田園地帯のホットな施設 - 養老温泉 ゆせんの里 ホテルなでしこ

養老温泉 ゆせんの里 ホテルなでしこ
養老の滝伝説はよく知られた話だと思う。居酒屋じゃなくて昔話の方ね。滝の水がお酒だったというアレだ。その伝説の地が岐阜県養老町。名神高速のサービスエリアとして名前を知っている人が多いかもしれない。

その養老町に温泉が湧いているのだ。岐阜一人旅の2泊目「養老温泉 ゆせんの里 ホテルなでしこ」で体験した温泉は、もちろんお酒ではなかったが、普通の水とは明らかに違う特徴を持っていた。

効能豊かそうな温泉に加えて、当ホテルが温熱療法施設の性格を持っており、健康・美容のイメージを打ち出しているせいか、結構な盛況ぶりであった。

養老温泉・ホテルなでしこへのアクセス

養老鉄道に乗って

今回は鉄道旅。前泊地の下呂温泉・湯快リゾート下呂彩朝楽本館を発って、昼のうちに関ヶ原古戦場を見学してから、大垣駅で養老鉄道に乗り換える。いきなり自転車をかついで乗り込んだ若者がいたので「おいおい、いいのかい」と思ったら、サイクルトレインとして持ち込みを許可しているようだ。

大垣から20分の美濃高田で下車。ホテルなでしこまでは徒歩で20分以上の距離がある。本日最後の頑張りどころだ。

スマホの地図アプリを頼りにホテルを目指す。前半は線路に沿う住宅街の細い道路を道なりに進めばいい。中間点付近で右・左・右・右・左と細かく曲がるところがある。ファミコンの裏技かよ。しかも工場の脇を抜けていったりするから、本当に大丈夫かと少し不安になる。

田園地帯の中に立つホテル

後半は一転して田んぼの中を行く。スマホの指示にしたがうと、こんな道ですわ。
ホテルなでしこまでの近道
やがて目指すホテルと思われる建物の屋根が遠くに見えてきた。周囲の民家もホテルと同じようなデザインで統一されており、いい感じの景観を保っている。
ホテルなでしこ遠景
田んぼ地帯を抜けて白鷺舞う小川を渡ると南欧風の建物が姿を現し、ホテルなでしこに到着。


ちょっとユニークな宿泊部屋

集合住宅風の宿泊棟

ではチェックイン。靴を下足箱に入れて鍵をかけるあたりは日帰り温泉施設の作法に近い。それもそのはず、ここは日帰り温泉と温熱療法とホテルの複合施設なのだ。自分が入館したのはホテルフロントのある温熱療法館と呼ばれる建物で、それとは別に本館がある。

フロントで下足箱の鍵と引き換えに、部屋のキーと、温熱療法館側の大浴場で使うロッカーキーの腕輪を受け取る。本館側にも大浴場があるけど、そちらへ行くときはフロントで先の腕輪と引き換えに本館用の腕輪を受け取る仕組み。

フロントの奥でスリッパを履いていったん外へ出ると目の前に宿泊棟が並んでいた。中庭を囲む南欧風デザインの集合住宅といった趣き。
ホテルなでしこ 宿泊棟

すっきりミニマリズムな部屋

1階の自分の部屋に入ると、なんかフローリング洋室のマンションぽい。いや決して悪い意味ではなく、きれいだし、ベッドなんかはお洒落な感じだし、すっきりしたミニマリズムなレイアウトは嫌いじゃない。よくある観光地のホテルとは一線を画した客室というだけだ。
ホテルなでしこ 客室
もちろんウィークリーマンションじゃないんで、タオル類を含めて入浴とお泊りに必要な一式は揃っている。浴衣はなくて日帰り温泉施設でいうところの館内着があった。
ホテルなでしこ 客室
シャワートイレあり。金庫あり。WiFi完備。空の冷蔵庫には水を詰めたペットボトルが1本入っていた(無料)。養老の名水をどうぞってことだろう。窓の外は敷地内道路。1階だと部屋を覗かれそうで気になるかもしれない。


温熱療法館の大浴場体験

内湯「紫雲の湯」へ

先述の通り、ホテルなでしこの大浴場は温熱療法館と本館の2箇所にある。まず温熱療法館2階の大浴場へ行ってみた。こちらには汗蒸幕なる一種のサウナ・岩盤浴・水着で入る療法浴場(温泉ではない)もあるが、自分は温泉目当てなので、紫雲の湯と名付けられた内湯施設だけを利用した。

脱衣所では腕輪の番号のロッカーを利用する。幅が狭いかわりに足元から頭の高さまで1段ぶち抜きで使えるタイプ。壁に掲示された分析書には「ナトリウム-カルシウム-塩化物泉」とあった。また「等張性、中性、温泉」だから各属性とも中庸どまんなか。

ぽかぽかと温まる濁り湯

浴室内にいる自分以外の客は、ときおり出入りがありつつ1~2名。混んでる感じはしない。カランは7つあるから十分だ。浴槽は5~6名規模のものがひとつ。湯船を独占できる時間が多いのは、ホテルとしては稼働率云々で望まぬ事態かもしれないが、個人的にはうれしいですね。

お湯の見た目は濁り茶のような黄緑色。浴槽の底は見えない。鉄分を多く含んでいるのか、金気臭がする。塩化物泉で含鉄だったら相当ぽかぽかと温まりそうだ。

実際、浸かってみると適温で、最初はそれほど熱さを感じない。これなら長湯できるんじゃないのと思わせてからの、ぽかぽか波状攻撃。タイル張りの浴槽に木材を張った縁に腰掛けて休憩しながらの入浴となった。

開館時間に注意

せっかく空いてるだけに、露天じゃないとか湯船が小さめとかは気にしないんで、もうちょっとぬるめだとじっくり楽しめたんだけどなあ。温熱療法を謳うからにはぬるいものを提供するわけにはいかないか。

他の特徴としては、ヌルヌルとは反対の、キシキシ感があった。いかにも効能ありそうな濃ゆさのアピールが温泉気分を盛り上げる。総合的な泉質はいい。源泉かけ流しなのも好感。

うかつだったのは、翌朝また入ろうとしたら温熱療法館は朝10時からだって。ふぎょぎょ。チェックアウトは11時でOKなんだけど、スケジュールの都合でもっと早くに出発しなければならかった。やってまった~。それだけが心残り。


本館の大浴場体験

大盛況の「みのり乃湯」

夕方には本館大浴場「みのり乃湯」へも行ってみた。フロントで腕輪を交換し、渡り廊下を通って本館へ。男湯の脱衣所へ入ると…じぇじぇじぇ、混んでる! 紫雲の湯は空いてたのに全然違うじゃん! この差は何?

日帰り温泉としてみると、本館は休日800円で露天風呂あり、温熱療法館は汗蒸幕と療法浴場込みとはいえ1500円で内湯のみ(岩盤浴は別料金)、当然の結果です。

もういいよ! 私湯浴みやめる!…などとツイッターでたまに見かける大喜利のような行動に出るわけにもいかず、果敢に突撃。

ぬるめの源泉風呂が好感触

15台あるカランは1台おきにばっちり埋まっているような状況。手前にある水風呂と向かって右手の42℃くらいのあつ湯はパスして、左手の7~8名規模のぬる湯浴槽に浸かった。基本的な特徴は紫雲の湯と同じ。

おー、さっぱりして気持ちいい。39℃とみた。これならじっくり入っていられそうだ。「源泉風呂」って札をわざわざ掲げているくらいだから、加温してない源泉そのまんまかもしれないね。こりゃいいや。

ただし休日のせいか人口密度は高い。芋洗いとは言わぬが互いのパーソナルスペースが少しずつ重なって自分の世界にこもれない環境。つるんで来てる客が多いから全般にわちゃわちゃした雰囲気の上、居酒屋談義のような会話がどうしても耳に入ってくるので、聴覚面ではリラックスしづらい。

河岸を変えようと思って露天風呂へ行った。まあこちらも似たようなもんだ。お湯はぬるめの40℃とみた。湯口の近くだけはそれなりに熱い。10名以上いけそうな屋根付き浴槽の外にはいくつかのチェアーが置かれ、ゆったり休憩できるようになっていた。露天エリアの奥は西洋風ガーデニングで飾られていて癒やされる。

夜もやっぱり大盛況

夜なら空いてるかもと思って夕食後の20時台にみのり乃湯へ再突撃してみた。…あかん。まだ混んでるよ。しかも小さいお子様がきゃっきゃしてた。坊やたち、もう寝る時間ですよ。

夕方よりは絶対数が少ないからまだましか。露天風呂へ行けば、まわりに田んぼしかない田園地帯の夜空に星がちらちら見えたりして気分も違うしね。

ただ混雑による目前のわちゃわちゃ感だけは紛らわせようがない。ちゃんと調べた上で、翌朝は入る機会のない紫雲の湯に行っておけばよかったかなあ。でも夜がこんなに混むなんて普通思わないよなあ。予想外の人気にやられた。

朝もやっぱり大盛況。お湯のコンディションはベスト

朝は6時に三たび本館みのり乃湯へ。まだ日帰りを受け入れてない時間のはず。今度こそどうだ。…いる~。そこそこいるよ~。

夕方・夜よりは絶対数が少ないからまだましか。前日のお湯は浴槽の底が見えるくらいの透明度があり、源泉かけ流しとはいえ正直言って、ちょっとなまってヘタってる感じだった。朝は浴槽の底が見えないくらいに不透明で、きりっと締まって新鮮な感じのするお湯だった。

まあそれにしてもすごい人気ね。成分濃そうな濁り湯で温まりが良くて源泉かけ流しとくれば行かない手はないからな。人気による混雑も泉質のうち、とプラスに考えることにしよう。ちなみに渡り廊下を使わず本館の正面入口へ回り込むと、こんな感じ。
本館みのり乃湯入口

メリハリのついたお値打ち感ある食事

飛騨牛ステーキで攻める夕食

ホテルなでしこの食事は朝夕とも温熱療法館1階のレストランで。夕食は部屋ごとに決まった席へ案内される。ぼっちのおじさんは2人がけの掘りごたつ席だった。

まず最初に前菜のカルパッチョが出てきた。ビールを飲みつついただく。お、うまいぞ。自家製ソースがよく合う。
ホテルなでしこの夕食
続いてメインディッシュの飛騨牛サーロインステーキとサラダとご飯。ご飯のかわりにパンを選ぶこともできる。飛騨牛サーロインステーキとは豪勢ですな。
ホテルなでしこの夕食
いい肉だから塩やわさびで食べてもいいけど、自家製かつお梅のオニオンソースにからめていただくのが一番うまかった。途中からそればっかり。癖になる味。

夕食は以上。最後にデザート(ジェラートとパンナコッタ)が出てきて終了。10~12品出てくる会席料理に比べたらシンプルだが、その分ステーキに全力投球してるんじゃないの。量的に足りないってことはなかったし、とくに不満はない。強いてあげれば、つまみ的な品がもう少しあれば地酒に手が伸びたかもしれん。

ちなみに予約したプラン(レストランリニューアル記念)が標準プランより数千円安かったんだけど、両者の説明を見比べても夕食の内容は同じだった記憶がある。

朝食はバイキングで

朝食は7時開場のバイキング。席は自由。7時ちょうどに行ったらわりとお客さんが来ていた。みなさん朝が早い。ファミリー・老夫婦・そしてぼっちのおじさん。シニア男性のグループは泊まりがけのゴルフ客とみた。

最初だけは料理の前に人が群がるが、品切れ御免の早い者勝ち競争ではない。出遅れても大丈夫。品数は和洋そこそこの種類が用意され、取ってきたのがこれ。
ホテルなでしこの朝食
朝からガッツリいく方ではないからこれで十分。あとはコーヒーで終了。


使いどころ次第で面白くなりそうな宿

ゆせんの里・ホテルなでしこ。平日に来たら本館も空いているだろうか。あのぬる湯に気兼ねなくゆっくり浸かってみたいものだ。でも濃ゆい泉質だからのぼせちゃうかな。

マンションぽい部屋は、考えようによっては勝負の山場となる仕事を短期決戦で片付けるためのカンヅメ作戦に使えそうだ。ネット環境ばっちりだし。ただ当ホテルは連泊の想定がなさそうで食事のバリエーションが課題になるか。周りにお店やコンビニもなさそうだったしな。

などと養老水(=酒)を飲みながら妄想を膨らませるおじさんであった。