大分県九重町の観光スポットに九重“夢”大吊橋がある。歩道専用として日本一の長さを誇っていた(現在は三島スカイウォークが最長)。くじゅうエリアの旅行であればたいがいの人が計画に組み込むことになるのだろう。
その夢大吊橋の近くに温泉好きならマストといっても過言ではない温泉がある。筌の口温泉・山里の湯だ。各種の口コミによれば強力な炭酸泉で泡がすごいらしい。炭酸泉にしては比較的温かいのが珍しいとのことだが、それでも長く入れる程度にはぬるめの湯だと思われた。ぬるい+泡=大好物の属性が2種類も含まれるんじゃ行くしかないでしょう。
…びっくらこいた。ものすごい炭酸だった。お湯じたいも濃厚でかなりの個性。
筌の口温泉 山里の湯へのアクセス
九酔渓付近の道路状況に注意
当館へのアクセスについては夢大吊橋へ行くことを考えてみればいい。両者は1kmも離れていない。ちょっと頑張れば吊橋を起点に徒歩でカバーすることも可能だろう。福岡や由布院から高速バスで九重IC、もしくはJR久大本線豊後中村駅まで行けば、夢大吊橋までの九重町コミュニティバス便が走っているようだ。
自分はといえば、筋湯温泉たからや旅館をチェックアウトしてからレンタカーで壁湯温泉福元屋へ立ち寄り入浴した後に夢大吊橋へ向かった。
豊後中村まわりで県道40号を走れば途中で九酔渓を通るからそうしようとしたら、カーナビが四季彩ロード経由の別ルートを強硬に推してきた。なになに?…前者は路肩崩壊による対面通行がありますだって?…じゃあしょうがないか。時間の余裕もないし。
まずは九重“夢”大吊橋を見学する
カーナビの指示に従ったらスムーズに夢大吊橋へ着いた。駐車場は十分に広い。入場料は500円。では渡ってみるか。
ただ長くて高い橋を渡るだけでなく、橋の途中から震動の滝の勇姿を拝むことができる。吊橋がなければこのようなアングルの景色は見られないだろうから、ありがたい話だ。
上の写真は進行方向右手に見える震動の滝・雌滝。振り返れば雄滝が見える。
進行方向左手は九酔渓方向。鳴子川によって深く切れ込んだ谷だ。
渡りきった先から階段上って少し行くと吊橋展望台がある。全貌をつかむにはいい。紅葉の季節もよさそう。
復路の前にもう1枚記念撮影。
はい、観光はここまで。夢大吊橋から山里の湯は車だとあっという間だ。道路に看板が出ているところを右折しましょう。注意点としては、当館は一般の筌の口温泉から離れた場所にある。道路標識で筌の口温泉を目指してはダメ。あくまで山里の湯の看板を探すこと。
稀有なレベルの強烈炭酸泉
第一印象が「赤い」浴室
敷地内は写真撮影禁止のため、当館に関するものは冒頭写真のみだ。半透明シートで覆った中にある受付で700円をお支払いしていざ入場。正面に宿泊棟があり(素泊まりのみ)、左手に浴場棟があった。右が女湯で左が男湯。
脱衣所に100円戻らない式ロッカーあり。分析書をチェックすると「含二酸化炭素-ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩泉」とあった。他の情報も参考にすれば加水・加温・循環・消毒なしと考えて間違いない。
浴室の洗い場は3名分。ボトル入りのボディソープが全体で1つ置かれている。床から浴槽にかけて視線を向けると「赤い」という感想が浮かんできた。完全に赤さびのような色がこびりつき、床の一部は赤茶の千枚田模様ができている。うわー強烈そう。
中浴槽がすでにサイダー状態
浴槽は2つ。左に2名サイズの小浴槽と右に3名サイズの中浴槽。小浴槽にはすでに2名の先客が詰めていた。ぬるい炭酸泉だと相当に長湯するだろうなあ。なかなか出てくれないだろうなあ。長期戦を覚悟して、まず中浴槽へ浸かってみた。
お湯は無色透明。数字面はともかく体感的にはぬる湯の中でも温かい部類だ。体温よりは上だと感じたな。直接の湯口はついてなくて、隣の小浴槽のお湯がこちらへ流れ込んでくる方式だから、小浴槽よりもややぬるくなっているのだろう。一方で湯尻の方からどんどんお湯がオーバーフローして出ていく様子もわかる。鮮度は十分すぎるほどかと。
湯の花としては赤さびの粒みたいなのが漂っていた気がする。匂いは予想通りに金気臭だった。噂の炭酸については、やはりすごい。あっという間に全身泡だらけになった。かなりのもんですよ、これは。温めたサイダーの中にいる気分。
なにかがバグっている小浴槽の豪快な泡付き
壁に入浴方法の指南が掲げられていた。中浴槽に10分→小浴槽に10~15分、これを各自の体調に合わせて繰り返す。なるほど。5分くらいして小浴槽から一人出たのを見て、まだ10分経過してないけどこのチャンスを逃してはいけない、と勇んで小浴槽へ移った。千載一遇のチャンスだったので入浴法を守ってないのは許してほしい。
小浴槽には湯口があり、炭酸の泡がとてつもない勢いで噴出している。なんじゃこりゃあ。天然温泉でこんなに大量の泡が出てくるの? なにかがバグっているぞ。あまりの炭酸に二酸化炭素中毒のおそれがあるからだろう、窓はつねに開放することになっていた。
泡ボコボコが激しくて、浴槽のお湯はつねに掻き回されてる状態。肌に泡が付着するというより泡粒の群れが身体に突進してくる感じ。中浴槽も相当な泡付きレベルだが、それ以上の突き抜けた超弩級である。とんでもないものを体験してしまった。
温度はやはり中浴槽より熱め。40℃弱くらいか。しかし炭酸のおかげか清涼感があって体温ジャストのお湯と同じように長湯できるポテンシャルはあった。とはいえ他のお客さんが入りたそうにしているのを尻目に長時間居座ったらヒンシュクものだから、入浴法にしたがって10~15分で出ましょうかね。
浴後の温まり方にもびっくり
再び中浴槽へ移ると、なんか新感覚! まるで温冷交互浴のような感覚だ。激しい泡にパチパチ攻められた後の肌のヒリヒリ感も加わって、ちょっとおもしろい浴感が得られた。あーこれ癖になりそう。入浴法通りのサイクルを繰り返すとかなり幸せになれる。
スケジュールが押してたし、今日はまだ行くべきところがあったし、まあここは40分くらいで…と当初はドライに考えていたところ、気がつけば1時間滞在していた。ついカッとなってやった、じゃなくて冷静だったけどあえてやった。後悔はしていない。
炭酸で血行が促進されたのか、泉質の効能か、山里の湯を後にして車を走らせた数分後から、急に身体がぽかぽか温まりだした。えっ、なにこれ。最後までびっくりさせてくれますな。夢大吊橋のそばにある夢の温泉。なかなかできない経験をさせてもらった。