを脇へよけておくのがメジャーな行動パターンだろう。後からやって来たお客さんも皆そうしていた。
こちらの浴槽は天然水を加温したお湯で循環あり・殺菌剤投入あり。温度は42℃とのこと。明確な湯口は見当たらず、浴槽内で投入していると思われ、陣取る場所によっては強めの噴流を感じる。非温泉にしては結構いい浴感のお湯で、長湯するような温度でもないにせよ、ホッとするような心地よさだった。
匂いが染み付くほど強力な源泉浴槽
反対の隅っこには2名規模の源泉浴槽。こちらは26℃とのこと。ぬる湯というか冷泉ですな。パイプから投入される源泉の見た目は、浴槽に溜まった状態でやや青っぽい白濁。そのため浴槽の底は見えない。酸性の白濁硫黄泉なんてまさに主役を張るステータスではないか。
26℃はさすがにザブンと一気に入ることはできず。冷たさに身体を慣らしながらゆっくり浸かっていった。大量の白い粒々がお湯の中を漂い、匂いを嗅げば浴室に入った瞬間に感じたあの硫化水素臭。しかも身体に染み付くほど強力みたいで、当館を出てからも後々まで匂うほどだった。あとは指先が異常にシワシワになった。すごいでしかし。
山の秘湯の雰囲気たっぷりの木造湯小屋に用意されているのは以上がすべて。運動後の汗を流したい登山客か、源泉目当ての温泉マニアか、客層はどちらかじゃないかな。一般の観光地に多く見られる、レジャーランド気分で訪れる客は考えにくい。
予定時間をオーバーして入り続けてしまった
加温浴槽と源泉浴槽を行き来すれば、かなり温度差のある温冷交互浴となる。こいつはたまらんぜ。調子に乗って何往復も繰り返す間に、パラパラと数名の客がやって来て、彼らの方が先に出ていった。…時計がないからわからんが、もしかして、おいら1時間くらい滞在してる?
じゃあそろそろ出るか。脱衣所を出て時間を確認すると、どうやら70~80分滞在していたみたい。真夏の冷泉がひんやり気持ちいいというだけではそこまで長時間にならないだろう。源泉の持つ力に引き込まれてしまったってところですかね。欲を言えば東の湯も体験してみたかったが、それはまた次の楽しみにしておこう。
東の湯編を書ける時は来るだろうか…。