ぬるい露天風呂の極楽時間に思わず微笑む - 上牧温泉 大峰館

上牧温泉 大峰館
群馬県・湯宿温泉からの帰りにどこかへ立ち寄り湯しようと考えた。せっかくだから同じみなかみ町がいいな。とりあえず町の名前からして水上駅まで行けば間違いはあるまい。水上温泉ってのがあるし。とは甘い考えで、駅から結構離れている施設が目につく。さてどうする。

ふと気づいたのが水上の1つ手前の上牧駅。ここには上牧温泉と称して駅から徒歩圏内にいくつかの施設があった。そのうちの「月がほほえむ宿 大峰館」は源泉かけ流しで湯質は折り紙付き、しかも露天風呂は自分好みのぬる湯だとのこと。よし決まった。

ほのかにタマゴ風味の硫黄が香る温泉は大変良好なり。露天風呂はいつまでも入っていられる心地よいぬる湯で、月じゃなくても微笑んでしまいますわ。

上牧温泉「大峰館」へのアクセス

上毛高原駅で小休止

湯宿温泉・大滝屋旅館を朝10時にチェックアウト。さんざんお風呂タイムを堪能したにもかかわらず、まだ温泉に入る気満々で沼田方面行きのバスに乗り込んだ。

このバスは後閑駅を通るから、そこで上越線に乗り継げば隣駅が上牧だ。一方、新幹線の上毛高原駅で水上方面行きのバスに乗り継いでも上牧駅前を通ってくれる。どちらも乗り継ぎ待ちが小一時間あった。駅に飲食や休憩所が整ってそうな後者を選択。

駅の待合室でコーヒーを飲みながら読書なんかをして時間をつぶした。ちなみに上毛高原駅には「tanigawa hanare」なる憩いスペースがあった。谷川岳をイメージした空間みたいね。谷川連峰のおいしい水も売ってます。
上毛高原駅 tanigawa hanare

上牧駅徒歩10分、車だと水上ICすぐ

さて、計画通りのバスで上牧駅前に着いた。あとはスマホの地図アプリを頼りに大峰館へ歩く。10分くらいで着くはず。ただその前にちょっとだけ遠回りして「風和の湯」という日帰り施設を経由して行くことにした。万が一大峰館にフラれた場合のバックアップ先として場所を把握しておこう。こちらは駅から5分もあれば着く。
風和の湯
風和の湯の先に吊り橋があった。橋の上から利根川を眺める。背後の山はまだ白さが残っていて寒々しい。普通に大峰館へ向かう際はあっちの赤い橋を渡ることになる。
上牧付近の利根川
常生館・旅籠庄屋を過ぎていよいよ大峰館が近いという地点で道が二またに分かれた。正解は道なりに左。国道291号へと坂を上がっていく途中に当館がある。自分は間違って右へ(道なりに逆らってまっすぐ)進み、敷地の裏から変な入り方をしてしまった。

また、場所的には関越道・水上ICの近くだから、車で来た場合は水上IC→R291→上牧駅への坂をちょっと下ればいい。


ふんわりタマゴの香りがする温泉

期待が高まる100%源泉かけ流し

入口の前に飲泉所があった。帰り際に飲んでみたら結構飲みやすかった。ゴクゴクはいけませんけどね。
飲泉所
入館してみたら誰もいない。フロントでチーンと鳴らしてみても「すいませーん」と声をかけても返事がない。遠くで掃除機の音がするから次の客がチェックインしてくる前の室内清掃中ってとこか。どうしよう。あんまり押しが強くないおじさんはちょっと弱気になった。

うーん、ここであきらめたら試合終了だしな…何度かトライしたら気づいてもらえた。あー良かった。900円を支払って説明を聞く。廊下の奥を右→右→階段下りて→つきあたりが大浴場。別棟的な感じになってるのかな。

本当のつきあたりが男湯、その手前が女湯だった。男女の入れ替えがあるのかは不明。脱衣所に見つけた分析書には「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉」とあった。なおかつ加水・加温・循環・消毒なしの100%源泉かけ流しってやつだ。すばらしい。

シンプルな湯船に良好な温泉

浴室内にカランは5台。うち1箇所は先客が占めていた。他には人の姿なく、これならのびのび入れそうだ。内湯浴槽はシンプルな四角の5名サイズ。相応に投入量のある湯口のところに泉質や効能について説明書きがあった気がする。

んじゃ入ってみますか。おっと、予想していたよりは熱いな。いわゆる適温でぬるくはない。無色透明のお湯の中に微小な湯の花が見えている。泡付きはなし。ほのかなタマゴ臭がするのがいいね。温泉らしさを存分に感じることができる。

あとは感覚的な話で、やわらかいお湯というか、当たりがきつくない・ふんわりした印象がある。おかげでじっくり浸かろうという気分になる。旅の高揚感でハイテンションになるよりも、落ち着いてゆっくり楽しみたい温泉だ。

内湯は超新しいこともないけど古びてもいない、誰にでも快適に利用できる雰囲気だ。あとガラス戸越しに脱衣所の時計をチェックできるのは助かる。スケジュールに余裕を持たせてあるくせに帰りの電車の時間を気にしてチラチラ時計を見てしまうあたりが小市民である。


ぬるい露天風呂が最高にたまらない

ナイスなお湯をうまい具合に独泉してしまった

続いて露天風呂へ行ってみましょう。2名サイズの小ぶりの岩風呂にカエルの姿をした湯口から源泉が注がれている。高い位置からジョボォォーーーっと。まわりの目隠しの囲いまでは離れており、中間が和風の庭っぽく整えられているから窮屈さは感じない。

おっ、こっちのお湯はぬるいぞ。はっきりとぬるい。体温と変わらない不感温度帯に突入しそうな勢いだった。ぬる湯好きの自分は大歓迎。逆に先客やその後に入ってきた客が内湯ばっかりだったのは、この時期の露天風呂をぬるすぎると判断したのかもしれない。いたって標準的な反応だと理解はできる。内湯と露天でうまく棲み分けできるから個人的にはちょうどいい。

こちらのお湯も微タマゴ臭は健在だ。なんか時おりクンクン嗅いでしまうよな。ぬるい分だけさらにお湯のふんわり感が強化されたような気がする。こりゃあ、いつまででも入っていられるやつだ。あーたまらんねー。

こいつは春から縁起がいいわえ

もしかしたら自分がいるせいでみんな露天風呂を遠慮しているのかと思い、内湯へ戻ってみたが、やっぱり誰も露天へ行く気配がないから、また自分が独占させてもらい…を繰り返しているうちに50分ほど経過。まだ全然慌てる時間じゃないけど念のため早めにあがることにした。

もし時間を気にしなくてよい立場だったら、まだまだお湯の中で過ごしていただろう。おそるべき魔力。すっかり満足して男湯を出ると、廊下に冷やした源泉を飲めるコーナーがあった。ありがてえ。最後に結構なおみやげまでいただいてしまった気分だ。

 * * *

正直なところ、これまでまったく意識することのなかった上牧。大峰館のおかげでその地名をはっきりと胸に刻み込んだ。あの本格的な湯質と癒やされる浴感、やみつき系のぬる湯を体験したらそうなっちゃうよな…春を待つ上牧の地で、おじさんの心にはすっかり春が来た。