やさしいお湯が「あったかいんだからぁ~」 - 板室温泉 勝風館

板室温泉 勝風館
ある早春の週末。湯治の真似事をしようと急に思い立った。1泊2日だし、あくまで真似事ですが。

あんまり大きな旅行をする余裕はなかったので、遠すぎず、静かで、一人で静養しに来る客が多そうなところ、でも自炊宿じゃなくて2食付きの旅館、もちろん効能確かな定評ある温泉を持つところ、で空室を探してみた。

そうして選んだのが那須・板室温泉の勝風館である。湯治向きのやわらかいお湯と、一人でも気兼ねなくすごせる設備+雰囲気+運営システム。うん、いいですねー。なんだか疲れちゃったなあ、と心身が弱ったときは、ここへ来ればいいんじゃないかな。

板室温泉「勝風館」へのアクセス

春先の体調不良を癒やしに

ここ数年来、なぜか春先になると体調がおかしくなる。動悸・息切れってやつですかね、妙に息苦しい感じがするし、ドキがムネムネする。自律神経の乱れと言われればそうかもしれない。

困ったことに今年もまた来たみたい。初夏の頃になればスッと収まるのは経験上わかっているので、放っておいてもいいんだけど、今年は少し積極的に対処してみたい。温泉の出番だ。

そんなわけで湯治の真似事へと打って出た。それならゆっくり静養すればいいのに「せっかく栃木へ遠征するなら」と、日帰り温泉に立ち寄ったり、宇都宮をぶらぶらしたり、本来の目的はどこへやら。まあ根が貧乏性なもんでね。

雪の残る山里へ

板室温泉の最寄り駅は那須への玄関口として知られるJR宇都宮線(東北本線)の黒磯。新幹線が停まるお隣の那須塩原でもいい。自分はさくら市の喜連川早乙女温泉へ立ち寄りつつ、黒磯まで普通列車の旅で来た。

ここから、那須塩原駅~黒磯駅~板室温泉を結ぶ東野交通バスに乗る。ただし一部の便は黒磯始発であり、その便が使えない分だけ那須塩原の方が不利だ。

黒磯から板室温泉まで30分。バスの序盤は地方都市の市街地、中盤はいかにも那須らしい林間の別荘地、終盤はすっかり鄙びた山里を通る。序盤はどこにも、雪の“ゆ”の字も見られなかったのに、終盤になると車道の脇に除けられた雪が普通にあった。


枯れた一人旅に最適な勝風館の部屋

静かな里の湯治宿

終点で降りると、那珂川の支流・湯川に沿って小さな、いささか寂しげな温泉街が続いている。若者の集団やファミリー層は来そうもない。大型観光バスが乗り付けるようにも見えない。静かで落ち着いていて個人的には好みの雰囲気だ。
板室温泉街
目当ての勝風館はすぐ近くに見つかった。さっそくチェックイン。キラキラした広いロビーとかお土産コーナーを持つ観光旅館とは一線を画す、しかしビジネスホテルほど素っ気なくもない、秘境感を強調した秘湯宿とも違うテイストの館内。

案内された部屋は3階の6畳和室。テレビ・金庫・小さい卓・ポットを備え、風呂目的なら不足なし。ふとんは部屋の隅に積まれており、取り扱いは自分でやる。トイレ・洗面は共同。冷蔵庫も共同のが廊下にある。
勝風館の部屋

枕にもこだわりあり

勝風館のホームページによれば、湯治客の快適な睡眠ために枕にもこだわっている。数多くの種類の枕を用意してあって、申し出ればその中から希望のものを選べるそうだ。低反発とかドーナツ型とか羽毛とか大理石枕なんてのも。

自分はとくに枕へのこだわりがなかったので、最初から置いてあった基本枕を使用したが、別段不都合はなく快適だった。

快適におこもりできる部屋

窓からの眺めは山の鄙び里っぽい景色。3階ということもあって見晴らしは悪くない。
勝風館 部屋の窓からの景色
室内はややレトロなファンヒーターですでに暖まっていた。エアコンもあるけど滞在中に使う機会はなかった。館内全体がそうだし部屋の中もそうだが、勝風館に「湯治宿=素朴=古い=ボロい」というイメージはあてはまらない。少なくともボロくはない。くたびれてもいない。よく手入れされており快適だ。

最初に「お酒は飲まれますか?」と聞かれて「はい」と答えたら、「では甘酒をお持ちしましょうね。温まってからお風呂へどうぞ」と甘酒を振る舞われた。
勝風館で出てきた甘酒

勝風館のお風呂で湯治気分を味わう

新しめの浴室

勝風館の風呂は2階にある。あらかじめことわっておくが、観光旅館ではないので露天風呂とか変わり風呂とかだだっ広い浴槽はない。オーソドックスな内湯のみだ。

男湯女湯の前に昭和っぽい電光板(?)があって、昭和っぽい書体で「超音波風呂」と書かれていた。その正体は後ほど。脱衣所の扉の上のところに分析書が掲げてあって「アルカリ性単純温泉」とあった。

さあ浴室へ。柔らかい光の差し込む室内はわりと新しめできれい。ちょっと温泉ぽい匂いが漂い、気分を盛り上げる。カランは3つ。4~5名規模の大きい浴槽と2名規模の小さい浴槽が隣り合って奥に並んでいる。

長湯向きのぬるいソフトな温泉

2つの浴槽に接して湯口がひとつだけあり、その上に板室温泉神社の御札が据えられていた。歴史ある温泉地って感じですな。湯口からのお湯は2つの浴槽に等しく注がれ、どちらが熱め・ぬるめというような差はなかった。もちろん源泉かけ流しである。

湯船につかる。おおお、やわらかーい。無色透明の清澄なお湯は見た目にも優しいが、その印象通りのソフトな浴感。ぬるめということもあるが、なんだろう、家の風呂や並の銭湯とは全然違う。スッと入っていけて空気のように軽くスムーズな感触がうれしい。

まったくもって長湯向きだ。さすが湯治に実績ある温泉だけのことはある。夕方・夜・朝すべてじっくり楽しませてもらいました。週末だったけど独占タイムも多かったし、他の客がいても1~2名。のんびりとお湯を堪能することができる。

超音波風呂でマッサージ

勝風館では1日たしか5~6回ほど、20分ずつの超音波風呂タイムが設けられている。その時間が来ると、大きめ浴槽の中の4つの噴出口からボコボコと空気が噴き出してきた。ようするにジェットバスである。

メカニズムの関係で超音波の泡だってことなんだろう。腰とか痛いところに当てるとマッサージ効果でいいですよという説明だった。

噴出口ごとに勢いの強さや泡の大きさが違うようだから、自身に合うところを見つけましょう。なお自分の見た範囲では、超音波風呂の時間を狙いすまして入りに来る客はいないようだった。超音波混雑のおそれはないと思う。


素朴系の部屋食

勝風館の食事は朝夕とも部屋食。観光旅館の会席料理というのでなく、日常寄りのメニューを主体としたお膳を一気出し、食べ終わったらお膳を廊下に出しておく。湯治旅館でよくみられるシステムだ。この日はご飯が赤飯だった。当然のごとく完食。
勝風館の夕食
格別なグルメを求めちゃいけない。普通でいい。湯治で連泊の想定ならこれがベストだ。

自分も、おそらく他の多くの部屋も、ひとり黙々と食べて淡々と食べ終わる。酒も飲まない。仲間と飲んで語ってウェーイできないんじゃつまらないと思う向きがあるかもしれないが、そういう客層はもともとお呼びでない。まあ、こんな夜もいいもんですよ(※お酒については、寝る前に自販機で買ったチューハイを飲みました)。

朝はこんなの。メインがおからってどうなんだろうと思ったけど、結構いける。ご飯は半分くらい食べた。
勝風館の朝食

あったか~い宿でまったりする幸せ

板室温泉は強烈な個性があるわけじゃないけどお湯の質は確かだ。そして年寄りだとか若いからとかは関係なく、静かにまったり風呂とゴロ寝ですごしたいなら勝風館はぴったりだと思う。

「あったか~い宿」のサブタイトルを冠する通り、ぬるめながら上がった後もしばらく体がポカポカする温泉がグッジョブだ。

実は、温泉の好転反応なのか、帰る頃には背筋痛になっていた(寝起きに重い卓を動かす際に腰をグキッとやってしまった可能性もあり)。もう少し温泉につかれば完治して根本的な湯治が完成していたに違いない。ああ、ゴロゴロし放題の幸せといい、もっと連泊してみたかったなあ。

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