筑紫石人も仰天!の濃厚ぬる湯 - 川の駅 船小屋 恋ぼたる温泉館

川の駅 船小屋 恋ぼたる温泉館
ゴールデンウィーク前の九州旅行も最終日。空港へ行く前にどこか温泉に立ち寄ろう。前泊地が佐賀県の古湯温泉だったから、有名な武雄温泉あたりが妥当な候補かもしれない。

しかし旅行中に入った温泉はすべてぬる湯であった。最後もぬる湯にこだわりたい。そうして選んだのが福岡県筑後市の船小屋温泉にある「川の駅 船小屋 恋ぼたる」の温泉館。

おじさんが名前を口にするのはこっ恥ずかしいが、温泉自体はおじさん向きの大変結構な濃ゆいぬる湯である。おかげさまで旅行中に体験した温泉をあわせて、筑前-肥前-筑後ぬる湯トライアングルが完成した。

「川の駅 船小屋 恋ぼたる」へのアクセス

九州新幹線も通る最寄り駅・筑後船小屋

恋ぼたるの最寄り駅はJR鹿児島本線・九州新幹線の筑後船小屋。ここを選んだ理由の一つに、帰りを博多まで新幹線に乗る決断をすれば長時間滞在できるとの思惑があった(一応の建前としては安い在来線で早めに帰る計画)。

佐賀駅からJRを乗り継いで筑後船小屋駅に着いたのが正午頃。在来線の駅舎はこんな感じだが、
JR鹿児島本線 筑後船小屋駅
隣接する新幹線駅舎の威圧感がすごい。
九州新幹線 筑後船小屋駅
周辺は市街地というより、ソフトバンクホークスの拠点球場と、川沿いのとてつもなく広い公園(筑後広域公園)が目立つ。恋ぼたるがあるのはその公園内だ。

広い広い公園を端から端まで歩く

公園の各所には花が植えられ、池や芝生や遊歩道もあり、かなり手をかけて整備された印象。こんな感じ。謎の筑紫石人の像が仁王立ちしております。
筑後広域公園内の遊歩道と筑紫石人の像
好天に恵まれてぶらぶら散歩したくなるが、目指す恋ぼたるは広大な公園の反対側の端っこ、駅から徒歩15分かかる。入浴時間に余裕を持たせようとしたら、のんびりしてる暇はない。スマホで位置を確認しながらできるだけ最短コースで歩く。

やがて矢部川の土手に出た。恋ぼたるはまだかー。
矢部川の土手
土手沿いにひたすら歩いてようやく到着。まず目に入ったのが「恋ぼたる物産館」。道の駅によくある直売所だ。地元産品に掘り出し物や面白い品があったりするものだけど見ている余裕はない。今回はパス。
恋ぼたる物産館
物産館からすぐそばの足湯コーナーを挟んで温泉館の建物があった。近年作られたような新しさ。建物の入口部分だけを見ると小規模に思われるが、その奥に相応の広さの入浴棟がある。


ぬるさほどほどの内湯は人多し

マグネシウムの存在感が強い泉質

では温泉館に入場。下足箱は後で戻ってくるタイプの要10円。入館料については、休憩室を利用する場合は~などいくつかコース料金があったように見える中、何も考えずにベーシックな500円コースで。

入浴棟へ向かう廊下に温泉の特徴をアピールする張り紙が多数。分析書もあって「マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉、低張性、中性、低温泉」とあった。マグネシウムが前面に出てくる泉質名ってのはかなり珍しくないか。

どうやら源泉に温めた湯を加えているようで、その意味で加水・加温あり。塩素消毒もしてるっぽい。しかし実際はそんなのをまったく感じさせない濃ゆさであった。また夏季にはガチの源泉風呂も提供しているらしい。

圧巻の石灰華!

脱衣所ではコインロッカーに服や荷物をしまう。後で戻ってこないタイプの10円なり。100円のタイプミスではなくて本当に10円だ。小銭のご用意を。

浴室内はそれなりの人口密度。8つあるカランが全部埋まることはないにしても、使用率は高い。そして床面を見ると…なんじゃこりゃあ! 温泉の析出物が茶色の千枚田を作っていた。張り紙で石灰華と説明されていたやつか。こいつはすごい。

千枚田の上を歩くと足裏にゴツゴツした感触が伝わる。ふと、昨秋に訪れた飛騨の「ひめしゃがの湯」を思い出した。あそこも黄土色の濁り湯で千枚田が成長中だったな。あそこもやがて恋ぼたるのような立派な石灰華になっていくんだろう。

見るからに濃ゆい濁り湯を湛える内湯

先制パンチにめまいを覚えつつ8名サイズの内湯浴槽へ近寄ると、おおおー、浴槽の縁もゴツゴツした析出物に覆われちゃってるよ。なんだかえらいことになってるなー、と感嘆しつつ入湯。

やや緑がかった黄土色の濁り湯のため、浴槽の底はどうにかぎりぎり見えるくらい。光の加減で表面にギラギラした油膜が見えることがある。濃ゆいというか強烈というか、印象深すぎるお湯だ。感触としてはヌルヌルしてなくてむしろキシキシ感がある。

温度は40℃くらいだろうか。数字以上に熱く感じるのは客の熱気か。見たところこの内湯が最も人口密度が高く、芋洗いに近い瞬間もあったからね。あまりにぬるいのはちょっと…という人は、ここしか選択肢がないから、人が集まりやすいのかもしれない。

温度以外の特徴は以下の各浴槽も同様である。


ぬる湯天国が待ち受ける露天エリア

析出物の階段を上がっていく小露天

さらなるぬるさを求めて露天エリアへ。ここには大中小の3つの露天風呂がある。まず階段を数段上がっていく小露天へ行ってみた。ちなみにこの階段も析出物に覆われていた。えらいこっちゃ。

小露天は3名サイズで37~38℃との表記があった。誰もいなかったから独占状態でお湯を堪能。あーマグネシウムが効くうー(いや知らんけど気分的に)、と調子に乗ってしばらく浸かっていた。

最もぬるい大露天で寝湯にハマる

続いて大露天へ移動。10名サイズに加えて一方の端に4名分の寝湯コーナーが設けられている。たまたま空きができた寝湯の一つにもぐり込むことができた。

ここは明らかに体温より低い。温度は明記されていなかったように記憶していて、体感的には源泉湧出温度に近い33~34℃じゃないかと思う。暑く感じるくらいの陽気だったからちょうどいい。

まさしくいつまででも浸かっていられる。こりゃええわー。ここで初めてお湯に鼻を近づけてクンクン嗅いでみた。金気臭なんだけど、今まで経験したことのない、金属系の刺激とも言い切れないツンとした余韻が残る。なんとも表現できない。不可思議な匂いだ。

細長い中露天、そしてまた大露天へ

最後まで寝湯で粘ってもいいと思いつつ、残った中露天の方も気になったので、いったんそちらへ移動した。寝湯の空いた場所は待ち構えていた客で速攻埋まった。やっぱそうよね。

中露天は6名サイズで細長い形をしている。温度表記は35~37℃。冷たさを感じないちょうどいい塩梅のぬるさである。こちらもずっと入っていられる系だ。細長い形状ゆえ、人の出入りの際にゴチャついたり大きく波が立ったりしやすいのが難点か。

と、ひと通り試したところで大露天へ復帰。今度は寝湯じゃない普通のポジション。さあて、あと何十分浸かろうかなあ、とまだまだ長湯する気満々。

1時間でもまだあがる気にならない奴

温泉館は公園内にあるから露天エリアは完璧に塀で囲われ眺望はない。近くで音楽フェス的な催しがあったようで、スピーカーの大音量が容赦なく流れてくる。それでも湯の中で大いびきをかいて寝ている客がいたくらい、気持ちの良いぬる湯であった。

入館してから70分が過ぎて決断の時が来た。ここであがって在来線で帰るか、新幹線を使うことにしてもう30~40分粘るか。心身ともにまだまだいける態勢。しかし…。腹八分目ともいうし名残惜しいうちに去るのが華ってもんだ。

こうして恋ぼたるの入浴体験を終了。なんとも個性的なお湯だった。旅の最後に選んで良かったと思える温泉だった。なお、男湯/女湯は定期的に入れ替えがあるので、日によって上に書いたのと違う浴槽・違うレイアウトを体験する可能性がある。


おまけ:船小屋鉱泉場へ寄り道してみた

恋ぼたるから徒歩数分

恋ぼたる温泉館を出た時点で、乗る予定の在来線は30分後。駅まで徒歩15分として少し余裕がある。この余裕を利用して寄り道したいところがあった。恋ぼたるから2~3分のところにある船小屋鉱泉場だ。冷たい炭酸泉が湧いてる飲泉所だとか。

ところが思わぬピンチ。スマホの地図アプリを見ながら行ったのに、あろうことか道に迷った。刻々と過ぎる時間。おーのーれー、こんなトホホな展開に屈してたまるかー、拳王は決してひざなど地につかぬー。

最後は直感で場所を探り当てた。ていうか普通は迷いません。素直に道なりで着きます。

日本一の含鉄炭酸泉を飲泉できる

小さな、言葉は悪いが公園の公衆トイレやバスの待合室サイズの建物の中に飲泉所があった。分析書も貼ってあって「含鉄(II)・二酸化炭素-マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉(低張性、弱酸性、冷鉱泉)」と書いてあった。
船小屋鉱泉場
置いてあったコップに源泉を受けて飲んでみた。まずくはないがおいしくもない。そして炭酸のシュワシュワがある。市販の炭酸飲料ほどではなく弱炭酸てところかな。「日本一の含鉄炭酸泉」の看板通りに鉄の存在感はある。とくに味よりも見た目の方。

では駅へ戻ろう。もう余裕どころかぎりぎりだ。小走りを交えながらなんとか間に合わせた。せっかく温泉に入ったばかりなのに汗をかいてしまった…。