風情たっぷりの千人風呂。ぬる湯もあるよ - 河内温泉 金谷旅館

河内温泉 金谷旅館
伊豆下田に有名な千人風呂がある。河内(こうち)温泉「金谷旅館」の広い大浴場がそれだ。湯船を陣取る場所によって少しずつ温度が違い、しかもがっつり35℃級の“ぬる湯”もあるというから、ぬる湯好きにはたまらない。

これはもう行くしかないでしょう。混浴だからご婦人方にはハードルが高いかもしれないが…。※この大浴場でこそ、というこだわりがないなら、同じ雰囲気を持つ女性専用風呂もあります。

知名度と人気の高さは予想以上で、千人とは言わないまでも結構な数のお客さんが来てた。

河内温泉「金谷旅館」へのアクセス

南伊豆町の菜の花畑にちょっと寄り道

旅の2日目は雨。天気予報によれば朝から夜までずーっと本降りで観光どころじゃない。それは事前にわかっていたから、下田・南伊豆町で行きたい観光スポットを前日にすべてクリアしていた。今日はただ温泉に入るだけの計画。

前泊地の弓ヶ浜温泉・清水屋をチェックアウトした我ら一行がまず向かったのは国道136号日野交差点付近に広がる菜の花畑。
南伊豆町の菜の花畑
この旅行のほんのちょっと前にも「みなみの桜と菜の花まつり」という河津桜のイベント会場へ行く途中で車を走らせながら菜の花畑をチラ見していた。今回はしっかり畑の中まで入って観察。

伊豆急蓮台寺駅を目安に

見事な菜の花の千人風呂ですな。と、うまいことを言ったつもりになって、では本命の金谷旅館へ。

国道136号を進み、伊豆急下田駅の手前で左折して稲生沢川に沿って3kmほど北上していくと当館が現れた。でも伊豆急下田駅を越えてから左折して国道414号を北上し、蓮台寺駅のところで前者の道路へ移った後ちょっとだけ南下する方が、わかりやすくて走りやすいかもしれない。

東京方面から直行する場合も、とにかく国道414号に乗って蓮台寺まで行くという線を押さえておけば大丈夫。典型的には新東名→伊豆縦貫道→浄蓮の滝→河津七滝をたどるルートになるだろう。


これが有名な千人風呂だ

数寄屋造りの重厚な建物

金谷旅館の駐車場はすでに車がたくさん止まっていた。宿泊客はとっくにチェックアウトして出ていったと思われ、大半は日帰り客のはず。まだ午前中だというのに大盛況ですな。

玄関先では次々と客が吸い込まれ、あるいは出てくる。人間が写らない瞬間を捉えて建物だけを撮影するのは困難だった。もうーあきらめ。

その建物は非常に歴史を感じさせる重厚なつくりで創業150年にふさわしいオーラを放っている。よくわかっていないが数寄屋造りということらしい。旅館の建物じたいが一種の観光スポットである。
数寄屋造りの金谷旅館
これほどのステータスがあると、旅館が客を選ぶというか「あなたウチの価値をわかって来てるんだろうね?」と品定めするような対応をされるんじゃないかと、小心者のおじさんはおそれたりもするのだが、当館はオープンかつウエルカムな雰囲気で安心感と好感を持った。

巨大な檜風呂のお出まし

靴を脱いで上ってすぐの受付で利用料を払う。1000円。まっすぐ進んだところに千人風呂の男性脱衣所がある。中に貴重品ロッカーあり。それほど広くはない脱衣所はレトロな感じで洗面台やらドライヤーやらはなかった気が。

中に分析書が貼ってあったかも記憶が怪しいけど、館内のどこかにはあったはずでメモが残っている。「単純温泉、低張性、弱アルカリ性」の「高温泉」と「温泉」の自家源泉2種類が使われている。加水・加温・循環・消毒なしの源泉かけ流し。

では浴室へ。おおおー、確かに広いぞ。洗い場は少なくとも8名分あった。目の前に迫る巨大な檜風呂は何人入れるか見積もれないほどのサイズ。50名くらいはいけそうだ。

居場所によって温度が違う

ただしでっかい一区画だけがあるのではなく、いくつかの区画にわかれている。大まかには、細長い2区画に縦割りされている。第1・第2コースしかない競技用プールのコース間に仕切りを入れた様子を想像してほしい。

手前側を第1コース、奥側を第2コースとしよう。第1コースのスタート地点にあたる場所は正方形の湯船状に仕切られており、源泉がザバザバと投入されていた。ここは結構熱い。

それから第1コースを先へ進むにしたがってだんだんぬるくなる。といっても適温の範疇だけど。立ったまま入っても立ち湯として不自然ではない程度には深く、コースの側壁を背にして腰掛けて入るように段差がついている。

だが自分は第1コースには行かず、ほとんど第2コースにいた。そちらの方がより一層ぬるいのである。コースの中央付近で40℃弱くらいだろうか。

お湯の見た目は無色透明。湯の花や泡付きは見られないが温泉らしい匂いがある。強烈にガツンとくることがないから、のぼせにくくて長湯できるのがいい。お客さんはそこそこ多かったけど、長いコースが2つあったし、温度の好みで適度にバラけるから窮屈な感じはしなかった。

やはり狙う人が多い、35℃級のぬる湯槽

極めつけは第2コースのスタート地点。そこだけは他とはっきりきっちり仕切られている。5名サイズの独立した浴槽だ。偵察しに行ったメンバーによれば「ぬる湯」とのこと。

そこはすでに3名が浸かっていたが、ぬる湯には30分や1時間粘るのが珍しくないため、先客があがるのを待とうなどと遠慮していては機会を失う。と割り切って、ごめんなすってと加わった。

おおぬるい。35~36℃かな。気持ちの良い、好みのレンジだ。しばらくロックオン。やがて5人目が入ってきて満員御礼となった。他と比べて明らかにここだけ人口密度が高い。まあしょうがないか。


露天風呂もあるよ

千人風呂の扉の向こうに露天風呂

やがてメンバーの一人がやって来て、あっちに露天風呂があるよと言う。第2コースのゴール地点にある扉の向こうが露天風呂になっているらしい。ご婦人方は女湯から扉を開けて千人風呂へ移動可能との事前情報から、扉の向こうは女湯へ続いているもんだと思い込んで近寄らないようにしていたら、違う扉だったのね。

だったら行ってみましょう。で行ってみると6~7名サイズの露天風呂があった。岩風呂ではなくて同じような木の風呂だったと思う。一部にひさしがかかっているから雨でも大丈夫。

温度はややぬるめの適温。そもそもが街なかにある旅館だし、目隠しの塀に囲まれて眺望はない。それでも建物の風情のおかげで非日常感を味わいながら気分良く入浴を楽しめる。滞在時間でいうと露天風呂が最長だったかもしれない。

そうして内湯へ戻り、ぬる湯槽に目をやると人がぎっしり。あーこりゃノーチャンスだな。1時間近くいたし、もういいや、とあがることにした。

飲泉もできるらしい

のちに掃除のおばちゃんが語るのを聞いたところによると、ここの温泉は飲めるらしい。えーそうだったの? 飲んでおけばよかった。たぶんエグい味はせず飲みやすかったと思われる。

また湯あがり休憩所はこんな感じ。畳の部屋もあります。
湯あがり休憩所
金谷旅館の千人風呂のどこに注目するかは個人の自由だが、自分としては「広い・プールみたい」ではなく、結構なお点前の温泉をぬるめで提供しているという点に注目したい。あと檜風呂の風情。

有名どころでいつも混んでるような気はするけど、下田へ行くなら立ち寄っておきたい先だ。