絶景と濃厚成分を両立させた猿人の湯 - ユインチホテル南城

ユインチホテル南城 猿人の湯
全国各地の温泉に入ることを目指すなら、沖縄を例外とするわけにはいかない。いつかは温泉のためだけに沖縄へ行くことになる。といっても、うっすら思ってるだけだから、まあずいぶん先の話だなと覚悟してたら、意外とあっさり実現した。やればやれるもんですな。ただし1泊2日の弾丸ツアー。

限られた時間の中だと行動範囲は那覇近郊。その範囲で立ち寄れて評判の良い温泉はないかと探して見つけたのが南城市の「ユインチホテル南城」。ここに猿人の湯という日帰り利用可能な温泉施設がある。

お湯の面では濁りの濃い強塩泉でかなり本格的だ。景観面もすばらしくて、高台から海を一望しながら風呂に入れてしまう。ロケーションと湯質を両立させた好施設だと思う。

ユインチホテル南城へのアクセス

めんそーれ沖縄

冬の某日昼。おじさんは那覇空港に一人降り立っていた。当たり前だけど羽田よりも全然暖かい。南関東の10月後半くらいな感じ。いやあ本当に来ちゃったよ。まだ現実感がないわ。
那覇空港
せっかく沖縄へ来たので、沖縄っぽいものでも食うか。とりあえず空港内のお店でソーキそばを一杯。
ソーキそば
柔らかくてうまいソーキ肉は、しかし量が多いね。昼からこんなに食べるもんなの? こんだけ肉を食べたら晩ご飯いらんぜよ。まあ晩は晩でしっかり食べたが…。で、腹を満たしたところでゆいレールに乗る。
ゆいレール
ゆいレールの那覇空港駅は日本最西端の駅になるそうだ。なんかそういう碑が立ってた。そして隣の赤嶺駅は日本最南端。よっしゃ、まとめて2箇所をクリアしたぜ。とかなんとか高揚気味の気分冷めやらぬうちに旭橋で下車。

旭橋駅のそばには那覇バスターミナルがある。ここからバスに乗って、どの有名観光スポットでもなく、温泉施設へ淡々と向かおうとするおじさん。はるばる沖縄まで来て一体なにを考えているのかこの男…別にいいじゃん、俺は俺の責務を全うする。

目指すは丘の上

南城市役所行きのバスに乗り込み終点まで行く。約50分。車窓は市街地がずーっと続いていて、建物のデザインが沖縄風('風'じゃなくて本場というべきか)であるほかは、ロードサイド店舗がポツポツあったりして首都圏の郊外とあまり変わらない。牧歌的なさとうきび畑が広がるなんてのはこちらの勝手な思い込みだ。

終点が近くなると緑が増えてきた。そして最後に待っていたのが心臓破りの丘。バスが登ってくれたから良かったものの、もし丘の下までしか行ってくれなくて、あとは歩きだったら相当しんどかったに違いない。

丘の上が終点・南城市役所でございます。
南城市役所
住民のみなさん、特に丘の下に住んでるみなさんは市役所に用があるたび丘を登らなきゃいけないわけだ。自転車でも無理があると思うぞ。毎回バスなのか。どうすんだろ。車社会だからいいのか。などと余計な心配をしてしまう。


本格的強塩泉かつ絶景温泉

タオルを持参するとお得に

目的のユインチホテル南城は市役所の目の前にあった。なんちゅう立地や。
ユインチホテル南城のゲート
よくある日帰り温泉施設だと入館してすぐ靴を脱ぐけど、ここは靴のまま受付へ。料金は1650円とややお高い。かわりにタオル・バスタオルを貸し出してくれる。一方、タオルを持参すれば1250円にディスカウントしてもらえるから、可能ならタオルを持っていこう。

受付からすぐのところに資料室のようなコーナーがあった。ちゃんと見てなかったので内容は把握できてない。周辺案内や歴史的な背景の説明だと思うけど。
資料室のようなコーナー
そして2階へ上がると大浴場。脱衣所の前で靴を脱ぎ、受付で受け取った腕輪の番号のロッカーに服や荷物と一緒にしまうようになっている。掲示された分析書には「ナトリウム-塩化物強塩泉、高張性、中性、高温泉」とあった。別の用紙だとその冒頭に「含鉄・ヨウ素-」が付いていた。

小浴槽は「佐敷の丘の桟敷席」

浴室内に洗い場は20名分。これなら洗い場難民になることはないだろう。そして奥にはいくつかの浴槽と、全面ガラス張りの窓から海が見える。ほえー。景色がすげーな。

まず中央の一段高い位置に鎮座する、かまぼこの断面形をした4~5名サイズの小浴槽に入ってみた。お湯は底が見えないくらいに濁った黄土色。温度計の針は42℃付近を示している。熱いは熱いが冬場なら適温だろう。慣れればある程度は浸かっていられる。

お湯の色もそうだし、匂いもいかにも強塩泉といった感じで、アブラ臭と土気臭が混じったような特有の匂いがした。加水・加温・濾過をしていない源泉かけ流しとのことだから、やっぱり相当なもんですね。埼玉東部から千葉北西部にかけて点在する同様の泉質の、濃ゆいと定評のある温泉群と比べても遜色なさそう。

しかも丘の上=佐敷の丘から中城湾を見下ろす光景が眼前にバーンと展開しているのだ。これぞ絶景温泉。なんという贅沢か。灰色雲が垂れ下がるいまいちな空だったけど十分に印象的。もしすっきり晴れていたらとてつもない絶景だったろう。ほえー。

濃ゆさが際立つ大浴槽

小浴槽の奥に横長の大浴槽があった。床面に合わせた高さで、小浴槽から見ると一段低い位置。全員が海を展望できるように横一列に並べて15名は余裕でいけるサイズ。こちらのお湯は窓から差し込む光が直接当たるせいか、黄土色を通り越してオレンジ色に見える。有馬温泉みたい。

お湯の特徴は温度や浴感も含めて小浴槽と一緒。しかし外見がオレンジ色だから濃ゆさ感がアップしているような気分になる。しかも湯口とは別に浴槽内のどこかでお湯を噴出投入させている模様で、その影響なのか、湯面の一部に細かいあぶくが立っている。それらが流れて凝集したあぶく地帯があった。

面白そうだからわざとあぶく地帯へ移動してみた。別に炭酸泉のような効果が得られるとは思ってないけど、なんとなくね。オレンジ色の温泉に浸かり、あぶくに囲まれながらの中城湾の絶景。いやー最高ですな。

他には4~5名サイズの薬湯浴槽もある。源泉が濃ゆいから湯疲れしたときにどうぞ。当時はクリアな緑色をしたレモン風呂だったかな。あとはサウナ利用向けの水風呂。端の方には打たせ湯もあるけど、事情は不明だが「利用できません」になっていた。

海を見ながら休憩するのもまた良し(予想)

十分に堪能した頃、やけに喉が乾いてきた。さすがは高張性の強塩泉。主張の強い源泉にも、ずっと見ていたい景色にも、別れを告げるのは名残惜しいがここらが潮時。帰りのバスにもちょうどいい頃合いだ。ありがとう猿人の湯。

風呂場で写真を撮るわけにいかないので、別の場所で海の景色をカメラに収められないか探索してみたが、ちょっと無理っぽい。海の見えるスペースは1階が食事処・2階がリラックスルームになっている。館外に出て海側へ回り込むのも無理。
吹き抜けのロビー
でも今にして思えばリラックスルームの方は有料じゃなくて誰でも入れたのかな。もしそうなら早とちりで余計な遠慮をしちまったな…まあいいさ、それは後に続く者に託す。俺は俺の責務を全うしたので誰か現地へ行って確認してほしい。