焦げ硫黄臭の体は硯川帰りの勲章 - ほたる温泉 硯川ホテル

ほたる温泉 硯川ホテル
志賀高原の硯川ホテルには緑色の温泉があるという。2025年の話題作ジークアクスの影響で「緑のおじさんを気取って緑の温泉を湯めぐりする」という、しょうもない趣向を思いついてしまい、長野遠征の1泊目の宿を硯川ホテルに決めた。もちろんお湯のクオリティも考慮に入れてのことである。緑色ならなんでもいいわけじゃない。

冬にはスノボ・スキー客を大量に受け入れる宿、夏場は登山・トレッキング客が拠点にする宿、そして四季を通じて温泉を楽しむための宿…当館は3つの顔を持つように思われた。第3の顔に注目すると、ミルキーグリーンとでも呼ぶべき硫黄系にごり湯が旅情を盛り上げてくれて、入浴後はお肌スベスベにしてくれる。

ほたる温泉 硯川ホテルへのアクセス

電車・バスなら長野側から、車なら草津側からも可

以下の話は夏場の体験・調査にもとづいており、冬は状況が違うかもしれないから事前に確認されたい。

JR長野駅からの急行バスまたは長野電鉄・湯田中駅からの路線バスに乗って、ほたる温泉で下車すればすぐそばに硯川ホテルがある。また15名以上の団体か、送迎付きプランで予約すれば、送迎サービスを提供してくれるようだ。どの駅までとか時間とかは要相談。

自分はマイカー利用。草津側から志賀高原に入り、まず熊の湯ホテルで1つ目の「緑の温泉」を体験した。熊の湯ホテルから硯川ホテルはとても近いし、当館のチェックイン受付が始まるまで1時間ほど余裕があった。そこで横手山スカイレーターで山頂まで往復してみるべと思って横手山を仰ぎ見ると、山頂付近はすっぽり雲の中。うーん、せっかく登っても霧の中で何も見えないな、やめておこう。

蓮池と平床大噴泉

かわりに湯田中方面へちょっと走って蓮池まで行ってみた。名前の通りに蓮の花がいっぱいですね、と思ったら蓮じゃなくてヒツジグサ(睡蓮)だった模様。違いがわからん。
蓮池
山の駅リゾートセンターで少々休んでから硯川ホテルへ戻る途中で木戸池にも寄り道してみた。志賀高原のメインロード沿いにはこんな感じで池がいっぱいある。
木戸池
さらに平床大噴泉というスポットを発見。いかにも温泉に関係がありそうではないか。寄ってみるしかないでしょう。蒸気だか噴気だかの白煙もくもく。
平床大噴泉
今日入った(入る)温泉群の源泉が出てるところですかね。装置から伸びるパイプの先はよくわからない木製の何かにつながれていた。
パイプの先にある何か
…さあ、ちょうどいい時間になったようだぞ。硯川ホテルへゴー。ホテルの道を挟んだ向かいにある駐車場はサマーリフトの駐車場に見えたから遠慮して(真相は知らない)、ホテル建物脇の未舗装スペースに多くの車が止まっているのを確認し、真似して止めた。一応正解だったようだ。


ひと通りは揃っている、気取らないホテル

やっぱり団体さん来てますね

ではチェックイン。フロント前のロビーがこちら。
ロビー
奥にはお土産コーナーがございます。
お土産コーナー
付近にはビールなどを入れた冷蔵ケースがあり、フロント精算で買うことができる。ほかにお酒を売ってる自販機が見当たらなかったので、夕方の湯あがり後にはここの缶ビールを飲んだ。

ツアーの団体さんをよく見かけたなあ。エレベーターは1基だけで規模なりに利用率は高いため、みんなが風呂に入りそうな時間帯や食事の頃には待ち時間が発生することもある。

ひとりには広い、横手山の見える部屋

案内された部屋は4階の10畳+広縁和室。一人客もこのスペックの部屋に入れてくれるとは、ありがてえ。布団は最初から敷いてあった。
硯川ホテル 10畳客室
3点式ユニット風のシャワートイレと洗面台あり。金庫あり、冷蔵庫なし、WiFi不明…部屋にSSID/パスワードの説明書きがなく、まあいいやとスマホのキャリア回線でカバーした(ロビー周辺でWiFiが使えるとの情報もある)。失礼ながらハード面は予想してたよりもずっとしっかりしていて、きれいで、うれしい誤算。

注意点としてエアコンはない。扇風機もない。外は昼でも25℃いかない気温だったから、窓を開けて網戸にしておけば涼しい空気が入る。夜は窓を閉めざるを得ないが、その頃には屋内もずいぶん温度が下がってくる。掛け布団をかぶると寝苦しく、除けて寝るとちょうどいいくらいな感じだった。
窓の外の景色
窓から見えるのは横手山だろう。雲はあってもだいぶ薄くなって青空が見えてきたな。最初からこんな様子だったら行ってたのに。まあいい、明日リベンジじゃ。


緑の温泉めぐりにバッチリ当てはまるお風呂

内湯は実質的に浴槽ふたつ

硯川ホテルの大浴場は地下1階。地下に着いた時点から焦げ硫黄臭がぷ~んと匂ってくる。ええでええで。浴場手前には100円戻らない式の貴重品ロッカーあり。日帰り利用の際にどうぞ。

脱衣所には典型的な棚+かごが並ぶ。張り出されていた分析書をチェックすると「含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉、低張性、中性、高温泉」だった。PH6.4、62.5℃の源泉を43℃にして提供。湯使い不明なれど、後日の調査によれば温度調整の加水以外は加温・循環・消毒なしと思われる。

浴室内にカランは18台。冬に大量のスキー客をさばくことを想像すれば、これくらいは必要でしょう。内湯浴槽は湯面よりも低い仕切りで2つの区画に分けられており、一方の細長い小区画が3名規模、もう一方の正方形に近い中区画が6名~各自に譲り合い精神があれば10名も可能な規模。

見事なミルキーグリーンの硫黄泉

お湯は浴槽の底がぎりぎり見えるかどうかレベルの緑白濁。カッコつけて呼ぶならミルキーグリーンかな。今回の旅で体験した温泉の中では緑のおじさん=シャリア・ブルのイメージカラーに最も近い色だった。ニアピン賞を差し上げます。

温度面は一般的な適温。仕切りをまたぐように湯口が付いているし、仕切りを越えて両区画のお湯が行き来するので、温度に差が出にくい構造だ。体感的にもほぼ同じだった。強いて言うなら小区画の方が微妙に熱め。

泉質に似合う白い小さな粒状の湯の花に加えて、もっと大きくて目立つ綿状のやつも白いのと黒いのがふわふわと漂っている。黒い方は湯垢かなあ…しかしこういうタイプの湯の花もあるから断定はできない。また湯面上に光が当たるところを観察すると、さらに異なる様態で湯の花が浮いているのがわかる。いかにも濃ゆそうな温泉ですな。匂いは軽めの焦げ硫黄臭。

星の観察ができちゃったりするかもしれない露天風呂

露天風呂は3~4名規模の細長四角タイプ。半分以上が屋根に覆われ、雨・雪でも大丈夫そう。お湯の見た目は内湯と似ている。外気で冷めるせいか、ややぬるめの適温になっていて入りやすかった。泉質を考えたら無理に長湯しなくていいと思うけど、せっかくだしゆっくり時間をかけて楽しみたいと望むなら露天風呂かな。

湯船のすぐ外側に囲いを設けているために眺望はない。頭上も半分以上は屋根だし。しかし夕食後に来た際に上部の隙間から夜空を見上げたら、照明の影響で見えにくくはなっていたけれども、雲の切れ間にチカッチカッとまたたく星がいくつか見えた。真面目に準備して屋外のしかるべき場所へ移動すれば、満天の星が拝めそうな気がするな。

湯あがり後はお肌スベスベ。そんなにしつこく長湯したわけじゃないのに、こいつはすごい。そしてしばらく経つと身体がいささか焦げ臭くなっていた。風呂を出る際にシャワーで温泉を洗い流さない派だから、硫黄の匂いが移って熟成しちゃったんだろう。一種の勲章だと思うことにする。シャリア・ブルが木星帰りの男なら、こっちは硯川帰りの男じゃ。


焦げ臭い身体で食事に臨む

夕食のボリュームは多め(しかしみんな食べ終わるのが早い)

硯川ホテルの食事は朝夕とも1階の食堂にて。夕食は17時30分から18時までの間にお越しくださいとのことだった。一般的な時間よりも早めですな。おじさんはべつに気にしないけど。長机風なテーブル上に部屋番号の札が立っているのを見て、自分の番号の席についた。多くの料理がすでに卓上に並べられていた。
硯川ホテルの夕食
長らくあちこちの宿へ食事付きで泊まっているうちに、ぱっと見て全体のボリューム加減を直感できるようになっていた。ニュータイプの覚醒ってやつだ。ふむ、これは…多いですな。鶏肉のホニャララ2つだけで腹にたまるし、焼き魚も意外とでかい。加えて陶板焼きとくれば十分なる飽和攻撃。ジョッキの生ビールを飲みながらだから、なおさらね。

途中で料理の追加があったかどうか覚えてなくてすまんす。天ぷらくらいはあったかも。総合的にものすごくいい食材を使ってるとか、手の込んだ調理をしているとかではなくて、ぶっちゃけるとありふれた感じだけど、言い方を変えれば気取らない・親しみのある内容ともいえる。そもそもおじさんのふだんの夕食に比べたら何倍も豪華だぞ。

ボリュームに警戒しつつも、80分ほどかけて完食することに成功した。締めのご飯も1杯はしっかりいただいた。膨満感で動けなくなるところまで追い込まれずにすんだから夜の部のお風呂にも行けそうだ。よかった~。

偉大なる普通の朝ごはん

朝は7時30分から8時までの間にお越しくださいとのこと。行ってみると前夜と同じテーブル席にあらかたの料理が用意されていた。
硯川ホテルの朝食
偉大なる普通。エクセレントなベーシック。まあそういうことよ(何が?)。「御のり」に高級感へのこだわりが垣間見える。ちなみに朝夕ともご飯はお櫃に入ってやって来る。夕食時は1杯しかいけなかったが、朝食時は「私の帰りの胃袋にはまだ若干の余裕がございます」な腹具合だったため、おかわりしました。

飲み物は水とお茶だけで牛乳やジュースやコーヒーはない。まあしょうがないかな。当湯ほどの温泉であれば食事後~チェックアウトまでに最後の入浴を欲張るところ、横手山スカイレーターにリベンジする計画を急きょ追加したため、9時前のチェックアウトとなって風呂には行かなかった。

 * * *

キラキラ感のあるリゾートホテルのつもりで行くと肩透かしを食うかもしれない。おじさんくらいの年代が温泉をメインに据えて、高揚感を求めず、のんびりするつもりで行くとちょうどいいだろう。高揚感を求めずといってもミルキーグリーンのにごり湯は旅情を盛り上げてくれるし、お湯のクオリティそのものはとてもいい。

緑のおじさんシャリア・ブルは、ニュータイプがニュータイプとして生きられる世を作ろうとした。硯川ホテルは温泉好きが温泉好きとして楽しめるお風呂を作ってくれた。ありがた山にございます。