南伊豆の浜辺で豊かな気分になれる宿 - 弓ヶ浜温泉 季一遊

弓ヶ浜温泉 季一遊
静岡県南伊豆町に弓ヶ浜という風光明媚な砂浜がある。しかもそこは温泉地でもあるというんだから、天は二物を与えたり(温泉は近くの下賀茂温泉からの引湯)。ちょうど桜の花見で南伊豆に行く機会があったので弓ヶ浜温泉で泊まることにした。

選んだお宿は洒落た雰囲気の「季一遊(ときいちゆう)」。同行メンバー全員が大満足で讃えたナイスなお宿だ。自分の物差しだとハイクラス旅館と言いたい水準。

伊豆ならではのお魚づくしの料理と、ゆったり入れる温泉、そして優雅な部屋。実際の懐具合はともかく、気分だけはリッチな一夜を過ごしたのであった。

弓ヶ浜温泉「季一遊」へのアクセス

弓ヶ浜は伊豆半島の南端付近だから、車利用なら東伊豆経由でも西伊豆経由でも、いかようにでも行ける。好きなルートにするが良い。特にこだわりがないなら、国道414号で天城越えする中伊豆ルートが最も所要時間が短くて渋滞リスクも低いと思う。

我々も中伊豆ルートで河津へ至り、咲き誇る河津桜を見学した。それから下田を経て南伊豆町へ。ここでも河津桜の並木道を歩き、今回の旅の主目的ならびに初日の観光予定をすべてクリア。あとは宿へ移動するだけ。

弓ヶ浜へ続く県道はわりと普通に走りやすい道なのだが、季一遊へ最短距離で行かせようとするカーナビは、早めに県道を外れて民宿街というか漁村集落というか、そういうごちゃついた地区内の狭い路地へと誘導した。

対向車が来ても絶対にすれ違えない狭い道を走らされたから結構焦った。しかも当宿の裏手にあたる船着き場の駐車場をゴールだと誤認しそうになっちゃった。

多少遠回りでも県道を道なりに、砂浜にぶつかるまで行き切ってしまった方が全然いい。走りやすいし当宿の正門から正駐車場へスムーズに進める。


自分へのご褒美みたいなリッチな空間

ハイグレードな館内

駐車場にはすでにスタッフさんが待機しており、車を降りたらすぐに2階のロビーへと案内された。ウエルカムお菓子とお茶でまずは一服。

ロビーの雰囲気からしてゴージャスな感じ。想像していたよりもはるかにハイソだったので驚いた。うわあ、いい意味でえらいところへ来てしまったなあ。身の丈以上だぞ。
季一遊のロビー
しかも一般客室を予約していたのに、サービスで露天風呂付き客室へアップグレードしていただいたとのこと。ギョギョギョ! さかなクンのような歓声をあげそうになったぜ。ありがとうございます。

チェックイン手続きの際には夕食に出されるお造りの魚を2種類選んだ(そういうプランだったので)。指名権を持つ2名がそれぞれ選んだのが金目鯛と真鯛。って、鯛かぶりじゃねーか…金目鯛は実際は深海魚であって鯛の一種ではないから、まあいいか。

この一角にはお土産コーナーもある。干物は伊豆らしくて良さげだけど、保冷して旅行中ずっと持ち歩くか、クール便で送るしかないんだよな。とメンバー一同迷ったあげくに買わず。お菓子系のみ購入。
季一遊 お土産コーナー

贅沢な一夜を過ごせる客室

さて案内された部屋は2階の12.5畳+広縁和室。優雅な室内は先ほどの感想と同様に想像以上のグレード感。おおこりゃすごい。
季一遊 露天風呂付き客室
シャワートイレはもちろんのこと、洗面台が2名同時に使えるようになってたり、空の冷蔵庫の中にグラスを冷やしてあるのがにくいね。あと金庫は電子式。WiFi完備。抜かりなし。

洒落たバルコニーへ出ようとしたが窓の開放がうまくできず、あきらめてガラス越しに外の景色を撮影。2階の高さまで丘のように盛り上がった防砂林の向こうが砂浜だ。木々の間に海と水平線は見える。
窓からの眺め
客室の露天風呂も見てみよう。1台のカランと1名サイズの浴槽があった。いいですねー、入浴が楽しみだ。なお、部屋には浴衣でなく作務衣が用意されている。
客室の露天風呂

弓ヶ浜へ散歩してみた

部屋で一息ついた後、目と鼻の先にあるはずの弓ヶ浜をまだ見てなかったから軽く散歩してみた。おおこれが弓ヶ浜か。
弓ヶ浜
たしかに海岸線が三日月型というか弓なりになっている。ちょっとした入り江状の地形だから平時は波が穏やかな方ではないだろうか。ゴミや漂着した流木・石・貝殻・海藻の類が非常に少ない、きれいな浜だ。あるメンバーの話によれば、夏には家族連れで大変にぎわうそうだ。

肉眼だと水平線の彼方にうっすらと島影が見えた。伊豆諸島かな。そういうことにしておこう。
弓ヶ浜から沖を見る

優雅に湯浴みできる大浴場

洗練された雰囲気はさすが

部屋の露天風呂は夜のお楽しみに回して夕方は1階の大浴場へ。手前が男湯、奥が女湯で入れ替えはない。壁の分析書には「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、高張性、弱アルカリ性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒あり。

脱衣所には貴重品ロッカーあり。そしてバスタオルが山と積んである。そう、部屋から持っていくのはタオルのみでよくて、バスタオルは毎回置いてあるのを取って使えばいいのだ。さすがハイクラス。

浴室内にカランは12台。十分に余裕がある。言うまでもなく館内全般と同じようにモダンで洗練された雰囲気があり、ハード面は万人を満足させるであろう。

内湯は万人好みの適温

内湯はメイン浴槽が一つだけでラグビーボールのような形をしている。15名くらい入れるサイズとみた。両端からはボコボコとジェットが噴き出している。お湯は清澄な無色透明。

浸かってみると適温だった。万人が好む直球ど真ん中の温度、平均の中の平均、キングオブ平均だ。自分はぬる湯派なのでもっとぬるくてもいいが、客観的にはこれが正解。

湯の花や泡付きは見られず。匂いを嗅いでみると若干の塩素臭がするようでもあり、塩化物泉的な潮の香りのようでもあり、よくわからん。

熱めとぬるめが混在する3つの露天風呂

続いて露天エリアへ。ここには3つの浴槽がある。右側には2台のカランと4名サイズの和風の檜風呂。このお湯は熱い。あまり長くは入っていられない。見た目は風情があっていいんだけどね。

中央には円形の石風呂。4名サイズかな。このお湯は適温だけど、内湯を含めた全体の中で最もぬるめで気に入った。ゆっくり浸かりたいならここ。

そして左側には20名いけそうなほどの大きな岩風呂。底に敷かれてるのは目にも鮮やかな青タイルだ。露天風呂らしさと開放感はここが一番だろう。ただしお湯は熱い。

波の音が聞こえる

各浴槽はいずれも屋根あり。奥はちょっと庭園風に整えられてすぐに塀が続き、眺望はない。しかし塀の向こうからザザーンという波の音が聞こえてきて、海を近くに感じることができる。

大浴場は思ったほど人が多くなく、のびのびできて良かった。その要因の一つは貸切風呂にあると思われる。3室ある貸切風呂は予約不要。入口前の札が「空いてます」になっていたら入ってOK。札をひっくり返して「使用中」にして中から鍵をかける。

宿泊客の多くは気兼ねのない貸切風呂に専念していたんじゃないかな。しかし競争率が超高いわけではなく、空いてる場面もちょいちょいあった。我々は使わなかったけど。

部屋付き露天風呂も体験

夕食後には単独で部屋の露天風呂を使わせてもらった。リッチすぎる体験に緊張するぜ。とりあえずお湯に入ってみたらやや熱めの適温。24時間風呂のような感じで常に適温を保っているようだ。

目隠しがしっかりしているから眺望がドーンということはない。まあどのみち夜中だし。大浴場の露天風呂と同じで波のザザーンは聞こえてくる。今日1日をふり返りつつまったり過ごす。

ところで人間が湯船に入るとお湯があふれ出して減ってしまうわけだけど、湯口からは1滴も投入されていない。この湯口は飾りなのか。と思ったら、湯船を出た時にジャーって湯口から注ぎ足された。かけ流しならぬオンデマンド流しだった。


すごすぎてヤバい、季一遊の食事

絵に描いたような豪華絢爛な夕食

夕食は1階の宴会場。宴会場と聞いて、いわゆる大広間に全員集合を想像していたら、この旅館がそんな無粋をするわけがなかった。ちゃんとグループごとに個室のテーブル席を用意していた。

スターティングメンバーがこれ。食前酒が桜ワインで前菜には菜の花味噌和えなど、春らしい演出だ。鍋の中ではアワビがうねうね動いてる。白いスープの方の鍋は桜海老の駿河鍋。
季一遊 夕食その1
いずれの料理も見た目通りにお上品なお味。そこへ豪快にドーンとやって来たのが舟盛り。チェックイン時に選んだ金目鯛と真鯛がたしかにあるわ。
季一遊 夕食その2
活造りにされた金目鯛の頭部を後ろから見ると身がいっぱい詰まっていた。もったいねー。これは回収されて翌朝にあら汁の材料となった模様(大浴場前の休憩所で無料でふるまわれていた)。

さらに金目鯛のソロパートが続く。これもチェックイン時に煮付けか唐揚げかを選ぶ。自分はあえて定番を外して唐揚げにしてみた。バルサミコソースの洋風アレンジが予想外にいける。うまい。
季一遊 夕食その3
獣肉のない正真正銘の魚づくしが食べきれないくらい出てきた。期待をはるかに超えて、嬉しい誤算である。

朝も豪華にいけます

朝は3階のダイニング会場でバイキング。席は自由で座敷風の一角もある。料理の種類は多く、パン食の組み立ても可能。自分が取ってきたのは和風スタイル。伊豆だからなおさらアジの干物は外せない。
季一遊 朝食
朝から刺身系があるのがやばい(本当は海鮮丼の材料にどうぞということらしい)。しかも伊勢海老の味噌汁ときたもんだ。ギョギョギョ!

会場に用意された料理の大半を味わうことなく、お腹いっぱいでギブアップ。だが無理しても意味ないし、あれだけ食べられたら悔いはない。最後にコーヒーで締めて終了。


季一遊はロケーション・ハード面・ソフト面いずれも大満足の宿だった。メンバー全員が同意見だったから「個人の感想です」よりは客観性が高いはず。弓ヶ浜へ行くならおすすめしたい。


【この旅行に関する他の記事】