詩人ゆかりの宿で味わう黄金体験 - 伊香保温泉 森秋旅館

伊香保温泉 森秋旅館
榛名山の中腹に位置する伊香保温泉は、黄金の湯と白銀の湯で知られ、情緒あふれる石段街も有名だ。大昔に一度行ったことがあるはずなのだが、温泉に強い興味を持つ前だったこともあって、ほとんど記憶にない。

そんな2018年の晩秋に「石段街を歩いてみたい」との要望を受けて超久しぶりに伊香保を訪れたのである。案の定、現地に記憶を蘇らせる事物は何ひとつなかった。もはや初訪問といってよかろう。

今の自分としては泉質・湯使いにもこだわりたいし、参加メンバーの顔ぶれを考えると、ある程度しっかりした旅館でなければならない。そんな要望をすべて満たしてくれたのが宿泊先に選んだ「森秋旅館」。むしろ身の丈に余る水準だった。

伊香保温泉「森秋旅館」へのアクセス

勢いでやっちまった豪華プラン

伊香保へ行くからには歴史ある黄金の湯の方に入りたい。それが源泉かけ流しだったら最高ですね。加えてメンバーを満足させるしっかりした旅館。なおかつ暦の上では激混みが予想される日程。そんな欲張りな条件の空室を急に探したところで見つかるはずもなかった。

ところがキャンセルが出たのか、森秋旅館に空きが1室、ポコンと生じたのである。ただし露天風呂付きの豪華客室だ。おじさん達には経験のないオーバースペック。当然ながら生涯最高値を余裕で更新する料金だった。「驕奢許すまじ」と紀尾井坂で不平士族に暗殺されちゃうレベル。こんな豪華な部屋に泊まっていいのだろうか。

どうする? 条件を譲らない限り他に選択肢はない。この空室だって迷っている間にすぐ埋まってしまうだろう。ぐぬぬ…ええい、ままよ! 紀尾井坂にはしばらく近寄らないことにして、その部屋を押さえたのであった。

温泉街の狭い道に注意

今回の旅は車利用。自分がハンドルを握って東京方面から関越道を北上する。通常は渋川伊香保ICで下りると思われるが、群馬に入る前から「出口付近渋滞1km」の情報が出ていた。あそこはいつ通ってもこんな感じで渋滞しているね。

我々は途中で水沢観音を見学する計画だったから、ナビに従って手前の駒寄スマートICで下りた。おかげで上記の渋滞にあわずにすんだ。

あとは県道15号をずーっと行けばいい。ペーパーあがりの自分の運転技術でも全然苦労しない、わりと走りやすい道路である。途中で立ち寄った水沢観音と水沢うどん、また伊香保の石段街散策については別記事で。

森秋旅館は伊香保温泉街中央付近のごちゃごちゃしたところにあり、車でうっかり細い路地に入り込んだら詰んでしまう。森秋旅館のホームページに車で行く場合の注意事項と案内が書いてあるからよく読んでおこう。

玄関前に車をつけたら、旅館の人にキーを預けて適当な駐車場所へ移動してもらうスタイル。


さすがにしっかりしてる森秋旅館

高台からの展望がよい部屋

大勢のスタッフさんが居並ぶ中をフロントまで進んでいってチェックイン。ちょっと緊張した。館内は見立て通りに「しっかりした旅館」の雰囲気を保っていた。よしよし。メンバーも満足だろう。

玄関とフロントのあるフロアが5階だと聞いてびっくり。これはあれだな、旅館が崖に立ってるパターンだな。福島・高湯温泉の旅館玉子湯が同様の構造だった。あちらは玄関が4階にあったから、こちらはさらにその上をいくわけだ。

案内された部屋は3階の突きあたり。洗練された感じの10畳和室。大変結構でございます。
森秋旅館の部屋
窓からは北方の山々が見える。確証なく適当に言うと、正面に見えるのが子持山、左奥で雪を頂くのが谷川連峰、右奥のが武尊山とか、そんなところじゃないかな。
森秋旅館の部屋から見る景色

これが客室付き露天風呂ってやつか

このクラスになると一通りのものは揃っている。金庫あり、冷蔵庫は別途精算の酒・ドリンクがセットされたやつで、コーヒーセットもあり、そしてWiFi完備。シャワー付きトイレと洗面台は新しくていい感じのやつ。ティッシュは居室の中に見当たらなくて洗面台に置いてあった。

部屋の壁の一部がガラス張りになっていて、その向こうに小さな風呂場が見えた。いやあ贅沢だなあ。露天風呂付きの部屋なんて初めてだ。身の丈に合わないのはわかってる。たぶん今回が最初で最後だろう。
森秋旅館の部屋の露天風呂
部屋の風呂に入浴体験した感想は、このあとすぐ。


いろんなスタイルで黄金の名湯を体験

露天風呂「雨情の湯」に併設されたミニ内湯

森秋旅館の大浴場は2階にある。内湯と露天風呂が別々の場所にあるから、どっちを利用したいかで足の向く先が変わる。

チェックイン直後の夕方には露天風呂「雨情の湯」へ行った。当館は「しゃぼん玉」「赤い靴」などの童謡で知られる詩人・野口雨情ゆかりの宿らしく、それでこういう浴場名が付いたと思われる。

伊香保の由緒ある黄金の湯を源泉かけ流しだそうだから楽しみだ。脱衣所に掲げられた分析書には「カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉、低張性、中性、温泉」とあった。

まず左手にミニ内湯があった。中はそんなに広くない。3名分の洗い場と3、いや2名規模の小さな内湯浴槽。雨情の湯の洗い場はここだけだから、どうしても人が集まる。瞬間風速で5~6名が居合わせた局面もあったりして手狭感は否めない。

お湯は適温。本来はぬる湯が好きだけど意外と入り続けられる。寒さで身体が冷え切っていたからかな。照明の具合でお湯が金色かどうかはよくわからなかったけど、底が見えないくらいに濁っているのは間違いない。

ぬるめのポイントも選べる露天風呂

混雑から逃れるようにミニ内湯を早めに脱出して本命の露天風呂へ移った。こちらは10名規模の岩風呂である。湯口付近がやや熱め、湯尻へ行くにしたがって徐々にぬるくなるので、好みの温度の位置を陣取るとよい。

ここでもお湯の色ははっきり確認できなかった。夕方とはいえ日は落ちてすっかり暗くなっていたからである。せめて匂いの特徴だけでも、とお湯をすくって嗅いでみると、金気臭の中に甘い木の香りのような印象もあって悪くない。浴感はさすがにすばらしい。

滞在時には我々を含めて4~6名ほどの人口密度だった。10名規模だから余裕はあるはずなのだが、なぜか人がやたら多いような気分に支配された。まあ気の持ちようでしょう。暗くて何も見えなかったため景色云々はよくわからない。

内湯「地蔵の湯」で黄金の湯を独占

夕食後には内湯大浴場「地蔵の湯」へ行った。こちらは人がほとんどいなくて、自分以外には1名のみ。ほぼ独占気分を味わえた。のびのび入りたければこちらへどうぞ。

浴室内は、なんか物でふさがってて使えなくなってるカランもありつつ、使用可能な洗い場が12名分。そして岩風呂というより石積み風の浴槽は20名以上いけそうな大きさだ。そこへ湯口からザバザバと黄金の湯が投入されている。

こちらは室内の照明のおかげで、お湯が金色であることがよくわかる。ありがたみが増しますな。入ってみるとやや熱め。だけどやっぱり意外と浸かり続けられる。成分的に熱さを緩和してマイルドに感じさせる何かがあるのだろうか。

だが内湯だけに、こもった湯気にのぼせてしまい、何度も小休止を余儀なくされる。ほとんど独占に近い状態で浸かれる地蔵の湯で引き続き粘りたかったものの、次に控えるメインコンテンツのために切り上げることにした。

ゆっくり浸かって大満足の客室付き露天風呂

部屋に戻って今度はいよいよ自室の露天風呂を体験する。下の写真は翌朝明るくなってから撮ったもの。お湯の色がどうにかわかってもらえただろうか。
森秋旅館の部屋の露天風呂
カランが1台あって浴槽は2名弱のサイズ。仲良しの2人組だったら一緒に入れるんじゃないの。縁の部分は檜風呂の雰囲気、内壁はゴツゴツした石かタイルの感じ。浴室に常時開放された窓のついた半露天スタイルである。

浴槽に体を沈めると、ドバーッと大量に湯があふれ出るのが気持ちいい。また外気で冷めてぬるくなっているのがかえって好ましい。他のメンバーは口々にぬるいねとボヤいてたけど、自分的にはこれが一番よかった。伊香保の黄金湯に30分も浸かり続けていられるのだから。

他のメンバーも「しばらく入っていると不思議とポカポカ温まってくる」という形で評価はしていた。そうして開いた窓から夜空を見上げると、二股にわかれた木の枝の間に満月が。おー風流風流。窓から見下ろせばレトロな温泉街の灯りがちらほら。おー結構結構。

翌朝も自室の露天風呂に入って、チェックアウトする頃には肌がすっかりすべすべになっていた。


なんとも豪勢な森秋旅館の食事

鍋物を選べる夕食

予約したプランだと夕食は部屋食か個室食事処ということになっており、当日は部屋食だった。スターティングメンバーがこれ。
森秋旅館の夕食
山寄りの土地だけど刺身など海産物方面も頑張っている。ウニとフカヒレを合わせたのとか、すんごい豪勢なおつまみもあったなあ。お品書きはなかった。もしあれば、キラキラネームの乱舞に目が眩んだだろう。

鍋物はすき焼き・牛しゃぶ・豚しゃぶ・牛蒸し焼き・海鮮焼きから選べる。地酒3点セットをみんなで分けあって飲みつつ食べ進むうちにお腹いっぱいになった。

次から次へと出てくる料理

しかしまだ中盤。さらに土瓶蒸しと、もち米に白身魚を乗せてあんかけしたようなものが追加された。うわあ。この時点でギブアップが近い。全部やっつけきれないうちに、ダメ押しで焼き魚2種と松茸入り茶碗蒸しが登場。うおお。
森秋旅館の夕食
いよいよ箸が止まった。どうしたものかと考えあぐねていると、最後にご飯と、汁物として水沢うどん(?)入りの椀物が。ををを、ここへ来てうどんか。いやいや、この量は半端ないっす。しかもデザートの果物もあったな。

過去にも食べきれず残すほどの料理が出てきた宿はあったが(だいたい群馬だった気が…)、ここもかなりのもんだ。なお、お味は申し分なく、おかげで最終的には全部食べきった。夕食開始から2時間が経過していた。

湯葉推しの朝食

朝食は5階の食事会場で。部屋ごとに決まったテーブルが割り当てられる。よくある形態のバイキングではなく、個別に和定食が提供される。やっぱり量はたっぷり。
森秋旅館の朝食
鍋物はきのこの柳川。自分で生卵をといて鍋に入れる。笹の葉に入っているのは納豆。あと単品の湯葉のほかに、ご飯のおかわりの選択肢として湯葉粥があった。食後のコーヒーはなし。もともと部屋の方にあるからね。

窓の近くの席だと部屋で見たような山々が朝日に照らされる様子がはっきり見えて結構結構。さわやかな1日のスタートだ。お腹はかなり苦しかったが。


最初で最後の(?)贅沢

いやあ、とんでもない贅沢をしてしまったなあ。この年はたくさん温泉に入り、あちこちの旅館に泊まり、遠方へ行きまくり、後先考えずに遊んたが、年間の終盤戦でこんな大玉が炸裂するなんて予想だにしなかった。

驕奢と頽廃のあらわれ? いやいや、ちょうど空室を見つけためぐり合わせを考えれば、これこそ黄金の湯の導き…つまりはゴールド・エクスペリエンスであり、その奥底にあるのは気高き精神だ。何を言ってるのかわからねーと思うが、ありのまま今思ったことを書いただけだから。

ようするに、ええじゃないかええじゃないか、ってこと。


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