名湯の切れ味が光る、おすすめ老舗宿 - 高湯温泉 旅館玉子湯

高湯温泉 玉子湯
紅葉の季節の福島へいざ出陣。今回のグループ旅行はメンバーの一人が出してくれた車での移動となった。行き先は奥州三高湯に数えられる名湯・高湯温泉である。酸性の白濁硫黄泉が特徴だ。

ずっと行ってみたかったんだよね~。でも人気の温泉地だから一人旅を泊めてもらえる機会はまず訪れない。そもそも人数に関係なく、当地の宿はどこも押さえるのが容易ではない(特に週末は)。

なので福島行きの企画が持ち上がった早い段階で、千載一遇のチャンス到来・善は急げとばかりに速攻で予約を入れたのが、老舗の「旅館玉子湯」。建物はいかにも昔ながらの旅館という風情だがそれもまた良し。そして温泉は期待通りにすばらしかった。

高湯温泉「旅館玉子湯」へのアクセス

車で行く場合は東北道・福島西ICから国道115号を西に進む。そのままずっと行くと土湯温泉という別の場所へ行ってしまうので、途中で県道5号を北上し、県道70号へ入って西へ。

我ら一行はいろいろあってJR福島駅付近から県道70号をひたすら西へ進んだ。福島西ICや福島駅から30分くらい。平地が終わって山道になってしばらくすると、高湯温泉街の入口に玉子湯の建物が現れる。

鉄道利用の場合は福島駅からバスが出ている。所要時間40分前後。本数は非常に少ないからきっちり時間をみていこう。


温泉旅館らしさに満ちた部屋

硫黄を意識させられる館内

車を降りるとすぐに硫黄の匂いが鼻をついた。さっそく期待を膨らませつつ、チェックインの後でいろいろと説明を受ける。なんと、玄関とフロントは4階に位置するそうだ。旅館が崖に立つ格好になっているんだろう。

館内はどこか古い記憶につながる匂いが漂う。それは硫黄なのか別ものか、なんなのか、いかにも昭和の温泉旅館って感じの懐かしい匂い。

案内された部屋は3階の10畳和室+広縁。シャワートイレ・洗面所付き。しっかりメンテナンスされていて古さは感じさせない。やや小さめのテレビの下に金庫がある。
玉子湯の部屋
洗面台のところに「硫黄成分の作用で蛇口が変色しています」のようなことが書かれてあった。たしかに金属部分が黒くなっている。さすがは天下の高湯温泉の強力作用だ。スマホとか時計とかメガネとか大丈夫かな。一晩なら大丈夫か。

風情ある庭園が見える

窓の外は眼下に湯小屋と温泉を流す水路が見られ、その背後が丘状の庭園になっている。下の写真は翌朝撮ったもの。左に見える茅葺きの小屋は旅館の名前にもなっている「玉子湯」と呼ばれる内湯である。
玉子湯の庭園エリア
正面の小さな滝を通ってずっと登っていける散策路がある。時間の都合により結局行くことはなかったが、朝の散歩なんかにちょうどよさそうだ。ともかく部屋からの眺めは都会の喧騒とは真逆の雰囲気があってなかなかのものだった。


さまざまなスタイルで提供される玉子湯のお風呂

玉子湯の浴場ラインナップ

当館には多くの浴場がある。

4階・内湯大浴場「滝の湯」(男女別)
1階・内湯小浴場「仙気の湯」(男女別)
1階・内湯小屋「玉子湯」(男女別)
1階・露天風呂「瀬音」(女性専用)
1階・露天風呂「天渓の湯」(時間で男女入替)
1階・露天風呂「天翔の湯」(時間で男女入替)

滝の湯と仙気の湯は館内にあり、玉子湯と露天風呂は1階裏口から外に出たところの庭園エリアにある。これらすべてが源泉かけ流しなんだからおそるべし(高湯温泉全体として「源泉かけ流し」宣言をしている)。庭園エリアには足湯コーナーもあった。なお庭園エリアは朝は6時から、夜は22時までとなっている。

洗い場を使うなら滝の湯へ

まず4階大浴場へ行ってみた。1階の各風呂は洗い場がないか、ごく狭いので体を洗うならほぼ滝の湯一択と思ってよい。手前の廊下に分析書が張ってあり、「酸性-含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩泉(硫化水素型)」とあった。PHは2.7。

脱衣所の時点でもう硫黄のタマゴ臭がぷんぷん。いいよいいよ~。

浴室内は湯気がすごい。深い霧の中に入ってしまったかのようだ。そんな中であたりを見渡すと、洗い場は9名分。全体にタイル張りの銭湯チックな装いだが、かわりに清潔感はある。

朝夕でコンディションが違う熱めの湯

浴槽はでかい。向かい合わせになれば20人はいけそう。そこへドバドバと源泉が投入されている。つかってみると熱めだった。聞こえてきた会話によるといつも42~43℃で管理されていてこの日は43℃だったらしい。

お湯は青白く、夕方入ったときには浴槽の深さの半分までしか見通せないくらいの濁り方だった。一方、翌朝はささ濁り程度で底まで見えた。硫黄泉は湧出時は透明で、酸化するにしたがって白濁するそうだから、朝はより新鮮な状態だったのかもしれない。

旅館の規模に比してそれほど混雑しないのがよかった。長湯するような泉質じゃないけどそこそこ粘って楽しませてもらった。

天渓の湯で念願の星見風呂

お次は夜の露天風呂。夜は天渓の湯の方が男湯だった。暗がりのため、お湯の見た目の特徴ははっきりせず。おそらく他と同様だと思うが。ここは手前に数名規模の浅いぬるめ浴槽があって、奥に10名規模の深い適温浴槽がある。

お湯につかりながら空を見上げると、雲の切れ間から星がちらちら見えた。この程度でも十分だ。これまで夜の露天風呂はさんざん悪天候にたたられて星を見た記憶がないからね。ジンクス破りの実績ができただけでもう十分。

さてあがるとするか。それにしてもこの時期に露天の風呂あがりはやっぱり寒い。こりゃたまらんとビデオの2倍速のように急ぎ浴衣を着て出ていった。

天翔の湯は好みのぬるめ露天

朝の露天風呂は男女入れ替わった天翔の湯の方へ行った。こちらは10名規模の浴槽が一つのみ。お湯はぬるめでいくらでも入っていたい感じ。相対的には一番好みであった。

よく見ると細かい白い粒子が湯の中に舞っている。ここで初めて湯の花の存在に気づいた。他の風呂にはあったっけな…気がつかなかっただけか、天翔の湯だけの特徴か。

前夜の天渓の湯よりもワイルド風味な岩風呂の中でしばし高湯の源泉を楽しんでいたが、やがて雨がぱらつき始め、だんだんシャレにならない勢いとなった。仕方ない、退散だ。

鄙び情緒の玉子湯小屋

夜と朝の露天入浴の帰りに立ち寄ったのが、当館を象徴するメインコンテンツともいえる玉子湯。小さな湯小屋が男女別に分けられ、さらに小さな区画となっている。

おもしろいことに、浴槽と脱衣所の間に隔たりがなく、一体化していた。服を脱いだらすぐ浴槽。洗い場はない。昔ながらの茅葺き小屋の木造風呂につかるという、鄙びた情緒を最も楽しめるのがここだ。

浴槽は余裕をもって入れるのは2名まで、3名入ると混雑感が出てきて4名でもう芋洗い。他の風呂には目もくれず玉子湯にこだわるファンはいそうだし、もうここを離れません的に腰を据えてご歓談にいそしむグループも実際いたので、静かにゆったり玉子湯を楽しむにはタイミングをよく見極めることと、多少の運も必要かと。

人口密度の高い仙気の湯

1階の内湯・仙気の湯には朝一度だけ行ってみた。ここは狭い。広さでいえば2名分の洗い場がある玉子湯みたいなものだ。そのせいか人口密度が高い。3~4名規模の浴槽も洗い場もつねに一杯って感じ。

予想するに、低層階の客が「4階まで上るのが面倒くせえ」とみな同じことを考えて、こちらへ殺到してしまうんじゃないだろうか。あるいは源泉を4階まで引っぱり回すのと比べて1階まで引くだけのほうがお湯が新鮮だからとか?…そこまでこだわるのかなあ。

足腰に差し支えない方は、仙気の湯は諸事情あるお年寄りに譲って、4階滝の湯へ行ったほうがのびのび入れると思う。


玉子湯の食事

山の幸も海の幸も揃った夕食

玉子湯の食事は朝夕とも食事処で。我々は経費節減のため(?)松竹梅の梅プランにしたのだが、それでも十分な質と量であった。

夕食は椀物・お新香・デザート含めて12品しっかり出てくる会席料理。山の幸ばかりというわけではなく、海産物も結構あった。お造りはもちろん、キングサーモンの焼物に帆立貝柱のキッシュもあったし、鍋はきりたんぽ入りの海鮮鍋だ。
玉子湯の夕食(梅プラン)
正直いうと、温泉で勝負する宿だから、食材は良い地のものを使うとしても飾り気のないそのまんま系の料理が出てくるのかと思っていた。でもスンマセンでした、結構なお点前であった。

すべて美味しくいただきました。ちなみにお米は会津のコシヒカリだそう。うん、うまい。最後はお腹いっぱいであまり入らなかったのが残念だ。

ご飯がすすむ朝食

朝は温泉玉子と蒸し野菜が付く和定食。そこに豆腐の豆乳鍋が付く。白いご飯が欲しくなるような小物がいっぱいで、ご飯おかわりしたくなっちゃうけどねー。朝からそんなに食べられない体質なのが残念だ。
玉子湯の朝食

歴史あるエクセレントな温泉

玉子湯の温泉はさすがエクセレントだった。入浴中の浴感はもちろんのこと、浴後の肌が玉子のようにすべすべになる。すべすべの程度と持続時間はこれまで体験した酸性硫黄泉の中でもトップクラスだ。

最後に部屋を出る前に、窓の外に見える源泉湧出所らしき区画を目に焼き付けた。あそこまで散歩してみることもできるのかねえ。
玉子湯 源泉湧出所
チェックアウトの際、人数分のボールペンをもらった。「玉子湯150年」の文字が入っていた。ずいぶん長い歴史があるね。あと100年でも200年でも続いてほしい。あの青白いお湯に、たとえ来世になったとしても、再会できるその日まで。

スポンサーリンク