温泉と景観と各種サービスの充実ぶり - 鳴子温泉 湯元 吉祥

鳴子温泉 湯元 吉祥
二度目の鳴子遠征でお世話になった初日のお宿は「湯元 吉祥」。総じて素朴な小規模宿が多い鳴子においては数少ないハイクラスに分類される、高台に立つ眺望自慢の大規模ホテルだ。普通なら自分らの選択肢に入ってこないところ、ちょっと頑張ってみました。

うーん、さすがですね。いろんな面で隙がなくリッチな気分で過ごすことができる。温泉も絵に描いたような白濁硫黄泉でばっちり。無料で利用できる貸切風呂もあるし。ぬる湯好きにとってはいささか熱すぎたくらいかな。

求めている要素が“昔ながら”とか“気さくな雰囲気”とかでなく、グレード感や間違いのない宿というのであれば、こちらをおすすめする。

鳴子温泉「吉祥」へのアクセス

JR陸羽東線・鳴子温泉駅から徒歩10分もかからない場所、鳴子のシンボル的な共同浴場・滝の湯近くに温泉神社がある。吉祥は神社の裏手みたいなロケーションだ。坂の上りはあるけど駅近至便物件と言えるでしょう。滝の湯~温泉神社経由で温泉街風情を味わいつつ歩くのもいい。

しかし今回のグループ旅行は仙台からレンタカー。仙台宮城ICから古川ICまで東北道を使い、そこから国道47号という王道ルートで鳴子入りした後は、紅葉の鳴子峡中山平温泉「しんとろの湯」鬼首地区の観光を経て、鳴子温泉駅前までやってきた。

駅周辺は川から一気に高台へと変化する地形のため平坦地に乏しく、いろいろと余裕がなくてごちゃごちゃしている。川沿いの国道から線路の向こうの温泉街へスパッと入っていく道もない。土地勘がなければカーナビを頼りにすべき。

駅前の道路も対向車とのすれ違いに気を使う幅で、さらに観光客がぞろぞろ歩いてたりもするから運転は慎重に。


何の文句もない良きホテル

現地で初めて意識した共立リゾート

吉祥に着くと、まず同乗者(自分)と荷物を降ろされ、運転手だけになった車が係員の誘導で奥の駐車場へ消えていった。車を置いて歩いてきた運転手と合流したらチェックイン。

玄関脇に貸切風呂へ続く扉があった。へー、正面玄関のところから風呂に行く構造は大規模ホテルだと意外性があるね。またロビーには鳴子漆器が展示されている。着いていた値札を思わず二度見。
ロビーの鳴子漆器
お土産コーナーも当然ある。鳴子テーマのこけしやお菓子系のほか、仙台テーマの牛タン風味系など。
お土産コーナー
コーヒー・お茶のフリードリンクをいただけるラウンジもある。当館は共立リゾートが運営している関係から、全国各地の共立リゾート系列ホテルのパンフレットが置いてあった。
吉祥のラウンジ
余談になるが、同行メンバーが単独行動で前泊したのが「ドーミーイン」ブランドのビジネスホテルだった。温泉の大浴場があるし、夜鳴きそばサービスはあるし、朝食のバイキングも充実していたとかで、いたく気に入っていた。そのドーミーインも共立グループの運営だって。現地で初めて知ったこの事実。偶然のめぐり合わせですな。

ウエルカムされちゃう素敵な部屋

で、割り当てられた部屋は6階にある10畳+3畳+広縁の和室。我らが人数に比して広いだけでない。全般せせこましいところがなくゆったりしたつくりで好感が持てる。あちこちまだ新しい感じだし。
吉祥の客室
シャワートイレ・洗面台付き。内風呂ぽく見える場所の扉を開けたらシャワーブースだった。金庫あり。冷蔵庫にはウエルカム缶ビール・烏龍茶が各1本と、共立リゾート謹製のミネラルウォーターが人数分。採水地は山梨県山中湖村。ありがたくいただいた。

布団をセルフで敷くようになっていたのは、お得な「アーリーチェックアウトプラン」のためではないかと思う。通常11時チェックアウトのところが10時になる。10時ならまあ普通だしお得になるならと思って飛びついた。布団セルフはそれに付随する条件のひとつではないかな(ファクトチェックは各自でお願いします)。

WiFiは全室可のはずでフリーのアクセスポイントも見つかるけど、案内を書いたものがなかったし、よくわからんので使わず。そして窓から見える景色がこれ。高台の利点が生きてる。
窓からの眺め
右端で切れてしまっている人工滝は紅葉とあわせてなかなか見栄えがしたのだが、ガラス越しではうまくアングル調整ができず。


全般に熱めの白濁硫黄泉

半露天型の貸切風呂・蓮

では風呂に参ろうか。作務衣に着替えると1階の貸切風呂を狙いにいった。ひとつの建物内に4室の貸切風呂がある。無料かつ予約不要で空いていれば利用できる方式だし、この規模のホテルで4室だと競争率は高そう…幸いなことに空室があった。「蓮」っていう名前がついてたっけな。

脱衣所は2名でいっぱい。カップルや、せいぜいお子様を入れたファミリー3名までを想定してるんだろう。分析書を確認すると「含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とあった。「当館の温泉には鉄分が含まれています。お湯の中の黒い粒は湯の華です」の張り紙も。

浴室の構造的には眺望なしの半露天になるだろうか。洗い場は1名分。その隣に四角い和風スタイリッシュな2名サイズの浴槽があった。お湯は見るからに王道ストレートの白濁硫黄泉。温泉気分を一気に高めてくれる色だ。

浸かってみると熱い。適温の範疇にしても高めのゾーン。ぬる湯好きの我らにはちと熱すぎる。長湯することもなく早めに出た。平均的な方々にとっても休憩をちょくちょく挟まないと長い時間いることは難しいと思われる。おかげで回転率が上がると思えば、多くの客にチャンスが回ってくるわけだし結構なことではある。

内湯型の貸切風呂・凛

翌朝にも貸切風呂へトライしてみたところ、再び幸いにも「凛」という1室が空いていた。こちらは蓮よりもひと回り小さい浴槽で、1名~頑張って2名まで。洗い場は1名分ちゃんとある。

浴室は半露天でなく完全に内湯だった。そのせいか、室内の熱気でお湯がより熱く感じる。うー、こりゃたまらん。同行メンバーは「先に戻る」と言い残して速攻で出ていった。自分は残って少しだけ粘ってみたけれど、長湯といえるほどではない。まあ長湯するような泉質じゃないけども。

熱さを除けば浴感はなかなかのものである。乳白色のお湯は意外となめらかで、匂いを嗅いでみるとタマゴ臭までいく手前の、木の香寄りの硫黄臭となっている。荒ぶるところのない慎みある特徴で宿のイメージには似合っている。

お湯の印象が他とやや違う大浴場の内湯

夕食直前・夕食後・早朝には6階の大浴場へ行ってみた。自分らの部屋からめちゃ近い。男湯女湯ののれんの手前に湯あがりサービスとして、夜はアイスキャンディー・朝はヤクルトが置かれている。同じサービスがドーミーインにもあったそうだ。

のれんのあたりでもう硫黄臭がすごい。浴室に洗い場は10名分。目立たない脇の方にジャグジー風呂があったけどお湯が透明だから真湯じゃないかな。こいつはパスでいいでしょう。

メインの内湯浴槽は広い。20名は余裕、各自詰めていけば30名も可能。浸かってみると、うーん、やっぱり熱めだなあ。湯口から離れて陣取ってもだめだ。その湯口には鳳凰の像が据え付けられて湯浴み客を見守っている。

2名分の寝湯コーナーがあって、浅くなってれば少しはぬるいかと思いきや、違いはなかった。こうなってはお手上げ。

この内湯のみ、他とは違う特徴があって、朝行った時にお湯が緑がかっていた。他は見るからに乳白色なのにここだけ緑白濁って感じ。そしてお湯の匂いを嗅ぐと硫黄臭を打ち消すくらいに金気臭が強かった。何だったんだあれは。熱いのは変わらずだが。

湯尻にいれば熱すぎない露天風呂

露天風呂もある。10名サイズの岩風呂の上に半分だけ屋根がかかっている。塀や木が並んでいて外の景色は見えないかわり、夜は紅葉がライトアップされるなど洒落た演出がある。

お湯はやっぱり熱い。湯口を正面に見据える位置が特に熱くて、横へずれていくと熱さは緩和される。もう毎回横にずれた場所を狙うしかなかった。

お湯はいいのであとは温度がもうちょっと低ければなあ。寒い季節に入ったということでどこもかしこも熱めにチューニングしてるんじゃないか。熱いのがあってもいいけど40℃程度の浴槽もあるとなお良し。


絶対に不足を覚えることがない食事

洒落た感じで、かつたっぷりの夕食

吉祥の食事は朝夕とも2階の食事処で。半個室になっており、入口で部屋番号を告げると朝も夕も同じブースへ通された。水・お茶・コーヒー・ジュースをドリンクバー的な場所まで自分で取りに行くのは夕食時も同じ。

夕食のスターティングメンバーがこれ。おっ、ほやの酢の物があるぞ。宮城っぽい。鍋物は鳴子ちゃんこ鍋だそうな。具体的な食材は忘れたが確かにちゃんこ風だった。
吉祥の夕食
さすがハイクラス、前菜からなかなか洒落てますねえ、なんて言いながらビールとともに箸を進めたが、途中で牛タン+帆立+温野菜の焼き物が追加されたあたりで急に満腹感が襲ってきた。ちゃんこ鍋と牛タンの二正面作戦はかなり厳しいぞ。

食べきれず、敗北

さらに5種の天ぷらキターーー! 揚げたてサックリ感がすばらしく、舞茸・のどぐろもあって見逃せないが、もうお腹が…。茄子天は残してしまった。

締めのはらこ飯はイクラのおかげでどうにか片付けたものの、まじ限界。芋の子汁は8割方残した。肝心の芋食ってねえ。最近の旅行では締めのご飯を控えめにすれば完食できていたので、今回もそのつもりで臨んだけど、よもやの敗北。本当は全部いただきたかったですけどね。

こんな顛末だったから夜鳴きそばサービスに手が出るはずもなし。普通の人はあれだけ食べてなお夜鳴きそばもいただくのかね。信じられん。

選択肢が広い朝食バイキング

朝食はバイキング形式。こんなご時世なのでいろいろと気を使っている様子が見られる。
吉祥の朝食
写真の品は提供されているうちのごく一部。和風も洋風も対応可能なメニューを幅広く取り揃えております。マグロ山かけ・明太子・鳴子しそ巻きとくれば白米でよかったのになぜか栗ご飯をチョイスしちゃった。他にお粥も選べる。

前夜のがまだ消化しきれてない感じなのに、デザートにずんだ餅を取ってきてしまった。まあせっかく宮城なんで。胃に余裕があればくるみ餅もいきたかったが。

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お湯の熱いぬるいは個人の好みだからおいとくと、さすが全方位で満足できる宿であった。大事な人と行く・下手を打てないシチュエーションなら鳴子の中でも相当な有力候補だろう。繁忙期だと貸切風呂の争奪戦が厳しそうなのだけ注意。

ドーミーインに泊まったこともないおじさんが吉祥のおかげで共立リゾートの名前を意識するようになった。系列施設はいずれも価格帯からして気軽に利用できそうもないけど、名前だけはしっかり刷り込まれた。企業戦略に完全に乗せられちゃったね。