因幡の白うさぎが浸かったかもしれない好泉 - 宝喜温泉館

宝喜温泉館
いつか行こう行こうと思いながら、なかなか条件が整わなくて数年単位で見送りが続いていた鳥取へ、やっと来ることができた。空港に着いたらまず見に行ったのが鳥取砂丘。これはもう定番でしょう。その後はいよいよ温泉だ。

宿泊する旅館までの途中にある日帰り温泉に立ち寄ろうと思いつつ、全く未知の世界だったのでネットで調べてみると、旧気高町の宝喜温泉館が評判良さそうだった。源泉かけ流しを全面に押し出しており、適度にぬるめの浴槽もあるみたいで自分には合ってそうだ。施設の特徴になっているプール云々が何なのかはよくわからんが、行ってみればわかるだろう。

はたして、提供されるお湯はたしかにしっかりしたものであった。またプールというのも現地で体験してよくわかった。お値段を考えても良心的な温泉といえよう。

宝喜温泉館へのアクセス

車前提で地図を見ると、宝喜温泉館からわずか数百メートルのところに山陰自動車道(鳥取西道路)の瑞穂宝木ICがあるのがわかる。だから出発地によっては山陰自動車道に乗ってしまえば簡単だ。※瑞穂宝木ICは鳥取方面から/への出入口のみのハーフICなので注意。

自分のように鳥取砂丘から向かう場合、カーナビでルート探索したら海沿いの国道9号を推奨された。素人考えで冒険するよりは素直に従っておこうとナビの指示通りにしたら、道は十分に広いし、信号は少ないし、交通量も少ない。運転慣れしてなくても全然快適なドライブだった。

しかも途中で白兎海岸・白兎神社を見学する機会を得た。もともとの計画には入ってなかったから得した気分。いい調子だぞ。

JR宝木駅のあたりで国道9号から県道182号へスイッチして内陸方向へ2キロほど行けば、山陰自動車道の下をくぐった後に当館が現れる。手前が温泉水の工場で、その隣が温泉施設。周辺はのどかな田園地帯である。
宝喜温泉館周辺の風景

これが良泉・宝喜温泉だ

自慢の「三ない」源泉かけ流し

では入館。まず下足箱に靴をしまって鍵をかける。この鍵が細長い独特な形をしていて先っちょまでしか鍵穴に入らない…だから何?と問われても困るが、おかしろい。正面の券売機でチケット420円を買い、受付で下足箱の鍵と引き換えに脱衣ロッカーの鍵を受け取る。

ちょっとした休憩コーナーは昨今の情勢を鑑みて利用しにくい雰囲気になっていた。そこの壁は下の写真のように源泉かけ流しアピールが目についた。加水なし・加温なし・循環なし。キャッチフレーズの「三ない」には含まれてないけど消毒もないはず。こいつは本物だぜ。
休憩コーナー
脱衣所では鍵の番号に対応したロッカーを使う。横幅と奥行きに余裕があり、旅行の荷物もある程度までは対応可能。レンタカーで移動してれば関係ないかもしれぬが。

掲示された分析書には「単純温泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」とあった。高温泉といっても先ほどのアピールによれば源泉温度47℃だから、加水・加温せずとも湯口でちょうどいい具合の温度になってるんだろう。他に「カランからのお湯も全部温泉」みたいなことが書かれている。

ぬるめのジェット寝湯を気に入った

浴室に入るとまず左手に11名分の洗い場。ここで洗髪と洗身してみたところ、たしかに出てくるお湯が微妙にヌルっとしていたから、温泉なんでしょう。なんという贅沢な。こいつはおかしれえや。

右手には2名分のジェットバスの寝湯。人がいなくなった隙をみつつ2~3回入ってみたが、熱すぎない適温でなかなか気持ち良い。本格的なぬる湯のように30分や1時間は平気というのではないにしても、ずっとここにいてもいいかなと思わせるだけの魔力がある。

奥には2名サイズの水風呂と8名サイズの内湯メイン浴槽。水風呂はパスしてメイン浴槽へ。ここのお湯は熱めだった。長湯で粘ることは難しいだろう。とはいえ決して悪くはない。熱めが平気・好きな方であれば気に入ってもらえるクオリティだと思う。

お湯の見た目は無色透明。塩素臭がしないのはもちろん、普通のお湯とは違う温泉ぽい匂いも若干感じられる。湯の花は特になし。源泉かけ流しによる鮮度相応の一番風呂的な多少の泡付きがある。洗い場で感じたヌルつきもあるはずだけど、慣れのせいか、はっきりとは意識されず。

脱衣所から浴室にかけてのつくりは古びてたり玄人向けに偏ったところがなく、むしろファミリーや温泉ビギナーにも安心感を与える雰囲気だ。

ぬるい立ち湯としても使えるプール浴槽

当館に露天風呂はない。かわりに広めの浴室がもう一つあって、そこに例のプールがあった。もちろん本格的に泳ぐための施設ではない。へそ~胸下くらいの深さまで注入されたお湯の中で歩行浴するのが基本となる。見てると時計回りに歩く人が多い。

自分も入ってみた。おおぬるい。使い方からして、あんまり熱いとミスマッチだからな。ぬる湯派の人なら「プールじゃなくて普通のお風呂だとしてもこれくらいの温度がいい」と思うに違いない。

あまりにちょうどいい湯加減だったので、歩く人の邪魔にならない隅の方にしばらく留まった。立ち湯として楽しんでも十分にいける。まさにおかしれえって気持ちだ。なお、本気で泳ぐにはいささか狭いが、全員を立ち湯させるつもりで整列させていけば20名、いや30名以上でも収まりそうな広さ。

またプールの脇に打たせ湯もある。一応は2名用。でも2名の定位置の中間にもう1名が割り込めなくもない(打たせるお湯はないけど)。誰も打たせ湯を使ってない時を狙って中間地点を陣取れば、足元に浅く溜まったお湯を利用して寝湯っぽくできる。

ひと通り体験した後、ぬるめが好きなのでプールと内湯のジェット寝湯を中心に1時間ほどすごした。鳥取砂丘で被った砂もきれいに洗い流されて(という設定の気分で)身も心もすっかりさっぱり軽やかになった。宝喜の名に偽りなし。


おまけ:神話の地「白兎海岸」

宝喜温泉館へ行く途中に白兎海岸を通りかかった。神話「因幡の白うさぎ」の舞台になったところか…ちょっと寄り道してみるべ。幸いに海岸の目の前が道の駅「神話の里 白うさぎ」になっていて駐車できる。

道の駅から歩道橋または地下道で国道を渡ると海岸へ出る。左手の小さな島の上に鳥居が立っているのが見えた。あそこがうさぎのいた淤岐ノ島なのか。
白兎海岸 淤岐ノ島
あの島からワニザメをだまして海を渡ろうとして…ってことね。へー。そして道の駅のすぐ隣には白兎神を祀る白兎神社もございます。
白兎神社
本当はいろいろ由来とか歴史とか深いものがあるはずだが、全くのノーマークを急きょ寄り道したもんだから、時間の都合もあって単にさらっと見て終わりにしてしまった。事前に予習しておけば受け止め方も全然違ったはずだけど、仕方ないね。ご勘弁。