さるすべりの木が見つめてきた湯宿 - 美ヶ原温泉 丸中旅館

美ヶ原温泉 丸中旅館
2026年最初の湯旅の2泊目は松本。バス便が発達していてアクセスしやすい市街地の外れに浅間温泉と美ヶ原温泉があり、浅間温泉は行ったことがあるので今回は美ヶ原温泉にした。てっきり美ヶ原高原の山の上にある温泉だと思い込んでて「行くの大変だなあ(特に冬は)」と敬遠していたのだが、松本市街だったのね。お恥ずかしい。

美ヶ原温泉の中から一人泊OKでお高すぎないところを探して丸中旅館に決めた。食事にボリュームを求めないので、お得度を優先してビジネス客向け(?)の品数少なめ和食会席プランにしたが、満足できる内容だった。温泉についていうと無色透明で適温のお湯はベーシックな特徴ゆえ、体になじみやすくてよく温まる。

美ヶ原温泉 丸中旅館へのアクセス

路線バスでさくっと行けて便利

JR松本駅から美ヶ原温泉まで路線バスが運行されている。平日も休日も昼間であれば30分に1本は走っているようだ。一応の終点が美ヶ原温泉だからずっと乗ってれば着く。ただしそこで全員降ろして別便となって仕切り直すわけではなく、そのまま松本駅へ戻っていくので乗り越しには注意。

今回は前泊地の諏訪からJRの普通列車で移動した。車窓から眺める空は青空、地面に雪はほぼない。よっしゃよっしゃ。何の不安もなく列車は松本駅に到着。まつもとぉ~(新音声)、まつもとぉ~(新音声)。

駅コンコースから北アルプスの雄姿を拝める。快晴だからバッチグー…と言いたいところだけど、ガラス越しになるため撮影するといろいろ映り込んじゃうな。
松本駅コンコースから見る北アルプス
さてチェックイン時間までまだかなりの余裕がある。ってことで歩いて松本城へ向かった。詳細は後述。とりあえず国宝松本城と雪の北アルプスの組み合わせをどうぞ。
松本城

美ヶ原温泉を軽く散歩する

それから松本城・市役所前停留所で美ヶ原温泉行きのバスに乗った。一応の終点まで来たものの、まだ時間的に早すぎる。ちょっと散歩しましょうかね。

バス停にほど近い温泉公園には飲泉所がある。癖がなくてごくごく飲めちゃいそうな味だった。
温泉公園の飲泉所
その裏側は「ふれあい山辺館 白糸の湯」という共同浴場。新しいけど懐かしさのあるデザイン。
ふれあい山辺館 白糸の湯
向かいは広い駐車場であり、見通しがよいおかげで北アルプスがよく見える。山の名前はわかりませんが。
ふれあい山辺館の駐車場
当館へ向かって歩いていくと、数件の旅館が立ち並ぶ通りに入る。御宿石川という旅館の脇から始まる「文学の小径」なる狭い路地へ寄り道する気持ちになり、案内にしたがって曲がっていった。
文学の小径
具体的に文学の何かがあったわけではない。道祖神(跡?)を見たところで引き返す。
道祖神
御宿石川の通りへ復帰してからもう少し進めば丸中旅館だ。
丸中旅館のある温泉街の通り

いろんな意味で奥が深い旅館

山家茶屋の名残のさるすべり

ではチェックイン…となるはずが、館内が妙に暗いな?! もう15時だけど。…いや、うっかりしてた、自分が悪かった。当館のチェックイン時刻は16時以降だったのだ。うまく時間調整したつもりでやらかした~。

ご主人が出てきて16時からですと説明。そうでした、申し訳ございません。追加料金でアーリーチェックインできますよという助け舟に乗ることにした。もう外を歩くのはやめて部屋でだらだらしたい。

次の写真はいずれも館内が点灯した16時以降に撮影したもの。こちらはピアノのあるロビー的な一角。
ロビー
当館は「百日紅(さるすべり)の宿」というサブタイトルを冠する通り、庭に生えたさるすべりの木が一種の見どころ。当地は山家茶屋と呼ばれる松本藩の保養施設で、この木は当時の庭園に植えられていたと言われ、樹齢500年にもなるそうだ。
さるすべりの木
館内は奥へ奥へ直線的に進むと同時に階段で上へ上へとフロアが上がる構造。斜面に作られたんでしょうね。エレベーターはない。
奥に長く階段の多い構造

早めにだらだらさせてもらった部屋

案内された部屋はある程度奥まで行ききってから折り返して1フロア分上ったところにある8畳+広縁和室。布団は最初から敷いてあった。
丸中旅館 8畳客室
一人には十分すぎる広さだし管理状態は良好。シャワー付きでない洋式トイレあり、洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり、WiFiあり。風呂あがりにビールが欲しければ先ほどのロビーの先に缶ビールの自販機があるからどうぞ。エアコンはもちろんあるにしても暖房に活躍するのは石油ファンヒーターである。

窓の外は、下を見れば鯉が泳ぐ中庭。横を見れば遠景を望むというほどではないけどそれなりに。
窓から見える景色
なお、部屋を出る際の鍵のかけ方は、内側のドアノブ中央のポッチを押して閉める昔ながらの方式。ドアを完全に閉める最後の最後が固くなってて、少し力を込めて押し込まないといけなかったのはご愛嬌。


ベーシックなアル単温泉がよくなじむ

湯使いはよさげ

丸中旅館の大浴場は1階…当館の構造にフロアの概念をあてはめるのは難しいが…フロントからあまり奥へ進まず階段もほぼ上らない位置。最終的な通路の左手前が女湯、奥が男湯。ただし20時以降は男女が入れ替わり、翌朝になるとまた元に戻る。

16時を待って男湯へゴー。浴場の広さは旅館の規模相応といったところ。脱衣所はよく見かける棚+かごのパターン。貼ってあった分析書をチェックすると「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」と書かれていた。泉温42.4℃、PH8.7。

加温あり、加水・循環なし。そして消毒なし?…湯使いについては客室に置かれた冊子にも説明があり、入浴剤・殺菌剤の有無の項目に「殺菌消毒のため」「殺菌剤を入れてます」シールが貼られ、ペンで「塩素系薬剤師用」と手書きの記入もされているが、手書き部分を二重線で取り消してその上にもっと太いペンで「投与しておりません」と追記しているのだ。→消毒なしと解釈したい。

優美な形をした浴槽に透明湯

浴室にはカランが5台。露天風呂はなく5~6名サイズの内湯浴槽がひとつ。かわいいような美しいような、絶妙な曲線美のタイル浴槽で、ひょうたんのようでもあり、ちょっとくびれたバーバパパのようでもある。湯口付近は石積み風、壁はところどころタイル模様を変えていて単調にならないようにデザインされた浴室だ。

お湯は明らかに無色透明。浸かってみたら適温だった。ぬる湯派としては加温を緩めてもいいかなと思うけど、一般向けには熱すぎずぬるすぎずでちょうどいいと思われる。特に冬に温まるのにはベストじゃないかな。端っこ付近は浅めに作られており、寝湯ぽい体勢にしたり半身浴風に入れば体感の熱さを下げることはできる。

湯の花は見られず。泡付きもなし。匂いも無臭、と言いたいところだけど、なんだか妙に焦げ臭を感じる瞬間がちょいちょいあるんだよな~。まあ気のせいということにしておこうか。少なくとも塩素消毒の気配はまったく感じなかった。

独占チャンスは多そう

大きい窓が付いているものの外の景色が見えるわけではない。そのへんは内湯ってことで浴室や湯船の意匠の方を楽しんでもらえれば。

こちらの男湯は16時すぎに1回、夕食前さらにもう1回は強引かと思ってパス、夕食後は男女入れ替わった浴場へ行き、翌朝またこちらに入った。強烈な個性はないかわりに体になじみやすいアルカリ性単純温泉で浴感にすぐれ、温まりのよい湯である。

客入り次第で変わり得るのを承知のうえで、当時は独占タイムが多かった。自分以外の他客は多くて1名。のんびり入れましたね。

もう一方の浴場はややぬるめの湯で入りやすい

夕食後は男女入れ替わったもうひとつの浴場へ。こちらはチェックイン時に説明された通り、最初の男湯よりも小ぶりなつくりだった。自分は運よく独占できたのでなんら問題ない。

浴室にカランは3台。浴槽は長方形で横一列に4名サイズ。手前側の端が浅く作られている。湯口はシンプルだが白い析出物がこびりついて温泉力をしっかりアピールしていたと記憶している。

お湯の特徴は先に記した通りだけど、温度がややぬるめだったのはありがたい。ぬる湯派なもんでね。冬でもこれくらいでいいんですよと心の中で感謝しながら…まあ典型的なぬる湯のように30分~1時間連続は無理だけど…気持ち長めの湯浴みを楽しんだのであった。あーえがった。


食事は期待してもらっていいですよ

夕食の品数控えたつもりが充実度おそるべし

丸中旅館の食事は朝夕ともフロント近くの食事処で。夕食は18時を希望。準備ができると部屋に内線がかかってくる。部屋ごとに割り当てられたテーブル席に案内されて着席。スターティングメンバーはこちら。
丸中旅館の夕食
品数少なめプランでこれは豪華じゃないか。あん肝とか肉厚ステーキがあるけど、いいんですか?! アーリーチェックインの追加料金を考慮しておまけしてくれたのかな。いやいや、そんなの食材の仕入れも仕込みも間に合わないでしょう。もとからこうなんじゃないの?!

と若干舞い上がってあたふたしながら夕食スタート。ソフトドリンク1杯サービスのプランだったが(まったく意識してなかった)、それはナシにして日本酒を頼んだ。どんな銘柄かは覚えてないし利き酒できません。お酒が進む海鮮とがっつりステーキでもう十分満足できる。標準プランはどこまで豪華になるのやら。

当時の体験からいえば、山の味覚が中心ということもなく、むしろ海鮮系が多いくらいで、山要素と海要素、魚と肉と野菜をうまく組み合わせている印象を受けた。

早めに着火するきのこ釜飯もうまかったのに全部食べきれなかった。もったいないな~。しかし胃袋が入場制限を発動したので無理せずで終了。品数少なめに1時間ほどかけたあげく一部残しちゃったよ、おそるべし。

朝の一杯はリンゴジュースで

朝食は8時を希望。前夜と同じテーブル席へ。朝もしっかりした内容だ。
丸中旅館の朝食
信州らしくリンゴジュースが出てきた。まずはこちらをゴクッと飲み干すと一気にフレッシュさわやかな気分に。お品の紹介で耳に残っているのが「こちらは山ウドです」と「海苔にはわさびの味がついています」…なるほど、山菜があるのはいいね。そしてわさび海苔になってるおかげで醤油いらず。

味噌汁はよくわかってないけど赤だしのコクが強い。旅行先では毎度のことながら米がうまいな。前日に続いてお櫃からおかわりした。2日連続とは我ながら珍しい。量も内容もちょうどいいバランスでようございました。ごちそうさま。

 * * *

雪国生活経験ゼロ&ウインタースポーツを嗜まない人間として、冬には行きづらいイメージを持っていた信州松本。今回はちょっとした冒険のつもりだったが、アクセス面の利便性が生きて無事に温泉と食事を楽しむことができた。

美ヶ原温泉は多くの観光客でにぎわう活気というよりも静かな佇まいに心が落ち着くタイプの温泉地。丸中旅館もそんな湯宿といえる。気負わずふらっと行けることがわかったのは収穫。


おまけ:宿泊前後の松本お気楽観光

丸中旅館の前に寄り道しようと松本城方面へ歩き始めると四柱神社が見えてきた。県内屈指のパワースポットらしい。ちょっと拝んでいきましょうかね。今年もいい温泉めぐりができますように。
四柱神社
続いて松本市立博物館を見学。当時は常設展のみで500円。モダンな建物の3階に松本の歴史に関連するいろいろなものが展示されている。こちらは「あめ市」に関するエリアの宝船。
松本市立博物館に展示されていた宝船
それから松本城まで来た。過去に見学したことがあり、本城を含む現存12天守をコンプリートずみ。15時チェックインを狙うならもう中を見ている余裕はなさそうだから(現実は16時チェックインだったから実は余裕あった)、外から見るだけ。黒が目立ちますね。こうして丸中旅館へ向かったのであった。
松本城
翌日チェックアウト後もバスを途中下車してまた松本城へ。そしてやっぱり外から見るだけ。国宝の威厳を感じますな。
松本城
その足で旧開智学校へ。こちらも国宝だ。
旧開智学校
お休み中だったようだし、松本城と同じく外から見るだけのつもりだから、これでヨシ。
旧開智学校
すぐ隣には移築復元された旧司祭館もあった。
旧司祭館
あとはバスで松本駅へ。スタバで長~いコーヒー休憩を取ってから高速バスで帰りました。