夕映えの海を見ながら入る源泉風呂 - 鷹巣温泉 国民宿舎 鷹巣荘

鷹巣温泉 国民宿舎 鷹巣荘
越前岬と東尋坊の中間くらいにある鷹巣海岸。ここに源泉かけ流し100%の温泉宿があった。その名も国民宿舎鷹巣荘。海を見ながら温泉に入れちゃったりするのかな。海産物もうまそうだ。未湯県だった福井で初めて泊まる温泉宿にふさわしい。はい即決。

問題は“おひとりさま”にとって、特に週末が狭き門となる現実だ。なかなか空室が出ない。しかしこのご時世という状況と、曜日を柔軟に考えることによってうまく予約を入れることができた。

温泉と海の組み合わせが本当にうまい具合にかみ合っている。夕日の沈む日本海を眺めながら露天風呂に入ることも可能だ。夕食の際も見事なマジックアワーの光景を見ながら海の幸を堪能できた。立地の良さが光る。

「国民宿舎 鷹巣荘」へのアクセス

東尋坊から30分

鉄道旅の場合、当宿まではJR福井駅から京福バス鮎川線・波の華行きに乗る。ダイヤがうまくつながれば途中の佐野温泉口で途中下車して佐野温泉とハシゴするのもよさげ。で、福井駅から約50分、みの浦で下車して徒歩数百メートルといった感じだ。

自分はレンタカーで東尋坊から移動した。鉄道とバスでのんびりと、観光には目もくれず温泉めぐりだけの旅も捨てがたいが、今回は永平寺とか東尋坊とか一度足を運んでみたいスポットがいくつかあったので時間効率優先の機動性重視。

基本的には国道305号を南下していくだけでいい。鷹巣までは海を横目にといえるほど海岸と並走しているわけではない。一方、鷹巣から先は地図によると完全に海沿いを走ることになるようだ。まあとにかく東尋坊から30分ほどで鷹巣荘に着いた。

亀島遊歩道は…なしよ

宿の敷地内には普通に駐車スペースがあるほか、向かいの未舗装の空き地状のところには「第2駐車場」の看板が立っていた。近くには鷹巣海水浴場があるから、夏休みシーズンには海水浴客の車でぎっしりという光景を想像してしまう。とりあえずこの日は全然余裕。

また亀島(がめじま)という無人島の対岸が亀島園地という観光スポットになっていて、鷹巣荘の脇に遊歩道入口があった。
亀島遊歩道
行けばよかったかな。今日はもう疲れた、早く温泉に入りたいと思ってパスしてしまった。亀島さん、サーセン。


見事なオーシャンビューの宿

館内はモダンな雰囲気

ではチェックイン。施設としてはしっかりしていて今風なところもある。昔ながらという感じではない。フロントの先のお土産コーナーがこちら。なんとなく機会を逸してしまったけど羽二重餅とか買ってもよかった気がする。
お土産コーナー
エレベータ脇のロビーがこちら。窓の向こうに堤防と真っ青な海。ちなみに前日泊まったのが白山白峰だから目に映る風景のギャップがすごい。
鷹巣荘のロビー
客室はすべて2階にあり、和風旅館とは違うモダンなデザインとなっている。陽光を十分に採り入れて明るい雰囲気。
鷹巣荘 2階廊下
また2階のエレベータ付近にお酒を含むドリンクの自販機と浴衣置き場がある。自分のサイズに合った浴衣をそこから持っていく。
浴衣コーナー

目の前にドーンと海が見える部屋

割り当てられた部屋は8畳+広縁和室。おひとりさまだったら十分すぎる広さだ。つくりはしっかりしており、まだ新しい感じ。布団を最初から出してあるのは最近どこでも見かけるフォーマット。
鷹巣荘 客室
洗面台・シャワートイレあり。金庫あり、冷蔵庫は小さめで中は空だった。ネット環境はいまいちはっきりしなかったがフリーWiFiがあるんじゃないかと思う。携帯の電波は普通に強い。スペック面にも居心地面にも何の不満もない。

カーテンを開けるとロビーから見たのと同じような光景が広がっていた。海だー。
オーシャンビュー
窓の鍵は開かなかった。斜めのアングルで窓ガラスにいろいろ映り込んじゃうため撮影するのはやめておいたものの、右の方に目をやると水平線上に東尋坊の雄島が見える。建物の構造からいって全室オーシャンビューだから必ずこういう景色を見られるはず。


アピールポイントの多いお風呂

本格的な源泉かけ流し

鷹巣荘の大浴場は地下1階にある。マッサージチェアや自販機のある湯あがり休憩所を通って男湯へ。脱衣所は典型的なカゴ方式。エレベータでなく階段を使ってアプローチすると途中にロッカーがあった気がする。

掲示された分析書には「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒いずれもなしの源泉かけ流しだから大したもんだ。入浴方法として「ぬるいお湯には20分」みたいなことが書いてあったから、自分が好きな体温前後のぬる湯が提供されているのかと期待してしまった。

建物全般と同じく浴室も新しくて明るい雰囲気。カランは8台。大小2つの浴槽が並び、小さい方は3名規模でどうやら普通の熱さっぽくて、8名規模の大きい方がぬるめに調整されているようだった。どちらにも十分な量のお湯が流し込まれている。

小浴槽へ入ってみると一般的な適温。いや、もうちょっと熱いかな。きりっと引き締まる感じはあるが、熱いのは苦手なので自分ならワンポイントで使いたい。

ぬるめでさっぱり湯の大浴槽が気に入った

あとはもっぱら大浴槽を利用した。こちらは40℃を切るくらいの温度でゆっくり浸かるのに向いている。ただし20分連続で居座れるほどのぬる湯ではないから適度に休憩を。いかにもそれらしい形状の湯口は枯れていてもう使われてないのかな。そのかわり隣にパイプが生えていて、L字で下に向けた口からダーッと源泉を吐き出していた。

お湯は無色透明。湯の花、泡付き、ヌルヌルといった要素は感知せず。もちろん塩素臭などなくて温泉らしい匂いがする。海のそばだからナトリウム塩化物泉に近いのかと思ったら、分析書によればナトリウムイオンと硫酸塩イオンの成分が多かった。

体にまとわりつくというよりはさっぱりしたお湯で、なかなかの浴感。さすがにお湯の鮮度も良い。と断言できるほどの研ぎ澄まされたセンサーは持っていないが、源泉かけ流しという先入観に惑わされた感想ではないと思いたい。なお、部屋に戻ったらやたらダルくなってグターっと脱力してしまった。これも温泉効果か。あと肌がスベスベになった。

気分がいい、海の見える露天風呂

さて、大浴槽の奥の扉から露天風呂へ渡っていける。3名規模の浴槽があり、完全なる屋外ではなくて雰囲気としては半露天に近い。お湯は熱めだった。湯口の隣に「必要ならこちらから足し湯してください」と書かれた蛇口が付いている。いやもうこれ以上熱くする手段はいらねっす。

部屋から見た景色をもっと低い目線で見ることになるから、手前の陸地部分や堤防がクローズアップされ、目の前に広大な海だけがドーンというのではないけど、海を見ながらの露天風呂は十分に体験できる。トンビのピーヒョロロを聞きながらのんびり浸かるってのはたまりませんな。

半露天だから雨に邪魔されることがないのは良い。とはいえやはり青い空と青い海、あるいはきっちり赤い夕日を見られるに越したことはない。好天を祈りましょう。


食事は一種のプレミアム体験付き

夕食はおさかな天国

鷹巣荘の食事は朝夕とも1階の食堂で。夕食は越前コース。最初の1杯を数種類の中からサービスしてくれるプランだったので無難にグラスビールを。
鷹巣荘の夕食
お造り以外にホタテの小鉢・甘鯛みぞれ煮と、やはり海産物で攻めてきたのは期待通り。一方で台物は牛ヒレステーキという大盤振る舞い。牛肉なんてふだんは牛丼の上に乗ってるやつかハンバーガーの中に挟まってるやつくらいしか食べないからなあ。

もちろんこれで終わりじゃない。鮎南蛮漬けとさよりの酢の物、さわらの幽庵焼き、茶碗蒸しが追加で投入され、量的にもかなりの規模になった。おさかな一杯でうれしいですね。
鷹巣荘の夕食その2

マジックアワー鑑賞も楽しめてしまう

食堂の窓からも海が見える。しかもちょうど夕日が沈む頃合いであった。食事しながらちょいちょい撮影する。
越前海岸の夕日
他のお客さんもときどき窓まで歩み寄っては写真を撮っていた。夕食にこのようなプレミアム体験がついてくるのは鷹巣荘ならでは。
越前海岸の夕日その2
いやーお見事。心が洗われるようだ。ビットコインが暴落したことなど、すっかり忘れさせてくれる。やがて日が沈みきると夜釣りの灯り(たぶん)が遠くに浮かび上がってきた。最高ですな。
夜釣りの船?

朝食もやっぱり魚がうまい

朝食は比較的シンプル。自分の胃の容量からすると多すぎなくてちょうどいい。
鷹巣荘の朝食
そしてやっぱり魚がうまい。福井県産コシヒカリによく合いますね。ご飯はおかわり必要ないくらい多めによそってあった。食後にはセルフサービスのコーヒーが用意されている。これだけやってくれれば十分です。ごちそうさま。

 * * *

最初は源泉かけ流しだからということで注目した鷹巣荘。もちろんそれも大きな売りのひとつだし、温泉めぐりの候補先として外せない要素だろう。しかし現地へ行って初めて理解した売りもあった。あの立地、あの景色、夕食とともに味わうあのマジックアワー。あれこそが百聞は一見にしかず。

とにかく穏やかな晴天かどうかで印象がだいぶ違うはず。好天を祈りましょう。