海辺の浴場へ、寅さんの足跡を追って - 虎杖浜温泉 アヨロ温泉

虎杖浜温泉 アヨロ温泉
航空会社が時々開催するタイムセールに参戦して優良チケット(連休中とかちょうどいい時間に発着する便)を入手するのは夢のまた夢なのだが、条件を譲れば拾えることもある。今回は昼過ぎに新千歳空港着のため初日の活動は限られるものの、格安で北海道へ行けるということで確保した。

旅の内容はもちろん温泉めぐり。1湯目は白老町の虎杖浜温泉にある日帰りのアヨロ温泉だ。アヨロ海岸のそばに立地するゆえの命名だろう。アヨロとはアイヌ語で…あとはChatGPTに投げるなりして調べてください。

内湯の一部と露天風呂が源泉かけ流しで提供されている。地元密着型でありながら観光客が気軽に立ち寄れる雰囲気で、良心的な料金設定も助かる。

アヨロ温泉へのアクセス

新千歳空港からのアクセスは良し

この旅行の1週間あまり前には南国リゾートにいた。※温泉とは無関係だし、完全オフの休暇ではない。
南国の海
遺跡のダンジョンのような役所を訪れたり、
遺跡ダンジョンのような役所
色鮮やかでまぶしいエメラルドブルーの海を堪能していた。
エメラルドブルーの海
それから1週間ちょっとで今度は北海道。振れ幅がずいぶん大きいな。まあ長い人生、こういうこともあるでしょう。

現地では周遊の効率を考えてレンタカーを利用した。千歳ICから道央道に入って登別東ICを出るだけの簡単なお仕事です。あとは白老へ戻るように下道を走って、カーナビの指示したところで右折(信号がないから見落とし注意)。海沿いの道路にぶつかるまで行けば当館が現れる。トータルで1時間ちょっと走ったのではないか。

寅さんも訪れていた虎杖浜

アヨロ温泉に立ち寄った後は旅館に入ってゆっくりする時間がほしい。具体的には16時前には宿に入りたい。と考えるなら、午後からの動き出しだとそんなに時間に余裕があるわけじゃない。焦りは禁物だけど悠長な行動も禁物だ。

とはいえ避けがたい野望もあった。実は虎杖浜は寅さん映画のロケ地だった。「男はつらいよ 翔んでる寅次郎」(第23作)に寅さんが虎杖浜神社でバイをするシーンがあるのだ。これは行くしかないでしょう。アヨロ温泉から500mほどのところにある高台へ。アヨロ海岸を眺めるのに絶好のスポットだな。
虎杖浜神社
映画と似たアングルで撮影したのがこちら。角は一流デパート赤木屋・黒木屋・白木屋さんで紅白粉つけたお姉ちゃんから買うと5千円は下らない代物(自称)を格安で売ってたんだよな。今そこにはただ風が吹いているだけ。
虎杖浜神社から見下ろす景色
ちなみに車を使わないパターンについては、アヨロ温泉の前でバス停を見た記憶があり、調べると地域循環バスが通ってるみたい。JR白老駅を起点にすると約1時間、1日4便。ただし日曜祝日と年末年始は運休。それならJR虎杖浜駅で下車して1.2km・20分を歩いてしまった方がいいかもしれない。


気軽に利用できる本格温泉

七福神に守られた源泉地

道路を挟んだ向かいの敷地には飲食可能なテラスが設置されている。ここも当館が運営している。季節と天候がマッチするとすごくいい場所だなあ。風呂あがりにこういうテラスで海を眺めてボーッと過ごすと最高の贅沢になりそうですな。
アヨロ温泉併設のウッドテラス
では入館。下足箱のロッカーは100円リターン式。券売機で入浴券を買ったら受付に提出。500円。すぐ目につくのが「源泉地」の各種装置および七福神。地下550メートルより汲み上げております。
七福神と源泉地
畳の大広間とは別に、廊下のデッドスペースを利用した休憩スペースがあり、マッサージしながら地学のお勉強もできますよ。
廊下の休憩スペース
廊下をしばらく進むと、当時は手前に男湯・奥に女湯の並びだった。男女入れ替えがあるかは不明。脱衣所には100円リターン式のロッカーあり。掲示されてる分析書によれば「ナトリウム-塩化物温泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」で湧出温度は48℃台。

かけ湯に入らないでください

浴室に入ると、一般的なかけ湯のように見える小さなお湯溜めがある。上がり湯と書かれているから、出る際にすくって身体にかけるのだろう。その隣に本当のかけ湯があった。一人分の寝湯コーナーに見えなくもない形とサイズだから「かけ湯ですので入らないでください」と注意書きされている。

かけ湯と相対するように4台のカランが並ぶ。シャンプーや石鹸は備え付けられていない。持参するなり受付で買うなりしましょう。このカラン4台+かけ湯の構成が鏡映しのようにもう1セット設置されているため、洗い場は全部で8名分ということになる。

内湯浴槽は4種。手前の3名サイズのジャグジー風呂は好みのぬる湯でもなかったし、この手のギミックを特段嗜好することもないからパス。隣の寝湯は3名分。ちょっと入って適温だなと確認してすぐ出た。

シャッキリ高温風呂と緑茶色湯の中温風呂

さらに隣の高温風呂は電光板に44℃と表示されていた。ここは源泉かけ流しと明記されてる。じゃあ入ってみるか。…うぉぉ熱い。短時間勝負の湯ではあるもののシャキッとサッパリな気分にさせてくれる。湯の特徴を観察するだけの余裕はありませんでした。

以上のいずれもお湯の見た目の色はよくわからない。無理やり判断するなら無色透明と言わざるを得ない。しかし一番奥の中温風呂だけは、はっきりとクリアな緑色を呈していた。内湯の中では一番大きくて6~7名入れる。壁に「故障中です」の張り紙があったけど、湯口からの投入はあったし、何が故障していたのかは不明。

高温風呂と違って源泉かけ流しを称していないのは加水してたりするのかも。しかし入りやすい適温で浴感は悪くない。緑茶のような色合いも明らかにわかるから、非日常の温泉気分を味わうにはちょうどいい。湯の花・泡付きなし。モール臭や鉱物臭のような強い主張の匂いもなし。尖ってない分、かえって一般受けしそう。

ちょっとした泡付きと海風を感じる露天風呂

露天風呂もある。4名サイズの岩風呂で、ここも源泉かけ流し。中温風呂のような緑茶色は意識されないが、温度は中温風呂に似ていて入りやすい。湯口は龍の像だったかな。

露天風呂で良かった点はちょっとした泡付きが見られたこと。二の腕あたりをよーく見ると、微細な泡が付着しているのがわかる。それだけで喜んでしまうおじさん。もうひとつの良かった点は、海の存在を近くに感じられること。そういう頭で来ているせいかもしれぬが。

目隠しの塀によって海を直接眺めることはできない。しかし塀に近寄ればテラスや海が目に入ってくる。一旦そのイメージを脳内に構築すれば、塀から離れても海の存在を近くに感じられるようになる。露天エリアには3脚のチェアが置かれていて、座っても塀しか見えないのだが、脳内のイメージでカバー可能。

こうして主に中温風呂と露天風呂を往復、最後に高温風呂でガツンと締める、という流れで小一時間の入浴を終えた。あーさっぱりした。寅さんの時代にアヨロ温泉があったのかは知らぬが、もし前身の施設でもあったのなら、きっと寅さんも立ち寄ったことだろう。その頃の露天風呂の湯口はトラの像だったかもしれないな。