自然に囲まれた野性的な湯船に注目 - 大沢温泉 大沢荘 山の家

大沢温泉 大沢荘 山の家
伊豆の松崎町といえば個人的には海のイメージが強いのだが、反対に山の秘湯らしさを感じさせる温泉もある。それが大沢温泉「大沢荘 山の家」。日帰り温泉施設のすぐそばに自炊の宿泊棟があるので、本記事は温泉宿に分類した。

長く滞在したわけではない。旅の最終日の朝にせっかくなのでちょっと寄ってみた、というのが正直なところ。

しかし、花とロマンの里を売りにする松崎町の中でもとりわけ静かで素朴な雰囲気の中にあって、このような愛すべき小品のごとき温泉を好む人もまた少なくないだろう。

「大沢荘 山の家」へのアクセス

道の駅・花の三聖苑伊豆松崎を通過

春の伊豆をめぐる旅は早くも最終日。桜田温泉・山芳園をチェックアウトした我ら一行は海岸と反対の方向へ車を走らせた。事前に目を付けていた大沢温泉に向かうためだ。

県道15号に沿って流れる那賀川の両岸にずらっと並ぶ桜並木は河津桜でなくソメイヨシノであろうか。まだつぼみですらない姿で来るべき時を待っていた。開花したら、かなり見事な光景が展開するものと想像される。

しばらく進むと道の駅「花の三聖苑伊豆松崎」が現れた。このときはスルーしたけど、実は前日通りかかった際に立ち寄っていた。売店で飲み物を買いたかったため。

だが直売所・物産店・売店の類は表立っては見つからなかった。道の駅といえば物販がメインだと思い込んでいただけに、ここは珍しいね。あるのはトイレと、日帰り温泉「かじかの湯」と、天城山房という食事処(のちの調べによると、実は店内に土産物コーナーがあったのね)。しかも「かじかの湯」はまもなく取り壊しになってしまうって。

あとは大沢学舎という地元の偉人が明治初期に開いた小学校を復元した建物がある。中にはさまざまな資料が展示されていた。

自然環境に溶け込む鄙びた温泉

道の駅の先で大沢温泉の看板が出ているところを左折して県道115号に入る。旧依田邸なる古い邸宅の名所を過ぎると道は狭くなり、対向車が来るとちょっと辛い。かわりにのどかな山里の雰囲気がいっそう深くなり、「いいところだなー」との感想がもれてくるようになった。

まもなく目指していた山の家に到着。桜田温泉からだと車で10分程度。そんなに遠くはない。
大沢荘 山の家
道の右側には川が並走しており、当湯の施設じたいは橋を渡った川の対岸にある。駐車場は当館をいったん通り過ぎて先へ進んだ道の左側。駐車場の前は宿泊棟になっていた。下の写真の右側の建物だ。
大沢荘 宿泊棟
左上のはさすがに泊まれないでしょう。旧館かな。現在は立ち入り禁止な匂いがする。

車を降りて橋の方へ歩いて向かう。橋の手すりだけは新しいが、あとは鄙びた隠れ家的な外観である。
駐車場から大沢荘山の家へ

野趣に富んだ露天風呂に源泉かけ流し

静寂の空間に突撃

ガラガラと戸を開けて玄関をくぐると、やさしそうなおかみさんが応対に出てきた。500円を払って入場。貴重品や大きな荷物はすぐそばのロッカーに入れる。ただし要100円。

山の家には男女別の露天風呂があるのみ。脱衣所で様子をうかがうと男湯には誰もいないようだ。よっしゃ独占。静かな温泉をゆっくり味わうとするか。掲示された分析書には「カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」とあった。石膏泉ってやつですな。

分析書の記載で気になったのが温度。湧出位置で46.7℃、使用位置で43.5℃だったと思う。こいつは結構なあつ湯じゃないか。ぬる湯派の我々にはちと厳しいかもしれない。

脱衣所のすぐ隣には小ぢんまりとした風情の風呂場があった。洗い場はシンプルなカランが1つだけ。小さなかけ湯槽というか容器があって、お湯をすくって体にかけてみたら、やっぱり熱かった。あちい。

急斜面が迫る露天風呂

露天の岩風呂は8名くらいいけそうなサイズでなかなかのもの。お湯の見た目は無色透明。女湯との仕切り壁のあたりでやたらボコッボコッとお湯が盛り上がってきてる場所があった。

源泉を湯船の底から投入しているのだ。ただし引いてきた源泉を底から入れているのであって、その位置で直接源泉が湧き出している(足元湧出泉)というわけではない。

岩風呂の背後がなかなかワイルドな光景である。山の急斜面そのまんま。窮屈な角度で生えている草木とか表面の土砂とか、ちょっとした雨で崩れて風呂場へなだれ込んでこないのかと心配になってしまうほど。正面の川は残念ながら目隠しの塀で見えない。

パワフルなあつ湯に勢いあり

ではいよいよ浸かろう。熱いんだろうけどね…うん、熱い。やや深めに満たされたあつ湯は適宜休憩を挟みながらでないと入れない。激熱ではないので数分間じっとしていることはできるが。

泉質名のカルシウムとナトリウムの記述順が逆だけど桜田温泉と似たような浴感だった。温度の好みを抜きにすれば結構なお点前。あつ湯好きならすっかり満足するだろう。

湯船からあふれて出ていくお湯の量にも勢いがある。ゴーッという音はしないが、そうあってもおかしくないほどの印象。これでもかという源泉かけ流し感。

やがて一人のおじいさんがやって来た。手慣れた様子からして地元民か宿泊棟の客か。我々はもう十分に堪能したので、このお客さんに独占の座を譲り、風呂場をあとにした。

最後に休憩所でクールダウン。レトロな室内にはテレビ番組や芸能人の色紙がたくさん飾ってあった。知る人ぞ知る温泉ってところか。窓の外には川と桜の木。桜・新緑・紅葉の時期はさぞかしいいんだろうなあ。


おまけ:メルヘンチックな桜田の花畑

大沢温泉・山の家を出発し、今度は海岸方向へと向かった。桜田温泉のあたりまで戻って来ると、県道15号沿いに見た目も鮮やかな花畑が現れた。隣の駐車場にはそこそこの台数の車が止まっており、そこそこの人数が花畑の周囲を歩いていた。

我々も立ち寄ってみた。おお、きれいじゃないか。
桜田の花畑
花畑のさらに向こう、奥の方に裸の桜並木が見えるだろうか。これで桜が咲いたらとんでもない絶景になるぞ。

ところどころに「種を蒔く人プロジェクト」の札が立っている。
種を蒔く人プロジェクトの札
クラウドファンディングで支援を集めた町おこしプロジェクトのようですね。そんな経緯はつゆ知らず、たまたま見かけてふらっと立ち寄ってしまった。来場者にお金を落としてもらう仕掛けができれば毎年安定して開催できるんでしょうけどね。自分はノーアイデアですまんす。