雪と光のイリュージョン - 五箇山 合掌造り集落

五箇山 相倉集落
富山県西部は海と山の観光資源に恵まれた見どころいっぱいのエリアだ。この記事では、2泊3日のグループ旅行でまわった観光コースの前半---旅の玄関口・高岡から世界遺産・五箇山にかけての「山編」をお送りする。

ちょうどいい季節に行ったみたいで、ふだんとかけ離れた別世界の景色を楽しむことができた。



新高岡から五箇山まで

ネマルカフェが休憩にちょうどいい

東京方面から五箇山を目指すと、北陸新幹線で新高岡駅に着くパターンが多いと思う。ここから「世界遺産バス」の愛称がついたバスに乗り換える(4番のりば)。

ただし本数はそれほど多くないから、タイミングが合わないと1時間を超える待ち時間は当たり前だ。しかし新高岡は駅ナカが充実しているわけではないから時間つぶしはできない。さてどうするか。

徒歩で行けそうな距離に見えるイオンモールへ繰り出すのも手だが、南口を出てすぐのところにある「ネマルカフェ」でコーヒー休憩をおすすめしたい。

観光情報誌がたくさん置いてあって、旅のプランを練りながらゆっくりできる、ナチュラルテイストのおしゃれなお店である。軽い食事をとることもできるし、大きめのカップにたっぷり入ったコーヒーは、おかわり自由の太っ腹。

世界遺産バスで雪国へ突入

世界遺産バスは途中まで高速道路を走る長距離仕様の車両。だから事前に乗車券を買っておかなければならないような気分になるが、普通の路線バスと同じく整理券を取って下車時に精算する方式だった。必要分の小銭あるいは少なくとも千円札を用意しておこう。

なお、乗り降りを繰り返して利用しまくる場合は、2日間有効のフリーきっぷがお得。新高岡駅の観光案内所で売っている。

一行が訪れたのは早春。高岡には雪が全くなかったのに、バスが中間点の小京都・城端を過ぎたあたりから残雪が現れ始めて、気がつけばあたり一面の雪景色になっていた。


五箇山の合掌造り見学(1)…相倉集落

雪に埋もれた里

五箇山のメインスポットともいえる合掌造り集落は2つある。そのうち高岡寄りにあるのが相倉集落。世界遺産バスで新高岡から約1時間の相倉口で下車して、5分ほど歩いたところにある。

2つのうちでは大きい方なのだが、白川郷と比べると小規模だそうだ(白川郷には行かなかったので某経験者の談による)。そのおかげで鄙びた隠れ里・秘境の雰囲気を色濃く残しており、白川郷よりも風情があるとは当経験者の評。

当日は人が歩く道をしっかり除雪してある反面、そのほかは茅葺屋根の家屋のすぐそばまで雪が高く積もっていて、「どうやって人が出入りしてんの?」と思われるような雪の壁になっている場所もあった。
五箇山 雪に埋もれた家

ここは一般の住宅街です

メインの通りに面した家屋は民宿だったり、資料館だったり、お休み処兼みやげ店だったり、観光客向けの商いをしているところが多かった。

とはいえ普通の住民が普通に暮らしている集落には違いない。見た目の印象から、つい人工的に作られたテーマパークのように勘違いしてしまいそうになるけれども、あくまで一般の住宅街だという意識で節度ある行動が求められる。

30分もあれば集落をひと回りできる(資料館見学などの時間は別)。

試練の展望台

それとは別に、高台から集落全体を望むコースもある。案内板には「展望台まで徒歩5分」と書いてあるが、それは雪がない場合だ。このコースは坂道かつ除雪がされていないため、注意深く慎重に歩かないと簡単に滑ってしまう。展望台へたどり着くのに随分手こずった記憶がある。10分以上かかったんじゃないか。

展望台といっても「この先通行禁止」で道が終わっているだけの場所だったが、登ってくるまでの苦労に報いるかのように、すばらしい眺めが広がっていた。写真だと木が邪魔しているように見えるな。実際はもっとパノラマ感あったと思う。
展望台から見る相倉集落
満足した後は恐怖の雪の下り坂が待っていた。登り以上に慎重に、腰を落として一歩ずつ、足元の安定を確保しながら進んでいこう。こりゃあ大変だ。

車がないと移動が大変

こうして相倉集落の見学は終了。バスの本数が少ないから、さて次へといってもそうタイミングよく移動はできない。我々はやむを得ずタクシーを呼んだ。五箇山地区では各所に写真のような標識が立っていて、その場で待機しているタクシーがいなくても、書いてある番号に電話すると来てくれる(そのときは10分待ちですんだ)。
五箇山 タクシー標識


五箇山の合掌造り見学(2)…菅沼集落

幻想的なライトアップ

白川郷寄りにあるもう1つの集落が菅沼集落だ。相倉口からはバスで15分、菅沼で下車する。我々の場合は宿泊先の五箇山荘による夜間ライトアップ見学の送迎バスを利用したので移動に難はなかった。

菅沼集落では季節ごとの特定日に夜間ライトアップを実施している。とくに冬季は、雪に囲まれた合掌造りの家々が灯りに照らされて浮かび上がり、とても幻想的。童話の世界に迷い込んだ気分。時期があうならぜひ見ておきたい。

ところどころ雪の壁をくり抜いてローソクを立ててあって、これがまたアクセントになって幻想的な雰囲気をより一層盛り上げていた。
五箇山 ライトアップされた菅沼集落

昼も夜もいいですね

菅沼集落は相倉より小規模で、ひと通り見て回るのは20分もあればいい。ただし各家がみやげ店になっているから、逐一のぞいていると30分以上かかる。夜だし寒いことは寒いが極めて厳しいものではなかった。たまたま風がなかったからかな。

自分の体験だけを基準にすれば、やはりせっかくだから2つの集落を昼と夜に分けて見学するのがよいと思う。昼は里全体や背景の山をも含めた遠景までを楽しめるし、夜はライトアップの美しさが格別だ。


五箇山の合掌造り(3)…村上家

風格ある旧家

五箇山で有名なのが国指定重要文化財の村上家。宿泊先の五箇山荘と同じく上梨バス停が最寄りとなる。というかバス停のすぐ目の前にある。合掌造りの古いままの家屋の内部をすみずみまで見学することができる。
五箇山 村上家
一行は朝一番に訪れた。ネットで調べた「朝8時30分~」を頼りに行ってみたら冬季は9時からだった。ご厚意で早めに入れてもらえたものの、開館準備でバタバタしている中、ちょっと申し訳なかった。

合掌造り内部に潜入

靴を脱いで座敷に上がる…うわ冷たい! そういえば古い建物の冬の畳ってそうなんだよね。中は昔から残された家財道具や資料が展示してあるが、足裏の冷たさが強烈でそっちの印象ばかり残っている…。

2階・3階に上がることもできて(急階段に注意)、農耕具の類が展示してあった。ギシギシと音だけでなく吊り橋のように揺れるもんだから、地震が苦手なせいもあって気が気じゃなかった。これは構造安定のためにあえてそういう設計にしているらしい。

話上手なおじさんの説明に聞き入る

1階に戻ると、囲炉裏に火をくべていたおじさんが「詳しく説明しましょうか」と、なめらかな語り口でいろいろな解説をしてくれた。

合掌造りの特徴、昔の暮らしぶり、自然環境、伝統文化など。とくに意外だったのは、「かつては貧しい山あいの里」という思い込みに反して、昔から比較的食うには困らない地域だったそうだ。

川魚は豊富だし、今はやめてしまったが段々畑を山の上の方まで開いていたとか。そのせいで雪崩がよく起きたそうだが。

立て板に水のごとく喋るし披露した民謡もうまくて芸達者なおじさんであった。それにしても囲炉裏から出る煙ってすごいんだね。広い屋敷内に煙がもくもく充満して話に集中できないくらい、目がしみるしみる。


五箇山の誇り

五箇山は、よくぞ現代にこんな集落がと驚くような景色が広がる。さすがは世界遺産だ。訪れる季節は、もしふだんと違う非日常感を求めるなら、やはり雪のある時期がいいのではないだろうか。

村上家の隣りにある神社へ行くと、すれ違った地元のおじさんが、神社のいわれや鳥居の由来を熱心に語ってくれた。その姿に強い郷土愛と誇りを感じた。きっとここの人はみんなそうなんだろうと思う。

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