新源泉を提供する静養向きのお手頃宿 - 下部温泉 元湯 甲陽館

下部温泉 元湯 甲陽館
あー温泉に行きたい。夏真っ盛りの時期に熱い温泉には入ってられないし、なおかつ一人でふらっと出かける旅で、あてになる行き先のひとつが山梨県の下部温泉だ。今回は「元湯 甲陽館」に泊まってみることにした。

水のように冷たいぬる湯のイメージがある下部温泉だが、それは旧源泉。当館は熱めの新源泉を引いており、メインの湯船には適温のお湯が提供されている。ぬる湯目当ての方には温度を下げた湯船もある。もちろん源泉かけ流し。

ハード面はお世辞にも新しいとはいえない昭和チックな雰囲気ながら、そういうことにうるさくこだわらない方であれば、温泉メインで楽しむ静養向きの宿となり得る。

(2023.8追記)閉業していた模様…。

下部温泉「甲陽館」へのアクセス

暑い暑い甲府盆地

東京方面から車で甲陽館へ行くなら高速道路を最大限に活用できる。中央道→双葉JCTから中部横断道→下部温泉早川ICで出ればあとちょっと。

鉄道ならJR身延線の下部温泉駅。東京方面からだと特急あずさで甲府まで行き、特急ふじかわに乗り継ぐのが手っ取り早い。

でも今回はまあいいやと思って全部各駅停車でカバーした。下部温泉駅まで通しの乗車券を買えば営業キロが100キロを超えて途中下車可能になる。いったん甲府で改札外へ出たらおそろしい熱さ。お外はやばいよ。コロナよりも熱中症が怖い。信玄公のご尊顔を拝し祝着至極に存じ奉っただけで終わらせて、さっさと中へ引っ込んだ。
武田信玄公像

金山関連の立ち寄りスポット

身延線に乗れば1時間ちょっとで下部温泉に着く。宿にお願いすれば送迎してもらえるようだけど、(何がせっかくだかわからんが)せっかくだから歩いていくことにした。歩きだしてすぐ目につくのが歩行者専用の「ふれあい橋」。その奥に見える建物は甲斐黄金村・湯之奥金山博物館という。
ふれあい橋と湯之奥金山博物館
せっかくだから橋を渡ってみた。渡った先には「しもべ黄金の足湯」なる一種のブースが設置されていた。いわゆる足湯コーナーです。せっかくだけど利用せず。金山博物館もパス。
しもべ黄金の足湯
下部川と並んで続く道路は5年前の真冬にも歩いた。今日は真逆の炎天下。今日の方がはるかにきつい。早くたどり着かないと熱中症で倒れてしまう。幸いなことに甲陽館は温泉街の一番手前あたりに位置しており、寄り道しなければ駅から10分くらいで川沿いに立つ建物が見えてくる。
川沿いに立つ甲陽館

水音が涼し気な川沿いの部屋

ではチェックイン。館内はどこを見ても昭和の風情が漂い、ある種の懐かしささえ感じさせる。古びて傷んでる箇所が見受けられるものの汚れているわけではない。自分の感覚ではそう思う。

フロントで鍵を渡されて向かった部屋は3階の6畳+広縁和室。眺望なしの道路側・洗面所なし部屋を予約したんだけど、川側のトイレ+洗面所付き部屋にグレードアップしてくれたみたい。こいつはありがてえ。布団は最初から敷いてあった。
甲陽館 川側客室
畳が多少毛羽立っているのは気にしない。掃除などはしっかりされている様子。トイレはシャワー付きの新しいやつに更新されている。洗面所脇の内風呂は「故障で使えません」と張り紙してあった。金庫なし、別途精算のビール・チューハイが入った冷蔵庫あり。WiFiはよくわからなかったけどネット情報によれば使えるようだ。携帯のアンテナはばっちり3本立った。窓からの景色がこれ。
部屋から見下ろす下部川
窓を締めきっても下部川のザーッという水音が聞こえてくる。自分にとっては心地よいBGMだが、もし気になって眠れないんじゃないかと心配な方は耳栓のご用意を。


下部の新源泉が提供されるお風呂

ヌルヌルと硫黄感のあるお湯

甲陽館の浴場は地階にある。エレベーターはないので階段で上り下りしなければならない。そのことに対する不満の口コミも散見されるが、自分は別に気にしない。こんなご時世だと家に引きこもりがちになるんで、ちょうどいい運動だと思えば。

地下1階に下りたところの壁に分析書が掲示されていた。「アルカリ性単純硫黄温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とのこと。高温泉…なるほど新源泉ですな。

手前に小浴場、奥に大浴場の扉があり、19時までは大の方が男湯になる。誰もいないと電気が消えていることがあるから自分でオン・オフしましょう。脱衣所から浴室へ足を踏み入れたとたん、床を流れるお湯にツルッとすべって転びそうになった。きっとヌルヌル感のある温泉に違いない。

このことからわかるように、源泉かけ流しのお湯が湯船からあふれて、結構な量が床の上を流れていってる。こりゃあ贅沢だ。見渡すとカランは4つで、内2つがシャワー付き。金属部が黒く変色していて硫黄成分が強いのかなと思わせた。

適温のメイン浴槽

奥に6名サイズのメイン浴槽。浸かってみると熱い。すぐ慣れるけどね。でも決してぬるくはなく適温というべきだろう。自分が持ってた下部温泉のイメージからだいぶかけ離れた温度だ。へー面白いね。

お湯の見た目は無色透明。やっぱり若干ヌルっとする感触あり。お湯をすくって鼻を近づけると、最初のうちはゆで卵の匂いだった。おおこれは!と思って続けて嗅いでいるうちに感じなくなったけど、甘い硫黄香はずっと残っていた。

旧源泉と比べると一般のイメージに近い、温泉らしい温泉ですね。指先があっという間にシワシワになるってのも効能ありげで良し。一般受けするのはこっちなんだろうね。実際の浴感も良い。ただし真夏に長時間ずっと浸かり続けるわけにはいかない。

ぬる湯を楽しむならサブ浴槽へ

そこで手前側にある2名サイズのサブ浴槽へ移った。こちらはぬるい。というか、ぬる湯が溜まっているところへメイン浴槽から仕切りを越えて熱めの湯が少しずつ入り込んでくる仕掛けになっている。湯船の中でぬるいお湯の塊と熱めのお湯の塊が互いに混じり合わずに漂ってる感じ。よく見ると半透明茶色みたいな湯の花がふわふわ漂っている。硫黄香はだいぶ弱い。

サブ浴槽の一角までパイプが延びていて湯口ぽくも見えるが投入はない。冷ましたお湯を見えない位置から投入しているのか、単に溜め置きなのか、メイン浴槽からの流入を自然に冷めるにまかせているのか、よくわからない。とにかくベースは体温と同じ程度にぬるくて、若干のあつ湯の流入がプラスされた状態をずっと保っている。

ぬるいのが好きなのでサブ浴槽へ長く入ることになった。体が慣れてきてぬるさの爽快感が弱まったらメイン浴槽へ。数分したらまたサブ浴槽へ戻ると、ぬるさがはっきり際立って気持ち良い。つまりは冷温交互浴ですな。ほぼ独占状態で楽しませてもらいました。

大浴場は19時まで男湯、19時以降は女湯になって、翌朝はまた男湯に戻る。

適温浴槽ひとつだけの小浴場

夕食後には小浴場へ行ってみた。こちらは…たしかに小さい。カランは2つで、内1つがシャワー付き。頑張って3名までのサイズの浴槽が1つのみ。他の客とかち合うと人口密度的に厳しいことになりそうだ。

お湯の温度は大浴場のメイン浴槽とサブ浴槽の中間くらい。まあ入りやすいといえば入りやすい。新源泉的な特徴はそのまま残っている。誰もいない時を狙って貸切風呂の気分で浸かればいいんじゃないかな。

なお、大浴場も小浴場も窓越しの眺望はないものと思ってよい。山の緑や川の流れが見えるわけではない。視覚効果よりお湯効果メインで利用する人が多そうだから気にしないだろうけど。


部屋でのんびりいただく食事

お値段的に頑張っている夕食

甲陽館の食事は朝夕とも部屋食。風呂あがりの夕刻、椅子に腰掛けてぼんやりと下部川を眺めながらビールを飲んでいると、夕食の時間になって料理が運ばれてきた。このシチュエーションをやってみたかったのよ、と早くもテンション高め。

一度出しで登場したメンバーがこれ。お値段を考えるとかなり頑張っている。刺身を筆頭に酒の肴になりそうなやつにも事欠かない。
甲陽館の夕食
ビールでお腹が膨れたせいもあるが、量は決して少なすぎることはない。途中で胃にズシーンときて十分満腹になる。お櫃のご飯をかなり残してしまった。思えば甲府であんぱんを買い食いしたのが余計だったな。

デザートのぶどうで山梨気分を味わってごちそうさま。

昼の分までカバーできる朝食

朝食がこちら。なんか量が多い。
甲陽館の朝食
鮭が肉厚ででかいです。そして同規模のオムレツ。このダブルキャストが胃にズシーンとくる。加えて明太子がしきりに米を要求するので困ってしまう。もともと朝の旅館飯を食べた日は昼食抜く派だが、この日も当然のごとく昼食を抜くことになった。

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新源泉だから夏より秋・冬・春が向いてるんじゃないかな。と言いつつ、なんだかんだで夕方2回+夜1回+朝2回も温泉に入ってしまった甲陽館。夜22時から朝6時は浴場を利用できないので、うまく時間配分しておきたい。

あとペット(小型犬・猫)と泊まれるそうなので、そっち方面でニーズがある方もどうぞ。