久しぶりに堪能した貝掛温泉の極上ぬる湯に舞い上がる奴

貝掛温泉
貝掛温泉、私の好きな湯宿です。しかし近年はすっかり足が遠のいてしまった。ぶっちゃけた話、一人泊だともう手の届かない価格帯へ飛躍してしまったのである。人気のある宿だし、利益の出ない無理をして疲弊してほしくないし、まあしょうがない。いつか日帰りで利用するか、複数人で泊まるチャンスがあれば、と思っていた。

そんなある夏の日、さる筋から温泉旅行へ行きたいと打診があった。暑いから少しでも涼しそうな山の方がいい、具体的な行き先は任せるとのこと。じゃあ草津か那須か奥日光か…いや、今こそ貝掛温泉だろう。はい決まり。

奇跡のような絶妙の温度加減と泡付きは健在だった。久しぶりに体験して、やっぱりいい温泉だなあと再認識した次第。

もう迷わない、貝掛温泉への道

秘湯宿でありながらもアクセスはいい方

今回は自分が運転する車で現地へ向かう。貝掛温泉を選んだ理由にはアクセスの良さもあった。関越道湯沢ICから下道20分くらいだから、東京方面からだと行程の大部分が高速道路になる。最後の最後を除けば運転に苦労するような場所もないし。

狙い通り関越道でスムーズに新潟県へ入った。ただし湯沢ICでなく次の塩沢石打ICを出た。昔ながらの、ある程度観光をこなしてから宿に入るスタイルに慣れている面々だったので、日本三大峡谷のひとつ・清津峡へ寄ることにしたのだった。自分は過去に行ったことあり。

ちなみに駐車場から清津峡トンネル入口までの間に清津館という秘湯宿がある。ここもいつか泊まってみたいものだ。峡谷を望む露天風呂ってのに興味あり。

久しぶりの清津峡トンネル

清津峡の見学はトンネル内を歩くということに尽きる。片道750mだったかな。単なる往復で30分、各所で立ち止まって景色を見る分を入れて小一時間みておけばよいかと。

トンネルの途中の3箇所と最奥部に峡谷を展望できるスペースがある。最奥部は浅い水たまりになっていて、そいつが鏡の役割を果たしており、ちょっとしたアート空間だ。※先端部へ行くには水たまりの上を歩かねばならない。
清津峡トンネル終点
先端部から見た清津峡。天気が悪くてベストな絶景写真というわけにはいかず。
清津峡
清津峡見学は終了。ではこれより貝掛温泉へ向かいます。湯沢の町まで引き返し、国道17号を苗場方面へ。貝掛温泉バス停で国道を外れて狭い&急な下り坂を走る。距離は短いが気を使う区間だ。

また、最後の貝掛橋は本当に車1台分の幅しかない。歩行者をかわすのすら絶対無理。誰もいない・何も来ない確信を得てから渡り始めましょう。駐車場は建物向かって右脇。当時は近くで建築工事をしていた。どうやら秋オープン予定の離れを作っていた模様。


旅情と秘湯宿気分を味わうに最適な舞台設定

個人的にはすっかりおなじみの風景

チェックイン時にメグスリノキのお茶をふるまわれる点は以前と同じ。一息ついて館内を見渡すと、庄屋造りの建物だから現代風ホテルに泊まることの多い方にとってはむしろ新鮮に映るかもしれないなあ、などといつもの感想が浮かぶ。たとえば1階廊下はこのような様子。
1階廊下の様子
大浴場前の階段下スペースには薬師様を祀っている。
貝掛温泉の薬師様
いつも写真を撮るだけで活用することがない休憩室。使わないともったいないんだけどね。部屋と風呂の往復だけで十分快適かつ満足してしまうので。
休憩室

今までの中で一番ゴージャスな部屋

案内された部屋は1階の10畳和室+ちょっとした追加空間。2名分のベッドが設置されていた。3名以上だと夕食の間に追加の布団が敷かれる。
貝掛温泉 10畳+α客室
シャワートイレ・洗面台あり。暗証番号式金庫あり、冷蔵庫なし。ビールを含む自販機がフロント横のお土産コーナーの裏にある。あとWiFiあり。エアコンなしで扇風機あり。夏場の室温については、外気と館内全般はヒヤッとした空気でエアコンいらずって感じだったが、この客室内だけはモワッとした熱気がこもっていて扇風機を回さないと厳しかった(就寝時に止めたらやっぱり寝苦しかった)。
貝掛温泉 客室その2
今までは秋に訪れていてカメムシ退治作業があったけど、今回は夏場でカメムシ皆無。他の虫も皆無。窓の外は鯉が泳ぐ池。この池は温泉だそうで、ああ鯉になりたい。
鯉の泳ぐ温泉池

あー、やっぱり貝掛温泉のお湯はいい

久々でちょいと浮かれてしまい…

それじゃあ風呂へ行きましょう。何度も体験しているとはいえ久しぶりだから、ちむどんどんしてくるさー。夕食前の男湯は向かって左側。露天風呂が広い方 の浴場だったな。

脱衣所には各部屋の名前“~の間”が書かれた貴重品ロッカーがあり、ここに部屋の鍵を入れるんだと思う。分析書によれば泉質は「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」。加水・加温・循環・消毒なしという掛け値なしの源泉100%かけ流しだ。いやっほう。

…すいません、すっかり浮かれてて浴場の細かい様子を頭に入れる&メモするのをすっかり忘れてました。浴室内はかけ湯・5名分の洗い場・8名くらいいけるメイン内湯・3名分くらいのサブあつ湯だったかと思う。庄屋造りに合わせたスタイルの浴室で天井は高くて気分がいい。

お連れしたメンバーと一緒にずっと露天風呂にいたため、こちらの内湯は今回未体験。でも内湯もかなりいい湯船だからぜひどうぞ。

いくらでも入っていられる“奇跡の温度”の露天風呂

露天風呂ももちろん素晴らしい。このご時世だと各自のスペースに余裕を持って10名サイズってところか。気にせず詰めれば15名でも20名でもいける。湯口が来るたびに変わっているように見えるのはきっと気のせいだろう。目に効く温泉ということで湯口からのお湯を両手に溜めて目に当てるように顔を洗う人が結構多い。

体温とちょうど同じくらいという奇跡の温度は相変わらず。このおかげでのぼせず、寒気でブルブルっと来ることもなく、いくらでも入っていられるのだ。お湯の存在を忘れるくらいに体に馴染んでしまう。いや~たまらん。

見た目は無色透明。川の水の匂いにも似た、いかにも温泉ぽい匂いがある。そして肌に泡がたくさん付く。ドギツい特徴がないから誰もが気に入る湯質だろう。

岩風呂・提灯・自然を感じる周辺環境・目先を変えたい際のあつ湯としてのミニ露天など、いろいろ計算された仕掛けが見事に調和しており完璧だ。

内湯の泡に包まれてウトウトするという極楽

夕食後には男女が入れ替わって、向かって右側が男湯になる。基本的なつくりは一緒で、少し規模が小さめ。浴室内のメイン内湯・サブあつ湯と露天風呂が上記よりひと回り小さい。洗い場は5名分かと。

こちらの露天風呂はぬる湯ではない。若干加温されている。熱くはないがぬるめ寄りの適温。そしてあつ湯の役割を果たすミニ露天がない。

こちらの浴場で貝掛温泉の真髄を味わいたければ内湯メイン浴槽をおすすめする。しっかりぬるいし、泡付きは最強クラス。各地のスーパー銭湯に見られる人工炭酸泉もびっくりというくらいに泡がびっしりと体中に付着する。とくに湯口付近を陣取るとえらいことになる。こいつは一見の価値あり。

頭を乗せる木の枕があって、寝湯ぽくできる(深さがあるから普通の寝湯と完全に同じではないが)。そしてぬる湯の気持ちよさでいつのまにか眠ってしまう。これが極楽なんだよね~。お連れしたメンバーもしっかり眠ってました。


いつも楽しみな貝掛温泉の食事

再認識した夕食のすばらしさ

貝掛温泉の食事は朝夕とも1階の食事処で。心なしか以前とは雰囲気が違う気が。というのも、いくつかの区画に分かれてなくて、一体化した広いホール内にテーブル席が点在していた。部屋ごとに決まったテーブル席が割り当てられている。

夕食のスターティングメンバーがこちら。自分ですった胡麻に混ぜていただく薬膳玄米粥といったおなじみのメニューは健在。
貝掛温泉の夕食
季節に合わせて前菜は夏野菜のバーニャフレッダ。バーニャフレッダが何なのか知らないっすけどね。味噌に付けて食べるのがうまい。とくにニンニクの風味があとを引く。刺身の中にはこのあたりでよく出されるブランドの美雪鱒が含まれていた。

妻有豚の出汁しゃぶもあるし、岩魚の塩焼きとか地鶏の塩麹おかき揚げなんてのも追加で出てきた。すべての料理がでーじまーさん。ボリュームたっぷりなのも特徴だ。すっかり満腹になってしまい、締めの塩沢産コシヒカリのための余力を残せないまでが定番の流れ。

土地柄、うまい日本酒も楽しめる。上善如水とか鶴齢とか八海山とか。今回はあるメンバーの希望で岩魚の骨酒をいただいた → 一口飲んだ別メンバーのコメント「魚の味がするじゃん」…そらそうやろ。

貝掛の朝食とくれば栃尾の油揚げ

朝食は一見オーソドックスな和定食と思わせてからの特徴ありあり。焼き魚がノドグロである。南関東在住庶民からすると、すごい高級魚をいただいたようで舞い上がってしまう。まあ細かい味の違いとか正直わからないんすけどね。
貝掛温泉の朝食
うまいコシヒカリにとろろをかけてしまっていいのか、単体で味わうべきじゃないか、などと悩むうちに追加で出てきたのが名物・栃尾の油揚げ。パリッとサクッとした歯ごたえがいいですな。

案の定、せっかくのご飯は一膳しかお腹に入らず、おかわりまで至らなかった。あーちくしょー。年々衰える我が食欲(もしくは胃袋)、どうにかならんのか。

 * * *

完全に個人的な野望で貝掛温泉を選んでしまったとはいえ、ゴリ押ししたとは思わない。むしろ良質な温泉宿をご紹介させていただいた、くらいの気持ちである。実際のところ各メンバーとも大変に満足して喜んでいた様子。

何度来てもいいところなので、今後も虎視眈々とチャンスをうかがいたい。