信濃川のほとりに湧く緑茶風のお湯 - 越後田中温泉 しなの荘

越後田中温泉 しなの荘
先日の旅行から半月後に再び新潟県中越へ行くことになった。だったら一度にまとめた方が往復の新幹線代などを節約できたのだけど、休暇の取り方の都合で二回に分かれてしまった。じゃあどうせだから旅の性格を変えてみようじゃないか。

前回がなじみの宿に腰を落ち着けてプチ湯治する鉄道旅だとするなら、今回はレンタカーで周遊する新規開拓の旅。最初の1湯目は以前から気になっていた津南町の越後田中温泉「しなの荘」だ。お湯がぬるめという情報を目にしたので、自分の嗜好に合っているかと思って。

実際に体験してみると、ぬる湯というカテゴリに含めるかどうかは微妙なところだが、ゆっくり入りやすい温度ではある。そして緑色の見た目と独特の香りが温泉気分を盛り上げてくれる。

越後田中温泉「しなの荘」へのアクセス

実は駅近のロケーション

しなの荘は駅から近い。JR飯山線・越後田中駅から信濃川の方へ徒歩5分で着いてしまう。だから鉄道によるアクセスもそんなに苦ではない。ただし飯山線のダイヤをよくよく研究する必要がある。越後田中駅を発着する便は上りも下りも12時台と14時台だから、日帰り入浴で立ち寄るつもりなら12時台に着いて14時台に離脱することになるだろう。

宿泊するなら17時前後の着便も利用可能。しかし翌朝9時を過ぎてチェックアウトすると次の列車は12時台だ。ここがどうにも悩ましい。一応、鉄道利用者は列車の時間まで居させてくれるみたい。

へぎそばを食べたかったので

今回はそんな細かいことをごちゃごちゃ考える必要はない。新幹線で越後湯沢駅に着いたらレンタカーを借りて出発。マイペースが許される状況に感謝しつつ、まずは腹ごしらえのために十日町へ。久しぶりにへぎそばを食べたくなったので有名店を検索し、総本山ぽい「小嶋屋総本店」を目指した。

…1時間くらいかかったぞ。温泉のためならともかく食のためにここまでやる男だとは我ながら感心した。まあどうせ今日は雨でベタな観光はあきらめているので時間を持て余し気味だ。

こういう有名店へ昼時に行くと長い順番待ちも珍しくないが、幸い入店してすぐに着席できた。季節メニューのひとつ・秋の味覚天へぎを注文。
小嶋屋総本店 秋の味覚天へぎ
おー。食べてみると麺がみずみずしい感じがする。口に入れたとき、そばの香りよりも海藻の香りの印象があったのは、つなぎに布海苔を使っているという情報に引っ張られて脳がそう感じただけかもしれん。まあいいや、自分の感覚を信じよう。

信濃川のすぐそばに立つ宿

へぎそば欲を満たした後はいよいよ越後田中しなの荘へ向かう。主に国道117号を約30分、時おり信濃川を横目に見ながら走る。最後のアプローチ道はやや狭い下り坂。しなの荘は信濃川のすぐそばにあった。ちょっと河原へ下りてみますかね。
信濃川
この写真でいうと右側の土手の上くらいの場所に当館が立っている。


ゆっくりと楽しみたい、しなの荘のお風呂

館内の雰囲気が良い

中に入ったらフロントで日帰り入浴の旨を伝えて600円払う。館内は全体が畳敷きの床になっており、素足のまま歩くことができる。全般に雑然としたところがなく、もろもろキレイに整えられており、好印象。記念にロビーの方を撮影してみたら見事にピンぼけしてしまった。失敗。
しなの荘のロビー(ピンぼけ)
他には日本秘湯を守る会の提灯が目についた。あれ、そうだったっけ?…近年加入したみたいね。などと観察しながら畳敷きの廊下を大浴場へ向かう。男湯女湯の向かいの壁に分析書が貼ってあって「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、低温泉」とのこと。加水なし、加温・循環・消毒あり。

浴室の洗い場は4名分。その奥に内湯浴槽があって、さらに奥のドアの向こうに半露天風呂があるようだ。よくよく眺めると、露天部分も含めて全体がひとつの大きな屋内空間だった。露天と内湯を隔てる仕切りが奥行きを80:20に分けるくらいの位置に設置されている。仕切りといってもほぼ壁みたいなもの。

屋内空間の一番奥、つまり露天部分の奥は壁でふさがってなくて外に向かって開放されているから、半露天風呂ってことになる。

緑茶のようなお湯

さて、まずは内湯へ浸かってみよう。6名サイズの浴槽の底が見える程度に透き通ったお湯はうっすら緑色をしており、緑茶を連想させる。低温泉といえども加温されているためか当初予想したほどぬるくはない。ぬるめの適温、40℃くらいかなあ。じっくり入りやすい温度なのは間違いない。

白いもやもやしたのが漂っているのは湯の花か。目立つ泡付きはないが、腕のあたりをよく見ると、ちょっとだけ細かい泡が付いているような気がしなくもない。お湯に明らかなヌルヌル感はなくて、どちらかといえばしっとり感かな。

室内の空気とお湯の匂いはいかにも温泉らしいやつ。何と表現したらよいかわからないけど、アブラ臭なのかモール臭と言うべきなのか。よくわかんないや。少なくともあからさまなタマゴ系の硫黄臭ではない。

露天風呂もよきかな

ここまで男湯は自分以外に誰もいない。今のうちに露天風呂を独占させてもらおう。露天風呂は2名サイズ。湯口からの投入は結構な量で、かつ浴槽の縁からしっかりとオーバーフローしていて、感覚的には非循環の源泉かけ流し風情あり。

先に述べた通り、基本は屋内の一部だから屋根あり。壁を大きくくり抜いて外が見えるようになっている。目に映るのはよく手入れされた庭と池と塀。塀の向こうの信濃川は見えない。庭の趣は良いので、四季それぞれ、また昼夜それぞれ、シチュエーションごとに目を楽しませてくれるだろう。

お湯の特徴は内湯と一緒。当時は浴槽内に光があまり当たらなかったせいか緑色はだいぶ失われていた。温度面はほんのちょっとだけ内湯よりぬるかったかもしれない。なんにせよ、なかなか良好な温泉である。

結局最後まで誰もやって来なかった。滞在中完全に独占してしまった。おかげさまでマイペースをずっと保って入浴することができた。信濃川のほとりでひとり静かに温泉に浸かる…このロマンいっぱいの設定が実現しただけでも大満足。たまりませんな。

 * * *

今回訪問してみて、宿泊する旅館としてもしなの荘は良さげな雰囲気だった。当館は一人泊OKなので別の一人旅計画で宿泊先として検討した時もあったのだ。諸事情あって結局実行には至っていないが、いずれやってみたいという野望はまだ消えていない。

あれくらいの温度だと少し肌寒い季節の方が自分にはマッチするかな。でも豪雪地帯だから雪リスクのある時期は行くのが難しいかな、などと勝手に妄想が膨らんでしまうのであった。