諏訪の温泉といえば上諏訪に代表される湖畔の洒落た旅館群を思い浮かべる。しかしもちろんそれだけではない。たとえば下諏訪の少し山に入ったところに毒沢鉱泉という個性的な温泉(鉱泉)が湧き、神乃湯という秘湯感ただよう旅館がある。
秋雨の続く中、その神乃湯をグループ旅行で訪れた。冷と温という二つの対照的な浴槽に交互につかると癖になるほど気持ちがいい。といっても冷たい方は立った状態で腿のあたりまでつかるのが限界だったのだが。
だが車がないと、JR中央本線で下諏訪駅まで行ってタクシー利用になる。バスは通ってないみたい。タクシー10分で1500円とか、そういう感じだったと思う。
出だしと到着直前の急坂は、狭くて見通しが悪く、すれ違いがあったら難儀する。ドライバーは相当気を使うだろう。
戻りは事情によりドライバーが車と一緒に先に帰っていたので、上述の通りタクシーを呼んで下諏訪駅へ行ってもらった。このときは早い段階で川を渡って国道142号(中山道)へ出るルートだった。
チェックイン後に案内された部屋は2階の8畳和室。洗面所とシャワートイレが付いており、新館だけあって比較的新しく、清潔に管理されている。電気ポットと金庫と空の冷蔵庫あり。暖房はファンヒーター。
窓からの眺めは山林の中って感じで秘湯の宿感は十分。車でちょっと行けばすぐに開けた住宅街があるんですけどね。くねった急坂の奥だから開発の手もここまでは及ぶまい。
ほかに説法チックな書を掲げてあったり「神秘のパワー」的な物言いがあったりするから、何かの宗教かスピリチュアル信仰と関係があるのかと気にする声もちらほらあるが、宿の運営や客対応は普通だった。
客に対して余計な干渉はせず、適度に放置してくれる。自分にはありがたいスタイル。放置で思い出したが布団敷きは客が自分でやる決まりになっていた(朝しまう必要はない、そのままチェックアウトでOK)。
大浴場というほどの広さはなく「浴室は6名以内になるように時間をずらしてご利用ください」のような張り紙。また脱衣所の分析書には「含鉄(II)-アルミニウム-硫酸塩冷鉱泉、酸性、低張性」とあった。そうそう見かけない泉質だ。わくわく。
浴室内はカランが4つ。奥の左側に4~5名規模の熱めのお湯の浴槽。右側の冷たい源泉槽は明らかに1名限定。源泉槽のそばに飲泉所がある。
つかっていると、じわーっと効いてくる。冷鉱泉を加温(+循環?)したものだからといって低く見る必要もない。どこかで目にした「エイジング」という言葉がしっくりくる良い湯だ。冷たい源泉槽が苦手な方も、こちらだけで十分な効能と満足を得られるだろう。
しばらく我慢していたら、体を動かさなければ冷たさを感じなくなったおかげで、数分間入っていることができた。出た後も寒くは感じないのが不思議だ。
冷たさできゅーっと締まるような感覚、と同時に、熱でじわーっと緩むような感覚、それらが一挙にやって来るのだ。締まりつつ緩む。なんじゃこりゃあ。もし源泉槽に全身入った後だったら、ほかほか温まりつつものぼせることなく、さっぱりクールな気分で熱め浴槽を楽しめただろう。
飲泉所の受け皿にもチョロチョロと源泉が注がれている。置かれたひしゃくで軽くすくって飲んでみた。うーん、すっぱくて微妙に甘い。金気臭とともに微かな土の匂いがする。効き目は確かそうだが、まあうまいもんじゃないね。
ウッドデッキの一箇所に「↑ムササビの家」という張り紙があった。湯小屋の屋根のところに巣があって、運が良ければムササビを見られる模様。残念ながらこの日は運が良くなかった。
結局、夕方・夜・朝と入って、独占状態になることはなかった。自分以外は入れ代わり立ち代わりでつねに2~3人がいる感じ。下諏訪駅周辺の温泉街でなくここまで来るからには、温泉三昧を主目的とする客層だからなんだろう。
夕食は大きな丸いざるに皿を配置してあるのが特徴的。サーモンと玉ねぎのサラダ以外は山のものが中心。毒沢の秘湯を目当てにやってくる客が喜びそうな素朴系が並ぶ。
鯉の甘露煮が信州っぽい。鍋物は肉と野菜の煮込みだったような。お椀の中は煮物だったかな。忘れてしまった。ほかに鮎の塩焼きと蕎麦の実の卵とじスープが出てきた。いずれも美味しくいただきました。
なお、客が多い日は夕食が2部制になる。1部はおそらく18時開始。2部は19時半(ベストエフォートで早まることあり)。準備ができたら部屋に内線がかかってくる。
どちらになるかは早い者勝ちと思われ、我々が予約を入れた時にはもう2部と決められていた。宿に着いていきなり告げられる無粋なことはなく、一応事前に確認の電話があり、最初から2部のつもりでいたから問題なし。
朝食は特に2部制の話はなく8時半ですということだった。
もしまた機会があれば、今度はもう少し交互浴に挑戦して、今度こそムササビを見て、こんな湯上がり処で優雅にまったりしてみたいもんだね。
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秋雨の続く中、その神乃湯をグループ旅行で訪れた。冷と温という二つの対照的な浴槽に交互につかると癖になるほど気持ちがいい。といっても冷たい方は立った状態で腿のあたりまでつかるのが限界だったのだが。
毒沢鉱泉・神乃湯へのアクセス
下諏訪駅からはタクシー頼み
毒沢鉱泉とはおどろおどろしい名前だが、地元民も一目置くというようなネット情報も見つかるほど、泉質には定評がある。機会があれば行ってみたいと思っていた。だが車がないと、JR中央本線で下諏訪駅まで行ってタクシー利用になる。バスは通ってないみたい。タクシー10分で1500円とか、そういう感じだったと思う。
中山道を活用するのが吉
我々の場合、行きはメンバーの一人が車を出してくれた。諏訪大社・下社春宮や万治の石仏付近の川にかかる橋のあたりに「毒沢鉱泉→」の看板があったから、看板にしたがって狭い急坂を登っていった。出だしと到着直前の急坂は、狭くて見通しが悪く、すれ違いがあったら難儀する。ドライバーは相当気を使うだろう。
戻りは事情によりドライバーが車と一緒に先に帰っていたので、上述の通りタクシーを呼んで下諏訪駅へ行ってもらった。このときは早い段階で川を渡って国道142号(中山道)へ出るルートだった。
神乃湯の新館に泊まる
新しめのつくりなれど秘湯感あり
神乃湯は本館・旧館・新館からなる。事前調査により、旧館は季節柄カメムシがたくさん出るかもしれなかった。実際に出るかはともかく、グループ旅行において独断で「まあいいでしょ」は危険と思い、無難なトイレ付きの新館を予約した(本館はトイレ共用)。チェックイン後に案内された部屋は2階の8畳和室。洗面所とシャワートイレが付いており、新館だけあって比較的新しく、清潔に管理されている。電気ポットと金庫と空の冷蔵庫あり。暖房はファンヒーター。
窓からの眺めは山林の中って感じで秘湯の宿感は十分。車でちょっと行けばすぐに開けた住宅街があるんですけどね。くねった急坂の奥だから開発の手もここまでは及ぶまい。
放置スタイルがありがたい
館内はところどころに七福神の像や祭壇的なものが鎮座している(それらは撮影禁止)。山の精がいっぱいいそう。ほかに説法チックな書を掲げてあったり「神秘のパワー」的な物言いがあったりするから、何かの宗教かスピリチュアル信仰と関係があるのかと気にする声もちらほらあるが、宿の運営や客対応は普通だった。
客に対して余計な干渉はせず、適度に放置してくれる。自分にはありがたいスタイル。放置で思い出したが布団敷きは客が自分でやる決まりになっていた(朝しまう必要はない、そのままチェックアウトでOK)。
冷熱ツートップが迎える神乃湯
定員6名の浴室
神乃湯の風呂は1階の外廊下を渡った先にある。1階フロント向かいの出口でサンダルを履いて屋根付きの外廊下に出る→10メートルくらい廊下を歩く→湯小屋に着く。手前が男湯、奥が女湯で入れ替えはない。大浴場というほどの広さはなく「浴室は6名以内になるように時間をずらしてご利用ください」のような張り紙。また脱衣所の分析書には「含鉄(II)-アルミニウム-硫酸塩冷鉱泉、酸性、低張性」とあった。そうそう見かけない泉質だ。わくわく。
浴室内はカランが4つ。奥の左側に4~5名規模の熱めのお湯の浴槽。右側の冷たい源泉槽は明らかに1名限定。源泉槽のそばに飲泉所がある。
鉄感たっぷり、赤茶の熱め浴槽
まず熱め浴槽に入った。41℃くらいとみた。お湯は赤茶に濁り、底までの半分くらいの深さしか見通せない。酸性とはいえピリピリする感触はなかった。匂いは含鉄泉らしく金気臭を感じるが、その中にふと甘い木の香りがありそうだった。浴槽の縁のヒノキ(?)の香が移ったのかな。つかっていると、じわーっと効いてくる。冷鉱泉を加温(+循環?)したものだからといって低く見る必要もない。どこかで目にした「エイジング」という言葉がしっくりくる良い湯だ。冷たい源泉槽が苦手な方も、こちらだけで十分な効能と満足を得られるだろう。
とにかく冷たい源泉槽
次は冷たい源泉槽へ。こちらは無色透明の源泉をそのままチョロチョロと投入している。足を差し入れると…うぉー冷てー。自分はぬる湯は好きだけど水風呂には入らない/入れない。頑張ってみたが立った姿勢で腿までつかるのが精一杯。しばらく我慢していたら、体を動かさなければ冷たさを感じなくなったおかげで、数分間入っていることができた。出た後も寒くは感じないのが不思議だ。
冷温交互浴の真似事をしてみた
冷と温の交互浴がやみつきになるとの口コミが頭にあったので、続けてすぐに熱め浴槽へ移動すると…おぉーっ、なんだこりゃ。源泉槽につかった両脚に奇妙な感覚が走った。冷たさできゅーっと締まるような感覚、と同時に、熱でじわーっと緩むような感覚、それらが一挙にやって来るのだ。締まりつつ緩む。なんじゃこりゃあ。もし源泉槽に全身入った後だったら、ほかほか温まりつつものぼせることなく、さっぱりクールな気分で熱め浴槽を楽しめただろう。
飲泉所の受け皿にもチョロチョロと源泉が注がれている。置かれたひしゃくで軽くすくって飲んでみた。うーん、すっぱくて微妙に甘い。金気臭とともに微かな土の匂いがする。効き目は確かそうだが、まあうまいもんじゃないね。
運が良ければムササビに会える
風呂は冷熱2つの浴槽のみ。外へ出る扉は露天風呂ならぬウッドデッキへ通じている。熱め浴槽の後は外でクールダウンする客もいた。ウッドデッキの一箇所に「↑ムササビの家」という張り紙があった。湯小屋の屋根のところに巣があって、運が良ければムササビを見られる模様。残念ながらこの日は運が良くなかった。
結局、夕方・夜・朝と入って、独占状態になることはなかった。自分以外は入れ代わり立ち代わりでつねに2~3人がいる感じ。下諏訪駅周辺の温泉街でなくここまで来るからには、温泉三昧を主目的とする客層だからなんだろう。
秘湯らしい素朴系の食事
大きなざるに配された料理
神乃湯の食事は朝夕とも1階奥のお座敷広間で。最近よくある「座敷にテーブルと椅子」ではなく普通にあぐらをかく。夕食は大きな丸いざるに皿を配置してあるのが特徴的。サーモンと玉ねぎのサラダ以外は山のものが中心。毒沢の秘湯を目当てにやってくる客が喜びそうな素朴系が並ぶ。
鯉の甘露煮が信州っぽい。鍋物は肉と野菜の煮込みだったような。お椀の中は煮物だったかな。忘れてしまった。ほかに鮎の塩焼きと蕎麦の実の卵とじスープが出てきた。いずれも美味しくいただきました。
夕食の時間は2部制
お酒は手元のメニューから地酒やワインを頼める。締めのご飯まで、自分には十分な量だった。なお、客が多い日は夕食が2部制になる。1部はおそらく18時開始。2部は19時半(ベストエフォートで早まることあり)。準備ができたら部屋に内線がかかってくる。
どちらになるかは早い者勝ちと思われ、我々が予約を入れた時にはもう2部と決められていた。宿に着いていきなり告げられる無粋なことはなく、一応事前に確認の電話があり、最初から2部のつもりでいたから問題なし。
朝食は8時半から
朝はお膳に乗った和定食。多すぎず少なすぎずでちょうどいい。鮭の皿に付いてくる赤いものはカブの漬物だと思って、しょっぱいつもりで口に入れたら甘くて意表を突かれた。りんごだった。さすが信州。朝食は特に2部制の話はなく8時半ですということだった。
行きやすい秘湯としてどうぞ
毒沢鉱泉神乃湯へ車で行く場合、最後の坂だけ気を使うけど悪路を車で何十分という場所でもないから、気軽に行きやすい秘湯としての利用が考えられる。鉱泉とはいえ珍しい泉質だし、冷温交互浴は脚しかできなかったけど、たしかにハマってしまうのはわかる気がする。もしまた機会があれば、今度はもう少し交互浴に挑戦して、今度こそムササビを見て、こんな湯上がり処で優雅にまったりしてみたいもんだね。
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