バラエティに富んだ露天風呂ワールド - 平湯温泉 ひらゆの森

平湯温泉 ひらゆの森
岐阜県の奥飛騨温泉郷に数えられる平湯温泉は上高地や松本方面への西の玄関口になっている。とくに安房トンネルができてからは交通状況がずいぶん良くなった。裏を返せば長野県側から平湯温泉へもアプローチしやすいということだ。旅の初日に白骨温泉に泊まった我ら一行の2日目の行動は、奥飛騨観光と平湯温泉への立ち寄り入浴と決まった。

目につくロケーションで大規模な施設とくれば「ひらゆの森」。やっぱり相当な人気で、大勢のお客さんでにぎわっていた。お風呂の種類、中でも露天風呂がこれでもかというくらいたくさん提供されていたのがすごい。しかもお湯の特徴が少しずつ違っているから、あちこちの湯船を行き来して飽きずに楽しめてしまう。おそるべし。

平湯温泉・ひらゆの森への道

旅の2日目、白骨温泉・ゑびすやをチェックアウトした我々はさっそく安房トンネルへ向かう。今日は天候が不安定で午後から崩れるらしいから早めに観光をすませなければ。このトンネルのおかげでヘアピンカーブ続きの狭い道を延々走る安房峠越えをしなくてすむのは助かる。

トンネルを抜けた少し先の平湯ICを出る。安房トンネルは中部縦貫道の一部でもあるのだ。そういえば福井に遠征したときも中部縦貫道ってあったな。最終的には松本と福井をつなぐ計画なのね。そもそも現国道158号がそういうルートだし。

あと、どうでもいいといえばどうでもいいが、平湯ICのETCは一旦停止型。減速して通り抜けようとしてもだめだ。スマートICだからってわけじゃないのになんでかね。一旦停止を監視する係員をわざわざ張り付けていたからコスト削減のためでもなさそうだし。

まあいいや。とにかく天気が致命的な鍵を握る新穂高ロープウェイ関連の観光を最初にクリアして、午後になって平湯大滝を見終えた頃には、怪しげな黒雲が空を覆い始めていた。そしてひらゆの森駐車場に着いたらいきなり土砂降り。これはギリギリセーフで運が良かったというべきなのか?


入りきれないほどの多彩なお風呂

大勢のお客さんでにぎわう

冒頭写真にノイズのように写り込んでる点々が大粒の雨です。入場制限をかけられて待ち行列ができていたが、屋根のあるところで並べたからまだしも良かった。入場まで10分以上待ったと思う。

館内はなかなか大規模。全員分の会計をまとめてやってくれてるメンバーがまだ受付を終えていないのに、自分だけ売店コーナーを見に行こうとずんずん奥へ進んでしまい、未払い入場を図る怪しい人みたいな行動になってしまった。いかんいかん。なお料金は600円。
ひらゆの森 売店コーナー
大浴場までは結構通路を歩いていく。あやふやな記憶によれば、脱衣所では100円戻ってこない式のロッカーに服や貴重品をしまった気がする。分析書を探してチェックすると「カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-炭酸水素塩・塩化物温泉、低張性、中性、高温泉」とのこと。温度調整の加水あり、加温・循環・消毒なし。

すべての出発点となる内湯

スケジュールの都合で滞在時間は40分。風呂の数が多いだけに全方位まんべんなくは難しそうだから、直感で絞り込んでサクサクいきましょう。まず内湯の洗い場は30名分もある。そういうの数えてる場合じゃないんだけどね。そして大きめの内湯浴槽がひとつ。

10名、いや頑張れば15名いけるんじゃないだろうか。お湯は半透明半白濁で浴槽の底は見える。湯の中に白い粒々がいっぱい漂っていて白濁硫黄泉を思わせる雰囲気。浸かってみるとややぬるめの適温。すぐにのぼせるような温度ではない。

泉質的に硫黄泉の部類じゃないし、でも典型的な炭酸水素塩泉や塩化物泉とも思われない。刺激は強すぎず、かといって全然平板でもない。なんか不思議と飽きの来にくい泉質だから、内湯を基地として露天風呂めぐりへ出撃するイメージが合っているのではないか。別途で水風呂もあった。

ぬるま湯の露天風呂が一番のお気に入り

ちょうど雨が小降りになってきたので露天風呂へゴー。露天風呂は数が多くて見落としがあったかもしれない。外へ出てすぐの円形のはよくわからん。いつも誰もいないから風呂じゃないのかと思って、時間もなかったしスルー。その先の5名サイズの岩風呂はグループ客のご歓談場になっていることが多く、ここもスルー。

その次の岩風呂は見逃せません。「本日のぬるま湯」という札が立っていたからだ。ぬる湯派としてはマストの湯船。6名サイズのところにすでに4名いる中へ加わっていった。…うん、たしかにぬるいね。体温より少し上くらい。いくらでも入っていられる。雨がいい具合の加水になってくれてたりして。

ここのお湯は無色透明。匂いも金気臭を感知するくらいで硫黄の要素はまったくない。そして内湯とは違って白い糸くずのような湯の花が舞っていた。卵スープの溶き卵をもっと細かくしたようなやつと表現した方がいいかな。特徴が内湯と全然違うのは面白い。

時間に余裕があれば留まって長湯するところだが、ひとまず先へ進もう。やや高く盛り上がった位置にある風呂は行かなくてもいいやと決めつけて近寄りもしなかった。なぜかは知らん。直感としかいいようがない。

典型的な白濁湯もあり

ぬるま湯の奥の細長い岩風呂は10名サイズで、岩にクリーム色の析出物がこびりついてるし、お湯は白く濁って底が見えないし、白濁硫黄泉にしか見えない。そう思って匂いをかぐとタマゴ系の印象が前面に出てくる。なんでこういう特徴になるんだ? 不思議だなあ。

湯口の近くはお湯が熱めで、離れるとだいぶましになる。温度は好みの問題として、泉質は特徴的だからこの湯船もマスト候補に位置づけたい。

あとはさらっといこう。向かいの寝ころび湯は4名分はありそうだったけど雨のせいで利用者ゼロ。その先を右に曲がった一番奥に4~5名サイズの風呂が2つ。片方は屋根付きだったかな。速攻で踵を返したからお湯云々はしっかり認識していない。なにせ2つのうち一方はすでに満員御礼、他方はグループご一同様のご歓談場だったから。

ぬるま湯に戻ってしばらくすると再び土砂降りが始まった。こりゃいかん。滝のような雨でとても外にはいられない。内湯へ逃げて少し浸かった後、タイムアップとなった。

 * * *

雨と混雑と時間の都合であまりじっくり堪能できなかったが、ハード面・雰囲気・提供される温泉にはたしかなクオリティを感じた。時期をうまく選ぶなり、宿泊するなりして余裕のある環境で臨めば、さらに上の満足度を得られるポテンシャルがある。

※近くの姉妹館「ビジネスホテル ひらゆの森」で安価に泊まり、入浴券をもらって入りに来る手もある。

それにしても、もし安房峠越えを強いられる状況なら平湯へ行こうという発想すら浮かばなかったに違いないから、今回ひらゆの森を体験できたのは安房トンネル様様である。


おまけ:新穂高ロープウェイと平湯大滝

早めに宿を出発したつもりが、考えが甘くてすでに大行列ができていた新穂高ロープウェイ。長い順番待ちを経てようやく山頂駅(西穂高口)へ。麓駅は晴れていたのに山頂駅の標高まで来ると雲の高さに突入していた。自慢の展望台から見えるのは雲・雲・雲。笠ヶ岳のベストショットがこんなの。
笠ヶ岳
穂高連峰もタイミングを見計らってこれが精一杯。
穂高連峰
感動的な大パノラマ風景の期待は叶わず。山の天気ばっかりはどうしようもないね。本日のメーンエベントこれにて終了。あとは北アルプス大橋を経て、
北アルプス大橋
平湯大滝に着く頃にはかなり怪しい空模様になっていた。滝が見えるまで1kmくらい歩かされる手前の駐車場をスルーして、滝に近い奥の駐車場まで進んだところに空きスペースがあって止めることができたのは助かった。しかし展望位置から滝まではまだ距離がある。
平湯大滝
もっとずっと滝のそばまで近寄れる遊歩道を行こうとしたら通行止めだった。もしここが開放されていて歩いたら土砂降りにあっただろうから運が良かったと捉えておこう。