霊峰白山の懐に抱かれて浸かるトロトロ湯 - 白峰温泉 白山苑

白峰温泉 白山苑
北陸の霊峰・白山。その麓にある白峰地区は白山登山の基地でもあり、独自の伝統的建築様式の見どころでもあり、また山あいの温泉地でもある。北陸遠征を構想していろいろ調べた際に興味を持ったのと、お隣の福井県とあわせたコースを組みやすそうだったので、白峰温泉で1泊することにした。

おひとりさまOKで敷居が高すぎないところという目線で選んだのが白山苑。実際利用してみると登山・ハイキング客がよく泊まりに来るような印象を持ったが、もちろん温泉に入るのが主目的という自分のような者も受け入れてくれる。

最上階に設けられた展望風呂では、とろみのある重曹泉のお湯に浸かることができる。そして堅豆腐や山菜やジビエを味わえる食事。こりゃまた結構ですな。

白峰温泉「白山苑」へのアクセス

途中で手取川ダムを見学

今回は小松空港からレンタカーを利用する一人旅。国道360号をずっと走ると白山市に入り、手取峡谷・すぎのこ温泉といった立ち寄りスポットが続く。山の自然豊かな環境になってくるが秘境というわけではなく、運転スキルをさほど要求されないので助かった。

途中で国道157号が枝分かれする交差点に来たらそちらへ入る。自分はあえて1kmくらい行き過ぎて「道の駅 瀬女」で休憩。向かいには比咩(ひめ)の湯という日帰り温泉があった。さっきすぎのこ温泉に入ったばかりだし、スケジュール面の都合もあってパスして出発。

国道157号はトンネルが増えて山道ぽくなる。まあでも片側1車線は確保されているしカーブは緩やかだから問題なし。しばらく行くと手取川ダムが現れた。この形状はロックフィルダムだな。
手取川ダム
トンネルを抜けた上流側に駐車場があってダム湖(手取湖)を見ることはできる。しかし残念なことに天端や管理事務所への道は立入禁止となっていた。ダムカードが欲しければ道の駅瀬女でもらえるみたい。
手取湖

独特の建築物が並ぶ白峰地区

さらにたくさんのトンネルが続いた後、いくらか開けた土地へ出てきた。白峰地区だ。空港から寄り道なしで脇目もふらずに運転すれば1時間ちょっとで着く。公共交通機関だとJR金沢・松任駅や北陸鉄道鶴来駅からバス便があるようだけど本数的に厳しそうだなあ。

白山苑が立つ一帯は重要伝統的建造物群保存地区となっており、珍しいつくりの家屋が並んでいた。
白峰の重要伝統的建造物群保存地区
当館のお向かいには総湯と呼ばれる共同浴場がある。平成後期にリニューアルオープンした建物とはいえレトロ感と横幅の圧倒感がすげーな。ちなみに訪問当時は臨時休業中。
白峰温泉 総湯

総湯の向かいに立つ温泉宿

温泉目的には不満なし

白山苑には専用駐車場がない。どこに止めればいいか尋ねると「その辺のどこでも空いてるところへどうぞ」とのこと。たしかにあたりは駐車スペースが十分にある。駐車場は特定の店舗と紐付いてなくて各施設でシェアされてるってことかも。

ではチェックイン。いきなり玄関に猫ちゃんがいました。ほのぼのするね。ちなみに当館にはペットと泊まれる別館もあるようだ。玄関脇のプチロビーとでもいうべき一角がこちら。
白山苑のロビー
エレベータ付き5階建ての館内はとくにピカピカに新しかったりゴージャスだったりするわけではない。そんなの保存地区に似つかわしくないし。逆に気になるような古さや汚れもない。温泉に入ってただのんびりしたい者としてはハード面の不満はなかった。

保存地区を見下ろす部屋

客室には植物の名前が付いている。“トリカブトの間”てのがあったけど…。案内された部屋は4階の6畳和室。ふとんは最初から敷いてあった。室内の管理状態は良好である。
白山苑 6畳和室
奥が椅子やテーブルのない広縁風になってて洗面台が付いていた。トイレはない。男女共同のトイレが1階と2階にある。1階のは現代風のシャワートイレ。2階のは一世代前風の和式と洋式各1。金庫なし、冷蔵庫なし(廊下に共同らしきものがある)。おそらくWiFiもなし。携帯のアンテナは普通に立つ。

窓から保存地区を見下ろせる。泊まる部屋によっては別の方角を見ることになるかもしれない。
窓からの眺め
当時はエアコンをつけなくても暑くも寒くもなく快適だった。あと自分が観測した範囲だと自販機は見当たらず。それならまあいいやと思って夕食前には飲まなかった。


とろとろ湯の展望風呂

コンパクトにまとまった浴室

ではさっそく風呂へ行こう。浴衣に着替えて5階の展望浴場へ。時間による男湯女湯の入れ替えはない。脱衣所にあるのはカゴやロッカーではなくシンプルな棚。壁に貼られた分析書には「ナトリウム-炭酸水素塩温泉、低張性、中性、温泉」とあった。重曹泉ってやつですな。加水・加温あり。循環・消毒たぶんあり。

内湯のみの浴室はそれほど大きなものではない。宿の規模相応といったところだろう。カランは6台で足元にはスノコ(?)を敷いてある。ちょっと洒落た感じに見えなくもない。天井はやや低めで日本人の体型向け。

奥に3~4名規模の浴槽があり、左手前の壁に穴を開けた跡が残っていた。昔はここに湯口か蛇口か何かが設置されていたのかもしれない。現在の湯口は右手奥にあるけど全然お湯が流れてなく枯れてるように見えたので、これももう使ってないのかと思ったら、たまにピューッと出てくる。

湯船の中で時おり「妙に熱いお湯の塊がぶつかってくるな」と感じる瞬間があるので、湯口とは別に浴槽内に直接お湯を流し込む仕掛けがあるかもしれない。そう思って見回すとそれっぽい投入口のようなものが付いていた。確証はありませんが。

最上階のメリットに乗っかれ

お湯の見た目は無色透明の適温。ぬる湯ではないからずっと入り続けることはできないけど、すぐ出ないとのぼせてしまうほどのこともなく、そこそこの時間は継続可能。匂いは無臭で若干の塩素臭を感知した。

最大の特徴は重曹泉によるとろみ感だ。ヌルヌルといってもよい。白峰温泉は絹肌の湯と称するくらいだから、いかにもお肌に良さそうね。

そして窓から保存地区を展望できる。方角的には自分の部屋から見えたのと同じような景色だった。フロアが上がった分だけ、より俯瞰した感じになる。窓ガラスにベターッと張り付きでもしない限り、外を歩いてる人が見上げてもこちらの姿は見えないはずで大丈夫だと思う。せっかく最上階に浴室を設けたんだからこの景色を楽しまないと。

幸いなことにと言ってよいのかどうか、入浴中に他の客がやって来ることはなく、ずっと独占状態でヌルヌル湯に浸かりながら白峰の町並みを眺めることができた。夕方2回と朝2回ぜんぶ独占できた。夕食後の夜は酒と疲れでぐたーっとなってしまい風呂に行けず。


白峰特産品を味わえる食事

自分には珍しい食材がいっぱいの夕食

白山苑の夕食は2階の広間で。グループごとに仕切りで完全に区切ってあるから個室に等しい。畳の部屋にテーブル+椅子のパターン。スターティングメンバーがこちら。
白山苑の夕食
前菜の中に熊肉の時雨煮があった。いきなりジビエキターーー! こういうのがいいやね。お造りも紅鱒・岩魚に加えて堅豆腐だ。名前の通りに堅めで身がぎゅっと詰まってる堅豆腐は煮物にも含まれていた。初訪問のくせに分かった風な物言いで恐縮ながら、白峰に来たって感じで、あー、なんかいいですね。

鍋物の水炊きは自家製にんにく味噌でいただく。さらに途中で岩魚の塩焼きと山菜の天ぷらまで追加された。こりゃ豪勢だ。
白山苑の夕食その2
山菜はこごみ・ふきのとう・こしあぶら・山独活。うむ、自宅にいる間は絶対に食べる機会のないやつだ。ありがてえ。締めの石川県産こしひかりとともに出てきた汁物にはとち餅が入ってたし、山里料理を十分に満喫したのであった。最後にデザートで終了。お腹苦しい。

朝食の注目品は特大油揚げ

朝食は1階の食事処で。フロント横に扉がある。夕食がたっぷりだったから朝はこれくらいでちょうどいいでしょう。
白山苑の朝食
魚は網にくっつかないように適度にひっくり返す。注目は油揚げだ。これも白峰の特産品でサイズがでかい。鍋に火を通すとジュワーッとうまそうな音を出す。熱々で香ばしくしっかりした味わい…うまい言葉が見つからないけど食べてみればわかる。

ご飯をおかわりするまでもなくお腹が膨れた。ごちそうさまでした。フロントでホットコーヒーをサービスしていたので部屋に持って帰って飲んだ。ちなみに朝食時以外はインスタントコーヒーを置いてあり、部屋のポットでお湯を沸かしていつでも飲める。

 * * *

ビビッときた直感で行くことを決めた白峰温泉。ろくに予習もしてなかったし、夕方着いて翌朝すぐ出発みたいになって探索する余裕がほとんどなかったのは、もったいなかったかなあ。総湯は休業中だったし、保存地区の街歩きもしてないし、堅豆腐や油揚げも目の前に出てくるまでノーマーク。

またいつか来ることがあるだろうか。聞けば冬の雪だるま祭りが一大イベントらしい…その時期にレンタカーってわけにはいかないだろうけども。


おまけ:自然の驚異的な力が転がした百万貫の岩

白山苑の姉妹館である永井旅館が白山登山口のあたりにある。白山苑から山道を30分ほどの距離。今回そこまで突っ込むのはやめておいたが、途中にある「百万貫の岩」を見に行ってみた。

白峰の集落を離れて県道33号に入るあたりに永井旅館の「本日外来入浴可」の看板が立っていた。ただし当面の間は外来はお得意様のみとのネット情報もあり、自分の見間違い・勘違いだった可能性もあり、話半分でお願いします。

川沿いの余裕のない地形に作られた1.5車線幅くらいの道路を15分ほど走ると、ちょっと整った路面が始まって、すぐに百万貫の岩に着く。駐車場あり。当時は閉鎖中だったけどトイレあり。川の中州に唐突に巨大おむすびのような岩が転がってた。
百万貫の岩
昭和9年の大洪水の際に上流から流れてきた岩で高さ16mもある。15m級巨人よりでかいぞ。重さは約4800tで換算すると129万貫相当とのことだから百万貫は嘘じゃない。超大型巨人でも持ち上がらないだろう。