貸切風呂がいっぱいで驚いた - 修善寺温泉 湯めぐりの宿 桂川

湯めぐりの宿 修善寺温泉 桂川
ああ、大河ドラマで俺たちの蒲殿(源範頼)がついに退場してしまった。しかも最後は善児されちゃうという冷酷無比な最期。これは放ってはおけない、ってことで範頼終焉の地・修善寺温泉へ行ってみることにした。

しかし、ただでさえ高級志向の旅館が多いこの温泉地で「おひとりさまOK」を手の届く価格で提供してくれる宿はそうそうない。とくに夕食付きを探そうとすると。

曜日を融通したりしながらあれこれ探して見つけたのが「湯めぐりの宿 桂川」のビジネスシングル・9時チェックアウトのプラン。部屋とチェックアウト時刻に納得できるなら、風呂や食事は一般と同じサービスを受けられてお得。

湯めぐりの宿を名乗る通り、貸切風呂の種類が充実していた。一晩でコンプリートするのはなかなか大変だろう。

修善寺温泉・桂川へのアクセス

車でも鉄道+バスでも行きやすい

修善寺は車でも鉄道でも行きやすい。東京方面から車の場合は新東名の長泉沼津IC→伊豆縦貫道(修善寺道路)の修善寺ICまで来ればあと少し。注意点としては温泉街の道路は途中から急に狭い一方通行になる。初見だったら用心しながらそろーっと走るべし。

鉄道利用なら三島から伊豆箱根鉄道で終点の修善寺駅まで乗る。自分は先に伊豆長岡の「弘法の湯長岡店」へ立ち寄り入浴した後、韮山の北條寺と大河ドラマ館を見学してから修善寺駅へ移動した。

修善寺駅から歩こうとすると30分はかかるんで普通はバスに乗る。伊豆箱根バスと東海バスの2社体制のようだ。当宿に最も近いのは「みゆき橋」停留所で駅から6分。
みゆき橋から見える桂川
みゆき橋は旅館名にもなっている桂川にかかる橋で、目指す旅館の建物が橋の上からもう見えている。川べりに立っているのは温泉旅館にありがちなパターンだ。この立地のために玄関やフロントのあるフロアが3階という構造になっている。

修善寺温泉街について

温泉街についてもう少し補足すると、みゆき橋からさらに奥へ歩いていけば(そのつもりがあるなら終点の修善寺温泉停留所で下車した方が近い)、渡月橋のところに共同浴場「筥湯」がある。併設の望楼が特徴的だ。今回は入らず。
筥湯
ここから少し進むとランドマークの修禅寺があり、そのそばに虎渓橋がある。橋から川の上流を見ると、なんか川に突き出た足湯コーナー風のがあるぞ…でも実際は入れない。独鈷の湯なる“見るだけの湯船”だって。階段下り口のところに足湯コーナーが別途設けられていた。今回は入らず。
虎渓橋から見る独鈷の湯
修禅寺や範頼ほか源氏ゆかりのホニャララについては別記事で。修善寺は温泉と史跡が組み合わさった気軽な行楽地ってところだね。梅林と虹の郷(テーマパーク)は行ってないのでわかりません。


安定安心の大規模旅館

館内の雰囲気は良い

ではチェックイン。ここですんごい待ち時間が発生した。紅葉シーズンだとか休前日ってわけじゃないんだけどなあ。なんでこんなに混むのだろう。フロントで客を一組さばくのにえらい時間がかかっている様子。自分の順番が来たときの手続きはそんなに手間取らなかったから、手際がどうとかではなくて、静岡県民割とか現場に負担のかかる煩雑な対応が連続してたのかも。

待ち時間にちょっと偵察を。ロビーはこちら。※写真は夕食前に撮影したものであり、チェックイン時は客がぎっしり。
ロビー
ロビーからエレベーターホールへ通じる通路はなんだか洒落ている。
エレベーターホールへの通路
館内にコンビニあり。お土産類のほか、普通のお菓子やお酒も売ってる。ビールが市中価格と同じかどうか忘れたが、少なくとも乖離の度合いは小さかった。
館内コンビニ

ビジネスシングルの部屋も全然オッケー

長い時間の後、自分の順番になって5階の部屋のカードキーを渡された。ロビー前の浴衣コーナーで自分に合うサイズの浴衣もしくは作務衣を手に取り、それから食事時間予約コーナーで夕食と朝食の時間を予約する。それから先ほどの洒落た通路の先のエレベーターで5階へ。

ビジネスシングルの部屋は、まあビジネスホテルの部屋だと思えば良い。管理状態は良好で、ひと通りの設備は整っているから、なんら文句はない。
桂川 ビジネスシングルの部屋
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり。フリーWiFiあり。内廊下に響くプライベート会話をドア越しに聞かされるのはホテルあるある。一方、この部屋に隣接する客室はないから、テレビ鑑賞時の音の気兼ねは不要でしょう。

窓から見える景色はこんな感じ。川と反対の山側の部屋ってことかな。
窓の外の景色

館内湯めぐりできるくらいに風呂がいっぱい

最上階にある一般大浴場で気分は展望風呂?!

大浴場は2つのフロアに分かれている。一般の大浴場は最上階の9階、貸切風呂は4階にある。チェックインの後はまず一般の大浴場へ行った。9階のエレベーターホールからだと下界の抜けの良い景色を見られる。ただしスマホを手に浴場前をうろうろすると不審者事案が発生してしまうため撮影できず。

本館は共立リゾート系列であり、共立リゾートといえば風呂あがりのアイスやヤクルトのサービスで知られるが、ここには置いてなかった(アイスは食事の会場で提供されていた)。

男湯の脱衣所に貴重品ロッカーあり。掲示されている分析書には「アルカリ泉単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒あり。

内湯の浴室はさすが規模に見合った広さで洗い場は18名分。内湯浴槽はひとつだけといえどもかなり大きい。20名、いや、うまくすれば30名いけちゃうんじゃないか。それでいて貸切風呂の存在のおかげか、こちらへ客が大勢やって来ることがないため、広い湯船を独占する機会すらあった。

お湯の見た目は完全に無色透明。温度は少々熱め寄りの適温。匂いを嗅ぐと軽微な塩素臭を感知した。いかにもそれらしい温泉感や玄人受けのする特徴はないけど、広い風呂で手足を伸ばして、まわりに他人の存在を感じることなく浸かれるってのは悪くない。展望風呂というほどの仕掛けが整っていなくとも、なんとなく窓から下界を展望する気分にはさせてくれる。

ややぬるめの露天風呂

露天風呂もある。10名サイズの岩風呂で、周囲に石や竹の囲いを配してそれらしい雰囲気を演出している。下界を展望するのは難しいと思う。壁際で背伸びすればどうにかなるのかなあ。あと休憩用チェアが2つ置いてあった。

温度は内湯よりもぬるめだから自分の好みでいえば露天風呂がいいな。こちらもとくに混み合うことはなく、ゆっくりじっくり浸かることができる。

貸切風呂の檜葉は和のしっとりした雰囲気

夕食後に4階の貸切風呂「七湯めぐり」へ行ってみた。土壁・朱壺・八角・檜葉・岩座・瞑想・陶磁の名がついた7種の貸切風呂があり、待合室の電光板上で名前が点灯している風呂は利用可、消灯している風呂は使用中を表す。着いたらたまたま檜葉が空いていたからさっそく確保。

中に入ったら鍵をかけるのを忘れずに。戸の施錠・解錠が電光板の消灯・点灯と連動しているし、自分の入浴中にルールを把握してない客が中に入ろうと戸をガタガタいわせてたから、気をつけましょう。

中はシャワーとシャンプーのみを設置したミニ洗い場(本格的に洗身洗髪する方は大浴場へどうぞと案内がある)、そして2~3名サイズの檜風呂があった。お湯は大浴場と一緒で温度は普通の適温。檜の香りが落ち着くね。すぐ外に縁側と庭が作られており、ちょっといい風情になっている。

定番の岩風呂と派手な朱色の壺湯

朝は5時台を狙ってみたが、すでに結構利用されていた。空いていた岩座へ迷わずゴー。ミニ洗い場・縁側・庭は檜葉と同様。こちらは名前の通り岩風呂になっている。サイズはやはり2~3名分。岩好きはこちらへどうぞ。

岩座を出たら朱壺が空いていた。せっかくだから3つ目を体験するか。ミニ洗い場・縁側・庭の構成は一緒。庭に出ないでくださいと注意書きがあるけど、出る奴おるんかい。ここのお風呂も名前の通りで壺湯。しかも鮮やかな朱色。方角的に朝日がまぶしい。

貸切風呂を3つ体験した範囲だと、いずれも洒落た風情があり旅気分を盛り上げてくれるはずだ。子連れファミリーなんかにも使い勝手がいいでしょう。だからこそ人気があってなかなか空かない・待ち時間が長いと思われるかもしれない。曜日や時期によるのを承知で言うと、当時は「特定の風呂を狙うのでなければ、どこかは空いていて入れる」という感じだった。30分を目安にお願いしますと注意書きがあるし、実際は30分も粘らずに出てくる客が多く、回転率は高めに見えた。


いろいろ選べて自分の好みを貫けるバイキング

種類が豊富で目移りしてしまう夕食

食事は朝夕とも2階のバイキング会場にて。共立リゾートお得意の多彩なバイキング料理が提供される。自分はメニューの3分の1もカバーできたかどうか。なお、当時はおそらくコロちゃん対策のため、ライブキッチンのメニューを除くと、ラップがかけられた小皿・小鉢を取っていくスタイルだった。好きな量を取り分けるスタイルじゃない。

夕食時は部屋番号に応じて割り当てテーブルが決まっていた。おひとりさまは遠くの壁際でひっそりと。これはむしろありがたい措置だ。グループ客に囲まれる位置だと変に浮いちゃって落ち着かないからね。

では料理を取ってこよう。うわあ、いっぱいあるぞ。目移りして迷ってしまう。どれにしようか。「マクワウリなんかがいいな」…背後でそんなセリフが聞こえたら蒲殿でなくても死亡フラグが立ってしまう。周囲の気配に注意しながら料理を選んでいった。
桂川の夕食バイキング
少ねえー。とりあえずこれらをつまみにしてビールをいただいた後、2杯目のレモンハイのために2巡目を取りに行っているから心配ご無用。ちなみにお酒は飲み放題コースだと自分の実力じゃどうせ料金分飲めないとわかっていたので個別に注文した。

夜食は夜鳴きそば、朝食は勝手丼にチャレンジしてみた

共立リゾートの宿といえば夜鳴きそばのサービスだ。無料サービス、私の好きな言葉です。この日は21時半から3階の専用コーナーで開始。夕食では白飯を食べずに胃袋の余裕を作っておいて夜鳴きそばへ出撃。初めて食べたけど昔ながら系の醤油味でさっぱりしててわりと苦もなく入る。なぜかスープが癖になってがんがん飲んでしまった。

そして翌朝。今度は自由席方式。でもやっぱり壁際の目立たぬ方を陣取ってしまう。朝もライブキッチンやってるし結構な品数が用意される中で取ってきたのがこちら。
桂川の朝食バイキング
勝手丼を作ってみましょうとのおすすめに従い、刺身・しらす・温泉玉子・とろろをご飯に投入して混ぜ混ぜする。本当は明太子も入れるみたいだけど忘れてた。

勝手丼がご飯とおかずのフュージョン集合体だから、それだけでお腹いっぱいになる。あとはコーヒーとデザート少々でおしまい。

 * * *

ファミリーから若いカップルから老夫婦から自分のような一人旅まで、幅広い客層を目にした桂川。つまりは万人向きということだ。共立リゾートの手堅い運営には安心感がある。

当時いろんなお客さんがいた中で、蒲殿に思いを馳せるというテーマで臨んだのは自分だけだろう。でもきっかけとなった放送回の次の回の頼朝がしみじみと余韻を残す描写だったおかげでそっちに意識が行っちゃってたよ。蒲殿、すまん…(CV:比企能員)。